【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:菅原リディ

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082 ライター

「そう言えば今日は便利グッズの発売日だったな」

 

「そう言えばそうでしたね」

 

 俺とゆんゆんは手をつないでアクセルの街に帰還し、ギルドに報告を終えて報酬をもらった後、帰路についていた。

 

「ウィズ魔道具店に行ってみますか? みんなも多分いるでしょうし」

 

「そうだね。行ってみようか。飛ぶように売れてたらいいけど……」

 

「実演販売すればすぐにでも売れそうですよね。例えばライターとか」

 

 やがて、ウィズ魔道具店につくと、俺の期待通り、なんとライターをはじめとした便利グッズがが飛ぶように売れていた。

 

「すごいですね……誰かが実演でもしたんでしょうか? 」

 

「いや、どうやら誰かがビラ配りまくってたみたいだね。みんなビラを手にしてる」

 

「あ、本当ですね」

 

 ウィズ魔道具店に殺到している人々の幾人かはビラを持っていた。

 

 俺たちはゆっくり店内へと進んでいく人ごみに紛れて、数分後。入店すると、店内にはカズマたちがいた。

 

「おおリョウタ、ゆんゆん。おかえり」

 

「「ただいま」」

 

 カズマとめぐみんが俺たちの方に寄って来た。

 

「大盛況だな俺たちの作った便利グッズ」

 

「だろ。努力した甲斐があったなリョウタ」

 

「ほんとだな」

 

「あのめぐみん、カズマさん。なんでアクアさんはダクネスさんに取り押さえられてるんですか? 」

 

 確かにゆんゆんの言うように、ダクネスにアクアは取り押さえられ何かをわめいている。

 

「ああ。あいつには客引きをさせてたんだけど、その客引きのために披露した宴会芸があまりにすごすぎて客に本来の目的を忘れさせるほどの事態になってたからな。ダクネスに取り押さえてもらってる」

 

「すごいですからねアクアさんの宴会芸は」

 

「ほんと変なところが優れてるからなアクアは」

 

「宴会芸で食べていけそうな気もするのですが本人はその気はないようですね」

 

 ゆんゆん、カズマ、めぐみんがそんな会話をする。

 

「俺たちが討伐クエストに出てる間変わったことか、無かったかい? 」

 

「カズマが妹が欲しいだのおかしなことを言い出した以外はなにもおかしなことはありませんでしたよ」

 

 妹? はて、どういう意味だろうか?

 

「妹が欲しい? 」

 

 ゆんゆんも首をかしげる。

 

「どういうことなんだカズマ? 」

 

 俺がその意図を聞いてみると、カズマは感情のこもった声で語り始めた。

 

「俺の周囲には様々な属性の女性との出会いがあった!! 例えば年上の癒し系お姉さんのウィズとか活発系の元気娘のクリスとかな。だけど妹枠はいなかったことに気づいたんだよ!! だから妹枠が欲しいって言ったんだ!! 」

 

「……なるほど、わからん」

 

 それでどうして妹が欲しくなるのか?

 

「わかれよ」

 

「無理ですね。さすがにわかりません」

 

「カズマさん、それはご両親にお願いしないと……」

 

 めぐみんとゆんゆんにもそのように言われるカズマ。

 

「……そういえば、ゆんゆんに『お兄ちゃん』って呼んでくれって出会って間もないころに言ってた気がするな」

 

「あ、確かにそんなこともありましたね」

 

「……今夜スモックを着て言ってくれないかな? 」

 

「着ませんよ!? それに言いませんから!! ていうか、今夜ってどういうことですか!? 」

 

「あははは……ゆんゆんが今想像した通りの意味だよ? 」

 

 俺はわざとらしく笑った後、にやにやしつつそう述べると、ゆんゆんは赤面しながらうつむいた。

 

「全くうちのパーティーの男たちはどうしてこんなにもフリーダムなんでしょうか? 」

 

「「爆裂魔なめぐみんだけには言われたくない」」

 

「な、なにおう!? 」

 

「打ち上げ花火みたいな人生送ってるからなお前」

 

「カズマの言う通りだな。めぐみんはもう少し自制心を持つべきだと思うよ」

 

「この冷静沈着が売りの私に打ち上げ花火みたいな人生だの、自制心を持てだの言うとは失礼ですね……」

 

 めぐみんが抗議の視線を俺たち2人に送る中、カズマはふと口にした。

 

「でも、昨日はお前俺がゲーム奪ったときにも結構優し目で冷静に対応してたよな。自制心は多少身についてきてるのかな……」

 

「割と喧嘩っ早いめぐみんがか? 」

 

「ああ、『カズマだけ仲間外れというのもかわいそうですし』とか言ってもくれた」

 

 めぐみんが少し赤面する。そんなめぐみんを見てゆんゆんが。

 

「めぐみんったら紅魔の里のいたころと比べてどんどん優しくなっていくわね。それともカズマさん限定? 」

 

 にやにやしながらめぐみんをからかった。

 

「う、うるさいですよ!! あとで覚えておいてくださいね……。屋敷に帰ったら泣かせてやりますから」

 

 めぐみんはかわいいな。というか恋する女の子はかわいい。

 

「俺、限定……」

 

 ゆんゆん以上ににやけるカズマはなぜかイケボでそうつぶやいた。

 

 こっちはこっちで嬉しそうだな。

 

 というか。

 

「店内で報復しないあたり本当に自制心がついてきてるなめぐみん。えらい」

 

「褒めてもらってもいまいち喜べないですね……」

 

 めぐみんがそう言いつつも少し顔を赤くしていることから多少は喜んでいるようだ。

 

「あ、リョウタさん、ゆんゆんさん。お2人には無料でライターを差し上げますのでほしい色の物をぜひ選んでください」

 

 すると、ウィズさんがライターの並べられた木箱を持って俺たちの方にやってきた。

 

「いいんですか店主さん? 」

 

 嬉しそうなゆんゆん。

 

「はい、どうぞ」

 

 ウィズさんが微笑みながら木箱を差し出す。

 

 試作品は2つほどあって、俺とカズマがすでに持ってるが、商品版の様に色のついた綺麗な物ではない。せっかくなのでもらっておこう。

 

「じゃあ俺はこの黒い奴で」

 

「私はピンクの物を」

 

 俺とゆんゆんはライターを選んでポケットにしまう。

 

「「ありがとうウィズ(店主)さん」」

 

 ウィズさんはお礼を聞いて笑った後、再び接客に戻っていった。

 

「ねぇちょっとウィズ!! 私まだライター選んでないんですけど!! 」

 

 そんな中、ライターをもらっていない様子のアクアは今度はそう言って騒ぎ始めた。アクアはダクネスにやっと解放されてウィズさんにたかりに行った。

 

「フハハハハ、フハハハハ!!!! 素晴らしい。素晴らしいぞ。我輩がやってきてから始めてここまで店が繁盛している様を見るのはうれしい限りだ!! 」

 

 するとバニルが高笑いしながらこっちにウィズさんと入れ替わるようにやってきた。

 

「感謝するぞ。神殺しの青年よ。そして旅先で仲間といい雰囲気になったのに帰ってきてからなかなか進展が無くてそわそわしている小僧よ!! 」

 

「そわそわなんてしてねーし!! なんだよめぐみんこっちをちらちら見るなよ!? 」

 

「見てません!!何を悪魔の言葉にいちいち動揺しているのですか!? 翻弄されないでください!! 」

 

 お互い焦るカズマにめぐみん。

 

「カズめぐはいいな。見ていてかわいらしい」

 

「そうですね。恋愛なんて一切興味のなさそうだっためぐみんがこんなになって。なんだか安心します。あと2人ともかわいいです」

 

 俺たちはひそひそそんなことを言い合う。

 

「この調子なら貴様らの取り分である6億エリスは月末には用意できるであろう。しばし待たせる代わりに小僧。汝にはこれをやろう」

 

 レア物のブラックバージョンのバニル仮面をカズマに差し出すバニル。月夜につけると様々な効果(例えば血行促進など)があるとバニルは語る。

 

「い、いらねぇ」

 

 と言いつつもらうカズマ。

 

「神殺しの青年にはこれをやろう」

 

 バニルが俺に、中に輪っか状のものが入っていてそれが浮き彫りになっている小さな袋を俺に差し出す。

 

「おっ!! この袋は……!! 」

 

「なんですかリョウタさん? 」

 

 ゆんゆんの問いに俺とバニルはにやにやしながら。

 

「「避妊具だよ(である)」」

 

 試作品は先日使ってしまったから切らしてたんだよな。これはありがたい。

 

「え、うぇ、あう……」

 

 照れて顔を覆うゆんゆん。本当にかわいいな。

 

「ピンク脳な方の紅魔の娘よ。汝の羞恥の悪感情。大変美味である」

 

 そう言ってバニルは哄笑した。

 

「セクハラですね」

 

「セクハラだな」

 

 そんな中、めぐみんとダクネスは俺とバニルを呆れた顔で見つめてきた。

 

 

 

 屋敷にパーティーメンバー全員で戻ると、ある怪現象が発生した。その怪現象というのは……。

 

「何でそんなもの着てるんだいダクネス……」

 

「こ、これはだな……」

 

 ダクネスがメイド服(しかも丈の短い物)を着て家事をしていた。

 

「俺が着物で王女様に会うって言ったら縋り付きながらそんな得体のしれないものを着るのはやめてくれ、私にできることなら何でもするからって言われたからこうしてメイド服を着て家事をさせてる。見てる分にはいいだろ」

 

「なるほど確かに」

 

 かなりかわいい。あとエロい。

 

 というか。

 

「俺の作ったスモックを見てドン引きの逸品だなとか言ってたくせにやってることが一緒じゃねぇかカズマ」

 

「お前にインスパイアされたんだよ」

 

 さわやかに言ってのけるカズマ。

 

「……ダクネスもあんな格好していることだしゆんゆんも、着てみたらどうだい? スモック」

 

「いやですよ。2人きりの時ならともかく……」

 

 即答のゆんゆん

 

「じゃあ今夜2人きりになった時に着てもらおう」

 

 それを聞いたゆんゆんは。

 

「リョウタさん今日ははっちゃけすぎですよ!! 少し自重してください!! というかそもそも何で今夜も2人きりになること前提なんですか!? 」

 

「あははは!! ごめんなさい」

 

 俺は素直に謝る。

 

「いいなーリョウタお前は。可愛い彼女がいて」

 

 カズマは家事をするダクネスをひたすらガン見しながら言った。

 

 カズマにはすでに彼女候補が2人いるだろうに。とは言え、まだ候補だ。彼女ができているわけではないから、天と地ほどの差があるのは間違いない。

 

「……まさか彼女ができないからって妹で妥協しようとしてるわけじゃないよな? 」

 

 俺はふとそんなことを思いつきカズマに向けて口にすると。

 

「それとこれとは話が別だ。ていうかなんだよ妹で妥協って」

 

 カズマが真剣な顔で俺の方を見てきた。

 

 俺はそんなカズマに。

 

「めぐみんに妹役頼めばいいんじゃないか? まぁ見てる分には普段から兄妹って感じがしないでもないけど」

 

「こいつはロリ枠だから妹枠じゃない。というか昨日めぐみん本人が、自分が妹役やろうかって言ってきてた」

 

「なるほど、ってもったいなくないか? めぐみんほどの美少女に『お兄ちゃん』って言ってもらえる機会を捨てるだなんて」

 

「……それもそうだな。おいめぐみん」

 

「やりませんよ? 」

 

「ちっ!! 」

 

 アクアとプレイスケーションで対戦中のめぐみんのジト目による即答にカズマは舌打ちした。

 

 

 

 夜も深くなり、自室で休んでいると、部屋のドアがノックされた。

 

 ……ゆんゆんかな? 

 

 ドアを開けてみるとそこには黒髪赤目の美少女がいた。が、ゆんゆんではなかった。

 

「こんばんはリョウタ」

 

「こんばんはめぐみん」

 

 めぐみんだった。いったいどうしたのだろうか?

 

 俺が事情を聞こうとすると、めぐみんの方からそれを説明し始めてくれた。

 

「実はあなたに相談がありまして……部屋の中に入ってもいいですか? 」

 

「いいよ」

 

 俺はめぐみんを部屋に招き入れドアを閉じた。

 

 めぐみんには椅子に座ってもらい、俺はベッドの上に座る。

 

「どんな相談だい? 」

 

「カズマのことです。というか恋愛相談ですね」

 

「恋愛相談か。堂々と言うな、めぐみんは。まぁいいけど」

 

 俺は恋愛系の話なのに一切恥じることなく言い切るめぐみんに感心する。

 

「そうでしょうか? それで構いませんか? 恋愛相談」

 

「もちろん」

 

「……リョウタはもう気付いていると思いますが私はカズマのことが好きです。それで質問なのですがあなたから見て私たちはリビングで言っていたように兄妹に見えるのですか? 」

 

 ……さっきの発言、気にしてたんだな。

 

「まぁその、めぐみんには残念だろうが時折そういう風に見えることはある」

 

「……そうですか。本当に残念です」

 

 肩を落とすめぐみん。

 

「ごめんねめぐみん」

 

「いえ、かまいませんよ。むしろ本当のことを教えてもらってありがたいぐらいです」

 

「そうか」

 

「あのリョウタ、カズマは私のことを、どのように思っているか知りませんか? 」

 

 紅潮した顔で言ってくるめぐみん。

 

 どう答えるべきなのだろうか? カズマはめぐみんのことを好きとは言っていないしな。でも、好意を持たれていることを知って喜んではいる。

 

「そうだね……。めぐみんの好意に喜んではいるよ。ただめぐみんのことが好きとかは言っていない。意識はしまくってるみたいだけどな。今日バニルに言われてたみたいに」

 

「……一応好きですとは伝えたんですが、しれっと言ったので押しが足りなかったかもしれませんね。もっとしっかり言うべきでした」

 

「ほう、がんばったんだね」

 

「はい、がんばりました。ただもう1度言う自信はありません……」

 

「なんだかんだで乙女だな君も」

 

「なんだかんだとは何ですか……? 」

 

 少し不満げな目を俺に向けるめぐみん。

 

「ごめん、まぁカズマにもっと異性として意識してもらうために積極的にアピールしていくことは必要だと思うよ。カズマに対して優しく接したりしたのもアプローチの1つなんだろ? そういうのを続けていくといい、あと、『好きです』と何度も伝えてみるのも効果的かもな。男は自分のことを好きだと言ってくれてる子の方を強く意識してしまう生き物だからさ」

 

「ありがとうございます。頑張ってみます」

 

「がんばれめぐみん」

 

 俺はめぐみんに笑いかけた。

 

「ところでリョウタ、あなたはダクネスに相談されたりとかはしてないですか? 」

 

 めぐみんは唐突にそんなことを聞いてくる。

 

「ダクネスにこういうことを相談されたことは無いよ」

 

 カズマのことが気になるということを以前話されたことはあったが、恋愛相談ではなかったしな。

 

「そうですか。あのリョウタ、私とダクネスは恋のライバルですから、もしかするとカズマのことであなたに今後相談することがまたあるかもしれません」

 

「うん」

 

「もしダクネスに相談されることがあってもしっかりと答えてあげてほしいのです。優しいあなたのことですから私とダクネスのどっちも応援するというスタンスをとってくれている気はしていますが一応お願いさせてください。ダクネスとはフェアでいたいので」

 

「分かってるよ。もともと俺は中立の立場でいようと思ってたしね」

 

「ありがとうございます」

 

 微笑みながらぺこりと頭を下げるめぐみん。かわいい。

 

「って、ゆんゆんに嫉妬されるな」

 

「いきなりどうしたのですか? 」

 

「いや、今、心の中でめぐみんがかわいいと思ったからさ。ゆんゆんが知ったらきっと嫉妬すると思ってね」

 

 めぐみんは納得したという表情を浮かべ。

 

「まぁ、ゆんゆんは結構嫉妬深い子ですからね。あんまり他の人のことをかわいいと考えていると愛想をつかされ……ることはなさそうですね。ゆんゆんのことですから」

 

「その代わり、不満として抱え込みまくりそうだな……。気を付けるようにするよ」

 

「それがいいと思います」

 

 めぐみんが笑う。そして。

 

「リョウタ、話を聞いてもらいありがとうございました。おやすみなさい」

 

「おやすみめぐみん。また明日」

 

「はい。あ、今日もゆんゆんとお楽しむ予定ですか? 」

 

 いたずらっぽい顔を浮かべるめぐみん。

 

「いや今日はその予定ではないけどどうしたんだい? 」

 

「外まで声が聞こえているので声は抑えたほうがいいですよ? この前、部屋の前を通りかかったときに声が聞こえてましたよ。特にゆんゆんの声が」

 

 マジか……。

 

「了解気を付ける」

 

 俺は少し恥ずかしさを感じながらドアを開けて出て行こうとするめぐみんに苦笑した。




 ウィズ魔道具店が繁盛しています!! これで貧乏生活を脱却できるねウィズさん、バニル。まぁウィズさんがまたろくでもないものを仕入れて赤字になりそうですけど。

 それと書いていて思ったのですが、やっぱりめぐみんもかなりかわいいですね。
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