【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

89 / 100
088 報いを受ける者、救われる者

 アルダープの別邸とアクセルの屋敷を行き来し始めて1週間が経過した。ゆんゆんは紅魔族としての高い知力を発揮して俺の助手を見事勤め上げ、魔導式電磁石を完成させることができた。バニルにはすでに納品してある。

 

 そして、昼間の自室にてベッドで隣り合って座った状態でゆんゆんと話す。

 

「いよいよ今日か。アルダープが動く日は」

 

「そうですね。私はついて行かなくてもいいんですか? 」

 

「ゆんゆんは義賊の方を頼むよ。さすがに2人まとめて警備から外れてるとカズマに不審がられそうだし」

 

「そうですね。じゃあ私は義賊への警戒をしますね。アルダープの件、お願いしますねリョウタさん」

 

「うん、任せて」

 

 俺とゆんゆんは顔を見合わせて笑った。

 

 

 

 

 深夜、俺はバニルに言われてアルダープの後ろを一緒につけている。アルダープは現在食糧庫に向かっているようだ。

 

「我輩が先日言っていたようにこれからあやつは汝のパーティメンバー。具体的に言うとレベルの上がらない小僧にチンピラプリーストに爆裂娘の死を願いに行くはずである」

 

「まぁカズマにはそもそも屋敷を吹き飛ばされた恨みがあるし、アクアは目に余る暴飲暴食と武勇伝語り、めぐみんも武勇伝語りに毎日の爆裂魔法の騒音への苦情の恨みがあるだろうしな。殺すのはどうかと思うけど、何か報復したくなる気持ちも少しは理解できるよ」

 

「まぁそうであろうな」

 

 バニルがなんでもなさそうに答える。

 

 今回の作戦は、まずアルダープが使役しているバニルの友、つじつま合わせのマクスウェルに3人に死の呪いをかけるように願い、アクアの力のせいでそれは無理と言われ、切れたアルダープが最後の命令としてララティーナを今すぐここに呼べそうすれば対価を払ってやると言った瞬間、ランジェリー姿のダクネスに化けたバニルが乱入する。

 

 次にアルダープにバニルダクネスが仲間の迷惑行為への詫びを入れに来たと語り、アルダープがマクスウェルに契約解除と対価を払うと明言した直後にバニルダクネスに飛びつこうとしたところで変身解除、アルダープから失望の悪感情をむさぼる。

 

 最後に、バニルがマクスウェルに地獄へ帰るように促し、マクスウェルがアルダープに対価をしっかりと払ってもらうためにアルダープをともに地獄へ連れていって終わりである。連れていかれる直前に一度マクスウェルに力の片鱗を見せてもらい、モンスターをランダムに召喚し使役する神器はバニルがアルダープから彼が地獄に引きずり込まれている最中に回収し俺に手渡すことになっている。

 

 さてこれから1人の人生が終わる瞬間をしっかり見届けるとしよう。アヤメリス様と俺の家族のために。

 

「ふむ、マクスウェルがいるのはあの食糧庫に備え付けてある秘密の地下室のようだな。そろそろ動くぞ神殺しの青年よ」

 

「了解」

 

「地下室にある扉の隙間から汝はアルダープが地獄に連れていかれる直前までこっそり覗いておればよい。我輩がタイミングよく指示を出すのでその際に貴様も部屋に侵入。神器を我輩から受け取るがよい」

 

「わかった」

 

「では行くのである」

 

 バニルに続いて、俺は食糧庫に入り、酒樽で普段は塞いでいるらしい地下への通路を下り、扉の前につく。扉の向こうからはアルダープと、おそらくマクスウェルと思われる悪魔の声がする。マクスウェルの声は男のものなので見かけ上は男性なのだろう。

 

 するとバニルの姿が煽情的な下着を纏ったダクネスへと変化する。

 

「便利だな」

 

 アルダープが「殺せないというのなら……最後の命令だ!! 今すぐここにララティーナを連れてこい。そうすれば今までの対価を払ってやる」と喚いている中、押し殺した声で俺がバニルに話しかけるとバニルは、にやりと笑って返事をした。

 

「では覗いているがいい神殺しの青年よ。我輩は行ってくる」

 

 ダクネスの声でそう発言したバニルダクネス。バニルダクネスはいよいよ扉を開く。

 

「アルダープ。実はあなたに日ごろ迷惑をかけている仲間の件で詫びをしに来たんだ……」

 

 俺は扉が引き戸になっているので、扉が開いた瞬間に素早く扉の裏側に隠れる。

 

「どうか我が身を差し出すので仲間の日ごろの無礼は許してもらいたい……ダメ? だろうか? 」

 

 弱弱しくしかしどこかかわいらしく感じさせる声でアルダープに問いかけるバニルダクネス。

 

「お、おおララティーナ、ララティーナではないか!! よくやったぞマクス。一体どうやったのかは知らないが対価を約束通り払ってやろう!! ああ、ララティーナ、その恰好とても麗しいぞ。わしのララティーナ!! 」

 

 俺が部屋の状況を見れるように、扉を完全には閉じず、わずかに隙間を開けた状態で入室したバニルダクネスにアルダープは興奮気味に詰め寄っていく。そんな中、美青年の姿をした悪魔、マクスウェルはというと「対価を払ってくれる? 僕はまだ何もしていないのに? 」と言った。

 

 その瞬間。

 

「残念我輩でした!! 」

 

 バニルダクネスの姿が突如グニャリと歪みバニルのものへと変わる。

 

「な、貴様は!? 」

 

 驚愕するアルダープだったが、やがて。

 

「この感じ、マクスと同じ悪魔だな!! そうか、このマクスと同じ悪魔だったのだな貴様は!! よくもふざけた真似を!! マクス、こいつを殺せ!! 」

 

「ヒュー、ヒュー、なんで僕が仲間を殺さないといけないの? 」

 

 マクスウェルは笛の鳴るような音をたてながら首をかしげる。

 

「あれ? 君は……うーん、どこかで会ったことがあるかもしれないね。どこだったかな」

 

 マクスウェルがアルダープの声を無視してバニルを注視している。

 

 アルダープが言うことを聞かないマクスウェルに苛立っているのが目に見えて伝わってくる中。

 

 バニルはきれいなお辞儀をして言った。

 

「いやはや、貴公に自己紹介するのは何百回目か何千回目か。それでも我輩は自己紹介させてもらおう。では今回も初めましてであるマクスウェル。我輩は見通す悪魔バニルである。真理を捻じ曲げる悪魔、マクスウェルよ。迎えに来たぞ!! 」

 

「バニル? バニル!! ああ、憶えてないけれど、どこかとても懐かしい感じがするよ」

 

「迎えに来ただと? どういうことだ!? 」

 

「無論、我ら悪魔のあるべき場所。地獄である!! さぁ帰ろうマクスウェル!! 我輩たちの居場所に」

 

「ま、待て、私の下僕を連れて行くな!! 」

 

「下僕だと? 我輩と同じ大悪魔。地獄の公爵であるマクスウェルが着様如きの下僕だと? アクセルの悪徳領主殿、お前は運が良かっただけだ。最初に召喚したのが力はあっても頭は赤子のマクスウェルだったから死を免れただけのこと」

 

「な、なに!? マクスが大悪魔で地獄の公爵だと!? そんなことが……」

 

「そんなことがあるのである。さぁマクスウェルよ。この男は貴公に対価を払うと言ったぞ。そして契約解除するともな。貴公は自由だ。さぁこの男を好きにするがいいぞ」

 

「そうだね、僕にアルダープは言ってくれたね対価を払うって。だから僕は」

 

 マクスウェルが微笑んだ。微笑みながらアルダープの両腕をつかみ、へし折った。

 

「ぎゃぁぁぁぁ。痛い、痛い!! 」

 

 アルダープが悲鳴を上げる。

 

「僕は、対価としてアルダープからたくさん絶望の悪感情をもらうよ、アルダープ!! 」

 

「あああああああ!!!!!!!! 誰か、誰か!! 」

 

 アルダープが泣きわめく。

 

 これが数々の不正を積み重ね、俺の仲間を苦しめ、アヤメリス様を散々利用した男の悲鳴か。

 

 若干スカッとすると思ったが案外無感動なものだな。そんな感想を抱いていると。アルダープが命乞いを始めた。

 

「わしの莫大な資産を対価として払う!! だからやめてくれマクス!! そのような絶望をわしに支払わせようとしないでくれ!! 」 

 

「言っておくぞ、悪運だけは強かった男よ。汝は先ほどマクスウェルとの契約を解除した。だから貴様の数々の不正はばれて資産は没収である。よって貴様は無一文なのである」

 

「そんな、そんな!! わしの築き上げてきた富が!! 」

 

「実に無様である」

 

「ああ、いいよアルダープ!! ヒュー、ヒュー!! もっと絶望の悪感情を僕におくれよアルダープ!! 」

 

 次はマクスウェルがアルダープの足の甲を踏みつけた。その瞬間、鈍い音がしてアルダープがバランスを崩して倒れこんだ。

 

「足が。わしの足がぁぁぁ!! やめてくれマクス、わしはお前に強く当たり過ぎた!! 謝るからやめてくれマクス。そうだ、わ、わしは実はお前のことが好きだったんだよマクス!! だからやめてくれお願いだ!!!!!!!! 」

 

 それを聞いたマクスウェルはしばらく沈黙した後、狂喜した。

 

「僕も君が好きだよアルダープ。だからもっと絶望を味合わせておくれよアルダープ!! 僕に絶望をおくれよアルダープ!! ヒュー、ヒュー!! 」

 

「さて、マクス、この男は自分の寿命では到底払いきれない分の対価が貴公にある。地獄に連れ帰ってじっくり払ってもらうがよい」

 

「そうだねバニル。さぁ一緒に地獄へ行こうアルダープ!! ヒュー、ヒュー!! 」

 

「そ、そんな」

 

 アルダープが絶望の表情で涙を流す。

 

「では参ろうか!! 」

 

 バニルがフィンガースナップすると、虚空からおどろおどろしい門が現れた。直感的にわかる。あれは、地獄への入り口だ。

 

「アルダープ、行こうか、僕たちの世界へ!! ヒュー、ヒュー!! 」

 

「い、いやだ!! いやだぁぁぁ!! 」

 

 アルダープは自由に動かせる片足を振り回す。その瞬間アルダープのポケットから丸い石が転がり落ちた。

 

「フハハハハ!! さて神殺しの青年よ、出てくるがいい」

 

「ああ」

 

 俺は、扉を開けてアルダープにバニルにマクスウェルの前に姿を現す。

 

「お、お前は!! い、いえ貴方は!! お助けください、破壊神を殺した勇者よ!! わしを助けて―――――」

 

「これがモンスターをランダムに召喚し使役できる神器である。それとマクスウェル。我輩から頼みがある。この青年に汝の真実を捻じ曲げる力を見せてやってはくれぬか? 」

 

「ヒュー、ヒュー、いいよ。バニル」

 

 マクスウェルが嬉々としてバニルの頼みに応え力を発動したようだ。それはアルダープの骨折した足や腕を修復するという形で現れた。

 

 未来視に現実の捻じ曲げ。本当にチートだな地獄の公爵って言うのは。

 

 手足の再生されたアルダープは逃げ出そうとするがマクスウェルに首根っこをつかまれる。アルダープがいくらもがいても怪力で簡単に押さえつけているマクスウェル。やがて鈍い音がしてアルダープの体が動かなくなった。悲鳴を上げているので死んではいないが首の骨を折られたのだろう。

 

「今の光景とこの神器でマクスウェルがいたことの証明に使うのだ。あとは我輩の書いてやった原稿通りに証言時に答えていくがよい」

 

「わかった」

 

 何か俺に助けを求めているアルダープの声に耳を貸さず、神器をバニルから受け取る。

 

「それではしばし別れだ神殺しの青年よ。マクスウェルに地獄をエスコートしてやらねばならぬ故、我輩は地獄に戻る」

 

「了解。これで俺の証明さえあればアヤメリス様は大丈夫なんだな」

 

「見通す悪魔が保証してやろう。問題ない」

 

「ありがとうなバニル」

 

「礼などいらん。対価はもらった。さぁ行こうかマクスウェル!! 」

 

「ああ行こうバニル!! 行くよヒュー、ヒュー、アルダープ!! 」

 

「放してくれぇぇぇ!!!!!!!! 」

 

 地獄の門が開きその中へとバニルにマクスウェル、そしてアルダープは消えていった。やがて門も扉を閉じて消失する。

 

「さて、明日に備えて寝るとしよう」

 

 俺は神器をポケットにしまうと部屋に戻ることにした。

 

 のだが。

 

「助けてぇー!! 」

 

 カズマの声が聞こえる。

 

 まさか賊に何かされたのか!?

 

「カズマ今行く!! 」

 

 俺は急いで地下室から出ると、カズマの声がする食糧庫のすぐ近くのキッチンへと向かった。賊の奴、カズマに何かあったらただじゃおかないぞ!!

 

「カズマ、大丈夫か!? カズマ!? ……カズマ? 」

 

「あ、リョウタさん……」

 

 困り顔のゆんゆんがキッチンにて出迎えてくれた。そのすぐ近くではロープでぐるぐる巻きにされたカズマが地面に転がされた状態で、精神攻撃を受けていた。……ゆんゆんを除いた仲間から。

 

「ほら言ってみろ、最近調子に乗って私に迷惑ばかりかけてごめんなさいとな!! 」

 

 にやにやしたダクネスにそう言われ必死にカズマは。

 

「調子に乗ってました!! ダクネスに迷惑かけてごめんなさい!! 」

 

 泣きそうな顔で謝っている。ほかにもめぐみんから。

 

「カズマもう一度あのセリフを聞かせて欲しいのです!! 何点ですか? 私の爆裂魔法は何点ですか!? さぁ!! 」

 

「あ、ああいうのは1回しか言わないからいいんだろが!! 何度も言わせんなよ恥ずかしいから!! 」

 

「なにこれ? 」

 

 俺の疑問に困り顔のゆんゆんが答える。

 

「カズマさんが義賊の侵入は阻止できたもののバインドをかけられてしまったみたいでして。これ見よがしにみんながカズマさんをおもちゃにしてるんです。やめてあげてって言ってるのに。……ところでそっちはどうなりました? 」

 

「成功だよ」

 

「よかったです」

 

 ゆんゆんが笑顔を見せる。そんな中。

 

「話してないで助けてー!! リョウタ、ゆんゆん!! 」

 

 カズマの悲鳴がキッチン中に響き渡った。

 

 

 

 

「なんと、あれだけ自信満々だったはずなのにカズマ殿は賊の捕縛に失敗したのですね」

 

 クレアがカズマに辛らつな言葉を浴びせる。

 

「いや、完全な失敗とは言えないと思うんだけど。俺がいなかったら今頃アルダープのおっさんはお宝をきっと盗まれてたぜ? 」

 

 言い訳をするカズマ。

 

 城の最奥の謁見の間にて、貴族が集まる中カズマは玉座に腰かけたアイリスの前で義賊の捕縛について失敗したことを報告していた。

 

「なるほど。その義賊とやらはさぞかし強敵だったのでしょうね。なにせ魔王軍幹部を葬ってきたカズマ殿が捕縛できなかったほどの存在なのですから」

 

 クレアがカズマを小ばかにしたような言い方をすると、めぐみんが一瞬はなっている雰囲気を変えたがゆんゆんに手を握られてどうにか平静を保つ。

 

 そんな中、クレアに続いて複数の貴族がカズマに対して失望の目線を送ったり、口だけの男だったかなどささやきあっている。

 

 するとアイリス姫が立ち上がり。

 

「何にはともあれご苦労様でした。あなたは義賊の捕縛に失敗したのでなく義賊の盗みを防ぐことに成功したのです。そのことで責められる言われはありません!! 」

 

 アイリス姫のその言葉を聞いて感動したのか涙目になるカズマ。

 

「アイリス様がそうおっしゃるのでしたら……。仕方がありませんね。本来なら多くの貴族の前であれだけの大口をたたいておいて失敗したのですから何らかの罰があってもおかしくないのですが、寛大なアイリス様のお慈悲に感謝するのですね。……捕縛に失敗したようなあなたをこの城にこれ以上置いておく理由はない。即刻城から立ち去られよ!! 」

 

 苦々しい表情のクレアがそう言った後。今度は険しい表情をした。そして。

 

「さて、カズマ殿の件はこれくらいにして。今朝から行方をくらませたアルダープから昨晩から突如としていくつもの不正が発覚したわけだが……その不正に加担していたものがこの中にいる。ユニアゼロ=アヤメリス。貴様は心当たりがあるな」

 

「っ!! ……はい」

 

 貴族連中に紛れていたアヤメリス様が元気のない返事をする。

 

 バニルが言っていた通りの展開になったな。カズマに立ち去れと言った後、すぐにアヤメリス様へと話題が貴族連中の前で変わると言うのは見通し済みだ。これから俺は、バニルの筋書き通り動けばいい。

 

「その件ですがアルダープが真実を捻じ曲げる悪魔を使役しアヤメリス様には呪いをかけて操っていたのです。彼女に一切の罪はありません」

 

 俺はゆんゆんを除いたパーティメンバーが謁見の間から出て行こうとしている中、はっきりと貴族連中にも聞こえる声で言い切った。

 

「どういうことですかカガミリョウタ殿? 」

 

 怪訝な顔をするクレア。

 

「その悪魔にアルダープは地獄に連れていかれました。これが悪魔を使役するために使用されていた神器です。真実を捻じ曲げる力を持っている悪魔が実在していたかどうかは俺に嘘発見器を使ってもらえばわかることです。多くの不正が昨晩から発覚したのは、その悪魔との契約をアルダープが解除したことによって捻じ曲げられていた真実が元に戻った結果です」

 

 アルダープが地獄に連れていかれたということを聞いてざわつく貴族たち。突拍子もなさすぎるのだろう。さすがは、カズマ殿のパーティーメンバーだ。など言われているが気にしない。すぐに俺の言っていることが真実だとわかる。

 

「それではアヤメリスと共に尋問させてもらいますがよろしいですねカガミリョウタ殿」

 

 俺を値踏みするかのような視線を送るクレアに涼しい顔でどうぞと答えると、アクアがアヤメリス様の呪いを解いた張本人なのでアクアも証人として魔道具を使って尋問するように提案すると。さっそく俺とアクアとアヤメリス様は取調室に連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

「カガミリョウタ様。あなたにはなんとお礼をしたらいいか……本当にありがとうございます……」

 

 現在、昼の城門前で涙を流すアヤメリス様に俺はそんなことを言われていた。

 

 有識者による神器の調査と、尋問にバニルの書いた台本通りに俺が答えていくこと、アヤメリス様自身への尋問、そしてアクアの証言で、結果的にアヤメリス様は無事無罪となった。アルダープの不正はそれこそ処刑は免れないレベルのものだったためアルダープが襲われながらも見過ごした件については一切おとがめなしだった。

 

 これでアヤメリス様を救えた上、大切な家族であり仲間のダクネスに訪れる不幸も、ダクネスがひた隠しにしているらしい問題も解決したのだからよかった。

 

「必ずこのご恩は何としてもお返しします。ありがとうございました……」

 

「いえ、そんな。優しいあなたが無実の罪で処罰されるのが我慢ならなくてやったことですが……。見返りとかは決して求めていたわけではありませんし。

 

「そんなこと関係ありません!! 私はあなたに救われました。これは揺るぎようのない事実です。だからあなたの望む形のお返しを何としてもさせてください」

 

「分かりました。では俺や仲間が困っている時があったら助けていただけませんか? 」

 

「もちろんです!! どんな状況であろうとお助けします」

 

 こんなに感謝してもらえるとは素直にうれしい。

 

 俺とアヤメリス様は笑いあいながら両手で強く握手した。




 アルダープが原作よりも早く地獄行きになりました。その一方でアヤメリスは無事救われました。めでたしめでたしです。

 ちなみに今回アルダープに訪れた地獄に連れていかれるという報いで、ダスティネス家にお金を貸した側のアルダープがいなくなったことと、アルダープの不正が発覚すること。そして義理の息子のバルターが家を継ぐことになるためダスティネス家の借金問題は無かったことになります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。