【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!! 作:翳り裂く閃光
王城を出たのち、その城門前で。俺はこの1週間、バニルと結託して進めていた計画について仲間たちに説明した。
「なるほどなぁ……」
先ほどまでめぐみんやダクネスにアイリス姫から離れることで落ち込んでいたため慰められていたカズマがおもむろにつぶやいた。
「ゆんゆん以外のみんなに言うと作戦が成功しなかったんだ。とはいえ黙っていてごめんよみんな」
「私は構いませんよ、気にしません」
「まぁ俺も事情が事情だしアルダープにはいい印象が無かったから別にあのおっさんが地獄に連れていかれたのもざまぁみろとしか思わないけど、なんかモヤっとはするな」
「ありがとうめぐみん。すまないカズマ」
めぐみんにはお礼を、カズマには再度謝罪をする。
「くっ、討伐しても怒られない悪魔の公爵を滅せなかったのは屈辱だわ!! それと神殺しは女神の従者としての自覚が足りないわよ。今回の件はアヤメリス様のためだったとはいえ悪魔と結託し過ぎよ!! 」
「まぁまぁ、アクア。悪魔とも付き合い方次第だよ」
「あんた仮にもエリス教徒なのにそんなこと言ってていいの? 」
「エリス様を貶めてるわけじゃないから別にいいんじゃないかい? 」
アクアとはそんなやり取りをする中。俺はさっきから無言のダクネスが気になっていた。
「だ、ダクネスさん? 」
不思議にというか不安に思ったのかゆんゆんがダクネスに声をかける。
ダクネスはというと難しい顔をしている。
やがて。
「そうか。そのような事情があったのなら仕方がないな。アルダープが地獄に連れていかれるのを見過ごした件もお咎め無しならまぁ良しとしよう、カズマの様にすっきりとしない点はあるが、これで父が呪い殺されることを回避できたのだと考えれば良かったのだろうな」
「これでダクネスに幼いころから目をつけていた危険な男が消えたのですから良かったと思いますよダクネス」
「ありがとうめぐみん。そうだな、アルダープに対しては正直嫌悪感があったからな。このような形で様々な問題が片付くのは腑に落ちない点があるのは正直なところだがまぁ納得するとしよう」
「ごめんよダクネス。ダクネス的には納得しづらいよな。立場的に」
「ああ。だが、納得するしかないだろう。事後処理が大変だな……」
ダクネスは最後に何かを呟き、困り顔をした。
まぁ、何はともあれアヤメリス様が救われ、カズマ、めぐみん、ダクネスに不幸が訪れるのを回避(アクアは自力で悪魔の呪いはどうにかできる)出来たのでダクネスには悪いが綺麗に終わったと思うしかないだろう。
それから俺たちは1度別れて行動することになった。アクセルに戻っても良かったのだが近々王都が破壊神の眷族と思われるに強襲されることが確定しているため、それらと戦うためしばらくの間王都に滞在しようと俺とダクネスが提案したためだ。それと、アクアがいろんな人にお土産を買ったり観光したいと言ったからであもる。
結果、アクアとカズマはお土産をまずは買いに行き、めぐみんとダクネスは宿を取りに行き、俺とゆんゆんは暇なのでみんなと合流するまでデートすることになった。
「どこに行こうかゆんゆん? 」
「そうですねぇ……、夏も近いですし夏服を買いたいですね。服屋に行きませんか? 」
「いいよ、行こうか」
俺とゆんゆんは城門から服屋へと歩き出した。
「初めて王都に来た時もまずは服屋に行ったよね」
「そうでしたね。あの時も楽しかったです」
「あの時もってことは……」
「もちろん今も楽しいですよ? 」
ゆんゆんが笑顔を俺に向ける。かわいい。
「それにしてもアヤメリス様が罪に問われることが無くてよかったです。それにみんなにも実感は薄いですけど不幸が訪れなくて本当によかったぁ……」
「そうだね。この1週間、こことアクセルに行ったり来たりして、助手もやってもらって悪かったねゆんゆん。ありがとう。それとお疲れ様」
「いえいえ、忙しかったですけど楽しかったですよ。毎日行ったり来たりするのも、助手をするのも」
「それはよかった」
俺はゆんゆんに笑いかけた。
そうしているうちに俺たちは王都の商業区の1つにたどり着き、たくさんの服屋が並んでいるエリアを回り始めた。
そしていろんな店に入るとゆんゆんと一緒に服を選び始める。まずは俺の服を選んでもらっている。理由は言うまでもない。俺にセンスがないからだ。
「これとこれを着れば……、どうでしょう? 」
ゆんゆんが俺を鏡の前に立たせ、両手にそれぞれ保持したTシャツとジーンズを俺の身体の前に重ね合わせてみる。
「いい感じだと思う。この組み合わせも買うよ」
「はい!! 」
これで組み合わせ4つ目だ。そろそろゆんゆんの方に移るべきだろう。
「次はゆんゆんのを選びなよ」
「そうですね。リョウタさんのはこれくらいでいいですか? 」
「うん4セットもあれば十分だよ」
「分かりました。じゃあいろいろ選んでみるのでリョウタさんがいいと思った物や組み合わせで買いますね」
ゆんゆんがそう言って嬉々として店内を再び物色し始める。
「……俺の見立てだとどの服も組み合わせも全部OKにしてしまうと思うんだけど。まぁいっか。ゆんゆんが楽しそうだし」
しばらくして。
「あ、これなんかどうでしょう? 」
ゆんゆんが早速いいのを見つけたようだ。
「試着してみたら? 」
俺の提案にゆんゆんは笑顔で頷き、試着室に入っていった。やがて数分後。
「どうでしょう? 」
「かわいいし似合ってる」
ゆんゆんが新たな服に着替えて現れた。のだが。似合っているが着ている服の名称がよくわからないので形容しようがない。強いて言うなら肩が出ていて、ひらひらのスカートにサンダルを履いているとしか言えない。
「どういう服になるんだいゆんゆん? 」
というか、ゆんゆんに話を合わせられるように服の種類とかは覚えたほうがいいな。
「えっとですね、上からノースリーブ型のインナーとノースリーブ型のロングベスト、フレアスカートにサンダルですね」
「なるほど。サンダル以外はわからなかった。教えてくれてありがとう」
「はい!! ……この組み合わせは購入することにして……、他にも選んでみますね!! 」
「うん、いろんな服のゆんゆんを見せてくれ。あとどんな服の名前なのかも教えてほしい。憶えていくよ」
「わかりました!! 」
ゆんゆんは嬉しそうに他の服の組み合わせを探し始めた。
やがて1時間半ぐらいしただろうか。存分に服を選んだ俺たちは両手に買い物袋を抱えて王都を歩く。次に向かっているのは屋台だ。話し合った結果、あの時の様に……グウェンを手に入れた時の様に同じ串焼きの屋台に向かい、そして同じ公園に向かうことにした。
まずは串焼きだ。
「あの串焼きおいしかったよね。まさかまた食べることになるとは」
「そうですね」
串焼きの露店の行列に並びゆんゆんと話す。
「まだあの時はゆんゆんは露店で物を買うのは初めてだったんだよね、そう言えば」
「そうでしたね。あの時は緊張したなぁ……」
思い返すとおかしくなったのかゆんゆんがクスリと笑った。
「今はどう? 」
「全然大丈夫です。アクセルでも何度か露店で物を買ったり食べたりしましたからね」
「それはよかった」
「リョウタさんのおかげですよ。あなたがそばにいてくれるからこういうことにも慣れることができたんです。ありがとうございますね」
「こちらこそ。いつもありがとうゆんゆん」
そう言いあっているうちに、串焼きを買う順番が回ってきたので購入すると。それを持って近くの公園まで歩いた。
「つきましたね」
「そうだね」
俺たちは大量の荷物を抱えて歩くのは面倒と判断したので一度屋敷にテレポートで戻り荷物を置いてから再び王都に戻ってきた。そして公園にたどり着くと、あの時の様に噴水の前に備え付けられたベンチに腰掛けた。
「さて串焼き食べようか」
「はい、でも少し冷めちゃったのは残念ですね」
「あははは、そうだね」
俺とゆんゆんはそう言いながら少し冷めてしまった串焼きを頬張る。
「でもおいしいです」
「あそこの串焼きは絶品だね。王都に定期的に食べに来ようか? 一緒に」
「そうですね。あ、みんなも一緒に次は来ましょう」
「そうしよう」
やがて俺たちは串焼きを食べ終わりごみを片付けると、ベンチでゆっくりする。
「いい天気ですね」
「だね。暖かくていいな。昔は曇りの方が好きだったんだけどね」
「そうなんですか? 」
「なにせ陰キャだったから。明るいのより適度に暗い方が好みだったんだよ」
「いんきゃ? 」
ゆんゆんが日本特有の言葉に首をかしげる。
「陰気な性格の人間を指した言葉だよ。陰キャラクター。略して陰キャだ」
「なるほど。じゃあ私も紅魔族基準で考えると陰キャだったんでしょうね」
「……多分そうだね。今はそんなに陰な感じはしないけど」
「えへへ。成長しました」
「ゆんゆん偉い」
俺はゆんゆんの頭を撫でる。恥ずかしそうに身をすくめるが同時に嬉しそうにニコリとしているゆんゆん。かわいい。
「リョウタさんはどうですか? 太陽が出ている方が好きになったということは陰キャから脱却で来たってことですかね? 」
「どうだろうね。陰気な性格は治ってない気もするけど。ゆんゆんから見たらどう思う? 」
「私から見たらリョウタさんは太陽みたいですよ」
「そ、そっかー……、嬉しい」
俺は少し恥ずかしくなってゆんゆんから目をそらす。
それからしばらく無言の時間が流れた。するとゆんゆんはおもむろに。
「あのリョウタさん。実は聞いてほしいことがあるんです」
……なんだろう?
「どうしたんだい? 」
目元は柔らかいが真剣な表情をしているゆんゆん。どんなことを言い出すんだろう?
「実は私、リョウタさんに初めてここに来た時に告白しようとしたんです。いえ、正しくは告白寸前までしてたんですよ? 」
「え、マジで? 」
「はい。マジです」
全然気づかなかったんだけど。
「ごめん、そういう風なことをゆんゆんがしてくれようとした覚えがいまいちないんだけど」
「あの時のリョウタさんはそうですね……追い詰められてたみたいで『俺はどこだ? 』って言ってましたから記憶になくても無理ないと思います」
ああ、あのタイミングでゆんゆんは俺に告白しようとしてくれてたのか。そりゃ耳に入らず記憶に残ってないわけだ。
「ごめんねゆんゆん」
俺は申し訳なくなりゆんゆんに謝罪した。
「いいですよ気にしなくて。でもやっぱり辛かったですね」
「そっか、そうだよな」
「私、宿に戻った時に号泣したんですよ」
「本当にごめん」
「えへへ、いいですよ。少しからかい過ぎましたね。ごめんなさい」
今度はゆんゆんがいたずらっぽく笑って謝る。
「でもあの時、告白に失敗しててよかったです。きっとあの時告白していたらリョウタさんの心がバニルさんに壊される前に壊れてしまってたかもしれませんし」
言われてみればそうだ。
「確かにそうだね」
だけど。なんだろう、たとえそうなっていたとしても最終的になんとかなっていた気がする。
「どうしましたリョウタさん? 」
考えている俺が気になったのかゆんゆんが俺の顔を覗き込んでくる。
「いや、たとえあの時告白されてて、それで心が壊れたとしても俺とゆんゆんだったら結局それでもなるようになってたと思うんだ」
「リョウタさん……」
「結構恥ずかしいこと言うけど、ゆんゆんとは運命で結ばれてる気がするからね」
そう。こんな女神の如き美少女と今の関係があるのだと考えたらもはや運命がそうしてくれたとしか考えようがないのだ。
「ほ、本当に恥ずかしいですね……だけど嬉しいです。運命で結ばれてるからって言うのは」
「紅魔族的にも嬉しいポイントだよね。運命で結ばれてるとかって」
「そうですね。運命かぁ。えへへ」
ゆんゆんがはにかむ。その後。
「そういえば、リョウタさんはなんで私のこと好きになってくれたんですか? 」
そんなことを唐突に聞いてきた。
「いきなりどうしたんだい? 」
「いくら運命で結ばれたとしてもそこは気になりますよ」
なるほど。なら真っ先に言えることは1つだろう。
「かわいいところかな」
そう言ってみたのだが。ゆんゆんは少し不満げな表情で。
「もっと具体的なのが聞きたいです。かわいいだけでもうれしいですけど」
具体的にか……。
「難しいな。俺は出会ったころからゆんゆんの全部が好きになったから」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
恥ずかしそうに目を伏せるゆんゆん。そんなゆんゆんに今度は俺にも聞きたいことが浮かんできた。
「ゆんゆんは? 」
「え? 」
「ゆんゆんは俺のどこを好きになってくれたんだい? 」
ゆんゆんはしばし迷うかと思ったのだがそんなことなく俺をまっすぐ見つめると。
「えへへ、それはもちろんどんな時も寄り添おうとしてくれる優しいところですね」
そう答えた。さらに。
「大好きですよリョウタさん」
俺に大好きだと伝えてくれた。俺はうれしくなって。
「俺もだよ、大好きだゆんゆん」
そう言った。そして示し合わせたわけでもなく、自然と俺たちは固く手をつないだ。
その後、二人でのデートを終えてみんなと合流した後、王都を観光し、夜は宿屋に併設された居酒屋で俺たちは飲み食いした。
デート回です。半分くらいはリョウタとゆんゆんがイチャイチャするだけのお話となりました。私はファッションに無頓着な人間なのでゆんゆんの夏服は調べました。……興味の無いものを知るのはなかなか大変ですね。