【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

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090 魔王軍殲滅

 早朝。ゆんゆんと同じベッドで寝ていると、突然王都が騒がしくなった。その理由は。

 

「リョウタさん。魔王軍襲来警報ですよ!! もしかして破壊神の眷族も一緒に行動しているかもしれません!! 」

 

 魔王軍の襲来だ。ゆんゆんの言うように破壊神の眷族が一緒の可能性がある。上体を起こしたゆんゆん。俺も上体を起こすと。

 

「すぐに向かうとしようか!! 」

 

 そう言った後、二人で寝間着から着替え、完全装備した姿に早変わりする。2人で部屋から宿屋の廊下に出るとそこには重武装のみんながいた。それはいいことなのだが、気になる点が1つ。

 

「お前ら王都の危機だ!! なんとしても王都を護るぞ!! 」

 

 カズマがいつになく乗り気なことだ。例のパワードスーツは着ていないのだが(対眷族用にアルダープの屋敷にいる頃から持ってきていた)、オートマチックのスナイパーライフルにアサルトライフル2丁、リボルバーガンにちゅんちゅん丸という殺意に満ち溢れた重武装なのだ。

 

「何でカズマさんったらそんなに乗り気なの? 」

 

「当たり前だろ!! ここで功績上げれば城に舞い戻れるかもしれないからだ!! 」

 

「そんなことだろうと思いましたよ……」

 

 カズマのアクアの疑問への即答にめぐみんが呆れる。

 

「だったらパワードスーツを着ておいた方がいいんじゃないかカズマ」

 

「あれ着てたら俺が活躍してるように見えないだろ」

 

「なるほど。それは確かにそうだが……」

 

 ダクネスがカズマの発言に困り顔を浮かべる。

 

「カズマ、死ぬなよ? 」

 

「死ぬかよ。生きてアイリスのもとに戻るんだ!! 」

 

 俺の言葉に対し、カズマは若干フラグっぽいことを口にする。

 

 まぁ何事もモチベーションが大切だ。本人が着たがらないのに無理やり着せて戦わせればかえってポテンシャルが下がる可能性がある。……眷族が出てきた場合は問答無用でここに戻ってきてパワードスーツを着てもらうが。

 

「じゃあ行くぞお前ら!! 王都防衛戦だぁぁぁ!! 」

 

 

 

 

 

 城の前には整列した騎士団と多数の冒険者で溢れかえっていた。冒険者の中には黒髪黒目の者もいることからおそらく同郷の者だろう。中にはミツルギもいる。

 

 王都のギルド職員から説明があった。冒険者は騎士団とは違って集団戦の訓練は受けていないためいつも通り戦ってほしいというものだった。そして指定された場所に集まると冒険者カードの提示を求められたので提示する。そんな中カズマはというと。

 

「サトウカズマさんですか……? その、レベル制限を設けていましてレベル30以下の冒険者の方には前線での戦いではなく王都の警備を担当してもらうことになっているのですが……」

 

「構わん。カズマ殿は数多の魔王軍幹部と渡り合ってきた実力者だ。前線に参加することを私が許可しよう」

 

 王都のギルド職員に参加を断られかけていたところにクレアから戦闘への参加を特例で許可されていた。

 

 多くの貴族たちと同じようにクレアも騎士団や冒険者を激励するために城の前に出てきているようだ。アイリス姫も城のバルコニーからこちらをうかがっている。いや、カズマをうかがっていた。その目は期待に満ちている。多くの貴族たちも魔王軍幹部を討伐してきたパーティーのリーダーであるカズマに同じように期待を込めた視線を送っていた。いやカズマだけではない。貴族たちに関しては俺たちのパーティー全員に対しそのような視線を向けていた。アヤメリス様もその中に並び小さく手を俺に振っている。

 

「よしお前ら、俺たちの力を今こそ発揮するぞ!! 」

 

 カズマが俺たちに声をかける。もともと微妙にやる気の無さげだったアクアは微妙そうな顔を浮かべ「嫌な予感がするわ」と一言。めぐみんは「我が爆裂魔法の力見せてあげましょう!! 」と意気込み、ダクネスは真剣な表情でそれに頷き、ゆんゆんは「はい!!」と気合のこもった返事をし、俺はサムズアップした。このサムズアップはカズマに向けたものでもあり、こっちに手を振ってくれているアヤメリス様への返事でもある。

 

「では皆さん出撃をお願いします!! 」

 

 ギルド職員の一声で、俺たちは王都のすぐ外の平原に向けて出発した。

 

 

 

 

 

「王城からだいぶ離れてるから神殺しの剣の全力は出せないか……」

 

 俺は魔王軍の構成に悪魔になり切れなかった悪魔もどきである鬼たちの存在によって神殺しの剣が若干稼働しているのを確認。それにより破壊神の眷族はいない、もしくはまだ参加していないと判断すると、ゆんゆんと共に大群の中に飛び込んだ。

 

「一気に蹴散らすぞゆんゆん!! 」

 

「はい!! 」

 

 サーチで敵の位置や数を把握しつつ。俺は地面を疾走しながら。ゆんゆんはホバー移動しながらライトオブセイバーをそれぞれ神殺しの剣とソードメイス。ハルバードとマジックワンドから生成し、一気に振り回して大量のゴブリンや鬼、コボルトを切り裂く。その後に続く他の冒険者たち。

 

「俺たちが一番槍みたいだね」

 

「そうみたいですね。はっ!! 」

 

 俺とゆんゆんはそんな会話をしながらライトオブセイバーの生成を止めると、俺は二刀流で、ゆんゆんはハルバードで、各々ゴブリンエリートという長身で細身の手ごわいゴブリンと近接戦闘を繰り広げる。

 

 ゴブリンエリートがとげ付きの棍棒を横なぎに振るう。それを俺はソードメイスで叩いて弾き、その隙に神殺しの剣でゴブリンエリートを一刺しする。

 

「こんな数相手にするのは初めてだ!! 」

 

「言われてみればそうですね!! だけどリョウタさんと一緒なら!! 」

 

「うん、ゆんゆんがいれば!! 」

 

 ゴブリンエリートの攻撃をグウェンで飛行することでことごとく回避し急降下斬撃を加えたゆんゆんとそんなやり取りをする。

 

「「こんなの物の数じゃない!! 」」

 

 俺はディナイアルセイバーを発動し接近してきた恰幅の良い巨大なトロールを縦一文字に一刀両断し、さらに魔王軍の中心に突撃、ソードメイス側から発生させたルーンオブセイバーで数多の敵を蒸発させる。すると、もう1発ルーンオブセイバーが後方から伸びた。それをやったのはミツルギだ。

 

「ミツルギ!! やるな!! 」

 

「君もねカガミリョウタ!! さすがは破壊神を討伐した者だね!! 」

 

「もう1回やることになるかもしれないんだけどな!! 」

 

 俺とミツルギは迫りくる大量のトロールをことごとく一方的に切り裂き粉砕していく。ゆんゆんは空から他の冒険者の援護に回り、ライトニングストライクやインフェルノを掃射し多数のモンスターを殲滅していく。

 

「フェイントオブバーナー!! 」

 

 俺は空から急降下して強襲してきたオーガの攻撃をバックステップで回避すると同時に、フェイントオブバーナーをオーガの着地点に設置し高圧の炎の噴射でもう一度空へと炙りながら吹き飛ばす。

 

「僕も負けてられないね!! 」

 

 ミツルギが新たにルーンオブセイバーを今度は斬撃波という形で発射しておそらく1つの部隊だったコボルトをたち消滅させる。

 

「エアスライサー!! 」

 

 俺は魔方陣を複数展開し風の誘導斬撃弾を連射。俺や後方の冒険者たち取り囲もうとしていたゴブリンと鬼の混成部隊を切り裂きまくる。

 

「トルネード!! 」

 

 しかしさらに大量にわいてくる魔王軍の群れ。それにゆんゆんがトルネードを複数個発動し、群れをまとめて空高く舞い上げた。あとはどこかに落下して死ぬだろう。

 

 しかし、重量故に舞い上がることのなかったトロールたちがゆんゆんへと迫っていく。

 

 俺はゆんゆんの横にゴブリンを駆逐しながら並ぶと、ゆんゆんに目配せする。それだけでゆんゆんは俺からの合体魔法を使おうという提案なのを読み取ってくれる。

 

「リョウタさんここはサンダーハリケーンですね!! 」

 

「うん、そう言うこと!! いくよゆんゆん!! 」

 

「はい!! 」

 

 俺とゆんゆんはそれぞれ俺は神殺しの剣を、ゆんゆんはマジックワンドを突き出した状態で。2つの先端から魔方陣をそれぞれ展開

 

「「サンダーハリケーン!! 」」

 

 俺がライトニングストライクを、ゆんゆんがトルネードを発動し、魔方陣が合体。雷を纏った極太の竜巻がまっすぐ照射される。その瞬間、それに巻き込まれたモンスターたちが電撃で身体を粉砕されながら疾風に吹き飛ばされる。

 

「サンダーハリケーンで道が開けましたね!! 」

 

「このまま突入して内側からぶっ潰そう!! 」

 

「そうしましょう!! 」

 

「僕も続くよ!! 」

 

『俺たちもあの3人に続けぇぇぇぇ!!!! 』

 

 俺とゆんゆんはサンダーハリケーンによってできた大量の魔王軍がまっすぐ蹂躙されてできた道を突き進んでいく。その後ろに続くミツルギに数多の冒険者!!

 

「よおし、いくぞみんなぁぁぁぁ!!!!!!!! 」

 

 俺はテンションが上がり多くの冒険者に呼びかけた。するとそれに冒険者たちは呼応し。

 

『殲滅だぁぁぁぁ!!!!!!!! 』

 

 高らかに叫んだ!!

 

 それからというもの、俺、ゆんゆん、ミツルギの3人を中心に冒険者組は魔王軍相手に無双する。俺たちが通り過ぎたところはすべて破壊の限りが尽くされ魔王軍はことごとく死滅した。

 

 相手は数が頼りの軍勢。数々の死線を潜り抜けてきた俺とゆんゆんの敵ではなかった。

 

 すると、魔王軍の指揮官と思わしき人型のモンスターが高らかに捨て台詞を吐いて撤退を始めた。だが、それを許す俺たちではない。撤退していく魔王軍に後方から大火力魔法をバンバン打ちまくり数を減らしていき最後には。

 

「エクスプロージョン!! 」

 

 指揮官を中心にめぐみんの爆裂魔法が爆裂した。それによって魔王軍の数が撤退時にすでに4割死滅していたのが7割に増加した。

 

 こうして魔王軍との今回の戦いは俺たちの圧勝で終わった。結局最後まで破壊神の眷族どもの襲撃は無かった。

 

 

 

 戦いの後、まだ朝と呼べる時間帯、王城に凱旋した俺たちのパーティーとミツルギや一部転生者は、ギルド職員からの冒険者カードによる討伐数確認作業が終わるや否や、もてはやされていた。

 

 まずアクアに関しては死傷者をヒールとリザレクションでことごとく治療し復活させたことで女神として1度死んだ者たちからは畏敬の念を込めて接されていた。

 

 めぐみんは今の今まで、腹の立つ捨て台詞を残して撤退していた指揮官もろとも撤退していく魔王軍の実に半数を葬ったことで大魔導士として担ぎ上げられていた。

 

 ダクネスはデコイで無数の敵のヘイトを集め騎士団を護ったらしく、多くの騎士たちから感謝と尊敬の言葉をもらっている。

 

 俺とゆんゆんは「破壊神を葬った勇者!! 」、「さすがは紅魔族だ!! 」という具合で一緒に戦った冒険者たちから称賛されまくった。

 

 俺とゆんゆんが言われているようなことをミツルギや他の転生者も言われ持ち上げられている。

 

 そんな中、カズマはというと……。

 

 とてもしょげていた。

 

 なんとコボルトに1度殺されたらしい。アサルトライフルでそれなりに無双できたらしいのだが深追いしすぎてコボルトたちに袋叩きにあったそうだ。その後は遺体を他のモンスターに連れ去られないように重しを付けられ戦場に放置されていたらしい(死んでいる間はとどめの爆裂魔法を撃つまでめぐみんがつきっきりだったそうだ)。

 

「皆ご苦労だった!! 諸君らのおかげで今日も王都は守られた。この国を代表して深く感謝するとアイリス様は仰せだ。今回の報酬は期待していいぞ!! さらに、今回の諸君の活躍をねぎらうための宴の準備を王城にて行っている。宴は夕刻にて始まる。それまでは戦いの疲れをゆっくり癒すと良い。なお、今回の戦いで特に功績を上げた者には特別報酬も用意してある。以上だ!! 」

 

 クレアが代表して騎士団と冒険者各位に感謝の言葉を伝える。

 

「終わったな。結局眷族は現れなかったねゆんゆん」

 

「そうですね。でも出てたら間違いなく復活できない死者が出ていたでしょうからこれで良かったと思います」

 

「だね」

 

 俺とゆんゆんは冒険者たちからの熱い称賛が落ち着いたころにそんなことを言い合っていた。すると同じく称賛が落ち着き自由になったミツルギがやってきて。

 

「カガミリョウタにゆんゆんさん。素晴らしい戦いぶりだったね」

 

「ミツルギもな。すごかったぞお前のルーンオブセイバー」

 

「えっと、大活躍でしたね!! 」

 

「ありがとう。ところでふと思ったんだけど2人のレベルはいったいいくつなんだい? 」

 

「俺は今回の戦いで64だ」

 

「私は今回の戦いで48になりました」

 

「す、すさまじいねレベルの方も」

 

「ちなみにミツルギは? 」

 

「僕はレベル53だよ、君たちに負けないようにもっと精進するよ」

 

「がんばれミツルギ」

 

「がんばってください」

 

 ミツルギとは最初こそあれだったが2度も死線を共に潜り抜けたと考えると親近感がわいてくるな。

 

「ところでサトウカズマはなんであんなに落ち込んでいるんだい? 」

 

「突っ込まないで上げてくれ」

 

「今はそっとしてあげてください」

 

 俺とゆんゆんはミツルギに苦笑を向けた。

 

 

 

 

sideスパリュード

 

「また魔王軍の指揮官が消えてしまいましたわね兄さん」

 

 私とテンロンは焦土と化した王都の平原の上空をホバリングしながら話していた。

 

「やはり幹部クラスでないと計画性が無さすぎますね。今回の襲撃は私たちへの相談なしに行われたせいで……今回は魂の収集ができずに終わってしまったのも残念でした。まぁこれは信頼関係をうまく築いていけなかった我々側にも問題がありますが」

 

 私はテンロンにそのように言う。本当に残念でたまらない。もし共同前線を張れていれば魂の収集も魔王軍側の犠牲者からも可能なため効率よく行えた上、王城に対してはアイリス姫がいるものの傀儡化した紅魔族と一緒に攻め込めば要石とそのパズルのピースの奪取をできていたことだろう。

 

「しかしこれは好機ですね。犠牲を無駄にせずに最大限生かしましょう」

 

「どういうことかしら兄さん? 」

 

「傀儡の1体からすでにテレパシーで今日は王城で宴が開かれることが伝えられているのはあなたもわかるでしょうテンロン」

 

「ええわかりますわ」

 

 今回はその隙をつく。

 

「今夜王城を強襲しましょう。そして王城内の要石を奪取します。冒険者はここぞとばかりに酒を飲み酔いつぶれて戦力外化するのは明白。幸いアイリス姫相手なら私たちのどちらか1人で抑え込めます。ほかの有象無象は傀儡化した紅魔族に任せればどうにでもなります」

 

「だけど兄さん。有象無象とは呼べなさそうな存在がいるけれどそれはどうするのでして? 」

 

 テンロンが言いたいのは今回の戦いに参加していた神殺しの青年とそのパーティー。そしてミツルギキョウヤのことだろう。

 

「そのための傀儡化した紅魔族です。彼らは人を殺すのには慣れていません。人間相手では彼らは多少なりとも判断を鈍らせますからね。それにこれ以上時間を長引かせればこの国や周辺諸国でこつこつ人々を殺して得た魂の結晶体たちが限界を迎えて崩壊してしまいます。せっかく残機3つ分に還元できるのにそうなってはもったいないですから」

 

 我々が傀儡たちと共に残機をたくさん集めても。デストラクター様を復活させるには残念ながらあのデストラクター様の「力」が伴わないといけないため、どうしても力を封じている要石が必要なのだ。

 

「それに傀儡化した紅魔族への洗脳がどんどん弱まってきてしまっていますからここで投入しなければせっかくデストラクター様にたまわった戦力が無駄になってしまいます」

 

 紅魔族は、傀儡化した時点で魂は壊れてしまっている。だから洗脳が解けるとただの廃人になってしまう。それももったいない。

 

「我々兄妹でかかればどうにかなりますよ」

 

「そうですわね兄さん……」

 

 テンロンが微笑んだ。




 無双され、殲滅される魔王軍たちです。書いているときにあまりにも一方的で少し可哀そうになりました。カズマさんは見栄を張ってパワードスーツを着なかったばかりに原作通りの道を歩みました。まぁ原作よりもアサルトライフルなどの銃火器で武装しているので活躍はしているはずですが。

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