なおも緊急アナウンスが流れ続ける。2人の賊は相当の手練れらしく多くの城内の兵士たちが無力化されているようだ。
「くっ……なんということだ!! 」
俺にゆんゆんにアヤメリス様のそばに、たまたまいたクレアが頭を抱える。
「クレア殿!! 賊が最上階を目指しているのだとしたらアイリス様が危ない!! 我々も捕縛を手伝おう!! 」
ダクネスがクレアにそう進言する。アイリス姫は少し前に最上階のお部屋に戻られている。
ダクネスの後ろにはめぐみんと珍しく酔いつぶれていないアクアがいた。
「俺たちも行こうかゆんゆん」
「はい、行きましょう!! 」
俺とゆんゆんも仲間たちのそばに行く。しかしただの賊で良かった。幸い破壊神の眷族たちでは無い様だ。
俺がひそかに安堵している中、ミツルギもやってきて。
「僕も手伝います。アイリス様をお護りしないと」
そう言ってクレアのそばに立つ。
「皆さん……ありがとうございます!! それでは、今すぐ最上階に行きましょう。冒険者のみなも手伝ってほ……し、い」
クレアは振り返って冒険者各位に言葉を投げかけていたのだが、その途中で小声になってしまった。理由は明白だ。今の時間帯に残っている冒険者は全員酔いつぶれているからだ。
「くっ……。まあ、それでも精鋭の皆さんが手伝ってくれるのですからたかだか賊2人。恐れることなどありませんね。レイン!! 最上階にテレポートを!! 」
「はいクレア様」
いつの間にか俺たちのそばに来ていたレインさんがテレポートの詠唱を開始する。
「あの、私も手伝います。魔法は使えますから多少は戦力になると思うんです」
アヤメリス様がクレアにそう言って近づいた。
「アヤメリス……。よしわかった同行してくれ。頼むぞ」
「はい!! 」
意外だ。アヤメリス様、魔法が使えたのか。
「詠唱完了しました。では合計9人をテレポートします。テレポート!! 」
レインさんの指輪がいくつか輝く。合計9人ということは本来テレポートの魔法が4人までなのを考えると指輪の力でブーストしているのだろう。視界がぐにゃりと曲がった後、最上階と思われる部屋に俺たちは一瞬でたどり着く。晩餐会用の部屋とはまた違った趣の豪華さを秘めた部屋だ。
その部屋には貴族たちが多数いて右往左往していた。兵士も多数いる。
「うろたえるな!! 精鋭の冒険者たちが賊をここで食い止めてくれる。じっとしていろ!! 兵士は貴族に一人ずつ付いて守れ 」
クレアが多数の貴族や兵士に声をかける。この部屋でじっとしていろと言うことは、もう逃げ場がないのだろう。
「この奥が王族専用の部屋ですみなさん。奥に行くためにはどうしてもこの部屋を通らなければなりません」
レインさんがそう説明してくれる。
「賊はアイリス様のところを目指していると仮定すれば必ずこの部屋を通るしかない。なんとしてもここで食い止めアイリス様をお守りするのだ!! 」
クレアが兵士たちに声をかける。
そんな中俺は。
「フォーメーションを組もう。ミツルギと俺はこの部屋で兵士の人と一緒に賊を食い止める。ゆんゆん、アクア、めぐみん、ダクネスは最終防衛ラインとなってアイリス様のいる部屋にいってくれ」
「最終防衛ライン!! いい響きです!! 」
めぐみんがテンションを上げる中、俺の指示は続く。カズマの真似事だ。
「アクアはこの場の俺以外の戦闘要員全員に支援魔法をかけてくれ」
「分かったわ!! パワード、ブレッシング、――――、――――、……ヴァーサタイル・エンターテイナー!! 」
超巨大な魔方陣が部屋全体に広がり、俺を除いた戦闘要員たちに光がまとわりつき、いくつもの支援魔法がかかる。兵士たちから歓声が上がる。ミツルギも「アクア様、ありがとうございます」と言って頭を下げている。
そんな中1個気になることが。
「……アクア。ヴァーサタイル・エンターテイナーって? 」
「ああ、それはね、芸達者になれる魔法よ」
「使いどころなくないかい、今の状況で」
「おまけでかけてあげたのよ。ありがたく思ってちょうだい!! 」
別に邪魔になる魔法をみんながかけられたわけじゃないし良しとしよう。
「ミツルギはどうだ? 」
「君の指示に従うよカガミリョウタ!! 」
「OKだ!! じゃあ4人はアイリス姫の方へ。いいですかシンフォニア卿? 」
俺はクレアに確認をとる。クレアは「はい……!! 」と言って頷いた。
「リョウタさん頑張ってください」
「ありがとうゆんゆん。もし突破されたときはアイリス姫を頼むよ」
「任せてください!! 」
「ではここは任せるぞリョウタ」
「任されたよダクネス」
「最終防衛ライン、やり遂げて見せましょう!! 」
「この私にどんと任せなさい!! 」
愛する人と仲間たちがアイリス姫の部屋に入っていく。
それを見届けた後。俺は部屋中にクリエイターの魔法でトラップを仕掛けていく(殺傷力の高そうなフェイントオブバーナーやトラップオブブラストは仕掛けていない)。
やがて、部屋の賊が入ってくるであろう方の扉の前に立つ俺とミツルギ。そして俺たちを先頭にして貴族の護衛に裂かれていない兵士たちが後ろにハルバードを構えて整列しその中心にはクレアにレインさん、アヤメリス様がいる。ちなみに貴族は部屋の隅の方で小さくなって震えている。まぁ戦う力が無いのだからそうなる気持ちはわからんでもない。
「できればここにたどり着く前に捕縛されてほしいけど……どうなるかな? 」
「ミツルギ、フラグになりそうなことを言わないでくれ。いや分かるけどね。ここに来る前に捕縛されてほしいって気持ちは」
俺とミツルギが身構える。今回はあくまで捕縛なので徒手空拳だ。相手の出方次第だが。
緊張の時間が流れていく中。
「ワイヤートラップ、ワイヤートラップ、ワイヤートラップ!! これでしばらくは誰も通れないね」
扉の向こうは階段だ。そして、その階段の方からそのような声が聞こえてきた。その後。
「じゃあお頭、開けますぜ」
そんな一言と共に大きく。扉が開かれる。
俺とミツルギは身構える。
後方の騎士たちもハルバードの穂先を前方にまっすぐになるように構え直した。
扉の向こうから現れたのは。
バニルのような仮面をつけたカズマくらいの身長の男と、エリス様、否。クリスのような銀髪で口元を黒い布で覆っている中性的な少年の2人組だった。
「まさか自らの手で退路を断つとはな。愚かな」
「ここから先へは一歩も通しません」
「たまには役に立って見せます」
後方のクレアにレインさんにアヤメリス様が身構える雰囲気が伝わってきた。
ミツルギが賊に問いかける。
「もしかして噂の義賊たちかな君たちは? 目的は何だい? どうしてこんなことをしているんだ!! 」
賊2人は何も答えない。ただ確固たる意志を持っていることは仮面の男の口元と、銀髪の少年の目つきから伝わってきた。
「噂の義賊ならなんで最上階を目指した? いったいどういうつもりだ? 」
俺は無駄だとわかっていても問いかけてみるが賊2人はやはり無言だ。
「行くよカガミリョウタ!! 彼らを捕縛する!! 」
「ああわかってる、行くぞミツルギ!! 俺は銀髪の方をやるからミツルギは仮面の方を!! 」
「了解だよ!! 」
俺とミツルギは同時に賊へと突撃する。だが。
「ごはぁっ!? 」
何とミツルギが一瞬のうちに無力化された。ミツルギは口内に流し込まれたクリエイトウォーターをフリーズで凍結させられて窒息寸前になり地面に転がされもがいていた。
なぜこうなったか。突撃中に横目で見ていた限りでは、まず、ミツルギが脅しで剣を抜こうとした瞬間に剣を抜けないようにツバと鞘をフリーズで凍結させられたのだ。もちろんソードマスターは怪力のためそんなもの刹那の時間稼ぎにしかならないのだが、そのわずかなスキに仮面の男はミツルギに肉薄しさっきの冷凍コンボを叩き込み、足払いでミツルギを転がしたのだ。
……なんだこいつは!?
「足を止めてくれてありがとう。拘束させてもらうからね!! 」
どこかで聞いたことのあるような声質の銀髪の少年がそう言って俺にバインドをかけた。俺は抵抗する暇なく一瞬でワイヤーにぐるぐる巻きにされた。
くそ、仮面の男の動きに驚愕していて隙をつかれた!!
「ミツルギ殿!? カガミ殿!? 」
クレアの悲鳴に近い声が響く。
「悪いな。そこを退いてもらう!! 」
仮面の男がそう言って銀髪の少年と共にアイリス姫がいる部屋へと歩んでいく。兵士たちは一瞬で名の売れている俺たちが圧倒されたのを見て完全に怖気ついている。
「ら、ライトニング!! 」
「ライトショット……!! 」
焦った声のアヤメリス様と冷静なレインさんが指輪を介して魔法を発動するが。
「ソゲキ……」
仮面の男が弓を一瞬のうちに取り出し、魔法が発射される前に矢を同時に2本つがえて射出。2人の、魔法を放とうとしていた指輪を粉砕した。
「「ひっ」」
アヤメリス様とレインさんが短く悲鳴を上げて後ずさる。
「なんなんだ一体こいつらは? 特に仮面の方。どうしてそれほどの手練れだと言うのに盗賊なんぞをやっている!? 」
クレアが嘆きながら剣を振りかぶり、仮面の男に驀進した。
俺もそのタイミングで錬金術を発動しロープを砂に変換。自由を取り戻すと、神殺しの剣を引き抜き一対のウイングを展開(王城の中庭に置かれている要石のおかげ)。後方から仮面の男にとびかかる。
しかし仮面の男は、敵感知スキルか何かで俺の存在を感知したのかクレアの攻撃をまず回避し、それと同時に砂粒をクレアに浴びせ目つぶし。視界を奪われたクレアの後ろに回り込み、クレアを盾にした。
「くっ姑息な!! 」
俺がとびかかるのをやめて足を止めると今度は銀髪の少年の方が「スキルバインド」と叫んだ。その結果俺の周囲に紫色の2つのリングがまとわりつき消えた。
スキルバインド。確かスキルを封印されるバインドだ。一応クリエイター系列の仕掛け終わった魔法に関しては関係ないと聞いているがそれにしたって一方的にやられ過ぎている。
「くそ!! 」
だがこっちには神殺しの剣由来の技がある。
しかし、あることに気づいた、ここでは使えない、あれは強力なのでこんな閉所で使うには危険すぎるのだ。
俺がどうするべきかためらっていると、突然クレアが仮面の男に首根っこをつかまれると数秒後に意識を失い倒れた。
「クレア様!? 」
「ど、どうすればいいんだ!? 」
賊の華麗すぎる活躍ぶりに賊から距離をとって戦意を喪失しかけている兵士たち。
「さぁ、俺たちが用があるのはこの先だ。退いてもらうぞ」
仮面の男がそう言って、銀髪の少年と共に歩むと、どんどん兵士たちが後ずさり、道を開けてしまう。貴族たちは悲鳴を上げている。
腑抜けどもが!!
だがまだ手はある。
「フェイントオブインパクト!! 」
俺が叫んだ瞬間。仮面と銀髪の進行方向状に仕掛けておいたトラップが発動した。
しかし。
「「あたらない!! 」」
なんと罠発見スキルを使ったのかあらかじめ気づいていたらしく、フェイントオブインパクトをバックステップで回避したのだ。
「これもダメか!! 」
だが罠が気付かれているからと言って使えないわけじゃない。気づいているということは動きを制限出来ていてその分予測も立てられるということだ。まだ勝機はある。
それに最悪殺してしまったとしてもアクアのリザレクションに頼ればいい。
思えばこれが人生初の人殺しになるわけか。
「やってやる!! やって見せる!! 」
俺は覚悟を決めた。神殺しの剣だけではなくソードメイスも引き抜いて左手に保持する。
「アヤメリス様!! レインさん!! 魔法でミツルギの口をふさいでいる氷を除去してください。こいつら2人の相手は俺がします!! 」
「わ、わかりましたリョウタ様」
「任せてください!! 」
レインさんにアヤメリス様がミツルギの方に駆け寄る中。
俺はまず仮面の男に突撃した。
「ウインドブレス!! 」
仮面の男はウインドブレスで俺を攻撃してくる。その中に砂粒が混じっていることから目つぶしに放ったのだと予測できる。俺はソードメイスでウインドブレスを切り払うと神殺しの剣の切っ先を仮面の男に向けて突き出した。仮面の男は次はバインドを放ちつつ神殺しの剣の刺突から回避する。
俺はというと、バインドで伸びてきたロープをソードメイスに巻き付けて防ぎ、眼前に迫っていた隣の部屋の扉を蹴って、方向転換する。
そして仮面の男に向き直ったのだが、いつの間にか仮面の男は消えていた。
「どうなってんだ!? 」
まさか潜伏スキルか? だとすればこのあたりで隠れられそうなものなんて机の下ぐらいだな!!
「2対1なのを忘れちゃだめだよ!! 」
銀髪の少年がバインドを射出してくる。
「あくまでこっちを傷つけない気か!! お前たちは!! だが!! 」
こっちは全力だぞ!!
俺は先に目で認識できている銀髪の少年に向けてブーメランの如く回転させながらソードメイスを投擲。
ソードメイスはいとも簡単に銀髪の少年に回避された。しかし。
「フェイントオブインパクト!! 」
銀髪の少年の後方の魔方陣を起動、衝撃波を発生させてソードメイスを弾き、銀髪の少年の方に後ろから強襲させる。
「いだっ!? 」
弾いたソードメイスが銀髪の少年の腰に命中する。しかしもともと破壊力を抑えめにしていたフェイントオブインパクトなので、ソードメイスの威力もそこまで出なかったようだ。銀髪の少年は再度立ち上がった。そして、ワイヤーを使ってウィップフェザーを発動。俺に風を叩きつけてきたが、神殺しの剣で身体能力を強化されている俺の前には無力だ。
「効かないぞ!! 」
俺はそのまま銀髪の少年にウイングの力で高速接近していくが、突如として制御ができなくなった。
「リョウタ様!? 」
アヤメリス様の悲鳴がする。
「なんで!? 」
俺はそんなことを言いながら壁に激突した。
痛い!!
「どうなって……そう言うことか」
俺は右腕が軽くなっているのに気づいてすべてを察した。神殺しの剣を奪われたのだ。スティールによって。
仮面の男が神殺しの剣を右腕に握っていた。
「これで、君は大人しくしてくれるよね」
「悪いがお前は厳重に拘束させてもらうぞ」
普通逆だろ拘束される側って……。
そんなことを思いながら仮面の男と銀髪の少年に、俺は全身打撲のダメージで動けないでいる間に接近されてバインドを何重にもかけられた。
そして、アイリス姫がいる部屋へと賊2人が駆け出していく。
その寸前。
「悪い。事情は後で携帯に送る」
確かに小声で俺に仮面の男はそう言ってきた。
…………。
まさか、まさかっ!?
携帯の存在を知っていて、あんなにも頭が回り、姑息な戦い方ができる奴なんて1人しか該当者がいない。
仮面の男はカズマか!?
じゃあまさか銀髪の方は声からしてクリス、というかエリス様か!?
俺は転がされた状態でスキルバインドの効果も消えていないので何もできずにただ考えを巡らせていた。
2人が王城を強襲してくる理由がわからない。まさかカズマが自分の力を知らしめるためにやったわけじゃあるまいし……。いや待てよ。アイリス姫はそう言えば神器を持っている。まさかあれを回収するために強襲をかけてきたのか?
そんな予測を立てているうちに。
「ふーいん!! 」
「くそったれがぁぁぁ」
アクアの大声とカズマの叫び声が聞こえてきた。
結局最終防衛ラインは突破されてしまった。
そして。
「ダクネス。君もあの2人の正体に気づいたのかい? 」
「ああ。あれはどう考えてもカズマとクリスだった。間違いない」
賊2人が城のプールに飛び降りて逃走ののち1時間後。俺とダクネスはアイリス姫がネックレスを強奪された中、現場の隅にてひそひそと話していた。
なぜダクネスが2人の正体を俺と同じように気付いているのかわかったのは明らかにダクネスの挙動がおかしかったからだ。
「一応カズマから後で事情は携帯に送るって言ってたけどなんだろうな」
「何にせよ事情次第ではあの2人を裁かねばならなくなるぞ……」
「一応ダクネスも理由は考慮してあげるんだね」
「なにせ予測がつかないからな。アイリス様のネックレスと指輪を奪っていったことの」
それにしても。
「落ち着きなさいめぐみん!! 」
「なぜ逆にあなたは落ち着いていられるのですかゆんゆん!! あの盗賊はわかっています!! あんなカッコいい仮面をつけて、たった2人で王城に殴り込みをかけて、だれ1人殺すことなくお宝を奪っていったのですよ!? かっこよすぎますよ!! 」
めぐみんは正体に気づいていないようだが、盗賊たちの活躍に心奪われたらしい。杖をぶんぶん振り回して喜びを表し、それをゆんゆんに注意されている。
アクアはというと。復活したクレアとレインさんにあの奪われたものが神器であり何やら危険なものだったなどと説明を始めている。
体を入れ替えるだけの神器がそんなに危険だろうか?
すると。俺の携帯にメールが入った。携帯がバイブレートする。
「見てみるか」
「私にも見せてくれ」
メールにはこうあった。
さっき奪った入れ替わり能力を持った神器の首飾りは、とある貴族を経由して第一王子ジャティスに贈られたものであること。アイリス姫が代理で身に着けていたこと。入れ替わった状態でどちらかが死ぬと、そのままになってしまうため使いようによっては永遠の命を手に入れることも可能な物であること。それらから推察して国を乗っ取ろうとする輩が送ったに違いないこと。物が物だけに貴族連中には知られるとそれを欲しがる輩が現れるので知らせるわけにはいかず、今日ほど魔王軍に勝利して浮ついて警備が手薄になっている状況もなかったためこのような強行策をクリスと共に行ったのだと。
「な、なるほど、確かにこの理由なら仕方がない……にしたって私を頼ってくれてもいいだろうに……!! ちゃんと事情を説明してくれればどうにかしていたものを……」
ダクネスが頭を抱える。
「でもいろんな政治的しがらみのせいで結局うまいこと対応できずに国家を乗っ取られる可能性があったんだと思えばこれで良かったんだと思うよ」
そんなダクネスの肩に手を置きポンポンと俺は叩いた。
「う、うむ……」
「清濁併せ持つことが重要なんだろうララティーナ様」
「ララティーナと呼ぶなバカ者……。全く、まぁ後であいつらには文句をたくさん言ってやるとしよう」
ダクネスとひそひそ話を続けていると。
「ねぇダクネスに神殺し。2人も聞いて頂戴な。あの王女様の身に着けていたネックレスは神器だったんだけどね、入れ替わると―――――」
アクアがメールにあった内容と大体同じ危険性を秘めた神器であることを俺たちにも説明を始めた。
「――――――だからあれを封印した私は超お手柄だったわけなのよ」
そう。アクアは最後に神器に封印処置を施したらしく使えないようにしたそうだ。まぁエリス様の手に渡った時点でどのみち安心だったわけだがある意味一件落着というわけだ。
「偉いぞアクア様」
「ふふん」
どや顔をするアクア。かわいらしい。
「しかしそのような危険性を秘めた魔道具だったとはアクア殿の話を聞いて青くなりましたよ。何事もあの魔道具が引き起こさなくてよかったです」
レインさんがそう言ってほっと息を吐く。
「アルダープのような輩が送ったのでしょうか? 」
アヤメリス様が怪訝な顔をする。
「アヤメリスの言う通りかもしれないな。しかしあの義賊たちは何が目的だったのだろうか? 巷でのうわさや今回の城の犠牲者が0人という点を鑑みるに悪用するような連中とは思えないし……。まさかアイリス様やベルゼルグ王国の安全のために。いやそれはさすがに考え過ぎか」
クレア。考え過ぎなどではなく大正解ですよ。
「何にしても犠牲者が1人も出なかったことはよいことです。危険な魔道具も結果的には使用できなくなったのですからよしとしましょう。……指輪は奪われてしまいましたが」
アイリス姫が微笑みながら言う。指輪?
アイリス姫が指輪について言及する際にひときわ年相応な少女の顔をしたため、その指輪がどういうものなのか分からずゆんゆんの方を見ると察したゆんゆんが説明を始めてくれた。
「あの義賊2人はアイリス姫のネックレスだけじゃなくて指輪も奪っていったんです。スティールで奪っていったのでたぶんランダムに指輪とネックレスが選ばれたんだと思います。すごい強運ですよね義賊の2人。それとその……指輪は王族が子供のころから肌身離さず付けていて将来の伴侶となる方に渡す重要な品なんです」
「なるほど。そりゃとんでもないお宝を盗んでいったな賊は」
おそらく指輪の方を盗んでいったのはカズマだ。なんとなくなのだがそんな気がする。
しかし今回の件、俺にも言ってくれたらよかったのにエリス様。まぁ俺のスキル構成では隠密行動はもうできないしお手伝いできなかっただろうからお声がけが無くても仕方がないか。
「ああ、みなさん、役に立てずにすいません。……今回の件で僕はつくづく搦め手に弱いことが分かりましたよ」
ミツルギが悲痛な面持ちでこの場のみんなに謝罪した。
「お気になさらずミツルギ殿」
「そうですよミツルギ殿。誰にでも得手不得手はありますよ
クレアとアイリス姫がミツルギに優しい言葉をかける。
「ありがとうございますお2人とも」
ミツルギは苦笑した。
「それにしてもリョウタさんよかったですね。神殺しの剣も一緒に奪われちゃうかと思ったらバルコニーにおいてあって」
そんな中ゆんゆんが思い出したかのように神殺しの剣に視線を向ける。
「そうだね。相棒とお別れにならなくてよかったよ」
まぁどうせ持って帰られても、俺の手元に帰ってきていたとは思うが。
「大事な相棒ですね」
ゆんゆんが俺に笑いかける。かわいい。
「さてと俺はカズマにメールでも打っとこうかな」
送る内容は、お疲れ様と、指輪がどんな代物だったのかだ。
俺がメールを打とうと携帯に目を移した瞬間。
突如、大きな地震と共に、すべてを飲み込む巨大な爆発が眼前で発生した。
クリスの『スキルバインド』がリョウタに通じていますが、これはクリスがその際は人の身だったからです。女神状態だと効かなくなりますし、そもそも使えません(使えないというのは本作独自です)。
リョウタは第5章のどっかの話で本人が言っていた通り、クリスがいたとはいえカズマに敗北しました。本気になったカズマさんは強いんです。そしてカズマさんはまだまだ活躍しますよ!! お楽しみに!!