【完結】この素晴らしいゆんゆんと祝福を!!   作:翳り裂く閃光

98 / 100
097 破壊神デストラクター

「何も残ってない……」

 

 俺は周囲に広がる爆裂魔法によるものであろう巨大なクレーターの中で呟いた。地面はまだところどころ赤くなって熱を放っている。

 

 すっかり暗くなった夜。現在俺たちは、ウィズさんのテレポートで紅魔の里……だったところに来ていた。

 

「これは、ひどい。ひどすぎる」

 

「これが紅魔の里ですって? 信じられないわ……」

 

 ミツルギが歯を食いしばり、アクアが唖然とする。

 

「お父さん、お母さん……こめっこ……」

 

「そんな嘘よね? バニルさん!! みんなはテレポートで避難してるって言ってください!! 」

 

 めぐみんはグングニルを地面に落として崩れ落ち、ゆんゆんはバニルに取り乱しながら問いかけた。

 

「残念だが、紅魔の娘らよ。そして神殺しの青年よ。汝らの同族は不意打ちの爆裂魔法を2発ほど里に落とされ塵ひとつ残らず消滅しているのである。だれ1人としてそこから逃れた者はいない」

 

「破壊神……絶対に許しませんよ!! 」

 

「よくもお父さんとお母さんを、里のみんなを!! 」

 

 めぐみんとゆんゆんは激昂した。

 

 俺もまた、心の中で破壊神へのどす黒い感情が渦巻いていた。そして。

 

「必ずぶっ殺してやる……!! 」

 

 空を見上げながらつぶやいた。

 

「バニル!! 次の標的はどこだ!? 」

 

 パワードスーツを着込んだカズマがバニルに問うと、バニルは。

 

「王都である。奴め、レベルアップをして戦闘能力を強化するために人口の多いところをつぶす気になったようである」

 

「ウィズ、すぐにテレポートを頼む!! 」

 

「これ以上犠牲者を出すわけにはいきません。お願いします!! 」

 

 ダクネスとアイリス姫からの言葉を受けるまえから、ウィズさんはすでにこの人数を飛ばすためにテレポートの詠唱を始めていた。

 

「バニル、何で最初に紅魔の里を滅ぼしたんだ、破壊神の奴は? 」

 

 俺は真っ黒な感情を胸の内に封じ込めるのに必死になりながら、紅魔の里が最初に滅ぼされた理由を聞く。

 

「破壊神の奴はどうやら、封印を解くのを面倒がって里にある要石を自ら破壊しレベルアップの原理で戦闘能力を向上させたようである。残機自体が現在6つある故、今更自身の限界ストック量の残機10まで急いで回復する気はないようである」

 

「なら自分の傀儡を増やさなかった理由は? 」

 

 破壊神ならば紅魔族を自らの傀儡や予備の器として確保するために生かしておくという発想にたどり着きそうなものだが……。

 

「それについては汝への当てつけである。自分の配下を皆殺しにしてくれた貴様へのな」

 

「なんで俺が紅魔の里のことを大切に思っていたことを知っていたんだ? 」

 

「破壊神は要石の状態でも意識はある。……汝が紅魔の里にいた際の動向を感じ取られていたのであろうな」

 

 そこまで聞いて俺は抑えが効かなくなり。

 

「ふざけやがってぇぇぇぇ!!!! 」

 

 大声で叫んでしまった。

 

 よくもお義父さんとお義母さんを、あるえを、ふにふらとどどんこを、ねりまきを、めぐみんのご両親と妹を、同族たちを手にかけやがったな!!

 

「テレポートの準備できました!! 行きますよ皆さん!! 」

 

 ウィズさんの声に皆、無言で頷き、王都へとテレポートした。

 

 視界がぐにゃりと歪んだ後、王都の繁華街の中心に移動した。

 

「セイクリッドハイネスエクソシズム!! ……これでしばらくは2人は破壊神に会っても体を乗っ取られないはずよ!! 」

 

「ありがとうございますアクア」

 

「助かりますアクアさん」

 

 一切の笑顔を見せずに答えるめぐみんとゆんゆんの瞳に復讐の炎が灯っているのがわかる。

 

「ゆんゆん、めぐみん。復讐心に飲み込まれ過ぎないようにしよう。多分判断力が鈍るから」

 

 俺は自分の心に復讐心が渦巻いるのを自覚しつつ、自らを戒めるために、そして2人が死に急ぐような行動に出てしまわないようにくぎを刺した。

 

「そうですね……わかりました」

 

 めぐみんは涙を流しながら返事をした。カズマがめぐみんの背中をさする。

 

「はい……気を付けます」

 

 ゆんゆんは俺の手を握る。俺はその手を固く握り返した。

 

「バニル!! どのタイミングで破壊神が来る!? 」

 

「少し待て小僧!! 我輩も今見通しておるわ!! 」

 

 やがてバニルは、大声でダクネスに叫んだ。

 

「鎧娘よ!! イージスの力を使え!! 真上から爆裂魔法が来るぞ!! 」

 

 ダクネスは「分かった!! 」とバニルに返事を瞬時に返し、イージスからシールドビットをいくつも生成する。

 

 そして。

 

 空に巨大な爆裂魔法の陣が展開されているのが見えた。その中心からエネルギー塊が降り注いできた。

 

「ララティーナ!! きました!! 防いでください!! 」

 

「お任せを、アイリス様!! 行け!! 」

 

 全員が万が一に備えて身構える中、俺は神殺しの剣のバリアを球状に展開しみんなを包み込む。さらに、いくつかのシールドビットが俺たちのすぐ真上を覆い尽くした。残りのシールドビットは空を飛び、爆裂魔法に突撃する。

 

 それから数秒後。

 

 おそらく俺たちを中心に発生するはずだった巨大な爆裂が上空で巻き起こった。衝撃波は俺たちの真上のシールドビットが吸い尽くし一切のダメージを負うことはなかったのだが。

 

「第2波が来るぞ、鎧娘!! 」

 

「っ!! 狙いが私たちでは無い!? 」

 

 上空に位置していた魔方陣から今度は多方向に向けて爆裂魔法が放たれる。俺たちの真上に陣取っていたシールドビットが急いで空へと飛んでいくが。

 

 間に合わなかった。

 

 爆裂魔法はシールドビットに激突する前に王都の各所に突き刺さり……大爆発を起こした。その範囲と威力は恐るべきもので、命中した場所を中心に人や建造物が宙を舞いながら消滅していく。

 

 建造物の破片が俺の張ったバリアにいくつも激突し内部を揺らす中でアイリス姫は苦虫をかみつぶした表情で。

 

「よくも民たちを!! 」

 

 涙を流しながら叫んでいた。

 

 やがて、爆裂魔法による破壊の嵐が止んだ後、俺はバリアを解除する。俺たちのいる区画は飛んできた瓦礫でボロボロになっている程度のダメージで済んでいる。しかし、見えないだけで多方面におそらく大きなクレーターが形成されているはずだ。

 

「リョウタ、ゆんゆん!! 被害箇所まで破壊神を誘導しろ!! 」

 

 カズマの言いたいことがわかる。ここで戦うと死者が余計に増えるだけだからだ。なので破壊神を空を飛べる俺とゆんゆんとですでに焦土となって何もない場所へと誘い出し、戦いの場を移行するということなのだろう。

 

「任せろ!! 」

 

「わかってます!! 」

 

 4枚羽を広げた俺と、グウェンをはためかせたゆんゆんは一斉に飛び立った。

 

「私も続きます!! 」

 

「我輩も手伝うとしよう」

 

 アイリス姫がアガートラームの魔力制御能力で、魔力を放出して飛行するモンスターたちと同じ原理で、体から魔力を出して飛行し、バニルは悪魔らしく翼を展開し空を飛んだ。

 

「破壊神デストラクター!!!! 」

 

 さっきまで爆裂魔法の陣が展開されていた場所にたどり着くと破壊神がいた。以前と同じようなデザインの白い軍服のような衣装に蝙蝠のような翼を広げている。ただし、その顔は紅魔族の男のもので目は紅く輝き、金の輪が浮かんでいた。体躯も非常に良く、パワーアップしているのが見て取れる。

 

「久しぶりだな、神殺し。それに我のボディ候補に、王女に、見通す悪魔よ」

 

「二度と会いたくなかったよ。こっちはなぁぁぁぁ!!!! 」

 

 俺は一気に破壊神に肉薄する。破壊神は爆裂魔法を圧縮して作った剣を両手に生成し俺を迎え撃つ体制をとる。

 

 そして、神殺しの剣と爆裂の剣2本が交錯した。

 

「ライトオブセイバー!! 」

 

 ゆんゆんはハルバードにライトオブセイバーを纏わせ、破壊神の後ろから斬りかかる。が、

 

「無駄だ!! 」

 

 破壊神は腕を大きく開いて神殺しの剣を弾き、俺の体勢を崩させたのち腹に蹴りを見舞ってきた。その後ゆんゆんの方を振り向き、右手の爆裂の剣をゆんゆんへと投擲する。ゆんゆんは斬りかかるのをやめてグウェンにくるまり、爆裂の剣の命中によるダメージを無効化する。

 

「なるほど。そのマントも神器か。高い防御力を秘めているな、厄介な」

 

「破壊神、あなたを滅ぼします!! セイクリッドライトニングブレア!! 」

 

 真っ白な光の奔流と電撃がアイリス姫の聖剣から照射される。それを破壊神は。

 

「エクスプロードバスター!! 」

 

 爆裂魔法の陣を右手に展開。そこから赤橙色の光線を放って相殺……いや、セイクリッドライトニングブレアを飲み込みアイリス姫を今度は無に還さんと迫る。

 

「はぁぁぁぁ!!!! 」

 

 それをアイリス姫はアガートラームでぶん殴り、霧散させた。

 

 おそらく魔力制御で、エクスプロードバスターを分解したのだろう。

 

「やるではないか!! 我があの時神殺しに不意を突かれたときに似ていて癇に障るがな!! 」

 

「バニル式殺神光線!! 」

 

 するとバニルが独特の構えで、赤と青に派手に輝く光線を破壊神に発射した。

 

「あたらんわ!! 」

 

 破壊神はそれを回避すると全方位に魔方陣を展開、そこからエクスプロードバスターを発射する。

 

 俺たちはそれぞれ、バリアにグウェン、魔力制御による分解にガーターのような魔法でエクスプロードバスターを防いだ。回避してもよいのだが、回避すれば眼下の王都に被害が出かねないからだ。

 

「ディナイアルエクスプロード!! 」

 

 俺はディナイアルエクスプロードを発射。破壊神が回避した瞬間爆発させる。それにより破壊神に若干のダメージを与えるが、その傷は一瞬で服ごと再生される。俺はディナイアルエクスプロードの爆風を目くらましにして大量にビットを生成し破壊神へと驀進する。

 

「落ちろ!! 」

 

 俺はビットで全方位から破壊神を攻撃しつつディナイアルセイバーを発動し振り下ろす。

 

 破壊神は迫りくるビットをアクロバティックな軌道を描いて回避しディナイアルセイバーによる連続の斬撃は、爆裂の剣でいなされる。だが、どんどん破壊神をクレーターの方に誘導できている。

 

「続きますリョウタさん!! 」

 

 ゆんゆんがハルバードにまとわせたライトオブセイバーとマジックワンドから発動させたライトオブセイバーの二刀流で破壊神に近接戦を仕掛ける。ビットが飛び交う中、斬りあいを始めたゆんゆんと破壊神。

 

「私もリョウタさんの真似事ができそうです、行って!! 」

 

 アイリス姫が聖剣から魔力を放出しそれを球体状に加工。俺のビットの様に飛ばしてゆんゆんの援護を行う。さらに。

 

「パラライズ!! 」

 

 バニルがパラライズを発動する。ビットを無数に展開した魔方陣から放たれるエクスプロードバスターで迎撃しつつゆんゆんと足を止めて斬りあっている破壊神の真下にパラライズの魔方陣が現れた。それを見て破壊神は急速でその場から離脱する。

 

「このままここから引き離す!! 」

 

 俺はウイングの出力を最大にしてライトオブセイバーを纏わせたソードメイスとディナイアルセイバーを発動した神殺しの剣を交差させた状態で突撃する。

 

「そうやすやすと我がこの素晴らしい地の利を手放すとでも思っているのか!? 」

 

 破壊神がそのように叫びながら接近してくる俺へと、同じく突撃する。そして大きめの爆裂の剣で俺の2本の剣を受け止める。

 

「死ね!! 神殺し!! 」

 

 押し合いの中、破壊神は爆裂の剣を握っていない左手に赤橙の魔力球。おそらく爆裂魔法の圧縮されたものを握り締めて叩き込もうとするが。俺はバリアを展開してそれを弾く。

 

「私たちも!! 」

 

「いるんです!! 」

 

 ゆんゆんとアイリス姫が俺の隣に来ると、爆裂の剣に俺と同じように己の得物を叩きつけると、破壊神をその場から弾き飛ばそうと力を込め始めたようだった。だが破壊神は俺たち3人の押し出そうとする力を受けても一切後退しない。それどころか。

 

「ふん!! 」

 

 右手の長い爆裂の剣をついに振り下ろし。逆に俺たちを弾き飛ばした。

 

 クソっ!! これが本来の力の半分以上はあるであろう破壊神のパワーか!!

 

「楽には破壊してやらんぞ!! 貴様らは我の眷族の仇だからな、いたぶった末に破壊してやる!! 特に神殺しは念入りになぁぁぁ!!!! 」

 

 体勢を立て直していた俺たちに爆裂の剣をさらに長大にして、長さおそらく50メートルほどにすると横一線を繰り出してくる破壊神。

 

「この程度で破壊されてくれるなよ!! 」

 

 そう言いながらも、にやけている破壊神だったが。

 

「ダークオブセイバー!! 」

 

 バニルがダークオブセイバーを発動して爆裂の剣を受け止めてくれた。

 

「やはりさすがは地獄の公爵だな!! 全開の力をこの世界故に発揮できぬと言っても我の一撃を受け止めるか!! 」

 

「フハハハハ!! 当然である。地獄の公爵をなめるでないぞ、このはた迷惑な破壊の権化めが!! 」

 

 バニルと破壊神がそんなやり取りをしていると。携帯にメールが入った。それを見たバニルを除いた俺たちは目をいつでも閉じられるように気を配っておく(アイリス姫もカズマから残っていた1台を渡されている。バニルは見通す力があるのでなくても問題ないためウィズさんが持っている)。その直後に地上から。

 

「なに!? 」

 

 破壊神に向けて超極太の青白い光の光線が照射された。おそらくアクアのセイクリッドハイネスエクソシズムのビーム版だ。

 

 破壊神はそれをぎりぎりで回避すると。今度はシールドビットに取り囲まれ全方位から押さえつけられる。

 

「砕いてくれる!! 」

 

 破壊神はシールドビットを無理やり怪力で引きはがし、両掌に握った赤橙の魔力球で殴って粉砕していく中で。突如飛来した白く光り輝く矢が目の前で炸裂しとてつもない光量を目に喰らう。

 

 今のはカズマの作った作戦だ。まずアクアの攻撃で隙を作り、続いてダクネスが動きを止めて、カズマが光属性の矢を爆発させて視力を奪う。そして最後に。

 

「ぐわっ!! 眼がやられたか……だがこんなもの瞬時に回復してくれ―――――」

 

 グウェンで完全に姿を消したゆんゆんが後ろから強襲して破壊神の翼を断ち切る!!

 

「なにっ!? 」

 

 破壊神の翼が突然2枚とも本体から脱落した。それによって浮力を失い落下を始める破壊神。

 

「いまだ!! 」

 

 俺は破壊神に神殺しの剣をまっすぐ構えて、バリアを神殺しの剣に円錐状に形成して展開、体当たりを行う。

 

「目が見えずとも、魔力の動きで読める!! 」

 

 破壊神は自分の前面に爆裂魔法の陣を形成して、俺の体当たりを受け止める。だが、まだ翼が修復できていない破壊神では、その場に体を固定することは叶わず、俺に押し出される。そして一気に爆裂魔法によって焦土と化してしまった場所に俺と破壊神は躍り出た。

 

 しかしそのころには、破壊神は翼と視力を取り戻し俺へと攻撃を放ってきた。放ってきたのは通常の爆裂魔法だった。

 

 今の破壊神の火力ではバリアで防ぎきるのは困難だろうと判断した俺は回避と同時に最大出力のディナイアルブラスターで爆裂魔法を飲み込み消滅させた。これで流れ弾で新たな被害箇所が出るのを防げた。

 

「ちっ!! せっかくの地の利を失ったか。それにしてもボディ候補は透明になれるのか。魔力の流れも感知できぬしこれは厄介だな……」

 

 心底忌々し気に、俺の隣にたたずんだゆんゆんに向けてそう告げる破壊神。

 

「絶対あなたを倒すんだから!! 」

 

 そんな破壊神にゆんゆんは宣戦布告した。

 

「面白い、だがさっきの芸当はかなり魔力を消費するのだろう? 何度続けられるかな? 」

 

「隙なら俺たちが作ってやるさ!! 」

 

 破壊神の問いかけに、カズマが答えた。カズマはシールドビットに乗って浮遊している。すると、他の飛ぶことのできないみんなもシールドビットに乗って俺たちと同じ土俵に上がってきていた。ほかにも足場として大量にシールドビットがいつの間にか破壊神を中心にして広がっている。

 

 俺たちは完全に破壊神を包囲していた。

 

「なるほど、第2ラウンド開始というわけか。面白い!! 」

 

 破壊神が哄笑をはじめた中で。

 

「破壊神、貴様のような外道は何としても我々が倒す!! 」

 

 ダクネスが吼える。

 

「あんたをこの世から消し去ってやるわ!! 」

 

 アクアが宣言する。

 

「今の私はあなたと同じ次元に立っています。見せてあげましょう爆裂魔法を愛する者の力を。そして私の怒りを!! 我が名はめぐみん!! 爆裂魔法を極め、破壊神を滅ぼさんとする者!! 」

 

 めぐみんが涙ながらに破壊神に名乗りを上げる。

 

「あなたは僕たちがここで倒します!! 必ず!! 」

 

 ミツルギが二振りの剣を構える。

 

「破壊神。多くの人々を殺した罪。贖ってもらいます……!! 」

 

 ウィズさんが氷のような冷たさで言い放つ。

 

「我輩のおいしいごはん製造機を無差別に滅ぼしてくれるその罪は重いぞ、破壊神」

 

 バニルが無表情で破壊神に告げる。

 

「多くの臣下を、民を殺したこと、絶対に許しません!! 」

 

 アイリス姫がアガートラームで握った聖剣を掲げる。

 

「柄にもないことを言ってんのは自覚してるがそれでも言ってやる!! お前は人を殺し過ぎた!! これ以上誰も死なせやしない!! そのためにおまえを倒す!! 」

 

 本人の言う通り、普段なら言わないセリフをカズマは言うと弓を構えた。光の矢がつがえられる。

 

 俺とゆんゆんは顔を見合わせた後、頷きあい。

 

「絶対にあなたを討伐して見せる。これ以上私のような思いをする人を増やさないために!! リョウタさんと、そしてみんなと明日を迎えるために!! 」

 

「行くぞ破壊神!! 覚悟を見せてやる……俺たちをなめるなよ!!!! 」

 

 俺とゆんゆんは隣り合った状態で、神殺しの剣とハルバードを破壊神に向けた。

 

「やるぞお前らぁぁぁぁ!!!!!!!! 」

 

 カズマの声と共に、俺たちは破壊神に攻撃を開始した。

 

「一斉射撃だ!!!! 」

 

 カズマが、シールドビットの上でマイクロミサイルとイチイバルを放つ。放たれた矢は6色で6本。すなわち6属性の矢を同時に放ったのだ。ミサイルは破壊神の人体の構造上対応しづらい箇所をめがけて飛んでいき、矢は超高速で破壊神へとまっすぐ迫る。

 

「エクスプロードバスター!! 」

 

 それを破壊神は爆裂魔法の光線を、手の指先から10本展開し、撃ち落していくが、迎撃しきれなかったミサイルの内の一発が、破壊神の左足に命中し、爆散させる。

 

 しかし左足を服ごと瞬時に再生させるとカズマに対して破壊神は飛び蹴りを放った。そんな破壊神の前にいくつも展開されたシールドビットの上をジャンプしながら立ちふさがったミツルギは。

 

「ライトニングスラッシュ!! 」

 

 電撃を纏ったグラムとバルムンクで交差斬りする。破壊神はとっさに爆裂魔法の陣を足裏に展開してそれを受け止める。力比べが始まるが、身体能力を徹底的に向上させたミツルギはびくともしない。それにしびれを切らした様子の破壊神は距離をとろうとするが。

 

「狙撃!! 」

 

 カズマがミツルギの真後ろからジャンプして、ミツルギの真上に躍り出ると、風属性の矢を同時に6本。しかもそれを20連射して計120本の矢を破壊神にぶつけた。矢の速度があまりにも超高速だったため防御のために爆裂魔法の陣を矢の迫る方向に破壊神が展開するころには、おおよそ半分の矢を喰らってしまっていた。一気に全身にダメージを負いその場でバランスを崩す破壊神。それを好機と見たみんなで一斉に襲い掛かる。

 

 まずウィズさんが左腕ででライトオブセイバーを振り下ろしながらコキュートスの先端の宝石を輝かせ、破壊神を周囲に氷塊を4つ生成した後それが一気に成長して一体化。空間ごと破壊神を氷漬けにする。破壊神は、氷を割り裂きながら迫る回避不能のライトオブセイバーを体表面に魔力を流して受け止める。

 

 氷が砕け散ったころには俺が破壊神の目と鼻の先まで接近し、ディナイアルセイバーを振り下ろした。破壊神は極太で回避の難しいディナイアルセイバーを複数重ねた爆裂魔法の陣で防ぐ。

 

 だが攻撃を仕掛けてるのは俺だけじゃない!!

 

 バニルがダークオブセイバーで後ろから斬りかかり、アイリス姫は真上から刺突を繰り出すべく突撃。さらにダクネスが新たに生成した1つのシールドビットの鋭利な先端を向けて破壊神の真下から襲い掛からせる。

 

 破壊神は全長10メートルで太さもそれに見合ったものがある爆裂の剣でディナイアルセイバーを弾き飛ばし、その勢いでダークオブセイバーに爆裂の剣を叩きつけ相殺。その後下から迫ってきたシールドビットを回避して蹴飛ばし、アイリス姫の聖剣を構えた突撃に対してはまっすぐエクスプロードバスターを発射した。アイリス姫はエクスプロードバスターをとっさにアガートラームで分解しながら射線から逃れる。

 

「同時攻撃は厄介だな。各個撃破に持ち込んでくれる!! 」

 

 破壊神はそう叫びながら空にいくつもの爆裂魔法の陣を展開し、発射した。

 

 おそらくだが、破壊神の目的は、本人が言っていたように爆裂魔法に対応するために散開してフォーメーションを取りづらくなった俺たちを各個撃破する気なのだろう。

 

 だが!!

 

「セイクリッドブレイクスペル!! 」

 

 アクアがデストロイヤー戦で見せた5つの魔方陣からの蛍光イエローに輝く極太ビーム状のセイクリッドブレイクスペルを、シールドビットの上で発射しながら、その発動起点となっている杖先を動かし爆裂魔法を分解していく。

 

「エクスプロージョン!! 」

 

 めぐみんはシールドビットの上でしっかりと体勢を整えた後、自分の周りに複数の爆裂魔法の陣を展開し間髪入れずに発射。アクアが迎撃できなかった残りの爆裂魔法を爆裂魔法で撃ち落とした。さらに。

 

「エクスプロードバスター!! 」

 

 めぐみんは破壊神の真似をして爆裂魔法の光線をグングニルの先から放つ。投げれば必中の特性からか、グングニルから放たれたエクスプロードバスターは、破壊神をしつこく追尾する。破壊神は仕方なくそれをエクスプロードバスターを自分も発射して迎撃した。

 

「こっちは役割分担してるのよ破壊神!! 私とめぐみんはあんたが爆裂魔法を地上に撃とうとすれば邪魔する役割なのよ!! 」

 

「バカ!! この駄女神が!! 珍しく作戦通りに動いてると思えば自分たちの役割を破壊神に教えてどうする!! 」

 

「はっ!? な、なによ。役割は忘れてないんだから怒んないでよ!! 」

 

 カズマの怒声に逆ギレする我らがアクア様。

 

「心配するな小僧。我輩の見通す力で不確定だった未来が少しづつ我らの勝利の未来へと傾き始めているのが見える。もやがかかって詳細は読み切れんがな!! 」

 

「おのれ厄介な!! それと仮面の悪魔よ、我が負けるとでも思っているのか!? 」

 

 破壊神は心底忌々しそうに吐き捨てる間にも、シールドビットに輸送されたミツルギのグラムとバルムンクによる連続攻撃を爆裂の剣でさばき続ける。

 

「不確定だが少しずつその方に運命が傾いているぞ!! フハハハハ!!!! 」

 

「おのれ煽りよって!! 」

 

「配下の眷族どもを失ったことによる怒りが汝の判断力を鈍らせているのだ破壊神よ。だから、怒り憎しみに呑まれることなく、逆に呑み込んでいる人間と互角の勝負を繰り広げてしまっているのだ貴様は!! 」

 

「ふざけるなぁぁ!! 」

 

 冷静さを欠いた破壊神がいよいよバニルに突撃しようとする。そのことで大きな隙ができる。

 

 今だゆんゆん!!

 

 俺は破壊神に再度距離を詰めながら心の中で愛する人の名前を呼んだ。

 

 すると。

 

 破壊神の両腕が突然彼の真横に現れたゆんゆんのライトオブセイバーによって切り落とされた。

 

 さすがゆんゆん。よくわかっている。

 

「ボディ候補か!? 」

 

 破壊神はゆんゆんの透明化強襲を憎たらしそうな顔でぼやく一方でミツルギが。

 

「逃がすかぁぁぁぁ!!!! ダブルルーンオブセイバー!!!! 」

 

 2つのルーンオブセイバーの斬撃波を破壊神に発射した。さらに俺はホーミングレーザーを放ち、破壊神の全方位に襲い掛からせる。

 

「っ!! 」

 

 破壊神が球体魔方陣を発動し俺とミツルギの攻撃を受け止めつつ、俺を迎撃するべく魔方陣を虚空に展開して、エクスプロードバスターを発射した。

 

「当たるか!! 」

 

 俺は高速で迫るそれを回避し、空中で急速旋回、破壊神の頭上に位置取ると、ディナイアルブラスターを容赦なく破壊神の頭上から放った。

 

 両腕を再生し、ダブルルーンオブセイバーとホーミングレーザーを球体魔方陣でしのぎ切った破壊神は続いて爆裂魔法の陣をディナイアルブラスターを防ぐべく複数個展開する。

 

 ディナイアルブラスターは見事に防ぎ切られた。破壊神は全長10メートルの爆裂の剣を2本生成し両腕で握りこむと俺とミツルギに向けて振り回す。

 

「コキュートス!! 」

 

 ウィズさんが破壊神の攻撃を回避する俺たちを援護すべく、コキュートスから吹雪を吹かせた。吹雪は破壊神へと殺到し、破壊神の翼を凍結させる。

 

 それにより浮力を失った破壊神は、真下へと落下していく。そんな彼に、アイリス姫がアガートラームを輝かせながら、聖剣から、初めて見た時とは比べ物にならないほど集束させたセイクリッドエクスプロードを破壊神に発射する。

 

 破壊神は上下左右に回転しながら落下する中で。

 

「行け!! 潰せ!! 」

 

 ダクネスが動かした4つのシールドビットの突撃を喰らい、その場に縫い留められる。

 

「ぐぉっ!? 」

 

 そして、集束したセイクリッドエクスプロードを受けて頭と両腕と翼が消し飛んだ。

 

「やりましたか!? 」

 

「いや、まだである!! 」

 

「頭を吹き飛ばしても不死身なのか……」

 

 アイリス姫にバニルが返答し、ミツルギが、上半身のパーツのほとんどを吹き飛ばされて、なお落下しながら再生していく破壊神に驚愕する。

 

「我は死なんぞ!! 」

 

 全員が破壊神に合わせて高度を下げる中、破壊神はそう言い切ったが。

 

「いや死ぬ!! 俺は神を断つ剣だからなぁぁぁぁ!!!! 」

 

 俺は破壊神に肉薄しディナイアルセイバーを振り下ろした。破壊神が爆裂の剣で受け止めようとするが。

 

「ライトオブセイバー!! 」

 

 またもやゆんゆんが透明化強襲を行い、爆裂の剣を剣を握っていた右腕をライトオブセイバーで切り落とし急速離脱する。そこにディナイアルセイバーが命中した。

 

「ぐわぁぁぁぁ!!!!!!!! 」

 

 破壊神が悲鳴を上げながら分解されていく中でも、必死に翼を動かし、ディナイアルセイバーの範囲から離脱した。

 

「バニル!! 今ので残機削ったんじゃないのか!? 」

 

 カズマがバニルに、弓を破壊神に向けて炎属性の矢を放ちながら問いかける。

 

「今ので残機が2つ減ったようである!! このままキリキリと畳みかけていくぞ!! 」

 

『了解!! 』

 

「そう簡単にいくと思うなぁぁぁぁ!!!!!!!! 」

 

 破壊神は炎属性の矢を手刀で叩き落しながら高度を上げて俺たちの包囲網に侵入してくる。めぐみんは、破壊神に向けて爆裂魔法を発射する。

 

 それを破壊神は同じく爆裂魔法で迎え撃ち相殺。そして、手近にいたウィズさんに回し蹴りを放った。それをコキュートスで受け止めたウィズさんが破壊神の右足を逆に凍らせる。

 

「今ですアクア様!! 」

 

「ゴッドレクイエムぅぅぅぅ!!!!!!!! 」

 

 アクアが杖の先端のつぼみを咲かせ、展開した花の周囲に神聖な光を放つ炎を纏わせた状態で破壊神にシールドビットを跳び移りながら接近し、思いっきり突き刺した。

 

「がぁぁぁぁぁ!!!! 」

 

 破壊神の腰が横に「く」の字に曲がり、骨が折れる鈍い音が響き渡る。そしてそのまま弾き飛ばされた破壊神に。

 

「リミッター解除!! ぶっとべ!! 」

 

 カズマが容赦なく飛び蹴りを見舞い今度は破壊神を逆「く」の字に折り曲げてイチイバルから6属性の力を秘めていると思われる6色に輝く矢を発射。破壊神は、強烈な光とよどんだ闇、巻き起こる炎と鋭い水、暴れまわる風と爆ぜる土を命中した場所から発生させられ体をズタズタにされる。さらにカズマは機関砲を連射し、追い打ちを仕掛ける。その間に、俺とミツルギは破壊神を2方向から取り囲んで。

 

「「クアッドルーンオブセイバー!! 」」

 

 お互いの二振りの得物から同時にルーンオブセイバーを発射して、破壊神にたたきつける。それによって肉片レベルまで粉々になった破壊神。

 

 しかし、その状態でも肉片同士がつながりあい、翼を持った人型に再構成される破壊神。

 

「調子に乗るなよ!! 」

 

 何とか再生した口でそうこぼす破壊神だが、みんな容赦はしない。再生途中の破壊神にセイクリッドライトニングブレアとダークオブセイバーを叩き込むアイリス姫とバニル。

 

 それをどうにかこうにかぎりぎりで再生した両腕から爆裂魔法の陣を展開し受け止めた破壊神に。

 

「このままぶっ殺す!! 」

 

 俺はディナイアルブラスターを間髪入れずに発射した。

 

「こうなればぁぁぁぁ!!!! 」

 

 破壊神が激昂しながらディナイアルブラスターに、球体魔方陣を展開して防ぎつつそのまま飛び込んできた。そしてまっすぐ俺へと驀進してくる。

 

 俺はその場を動かずディナイアルブラスターの出力を限界まで上げるように神殺しの剣に念じる。

 

 破壊神はついに球体魔方陣を粉砕されディナイアルブラスターを受けた。

 

 残機を削り取っていく手ごたえを感じる。

 

 だが突如。

 

「神殺しの青年よ!! そこを離れろ!! 」

 

 バニルの指示が俺に飛んだ。

 

「え? 」

 

 俺は疑問に思いつつもその場を離れようとするが。

 

「これで我の勝ちに一歩近づいた……!! 」

 

 ボロボロで、全身から肉や骨が露出している破壊神がディナイアルブラスターの照射を止めた俺に追いすがる。俺は破壊神を遠ざけようとソードメイスからライトオブセイバーを発生させ、同時に神殺しの剣からビットを生成、射出するがそれらを喰らうのを無視して破壊神は右の指先から照射されるエクスプロードバスター5本を細長く集束させたものを神殺しの剣にブチ当てた。

 

 その瞬間。神殺しの剣が、刀身の根元を溶断された。




 ぶち切れモードの全員に押され気味の破壊神でしたが、ついに自分の天敵たる神を殺す剣を折ってしまいました。

 さて、次回は最終話とエピローグを同時投稿します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。