社畜の俺がコナンの世界でも社畜になってしまった件について   作:願わくば神様転生でチートをかましたい

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 意外と早く投稿できたことに驚いている作者です。
 キリが良かったから取り敢えず投稿しよって思った次第です。


第二話 小学校?......あぁ、そんなのもあったな

 おはようございます。

 ただ今の時刻は朝の五時です。

 

 ...いやぁ、早いなぁ。

 

 カーテンの隙間から地味に光が漏れているから、ちょうど太陽が出てきたんだろう。

 

 ......よし、もっかい寝よ。

 

 そう思うが早いか、もう一度布団の中に潜り込む。

 ふわふわの羽毛布団が体を包み込む。暖かい。落ち着く暖かさだ。

 しばらくまどろみながらふわふわの感触を楽しんでいたが、どれだけ時間が経っても眠れない。

 

 そして悟った。

 

 ...子供の、しかも特に幼い時期ってさ、一回目が覚めるとどうしても眠れない時ってなかった?

 すっごい朝早くに目が覚めちゃって眠ろうと思って目を瞑っても寝れないっていう時。

 今がそれ。

 

 仕方がないから、ベッドを出てダイニングに行くことにする。

 まどろんでいるうちに六時になったから、この時間ならじいやも母さんも起きているはず。

 着替えはこの部屋にないため、寝間着で部屋から出ることになるけど......まぁ、いっか。

 

 ベッドから起き上がった俺は軽く伸びてからカーテンと窓を開ける。

 まだ春先の早朝だからか、肌寒いが、空気の換気も大事だ。そこは我慢しよう。

 とはいえ、俺は病み上がり。体を冷やすのは良くない。だから、昨日じいやから渡されたショールを肩に引っ掛け、スリッパを履き、部屋の外に出る。

 

 俺の寝室は二階に、そして今の目的地であるダイニングは一階にあるため、階段を降りてダイニングに向かう。

 

 するとダイニングには既に母さんがいた。

 母さんは朝食を食べながら新聞を読んでいる。

 

 「お母さん、おはようございます」

 

 俺はそう言いながら、母さんの対面側の席に向かう。

 

 「紫陽、おはよう。体はもう大丈夫なの?」

 

 母さんは心配そうな表情でこちらを見ながら、バゲットをちぎって食べる手を止め、俺のところへ駆け寄ってき、俺の目線に合わせるために膝を地面につける。

 

 「うん、僕もう大丈夫だよ」

 「...そうね、熱は下がってるみたい」

 

 母さんが俺の額と自分の額に手を当て簡易的に熱を測ると、ほっとしたように柔らかく微笑む。

 

 ......母さんの顔がそのままの意味で目と鼻の先にあるからこそよくわかる。

 うちの母さんはすごく綺麗だ。

 

 濡れ羽色の背中辺りまで伸ばした、少し癖のある髪は右に流している。

 白に近い灰色の瞳。白い肌。長い睫毛。紅い、艶やかな唇。

 右目の目じりにある涙ぼくろと、唇の口角付近にあるほくろが、女性の特有の色気を醸し出している。

 腕は細いし、足も細いし心配になるけど、意外とこの方、見た目に似合わず強いのだ。その気になれば一般男性くらい軽く投げ飛ばせる。

 

 ......別にマザコンじゃないけど、うちの母さんは冗談抜きで世界で一番綺麗だと思う。

 いや、ほんとに見たら分かるんだけど、並の男は一目でやられるね。一瞬で骨抜きになるよ。間違いなく。

 

 俺は今、母さんの息子で子供だから、そういう卑猥な感情を抱くことはないけど、前の姿だった場合は一瞬で堕ちてる。

 ...その後ですぐに諦めるだろうけど。

 

 だからこそ思うんだけど、なんで母さんはあんなクソ親父と結婚したんだろうね。

 あんな見た目だけ無駄にイケメンな奴なんて、微塵も釣り合わないんだけど。

 政略結婚だからって、俺のじいちゃんとばあちゃんももうちょい考えろよ、自分たちの愛娘だろ?

 

 「ねぇ、お母さん。お母さんこそ体は大丈夫?もうかなりお腹大きくなってるから、生まれるのもうちょっとだよね?」

 

 一週間ほど寝室にこもっていた俺が、母さんに聞きたかったことだ。

 もうかなりお腹が大きくなっていて、妊娠していると発覚してからだいぶ時間が経ってるし、俺の数えだと34週目だったはず。

 世間的には産休が取れるはずだけど、母さんはどうするのだろうか?

 別に働くことに反対はしないけど、妊婦さんにとってストレスと寝不足は敵だ。個人的には休んで、出産に備えて欲しい。

 

 え?なんで前世では子供ができなかったのにそんなに詳しいんだって?

 んなもん決まってるだろ。調べたんだよ。

 前世よりも時代はさかのぼっていて、まだスマホも販売されてないし、パソコンだって軽くて薄いわけじゃないけど、ないわけじゃない。

 これから生まれてくる俺の初めての弟か妹なんだ。

 溺愛するための前知識として知っとく必要があるだろ。

 

 あのクソ親父に父親役なんて期待してないし、そもそも父親面されたくない。

 だから、父さんの分まで俺が愛情を注ぐんだ。

 そのために必要な知識なら喜んで覚えるさ。

 

 そもそもこの体、前世よりもスペックが高いのか、一回見たものを忘れるなんてことがないから、今のうちに覚えられることはとことん覚えている。

 便利な体だよ、ほんと。

 

 「うん、五月には生まれるわよ。紫陽もお兄ちゃんになるのね」

 

 そう言って母さんはにこにこ笑う。

 

 ...そういえば、今の母さんの体勢ではお腹が大きいから体にかなり負担がかかっているはず。

 

 そう思った俺は、だまって母さんの手を引き立つように促し、母さんがさっきまで座っていた椅子まで誘導する。

 母さんは少し驚いた顔をしていたが、俺の意図が伝わったのかすごく嬉しそうな顔をしながら椅子に座ってくれる。

 

 母さんがちゃんと椅子に座ったのを確認してから、自分の席に戻って座る。

 

 「お母さんは、お休みとらないの?『さんきゅう』だっけ。さんきゅう取れるんでしょ?」

 

 わざと産休を『さんきゅう』と読むことでさりげなく子供アピールはしつつ、そう母さんに問いかける。

 

 「あぁ、産休ね。今日からとることにしたの。とはいっても家でできる範囲でお仕事はしようと思うんだけどね」

 

 どうやら休んでもらえるらしく、そのことにほっとしつつ「ならよかった」と相槌をうつ。

 

 あー、お腹空いたなぁ。

 目の前で母さんがスープにちぎったバゲットを浸して食べているからだろうか、ものすごくお腹がすく。

 

 うぅ...。

 

 あ、そう思ってたらじいやが俺のごはんを持ってきてくれた。

 流石はじいや。

 

 ...でもねじいや、俺お粥だけじゃすぐお腹減っちゃう。

 え?病み上がりだから急に消化に悪いものを食べるのはダメ?

 

 ......そっか、そうだよね。

 じゃあ、お昼はうどんにすると約束してくれるのなら妥協してやろう。

 

 やったね、みんな!お昼はうどんだよ。

 俺の死ぬ前に食べたかったものランキングの上位に位置するといえばどれだけうどんが好きだったかはわかるだろう。

 

 ......まぁ別にそこまでうどんにこだわりはないんだけれども。香川県民ってわけでもないし。(偏見)

 

 昨日の残りのお粥をゆっくりと食べながら母さんの話を聞く。

 

 裁判はお腹の中にいる子供を産んで、産休の間に溜まった仕事をかたずけてから、とか、この子の名前どうする?とか、今日英理ちゃんが来るの!紫陽も一緒にお話ししましょ!とか他愛のない話。

 最後のは英理さんが原作キャラなのでやんわり回避しようとしたら、「ダメ!この前もそういって逃げたじゃない。今日こそは付き合ってもらうからね!」と却下されてしまった。

 

 ま、ヒロインの毛利蘭に会う訳じゃないんだし大丈夫か。

 

 そう思ったので、渋々ながらもその話は了承する。

 

 「...そういえば紫陽。今日は学校どうする?大事をとってお休みしようか?」

 

 ...学校......?あぁ、そんなものもここにはあったな。

 いっけね、昨日記憶が戻ったばっかりで小学校のこと忘れてた。

 

 ちなみに、入学式があった一週間後、大体友達が数人出来ている頃に休んだんだよね。

 入学してからあんまり時間が経ってなくて、俺の日常じゃなかったから忘れてたってのもあるな。

 

 えぇー、どーしよっかなー。

 別に今日は休んでもいいと俺も思うけど、流石に一週間も休んでんだし行くか。

 

 「行くよ。ずっと休んでたし、もうそろそろ外に出たいから」

 

 「そうね。でも無理は絶対にしちゃ駄目よ?病み上がりなんだから。しんどくなったらすぐに保健室に行くこと。約束ね」

 

 そういった母さんは、笑いながら小指を立てた。

 それに倣うように俺も、笑いながら母さんの立てられた小指に自分の小指を絡め、約束する。

 

 「指切りげんまん」か。ほんとに懐かしいな。

 そう思いながら。

 

 取り敢えず朝食を食べ終わった俺は、「ごちそうさま」と両手を合わして言った後、学校に行くための準備をするために二階の勉強部屋へ向かう。っとその前に一回寝室に寄り、じいやが用意してくれた服に着替える。

 今度こそ勉強部屋に向かい、自分の黒色のランドセルに教科書とノート、筆箱にファイルと必要なものを詰めていく。

 でも、今日は午前中だけで終わるためそこまで荷物はない。

 

 これが高学年に連れて教科書とノートの総量が多くなって泣くことになるのだが、まだ今は一年生だ。

 この新品のランドセルと軽さを今のうちに堪能しておくことにしよう。

 

 一通り荷物をまとめれたので、一階にランドセルを運ぶついでに洗面所によって歯磨きと洗顔と寝癖のチェックだけしておく。

 前世では寝癖がついてようがついてまいがお構いなしに学校に行っていたのだが、今は一応偉い人の子供なのだ。

 俺のせいで母さんが悪く言われるのだけは嫌なので、今世では身だしなみにも気を使っている。...必要最低限だけだけど。

 

 寝癖のチェックが終わった俺は、リビングに顔を出し母さんとじいやに「行ってきます」とだけ伝えに行き、足早に玄関に向かう。

 後ろで車で行ってあげるーとか聞こえた気もするが、それはきっと空耳だ。気にせずにさっさと家を出よう。

 

 庭で草花たちに水をやっている庭師とか、たまたますれ違った執事やメイドたちに挨拶をしながら敷地内を出る。

 無駄に広いせいで、家からそう遠くないはずなのに学校が遠く感じてしまう。

 ...どうならないかな。

 

 でも母さん曰く「あら、こんなので大きいとか言っていたら本家に行ったらやっていけないわよ?あそこの広さはお母さんもおかしいと思うもの」らしい。

 それを聞いた俺は、よほどのことがない限り京都にあるおじいちゃんたちが住む本家には行かないようにしようと決意するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今俺が通っている「帝丹小学校」に着いた俺は、取り敢えず上履きに履き替え、自分の教室へと向かう。

 

 教室の中に入ると一週間のうちにできた友達もあんまり話したことがない人も関係なくすっごい心配された。

 まぁ、その気持ちはわかる。

 急に一週間も休んでたら気になるわな、心配になるよな。

 分かる、俺にもちゃんと分かるよ。

 

 ...だから頼むから、離れてくれ。

 

 質問には答えるよ、でもせめて荷物置かせて。

 自分の席に座らせてくれ、話はそれからだ。

 

 必死でクラスメイト達をなだめつつ、自分の席に座り荷物をかたずけ、質問攻めの臨戦態勢に入る。

 そっからは俺の周りに群がる皆からの質問に片っ端から答えていき、全員が納得して自分の席に戻る頃には結構ボロボロになっていた。

 

 ......子供が嫌いなわけじゃない。むしろ好きな部類だと自負している。

 だけどこれはほんとに疲れた。

 子供って音量調節できないのかな。それとも周りの声に負けないように張り上げてただけなのか?

 ともかく声がうるさい。

 

 しかも、まだ声変わり来てないじゃん?

 声高いのよ、皆。

 まだ耳の奥で耳鳴りがする。

 

 最初っから結構散々な目にあったけど、まぁいいや。

 子供はみんな可愛いってことで、この件は忘れよう。

 ...思い出しただけで耳鳴りがするし。

 

 その後は先生に呼び出されたり、普通に授業を受けたりした。

 

 先生に呼び出されたのはあれだ。

 別に俺が悪いことしたとかそういうわけではなくて、体調はもう大丈夫かっていう確認と、しんどくなったらすぐに保健室に行くか、先生に言ってねっていうことを言われた。

 

 あぁ、そうだ。

 一つだけ言っておこう。

 確かにここは工藤新一、毛利蘭、鈴木園子の母校で、少年探偵団と江戸川コナン、灰原哀が通っている『帝丹小学校』だ。

 

 でも確認したところ、工藤新一たちも少年探偵団たちもいない。

 つまりは、原作はまだ始まっていないのだ。

 

 その証拠が英理さんがまだ毛利探偵と別居してないという事実とそもそも今、毛利蘭は2歳だったはず。

 それに、米花町ことヨハネスブルクもあまり機能していない。

 

 どういうことか簡単に説明すると、確かに都道府県別にみると東都は若干犯罪率は高い。

 でも、数がおかしくて目を見張るほど頻繁には事件は起こっていない。許容範囲内っていうわけ。

 

 多分俺が考えるに、この世界はというか米花町は、主人公である工藤新一が成長するにつれて犯罪が発生しやすくなるんだろう。

 どういう原理かなんて知らないけど。

 

 でも考えてみて?

 工藤新一だって最初は赤ん坊だ。

 最初からあんなキレッキレな推理ができるわけじゃない。

 でも、米花町の事件の大半は彼が解決してきた。

 

 ...じゃあ、彼が推理できない幼少期、ひいてはそもそも生まれていない時、あんなに大量の事件を警察は裁けるか?

 

 答えは否だと俺は思っている。

 

 その結果がこれだ。

 つまりは、米花町が、東都が犯罪都市で怖いんじゃない。

 工藤新一の周りで何故か事件が起こるから、彼が住んでいる米花町が結果的に犯罪が多くなってしまっているのだ。

 

 そう、米花町は悪くない。

 全ては例の名探偵が悪いのだ。

 むしろ米花町、及び東都は被害者だといえる。

 

 ...ま、彼のせいで事件が起こっていると考えたとしても、結局は解決してるからプラマイゼロともとれるけど。

 

 ...あー、しまった。授業がつまんないからと言って別の事考えてた。いっけね。

 

 まぁ、何はともあれ、休み時間になったんだから母さんから貸してもらってる本でも読みますか。

 

 そう思って、ランドセルの手を伸ばし、本を取りだし読み始める。

 ...っとそこに子供たちが俺の机の周りに群がり始めたから何事かと思って話を聞くと、鬼ごっこするから一緒に遊ぼ!って言われた。

 

 子供はいいねぇ、体力有り余ってるから外に出て走り回ろうとか思えるんだから。

 ああそうだよ、俺も体はちゃんと子供だ。この子達と同じ年齢だよ。

 ...でもな、体に精神が追い付いてこない。走るとか考えた時点で走った後の辛さが読みあがってくるからちょっと遠慮したい。

 

 たまになら付き合うけど、今は病み上がりってことで勘弁してもらおう。

 

 「そっか...、まだしんどいよな。じゃあドッジボールにしよ!んで、紫陽には審判をしたらいいよ。だってそうしたら紫陽もいっしょに遊べるぜ」

 

 そう言って鬼ごっこをしようと言い出した言い出しっぺがにかっと笑う。

 周りの子たちも「それで紫陽もいっしょに遊べれるなら」と同意している。

 

 ...あぁ、やっぱり子供はいいよな。

 何も考えずに優しい解決策をぱっと思いつき、すぐにそれを提案してくる。

 学年が上がるにつれ、カーストとか、グループとかできてくるからすぐに提案するなんて芸当はなかなか出来ない。

 この子達は本当に心が綺麗だ。

 願わくばこのままいじめとか派閥同士とかの争いなんて起きずに仲良く育っていってほしい。

 

 ......人間の性質上、そんなことを願っても無駄だって知ってはいるけど、願わずにいられないだろ?

 この笑顔見てしまったのなら。

 なるべくそうならないように、俺が少しだけ手を引いてあげよう。

 いじめなんてやってるときは楽しいのかもしれない。優越感に浸れるのかもしれない。あの子がいじめられてるから私は大丈夫だって安心できるのかもしれない。

 

 ...でもさ、大人になったら大半の奴は分かるんだ。

 「何であんなことしてしまったんだろう」って。それが分からないのは心が十分に育たなかったってことなんだろうな。可哀そうに。

 そう感じられても、してしまったという過去は変わらないし、その罪と一生向き合っていかなくちゃならない。

 

 いじめられるって本当につらいんだぜ?お前らには分かるのか?

 「学校はどうだった?」って聞かれるたんびに「...楽しかったよ」って嘘を吐く。

 何度も何度も嘘を重ねる。

 

 本当は「苦しい」って、「ツラい」って、「助けて...!」って言いたいんだ。

 

 ......でも言えない。両親を心配させたくないから。これは自分の問題だから。

 そう思って限界まで我慢するんだ。限界を超えたら?壊れるに決まってるだろ。

 

 だから、いじめられてる人は限界を振り切るまでに誰かに相談する。

 誰でもいいんだ。別に親じゃなくても、祖父母でもいいし、友達がいるなら少しぐらい「ツラい」って愚痴ってもいい。

 いじめられてる人がどうしても言えなかったら、その友達が先生に相談してやってほしい。

 

 いるんだろ?見て見ぬふりして「自分は関係ない」って自分に言い聞かせてる奴。

 ああ、分かるよその気持ち。

 安全だもんな、そのポジション。自分から危険な場所になんて行きたくないよな?

 

 ......でもさ、それで何もしないうちに死んだらどうするんだ?

 自殺をしてしまったら。

 お前らも同罪だ。後悔だけが後に残る。

 

 そうなりたくないんなら、匿名で先生にチクればいい。

 チクりが悪いなんて誰が決めた?俺は悪いなんて思わない。

 チクったことでいじめられている子が少しでも楽になるのなら君はその子にとってのヒーローだ。

 怖がる心配なんてない。

 

 ...なんて考えたけど、こいつらにとっては遠い未来の話だ。俺の杞憂で終わることを願おう。

 

 俺は審判の案に同意し、皆と一緒に校庭に出る。

 元々あったドッジボールのコートの線が引かれてるところまで行き、その近くの木陰で審判をすることにする。

 

 「そんな遠くで見えるのか?」って聞かれたから、「うん、ちゃんと見えるから安心して」と返し、ドッジボールの観戦を始める。

 もちろん、ちゃんと審判もしながら。

 

 前世ではずっとパソコンばっかり触ってたから、ゆっくりとだが確実に目が悪くなっていって、結構分厚めの眼鏡をかけないと周りが見えなかったのだが、紫陽の目はすごくいい。

 百夜家は、血筋的に目がいいらしく、その恩恵をちゃんと携わってるってわけだ。

 ちなみに、視覚だけではなく他の五感も、運動神経も、思考速度も、記憶力もかなりいいため、何にもしなくても大抵のことはこなせる。

 

 ...血筋ってすごいね。つまり簡単に言えば、百夜家の一族の皆は俺と同じスペックだっていう事だよ?

 百夜家パネェっすわ。

 

 そんなこんなで休み時間も終わり、残りの授業も終わったため帰宅の時間となった。

 

 うどんだ。うどんが俺を待っている。

 つまりさっさと帰らないといけない。じゃあなお前ら。

 

 俺は最近の中で一番の速さを出しながら家に向かって駆けていく。

 走るのツラいってさっき言ってなかったかって?俺は意味もなく走るのが辛いっていうだけだ。

 走るための目的がある場合はツラくならない。運動神経いいし、体力無尽蔵だしこの体。

 

 家の敷地に着いた俺は、速度を落とすなんてことはせず家に向かって走り、玄関ドアを開けて二階へ続く階段を駆け上がる。

 そのまま、自分の勉強部屋にランドセルを放り______なんてことは母さんとじいやが恐いからせずゆっくりと下す。

 そして、階段を使うのが面倒だと思った俺は、二階から飛び降り着地する。ここ、コナンの世界。そして、俺、スペック高い。つまり、できるかなぁっていう軽い気持ちでやったらできたため使用人たちが見ていないところではやっている。もちろん緊急事態の時のみ。今は緊急事態。

 洗面所に行ってしっかり手を洗うことも忘れずに。

 そして、ダイニングに飛び込む前に、息を整え、さもゆっくり来ましたよ感を出しつつダイニングに入る。

 

 母さんは既に席についていたため、俺も自分の席に向かい、ちゃんと「ただいま」という。

 母さんも笑顔で「お帰り」と言ってくれた。

 

 母さんはいつ見ても綺麗だ。

 間違いない。

 

 「...ねぇ紫陽?家の中で走っちゃ駄目ってお母さん言ったでしょ?なんで破ったのかお母さんに説明してほしいなぁ」

 

 前言撤回、うちの母さんは綺麗なのは間違いないけど、美人な人ほど怒ると怖いっていうだろ?

 すっげぇ怖い。

 般若だ般若。般若が見える。

 

 慌てて母さんに弁解をすると母さんは、すごい綺麗に笑いながら俺に説教を始めた。

 

 ごめんなさい、俺が悪かったです。

 二度とやらないとは言えないけど極力やりません。

 痛い痛い痛い痛い!やめてやめて!ごめんなさい!二度としません!二度とやんないから許してください。

 

 ......あぁ痛かった。

 小指...俺の小指......よかった、ちゃんとついてる。

 脱臼と折れない範囲で絶妙に痛い位置をひねってきた。

 

 幸い利き手じゃない方の小指だったため、うどんを食べるのには支障はない。

 まぁ、それを見越して利き手じゃない方の手の小指をひねったんだろうけど。

 

 ......取り敢えず、母さん怖い。うどん美味しい。

 これからは自分の小指のためにも母さんを怒らせないようにしよう。

 これからもじいやのうどんは食べていこう。

 

 うん、そうしよう。

 

 うどんを啜りながら、そう誓うのであった。




 いじめってつらいですよね。
 主人公を通してそのことを伝えられたなら幸いです。
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