社畜の俺がコナンの世界でも社畜になってしまった件について   作:願わくば神様転生でチートをかましたい

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 なんか、タイトルがすっごくツンデレっぽくなった。
 ツンデレっていいですよね。
 もの凄く可愛い。


第四話 泣いてねぇから(泣)

 英理さん達がたぁーいせつな話をしている最中、ずっと蘭ちゃんと遊んでいた。

 

 絵を描いたり、積み木をしたり、お菓子を食べたり、絵本を読んであげたり、色々だ。

 そうこうしているうちに、蘭ちゃんが疲れてしまったのか、うとうとし始めたので、蘭ちゃんの体を抱き上げ、この部屋にある二人掛けのソファに寝かせてやり、今着ている服だけでは寒いだろうから俺が着ていた上着をかけてあげると、目をつぶって寝てしまった。

 

 蘭ちゃんが寝てしまったことだけを伝えに行こうとしたら、急に蘭ちゃんが起き上がり、俺の服を掴んで泣きそうな顔でこっちを見てきた。

 

 まるで、「蘭を一人にしないで」とばかりに。

 

 ......はぁーーーーーーーーーーー、何だこの生き物は。可愛すぎかよ。

 

 内心ではそう思って無表情になっているのだが、俺の無表情って結構怖いんだよな。

 母さん曰く「紫陽の無表情って感情が抜け落ちてて感情のある人間には見えないよのよね」らしい。

 それを母さんに言われた時はちょっとだけ傷ついたんだけど、メイドさんたちが少しだけ怖がってたらしく、以後気を付けるようにはしている。

 

 なのでね、内心ですんってなってるのを隠すために笑みを浮かべ、どこにも行かないよと言ってソファの足元に座る。

 

 蘭ちゃんはほっとしたのか、また眠りについたのだけど、手は離してくれないみたい。今もシャツを握られている。

 正直、この束縛は可愛すぎる。

 いやぁ、和みますなぁ。

 

 ただ、俺の上着だけじゃ寒いかもしれないので、俺の出せる限界の小さい声でメイドを呼び、予備のブランケットと、リビングにある本を取ってきてほしいとだけ伝える。

 ついでに、蘭ちゃんが寝てしまったということ伝えて欲しいとも。

 

 優秀なメイドさんは、蘭ちゃんに丁度いいサイズのブランケットを持ってきてくれ、読みかけの本もちゃんと持ってきてくれた。

 しかもクッションも。

 少し硬めのクッションではなく、柔らかいクッションね。

 

 ソファではなく、床で本を読むとなると俺の尻に結構なダメージがいく。

 だって、絨毯が敷かれてるとはいえ、床が固いことに変わりはないんだもの。皆だって、床で座って本を読んでたら痺れるだろう?尻が。

 

 この前、少しだけ愚痴ったことがあるんだよね。メイドさんに。

 でも、クッションを持ってきてくれたメイドさんとは別の人に言ったから、考えられることはただ一つ。

 メイドの間での情報共有ができている...!

 

 素晴らしい。

 

 しかも、クッションを一つではなく二つ持ってきてくれた辺りが相当優秀だ。

 

 一つは尻に敷いてダメージ軽減、もう一つは抱きかかえるか、背中とソファの間に挟むかのどちらか二択で俺は後者だ。

 それを見越して二つ持ってくるとは......。やるなお主。

 

 持ってきてくれたメイドさんと目を合わせると同じタイミングで親指を立てる。キメ顔も忘れずに。

 

 やはり、俺の予想は正しかったようだ。

 俺と同じタイミングで、同じ表情で、親指を立てるとは......。このメイドさんはやり手だ。

 そして、床で本を読むことの辛さと、解決策を知っている。

 おお、同志よ。

 

 なんていう茶番は置いておいて、俺は時間を忘れて本を読む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付けば、英理さんと母さんが話し合いが終わったのか、俺と蘭ちゃんがいる部屋へ入ってきた。

 

 蘭ちゃんは、入ってきた二人の気配に気が付いたのか、眠そうな目を擦りながら体を起こす。

 

 この気配の察知能力は、空手の才能があると認識してもいいのだろうか?

 ......どうやってもあんな怪力少女になってしまう未来なのだろうか。

 それが、「名探偵コナン」の中の「毛利蘭」というキャラクターのいいところではあるんだけどね。

 

 寝て起きたばかりで、上手く体に力が入らないのか、ふらふらしている蘭ちゃんを見て、普通に危ないなと思ったため、蘭ちゃんを抱きかかえる。

 

 英理さんに渡すっていうのも考えたけど、英理さんは荷物持ってるし、どうせうちの使用人が家まで車で送っていくはずだから、玄関までだし俺が抱いて運んでも問題はない。

 何度も言うがこの体、ハイスペックなんでね。

 蘭ちゃんがふらふらしてこけて、打ちどころが悪くて傷が残るなんて嫌だし、別に蘭ちゃんが嫌がってる様子もないからそのまま玄関まで抱っこしていく。

 

 玄関の前に止められた車に英理さんが乗り、俺が抱っこしていた、うとうとしている蘭ちゃんを英理さんに渡すと、さっきまで半眼だった目が急にパチッと開きこちらを見た。

 

 「しよーおにいちゃん、ありがとー!」

 

 そういった蘭ちゃんは、すごく可愛く、元気いっぱいに笑った。

 

 ......なんちゅうこっちゃで。可愛すぎんか?このいきもんは。

 

 前世でも今世でも関西に住んだことがないのに関西弁になってるあたり、かなり動揺してますねぇ。これは。

 

 なんて冷静に自己分析してみたけど、流石にこれは可愛すぎて驚きが隠せずフリーズしていると、だんだん硬直も解けていった。

 

 今までで一番の笑顔を浮かべ、

 

 「こちらこそ、蘭ちゃんありがとう」

 

 そう心から言うことができた。

 

 思えば、心からの純粋な笑顔っていうのは、これが初めてだったのかもしれない。

 ずっと楽しそうにふるまってたつもりだったけど、本当に心から笑えたのが今が初めてだった。

 

 ありがとうな、毛利蘭。...いや、蘭ちゃん。

 

 やっとこの世界で笑えた気がするよ。

 流石だなぁ。

 

 少しだけ俺と離れるのを嫌がっていた蘭ちゃんは、俺がある約束をすることで渋々とではあるもののちゃんという事を聞いて、帰っていった。

 

 「ねぇ、紫陽。さっき蘭ちゃんになんて言ったの?」

 「......それは、蘭ちゃんと俺だけの秘密だよ」

 

 そう言って、また心から笑った俺は上機嫌になりながら家の中へと入っていく。

 

 あんなに主要メンバーとは会いたくないと関係を持ちたくないと思っていたし、それは今でもそう思うのだが。

 今日、蘭ちゃんと出会えたのは、俺という一人の人間にとってすごくいい事だったように思える。

 

 さっき蘭ちゃんに言ったことは、ただ単純に、「また遊ぼう」という内容だけだったのだが、俺にとっては大きな意味がある。

 

 幼稚園に入園するまでは、毛利蘭と遊んでいても彼女は覚えていないだろう。

 

 だから大丈夫だと確信を持って言える。

 また遊ぼう、そう言ったものの、その約束はいつまた果たされるかはわからない。

 

 でもまぁ、少しくらいならいいか。

 

 絶対に関わりたくないと言っていた俺からすれば、結構大きな進歩だろう?

 でも、本当に幼稚園までだ。

 それ以降は関わったら駄目だな。

 俺の平和な生活とはかけ離れてしまうから。

 

 それまでは、あの天使を堪能するとしよう。

 

 ......それにしても、毛利蘭の頭の角、硬かったなぁ。

 

 そう思ったと同時に玄関の扉が閉まった。

 

 そして、何不自由ない日常生活が始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの、蘭ちゃんと出会ってから約一ヶ月が経ち、今は五月の下旬。

 そして、ついに俺の妹か弟が生まれる出産予定日になった。

 検査の結果、弟だということが判明したが、まだ生まれるまでは分からない。

 だから、検査の結果はあてにはせず、弟か妹ということにしている。

 

 ま、多分弟で間違いはないと思うんだけどね。

 最近の医療って進んでるから。前世に比べると劣ってるんだけど、それは誤差の範囲に入るし。

 

 ...というか、出産予定日に生まれることはあんまりなくて、その日から結構前後するっていうから、今日生まれるとは限らないし。

 でも心配で心配で、じいやに駄々こねて学校休んじゃった。

 だって、精神的には愛しい我が子が生まれるって感じだし、血のつながり的に見ても初めての弟だろ?

 心配に決まってる。

 

 たとえ、出産の成功率は上がってきているとしても、今も昔も絶対に成功するなんてことはないんだから。

 無事子供は生まれてきても、母体が亡くなってしまうケースも、どちらも助からないなんてこともあるんだし、心配にならない方がおかしい。

 

 ......あの母さんが死ぬなんて考えられないけど。

 

 ともかくだ。

 俺は心配なの。

 ぜってぇ生まれるまで学校には行かないかんな。

 普段の俺は我儘言わないようにしてんだから、こういう時ぐらいいいでしょ?ねぇ、じいや。

 

 え、だめ?

 

 はは、まさか。じいやがそんなこと言う訳ないじゃないか。

 君はいったい誰なんだね。

 

 ん?じいやだと?

 嘘つけ。そんな血も涙もない非道なことを言う人じゃないぞ。

 ともかく行かないから。無理やり行かせたとしても学校から抜け出して歩いて病院まで行くからね。

 学校に行かせたところで意味ないよ?

 

 逆に、家の中で待ってるときは勉強できるんだけどなぁ。

 

 あれまあ、じいやが折れてくれた。

 あのじいやが折れるなんて珍しい。

 もちろん、無事に生まれたら学校行きますよ。

 別に学校が嫌いという訳ではないんだから。行く理由が見つからなくて困ってはいるけど。

 

 というわけで、弟(仮)が生まれるまで家で待機しておきます。

 最初は母さんの病室で待っておこうかなぁなんて考えたんだけど、あの母さんが許すわけないとじいやに諭されそれは断念した。

 母さんは母さんだから。確かに、ずっと母さんの病室にいるのは俺でもちとキツイな。

 

 今はそわそわしながら、母さんの付き添いのメイドからいつ連絡が来るのかを今か今かと待ち構えている。

 徹夜の準備も完璧だ。

 きっとじいやには寝ろと言われ、母さんにこの事がバレたらそれはもうえらい怒られるんだろうけど、じいやなら言いくるめられるし、母さんに関してはバレなければいいんだから大丈夫でしょ。

 

 案外じいやは俺には甘いのだ。

 

 ...というか、俺があまりにも頑固なのと、普段はあんまり我儘というものしてこなかったから、目を瞑ってくれてるんだと思う。

 じいや様様だ。

 母さんに俺の徹夜の件がバレない確率は極めて低いが、ま、其処はどうにかする。

 

 そもそも、今日の日中に生まれる場合は徹夜なんてしなくていいんだ。

 母さん、頑張って!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 んお?

 あまりそわそわしすぎるのは結構疲れてしまうので、精神統一のために工藤優作の本読んでたんだけど、なんかメイドたちがバタバタしてる気がする。

 そして、こういう時の俺の勘は意外に当たるんだ。

 

 つまり。

 母さん、破水したかな?

 

 取り敢えず、寝っ転がっていた俺はベッドから飛び降り、近くにいたメイドに話を聞く。

 

 俺の予想は的中し、母さんはもう既に分娩室に入ったらしい。

 

 おぉ!おし、行くぞ。病院に。

 

 そう思うが早いか、近くにあった上着をひっつかんで、じいやを引き連れて家を出ると、既に運転手が家の前に車を止めていてくれていた。

 流石は百夜家の使用人。

 それはナイス。

 

 交通違反ギリギリの速度で突っ走り、一番の近道を通ったからか、この前病院に来た時よりもすごく早くに着いた気がする。

 まぁ、通った道全ての信号が青だったら速いわなぁ。

 運がいいことを喜こべばいいのだろうか。それよりも母さんだ。弟(仮)だ。

 

 流石に病院内を走るのはマナー違反だからね。もちろん走ってなんかいないさ。

 俺の中の歩いているといえる範囲の最速を出して、母さんの入っている分娩室まで行く。

 じいやも俺のスピードについてきてくれたし、何にも言われなかったんだから、俺は走ってないんだ。

 これは振りじゃない。

 

 まだ赤ちゃんは生まれてきていないようで、「家族の方はこちらでお待ちください」と看護士さんに言われるがままに近くの長椅子に腰を掛ける。

 じいやは「執事だから」と、俺と一緒に座るのを拒否したものの、もう一度俺が座ってとお願いすると、案外あっさりと座ってくれた。

 何でだろうねぇ?別に、怖い顔でお願い(・・・)したわけでもあるまいし。ほんとに不思議だねぇ。

 

 俺とじいやは、母さんの無事と赤ちゃんの無事を祈りながら、目の前にあるドアを見つめる。

 母さんの苦しそうな声と、看護士さんや医師の励ましの声が扉越しに微かにだけど聞こえる。

 俺は前のめりになって両手を合わせ、まるで何かを祈るような体勢で母さんと赤子を待ち、対してじいやは姿勢を崩さず目を瞑り、じいやも母さんと赤子を待っていた。

 

 そういえば、母さんからじいやについて聞いたことがある。

 じいやは元々、母さんのお父さん、つまり俺からするとおじいちゃんの専属の執事だったらしい。

 とはいっても、俺のじいさんに仕えていた時はじいやはまだ下っ端だったらしく、本当の意味での専属になったのは俺が初めてだと聞いた。

 これから分かるのは、じいやは、母さんの幼少期も知っているという事。

 赤ちゃんの時から、今までの母さんのことを知っているんだ。

 きっと我が子のように思っているのだろう。

 

 横を見た時のじいやは、柄にもなく緊張しているように見れた。

 

 ......俺が生まれてくるときも同じような顔をしてたのかな?なんて考えると、少しだけ面白い。

 今はそんな余裕これっぽっちもないんだけどな!

 

 じいやと二人で待つこと数十分。

 ...いや、数時間は経過したのかな?正確な時間は分からないけど、赤ちゃんの泣き声が扉の向こうから聞こえてきた。

 

 ...よかった。

 扉越しでも余裕で泣き声が聞こえるっていう事は、すごい元気に泣いてるってことだ。

 ひとまずほっとする。

 

 ...母さんは大丈夫だろうか......?

 

 きっと大丈夫だと自分に言い聞かせるんだけど、やっぱり怖くて。

 中から人が出てきて、中の様子を伝えてくるのをただひたすら待つ。

 

 泣き声が聞こえて、約五分ほどたった頃、閉ざされていた扉が開き、中から人が出てきた。

 入っていいですよと言われたため、一目散に母さんに駆け寄る。

 

 母さんは笑っていた。

 

 あ、この書き方だとあれだけど、死んでないからね。

 ちゃんと生きて、自分のすぐ隣で寝ている赤ん坊の顔をさすりながら幸せそうに微笑んでいる。

 

 その様子を見て、肩の力が抜けた。

 じいやも安心したみたいに目を細めて笑っている。

 看護士に、元気な男の子ですよと言われ、俺に初めての弟ができたことを実感し、柄にもなく笑いながら泣いてしまった。

 

 ...ずっと心配で気が張っていて、それが急に抜けたのと、嬉しさが限界にまで溜まり、泣いてしまったのだと思われる。

 今はこうやって冷静に自己分析ができるから大丈夫なんだけど、何分この体で泣いたのが赤ちゃんの時以外では初めてだったため、止め方が分からない。

 

 泣きながら笑ってる様子を周りにいる看護師や医師に見られ、何やらほわほわした雰囲気になったのだが、なんでなんだろう。これはちょっと自分の理解の範疇には収まらなかったようだ。

 じいやはもなんかつられて泣いてるし、母さんはその様子を見てもっと笑顔になった。

 

 母さんにこっちにおいでと手招きされたから、母さんの枕元に近づくと頭を撫でられ、手で軽く涙をぬぐってくれた。

 ......誰かに頭を撫でてもらうなんて、久しぶりで、嬉しくて、ついつい涙が止まらなくなったのはご愛嬌。恥ずかしいから忘れてくれ。

 

 取り敢えず、分娩室から母さんの入院している部屋まで移動し、赤ちゃんをその時に抱っこさせてもらえた。

 

 小さくて、意外と重くて、あったかくて、...愛おしい俺の初めての弟。

 生まれたての赤ちゃんってさ、すっげぇぶっ細工じゃん。正直な話。

 

 確かに、今両腕で抱きかかえている俺の弟も猿みたいで、可愛いとは言えないけどさ。...でも、やっぱり、なんだろうな。外見は可愛くないけど、存在が可愛い。

 そう、そんな感じ。

 顔も、腕も、足も真っ赤っかだけど、それってつまり肌が白いってことだろ?

 しかも母さんの子供なんだ。将来はさぞイケメンになるんだろうなぁ。

 

 よし、幼少期の可愛い時期は存分に愛でてやろう。

 そうでなくても弟という存在は可愛い。超イケメンに育っても愛でてやろう。

 どうなっても愛でてやろう。

 ずっとずぅっと愛でてやろう。

 

 「...ねぇ、お母さん。この子の名前どうするの?」

 

 そういえば名前の話してなかったと思い、ベッドに横たわっている母さんにそう尋ねる。

 

 「そうねぇ。百夜家は代々植物の名前を付けるのが習わしだから、五月の花か植物の名前を付けるけど...」

 

 そういった母さんは、何かを考えこむように顎に指を添える。

 

 五月が旬の花か植物、かぁ。

 何があるかなぁ?思い出せる範囲で名前に使えそうなやつは、「アヤメ」「ユズ」「ユリ」「サツキ」「フジ」ぐらいだと思う。

 この子は男の子だし、「アヤメ」と「ユリ」は候補から外すとして、残るは「ユズ」「サツキ」「フジ」の三つ。

 サツキも男に使えるかは微妙だけど、サツキ君って呼ばれてるのもなんか想像できるんだよね。だから候補から外すことはなかったんだけど。

 

 ...三つ。この三つか。

 どれもいい名前だと思う。

 だからこそ決まらない。

 

 いったん考えることを諦め、赤ちゃんを抱きかかえながら部屋にある窓に向かう。

 この部屋は当たりで、窓の外から季節ごとの花が見られるんだ。

 だからここにしてもらったっていうのもあるんだけどね。

 

 もう花が散ってしまって、葉が茂ってきている桜に、色とりどりの花々。

 今日は雲一つないため、綺麗な青空が広がり、その風景はここが病院だということを忘れるぐらい美しかった。

 

 ん、あれは藤棚かな?

 たくさんの藤の花が咲き乱れてる。

 

 ......決めた。この子の名前は藤。

 俺の大切な弟の名前は藤だ。

 

 思いついたことと、藤という名前にしたい理由を母さんとじいやに話すと意外にもあっさり承諾された。

 俺は、弟の名付け親になったんだ。

 母さんが今日、出産することも知らないクソ親父なんてどうでもいい。

 俺が兄に、この子が父の影を追うのなら父の替わりにだってなってあげよう。

 

 これからの人生が楽しみだ。

 

 数日すると母さんは無事退院し、藤も我が家に来た。

 その時の俺のはしゃぎっぷりは見ものだったと母さんにいじられるのは先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今は、六月。

 既に梅雨の季節に入っているため、学校のみんなは退屈そうだ。

 

 だけどな?退屈だからと言って俺の周りに群がるのはやめろ。

 確かに俺は、面白い遊びをいくつか提案してきたけども、それは前世の記憶があったからこそなんだよね。

 部屋の中でできる遊びなんて限られてるし、俺も室内の遊びのレパートリーは少ない。

 

 ないもんはないの。

 俺本読みたいから体力有り余っててもちょっかいかけてくんな。

 ん?俺にちょっかいかけてかえってくる反応が楽しいって?

 お前らいじめっ子予備軍か。

 一年のうちにそんな才能開花させんでよろしい。

 

 仕方ないので、数少ないレパートリーの中の一つの遊びを伝授する。

 でも結局これってさ、俺がやって、俺が説明して、あってるかどうかを俺が見定めないといけないから、本読めないんだよね。

 ...知ってたよ。...あぁ、読みたかったなぁ。

 

 本を読む時間を取られた腹いせに、このゲームを無双する。

 元々知ってた俺と、今知ったばっかりのこいつらだったら俺が勝つのは当たり前なんだけど、コテンパンにしておく。

 十連勝ぐらいしたところで俺が飽きたため、あとは自分らでやってと言い残し、自分の席に戻る。

 全ての試合を無双していたせいで、あいつらが俺に勝とうと躍起になっているのをしり目に、本を開いて読書を始める。

 

 ...と言いたいところだが、あと一分でホームルーム、小学校で言うところの帰りの会が始まるため、帰る準備だけ先に済ませておく。

 

 帰りの会も終わり、いざ帰るという時にさっきの奴らに引き留められそうになったから、今の最速出して撒く。

 俺はさっさと帰って藤と戯れるんだよ。じゃあな、お前ら。

 

 あいつらの悲しそうな顔が見えた気がするけど気のせいだろ。

 うん、気のせいだ。

 

 ......あぁもう!

 

 仕方ないので引き返し、話を聞くことにする。

 あんな顔を見た後に笑顔で家に帰るなんて出来るわけねぇっての。

 なに?何の用?

 しょうもなかったらすぐに帰るから。

 

 「「「「「紫陽(君)!!お誕生日おめでとう!!!!!」」」」」

 

 ...んえ?

 

 急に聞こえた誕生日を祝う言葉にフリーズする。

 

 ......誕生、日...?

 今日って俺の誕生日だったっけ......?

 いや、確かに誕生日だな。

 

 ......あれ...、やば...なんか...びっくりしすぎて、上手く思考が回らない。

 

 誕生日を祝われたのなんて久しぶりで、もちろんこの体ではあるんだけど。

 ...前世では...なくて......。

 ......上手く...笑えない...。

 

 ありがとうって言いたいのに、上手く口が動かない。

 ...嬉しすぎて、上手くできない。

 

 「......あ...りがと...........」

 

 やっと出てきた言葉は、俺にしては小さく掠れていて他人の声みたいだった。

 きっと赤くなってるだろう顔を隠すために下を向き、皆の顔が見れない。

 

 少しだけ、心の整理がついて、もう一度ありがとうと口にする。

 前を向いて、皆の顔を見ながら、泣きそうになりながら、笑顔で。

 

 そんな俺の素の顔を見たからか、皆は、してやったり顔でちょっとだけ悔しかったけど、この悔しさは心地のいいものだった。

 仲の良い友達に囲まれながら、肩を組みながら、一緒に帰れるところまで帰る。

 

 ...そういえば、小学校に入学してから誰かと一緒に帰ったのは初めてだな。

 めんどくさくて、ずっと一人で帰ってたし、これからもそうするつもりだったけど、......みんなで帰るのもいいなぁなんて思ってしまった。

 

 家に帰ってからも、使用人たちやじいや、母さんに祝われ、......心の底から幸せな一日になった。

 

 自分の部屋に入って、らしくもなく泣いてしまったのは、俺の一人の秘密だ。 




 はーい。藤君が生まれました。
 あんまりコナン要素がないオリキャラばっかりだしてますが、そのうちコナン要素が入ってくるから安心してください。

 軽くオリキャラ紹介。

 百夜藤(ひゃくやふじ)、紫陽の弟。
 きっとこの子も物語のカギになる。

 〘藤の花言葉〙

 「優しさ」「歓迎」「決して離れない」「恋に酔う」
 「welcome(歓迎)」「steadfast(確固たる、しっかりした、忠実な)」

 です。

 意外にこの作者は、名前の意味を考えたり考えなかったりしています。
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