アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです 作:ドレッジキング
キャップって男女問わずモテそうだけど、型月世界にもキャップ信者が現れたりするのかなぁ?(・∀・)ニヤニヤ
それはそうとしてキャップ×士郎って需要あるのかな…?(;^ω^)
士郎は衛宮邸の縁側に座りながら青空を眺めていた。士郎は先程部屋でセイバーから本来マスターとサーヴァントの間でつながっている霊脈が断線している事を告げられた事を思い出す。サーヴァントはマスターからの魔力供給によってこの世に留まっており、魔力が尽きれば消滅してしまう。セイバーは既に昨夜だけでランサー、アーチャー、バーサーカーという3人のサーヴァント達と連戦しているのだ。サーヴァントは戦闘において魔力を消費するのだが、マスターからの魔力供給によって自分の魔力量を回復できる。しかし召喚の際の不手際によって自分と士郎の間で繋がる筈の霊脈が断ち切られている事をセイバーから告げられた。つまりセイバーは士郎から魔力を受ける事ができない状態なのだ。
「セイバー、大丈夫なんだろうか…?」
それだけではない、昨夜自分を助けてくれた3人の外国人教師…スティーブ、クリント、ナターシャの3人の事についてもセイバーは忠告してきた。魔術師ですらない3人をセイバーは快く思っておらず、聖杯戦争を行う上で邪魔になる存在だと思っているらしい。セイバーはスティーブ達を聖杯戦争に介入させない為にも早々に冬木市から出ていくべきだと士郎に言っていた。
更に言えば凛はセイバー以上にスティーブ達を快く思っていない。凛はスティーブ達の事を魔術師達が聖杯をかけて戦う聖杯戦争に首を突っ込んでくるコスプレヒーローと思っているらしく、3人に対して刺々しい態度を隠そうとしない。士郎は昨夜、校庭で戦うアーチャーとランサーの戦闘を見たが故にランサーに殺されかけた。それを考えればスティーブ達も目撃者として始末されても不思議ではない。凛がそのような強行な手段を取らないのは何か考えがあっての事かは分からない。
だが魔術師の養父を持ち、修行の末にようやく投影魔術を扱えるようになった士郎とは異なり、スティーブ達は本当の意味での人間だ。凛からは昨夜「神秘の秘匿」について説明を受けたが、その「神秘の秘匿」という魔術師達に共通する掟を考えればスティーブ達が殺される可能性は非常に高い。聖杯戦争に介入し、挙句にサーヴァントと戦闘まで行ったのだから魔術協会がこのまま黙っている筈がない。だが士郎にとってスティーブはランサーに殺されかけていた所を助けてくれた命の恩人である。
「どうすりゃいいんだ……。ロジャース先生達を聖杯戦争に関わらせないようにするべきか……?」
士郎はセイバーの言う通り、聖杯戦争に介入してきたスティーブ達に聖杯戦争に関わるのをやめるように説得しようかと考えていると、後ろから声を掛けられる。
「やあシロウ、考え事かい?隣に座ってもいいかな?」
「あ、ロジャース先生。俺の隣でよければいいですよ」
士郎がそう言うとスティーブは士郎の隣に座った。
「シロウ、この冬木市で行われる聖杯戦争は危険だ。君には悪いけど、今すぐにでもこの聖杯戦争から手を引いた方がいい。魔術師同士の殺し合いに関わる必要は無いだろう?」
スティーブはまだ未成年者である士郎が聖杯戦争に関わる事を快く思っていない様子だ。だが士郎は昨夜の冬木教会で聖杯戦争に参加する意思をハッキリと言峰に見せた。今更引き返すわけにはいかない。
「ロジャース先生、心配してくれるのはありがたいんですけど俺はもう参加するって決めましたから」
士郎は真剣な眼差しをスティーブに向けた。
「……シロウ、君は勇敢な子だ。だけど、聖杯戦争は危険なんだ。魔術師でもない人間が関わって良い物じゃない」
「それは分かってます。でも、俺は爺さんから…切嗣から魔術について教えてもらいました。だから俺はもう魔術を使える人間なんです。それに俺にはセイバーもいる。遠坂とは一時的とはいえ同盟関係を結んだわけだし」
「そうか……。なら、私達と一緒に戦うしかないね」
「えっ!?いや、あの……」
士郎は困った顔をして言葉に詰まってしまった。そんな士郎を見てスティーブは苦笑を浮かべた。
「私やクリント、ナターシャだってもう聖杯戦争に関わってしまっているんだ。最後まで君に付き合うよ」
「はぁ……。ロジャース先生、ありがとうございます」
士郎はホッと胸を撫で下ろした。士郎から見てもスティーブ・ロジャースという男は文句の付けようがない程の善人だ。士郎はスティーブの事が気になっていた。スティーブは何故自分なんかを助けてくれるのか?という疑問があったからだ。士郎は昨夜、聖杯戦争に参加する意思を示した後、スティーブに訊ねた。するとスティーブは士郎にこう答えた。
―――君の事は私が守る。それが冬木市に来た私達の使命だ。
そう言った時のスティーブの顔は凛々しく、とても格好良かった。士郎は何処となくスティーブという男に惹かれていた。それは士郎自身も自覚がある程で、だからこそスティーブに聖杯戦争について注意された時は思わずドキッとしてしまった。自分の養父である切嗣はどこか陰や憂いを帯びた男であったが、スティーブはどこまでも逞しくて頼れる大人だ。士郎から見ればスティーブは頼れる兄貴分であり、父性溢れるお兄さんといった所だろうか?
そんな士郎に対して凛が声を掛けてくる。
「あら?随分ロジャース先生と仲良いじゃない、衛宮くん」
士郎が後ろを振り向くと、そこにはニヤニヤした顔で自分を見ている凛がいた。凛は士郎に近づいてくると、士郎の肩に手を置いた。
「ロジャース先生と話している時の衛宮くん、なんだか目をキラキラさせていたじゃない?やっぱり、そういう事なのかしら?」
士郎は顔を真っ赤にして慌てふためいた。
「いや、その……別に深い意味はないって言うか……」
凛は士郎の反応を見てクスッと笑みを浮かべた。
「ごめんなさい、ちょっと意地悪だったわね。ロジャース先生って確かに頼り甲斐のある素敵な人よね」
士郎は凛の言葉に首を縦に振った。スティーブは本当にいい人だ。いつも優しく接してくれる。士郎にとってスティーブは理想のヒーロー像に近い。
「リン、お褒めの言葉として取っておくよ」
凛から見てもスティーブは完璧超人に近い男だ。聖杯戦争に介入してくるコスプレヒーローという点を抜きに考えれば世の女性からさぞモテるだろう。事実、スティーブは穂群原学園の女生徒達から非常に人気がある。最も、女生徒のみならず男子生徒からの人気も凄いのだが。スティーブは生まれつき人を惹きつけるカリスマ性を備えているのかもしれない。凛はスティーブの人間性自体は嫌いではないし、普通に良い大人の見本だと思っている。しかし凛はスティーブの事が少し苦手だった。自分が捻くれているせいだろうか、スティーブに対してどうも苦手意識が芽生えてしまうのだ。
「それじゃ衛宮くん、ちょっと居間に来てくれる?朝食当番と夕食当番を決めたいから」
「ん?分かった直ぐに行く」
士郎は凛に連れられて衛宮邸の居間へと向かった。残されたスティーブは縁側に座りながら空を眺める。この世界に来る前、衛宮士郎についての情報をストレンジから聞かされていた。10年前の冬木の聖杯戦争で起きた火災によって実の両親を亡くし、魔術師である衛宮切嗣に引き取られたという経歴にも一通り目を通したが、実の家族の死の原因となった聖杯戦争にこうして参加するのは何の因果だろうか?そう思いながらもスティーブは士郎と凛を見送った。
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とりあえず衛宮邸に居候させてもらう対価として、交代制で夕食や朝食を作る事になった。クリントとナターシャは士郎から料理の手ほどきを受けていたが、凝った家庭料理を作りなれていないアメリカ人であるクリントは初めて作る日本料理に苦戦していた。シリアル食品が広く普及しているアメリカでは、朝はトーストと牛乳、昼はホットドッグとコーラ、夜はピザとビールといった具合に簡単に済ませてしまう。その為、手軽なインスタントフードばかり食べていたクリントとナターシャにとって、日本の家庭料理は難易度が高かった。
「ちきしょう…思った以上に難しいぜ…」
クリントは包丁で豆腐を均等に切り分けながら呟いた。一方、士郎は隣でネギを切るのに夢中になっている。士郎は慣れた手つきでネギを切り終え、鍋に水を入れて火にかける。
「よし!それじゃあ次は出汁の準備だ!」
士郎は冷蔵庫から昆布を取り出した。それを見ていたナターシャは感心した様子だ。
「シロウ、貴方って凄いわね。こんな複雑な工程を何の迷いもなく進めていくなんて」
士郎は苦笑いを浮かべた。
「まぁ、桜にも手伝ってもらってるからな。それに俺も初めて料理を作った時は苦労したもんだ」
桜に対して料理を指導できる程に料理上手な士郎は、クリントとナターシャにも料理の指導を行う。土地柄なのかアメリカでは日本のように細かい料理の技術や家庭料理が発達していないのだ。それ故にホットドッグやハンバーガーといった簡単な料理か、冷凍食品で済ませてしまう事が多い。だが士郎の教え方が上手いお陰でクリントもようやく和食作りに慣れ始めてきた。
料理を作っている士郎、クリント、ナターシャの横で、凛とセイバーは昨夜のバーサーカーの事について話し合っている。
「イリヤスフィール……バーサーカーのマスターですね。凛は彼女を知っているようでしたが」
「……まあね、 名前ぐらいは知ってる。 アインツベルンは何回か聖杯に届きそうになったっていう魔術師の家系だから」
「……聖杯戦争には慣れている、という事ですね」
「でしょうね。 他の連中がどうだか知らないけど、イリヤスフィールは最大の障害と見て間違いないわ。本来バーサーカーっていう役割は力の弱い英雄を強化するものよ。理性を代償にして英霊を強くするんだけど、そういった“凶暴化した英雄”の制御には莫大な魔力を必要とする。たとえば貴女がバーサーカーになったら――――」
「このように話をする事もできませんね。 協力者としての機能を一切排除し、戦闘能力だけを特化させたのがバーサーカーです。 ですがそれは手負いの獅子を従えるようなもの。 並の魔術師ではまず操れません」
「えぇ、狂戦士のクラスはそういう特性があるからね」
凛とセイバーが話をしている横で、士郎、クリント、ナターシャは出来上がった夕食を居間のテーブルの上に置いた。クリントとナターシャは初挑戦の和食だったが、どうにか完成させる事ができた。
「お二人さん、晩飯の時間だぜ?」
クリントは会話しているセイバーと凛に声をかける。セイバーと凛は机の前に座り、並べられた夕食を見る。
「バートン先生とロマノヴァ先生まで夕食を作ってくれるとは思わなかったけど。ところで衛宮くん、ロジャース先生と随分仲良さそうだったじゃない」
凛は士郎が廊下の縁側でスティーブと話をしていた時の話題を振る。
「なーんか衛宮くんはロジャース先生の顔を見て目を輝かせていたけど…もしかして衛宮くんってロジャース先生の事が好きなの?」
凛は嫌らしい笑みを浮かべながら士郎に尋ねる。そんな凛の言葉を聞いた士郎は顔を赤らめながら凛に反論する。
「そ、そんなんじゃないぞ!ただ……あの人は凄い人だと思うから……俺なんかよりずっと立派な大人だよ……」
だが凛はニヤニヤした顔で士郎を見つめる。
「衛宮くん、顔が赤いわよ。もしかして本当に惚れちゃった?」
「ち、違う!」
「あら?そうなんだ。じゃあ、なんなのよ?」
「……い、言えない」
「もしかして衛宮くんってソッチ系だったりするの?そりゃ人には言えないわよね~。同性のお兄さんを好きになるなんて」
凛は実に悪魔的な笑顔を浮かべながら士郎をからかう。
「そりゃキャップは多くのヒーローから好かれてるからな。同性だろうが異性だろうがイチコロだぜ。それにシロウ、同性愛ってのは恥じゃないんだ。俺の母国じゃ同性愛者に対する権利が保障されているんだぜ?こっちなら堂々とカミングアウトできるからな」
「ば、バートン先生!?勝手に俺をゲイにしないでください!!」
士郎は顔を茹蛸のように真っ赤にしながらクリントに抗議をする。
「そうやって顔を赤らめている時点で怪しさ満点じゃない…」
凛は顔を紅潮させながら動揺している士郎に呆れる。それからスティーブも居間に来て士郎達と一緒に夕食を楽しんだ。夕食を平らげたクリントは食後の眠気からか居間の畳に雑魚寝しつつ夢を見ていた。
「マカリオス、アデーレ……この料理もっとあるか……?」
どうやらクリントは夢の中で料理を食べているようだ。しかも誰かと常時会話していると思う位に寝言が多い。スティーブとナターシャはクリントの寝言が気になりつつも今後の事について話し合う事にした。
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パニッシャーは手枷を付けられている状態で独房の中に閉じ込められている。だがこの状況でもパニッシャーは冷静だった。何故自分が独房の中にいるのか、その理由を知っている。今この状況は所謂「夢」の中だ。ここ数日間、連続して同じ夢を見ているが、夢はどうも地続きで繋がっているらしい。パニッシャーは手枷を嵌められた自分の両腕を見る。その光景を見ても特に動揺する事はなかった。それは既に慣れた状況だからである。そもそも自分は最初からこういう存在なのだから。今自分がいる独房は所謂「懲罰房」で、何らかの罪を犯した英霊がここに入れられるという話を芸術家の少女から聞いた。今自分がこうして殺されずにここに閉じ込められているのには恐らく理由があるのだろう。食堂で派手に銃撃をかまし、複数の英霊を負傷させるという所業を行った男に対して随分と甘い処罰ではないかとパニッシャーは思った。銃撃した理由?それは今更問うまでもない。パニッシャーは己のするべき事をしただけである。食堂で暴れた末に大盾を持った少女に取り押さえられ、この懲罰房に入れられたわけだが…。
そんなパニッシャーに対して懲罰房の外から声を掛ける存在がいた。杖を持った芸術家の少女だ。少女はパニッシャーに対して気さくに声を掛けてくる。
「やぁ、元気にしているかい?君の様子が気になって来てみたんだ」
芸術家の少女はパニッシャーに話しかけた。
「君は随分と落ち着いているね。この状況をどう思っているのかな?」
「……答えなきゃいけない義務でもあるのか?」
パニッシャーは外にいる芸術家の少女に悪態を突く。大方食堂で英霊を銃撃した件について尋ねてきたのだろう。芸術家の少女からは敵意や嫌悪のようなものは感じられない。ただ純粋にパニッシャーの事が心配だから様子を見に来たといった様子だった。
「まぁ、そう言わないでくれよ。君が食堂の一件を起こしたのは私も知っている。けど君は何であんな真似をしたんだい?」
芸術家の少女は何故銃撃したのか?とパニッシャーに尋ねてきた。
「言うまでもない、俺が銃を撃った相手が「悪」だったからだ。俺は「悪」は許さない、だから殺す」
パニッシャーは実にシンプルに答えた。犯罪者といえどもアベンジャーズを始めとした他のヒーローはまず捕縛して司法の裁きに委ねるが、パニッシャーは違う。相手が犯罪者…悪であれば躊躇なく引き金を引く。犯罪者を生き永らえさせる理由はない、更生させる必要もない、改心するチャンスも与えない。芸術家の少女はそんなパニッシャーの言葉に嘆息する。
「なるほどね……。確かに君の言い分は分かるよ。悪人は殺せ、実に単純だ。けどね、私は君の考えは間違っていると思うよ」
芸術家の少女のその言葉にパニッシャーは眉間にシワを寄せた。
「……何だと?」
「君はさっき「悪は死すべし」と言ったが、それは極論だ。人間は誰しも善の心を持っている。それなのに一方的に悪い奴を殺すなんて事はあってはならない。君だって本当は分かっているはずだ」
少女はそう言ったがパニッシャーは引き下がらなかった。
「俺はヘルズキッチンで犯罪者共の…悪党共の薄汚れた部分を飽きる程見てきた。連中が無辜の市民を何十人殺そうが司法は「更生」という名のチャンスを与えようとする。連中に殺された人間には二度と「チャンス」なんか訪れないのにも関わらず、だ。結局死んだ人間は二の次、生きている人間…犯罪者共の人権の方が大事なのさ。人権尊重っていうのも考え物だ」
パニッシャーは吐き捨てるように言う。
「けど、だからと言って君が犯罪者を勝手に裁いて良い理由にはならない」
少女はパニッシャーのしている行いを明確に否定した。パニッシャーとて他のヒーローから何度も言われてきた。「犯罪者を殺すのはヒーローの道義に反する」と。遵法精神で犯罪者の捕縛に留めるヒーロー達は犯罪者の更生に期待しているに過ぎない。だがパニッシャーは違う。悪は躊躇なく殺す、悪は容赦なく断罪する。それで被害者がいなくなるのなら御の字だ。
「パニッシャー、確かに悪人を裁くのはある意味では正しいのかもしれない。けど、君の行動はヒーローや英雄のそれじゃない。君の戦い方はまるで殺人鬼だ。君の戦い方を認めるわけにはいかない」
芸術家の少女はそう言った。パニッシャーは鼻を鳴らす。
「俺は俺のやり方で戦うだけだ。お前達にどうこう言われる筋合いはない」
パニッシャーはそう言って芸術家の少女に背を向けた。
「パニッシャー、君は一体何の為に戦っているんだい?」
芸術家の少女はパニッシャーに尋ねた。
「純粋に正義の為ってわけでもないだろう? 私から見れば君は……ただ自分の怒りに任せて行動しているように見える」
芸術家の少女の言葉を聞いたパニッシャーは黙り込んだ。
「一体何が君をそこまで駆り立てるんだい?君は何故そんなにも「悪」を憎む?」
芸術家の少女はそう尋ねる。
「…………」
パニッシャーは何も答えない。
「君が悪人を嫌悪するのは分かる。そりゃ私だって悪人は嫌いだ。けど、明らかに君はやり過ぎている。悪人を殺すのは構わないが、悪人を殺せば必ず誰かが悲しんで、苦しんで、涙を流す。悪人を殺したところで、君の心は晴れないはずだ」
芸術家の少女はそう言った。しかしパニッシャーは黙ったままだ。
「君は……本当は何をしたいんだ? 悪人を殺して満足しているのか? それとも……悪人を断罪する事に快感を覚えているのかい?」
芸術家の少女の言葉にパニッシャーは黙り込んだままだった。
「パニッシャー、君は悪人を裁く事で……自分の心の安寧を得ているんじゃないのかな?」
芸術家の少女はパニッシャーにそう言った。が…それはパニッシャーに対して虎の尾を踏む行為に等しい。パニッシャーは立ち上がると独房の窓から芸術家の少女を睨みながら言う。
「……それ以上言うな。でなきゃ檻の中にいようとお前を殺す」
パニッシャーはそう言った。芸術家の少女はパニッシャーの殺気を肌で感じ取るも、芸術家の少女は怯まずにパニッシャーに言う。
「パニッシャー、君の心は壊れている。君は大勢の犯罪者を自分の手で殺してきた。けどね……君は悪人を殺せば殺すほど自分の心が荒んでいく事に気が付いていない。君は悪人を殺す度に……自分の心を自分で壊しているんだ」
芸術家の少女の瞳は真っ直ぐにパニッシャーを見つめていた。そうして芸術家の少女は無言でパニッシャーを見つめた後、懲罰房から去っていく。芸術家の少女の言っている事は間違いではない、だがパニッシャーは悪を許さない、悪を認めない、悪を許容しない。それが彼の信念であり、それ故に彼は悪を殺す。
それから一時間程経過した。パニッシャーは独房の中でひたすらに悪に対する怒りを募らせていた所、今度は赤髪の美女が尋ねてきた。彼女も英霊であり、ケルト族の女王だと聞く。赤髪の美女は檻の中にいるパニッシャーに声を掛けてきた。
「ちょっといいかな?パニッシャー」
「……」
パニッシャーは黙り込んだ。こうも気さくに声を掛けられては答えづらい事この上ない。同じ英霊を銃撃した犯人であるパニッシャーに対して赤髪の美女は親しみすら感じる言葉を掛けてきたのだ。
「食堂では派手にやらかしたね。君の噂を聞いて驚いたよ」
「……」
「まぁ、君の気持ちは分かるけどさ、だからって女の子に手を上げるなんて良くないと思うな」
「…奴が"女の子"なんてものに見えるのか?」
パニッシャーは自分が食堂で銃撃を浴びせた女性サーヴァントについて思い出す。確かに彼女の姿を見れば"女の子"などと言う表現は似つかわしくないだろう。
「男だろうが女だろうが悪人は裁かれるべきだ」
「極端だねぇ。アンタがどういう理由でそこまで悪を憎むのかは分からないけど、一つだけ言わせて。そのままだったらアンタは間違いなく戻れなくなる。悪を憎んで、悪を許さず、悪を殺す…。それは本当に正しいことなのかしら?かくいうあたしもこうしてアンタに説教できるような立場じゃないんだけどね。アンタは昔のアタシに似ている。だからこそ忠告しておくわ。これ以上、自分の心を壊してはダメ。自分を壊してまで悪を許せないっていうのは、ただの破滅願望とそう変わらない。それは正義なんかじゃなくて、単なる呪いよ。その先には何もない。何も残らない」
赤髪の美女は懲罰房にいるパニッシャーに対してそう言った。パニッシャーは黙ったまま何も答えなかった。パニッシャーは独房の中で考えていた。悪人は許してはならない、悪を許す事は悪を容認する事に等しい。だからこそ自分は殺してきた。暴行犯を、殺人犯を、詐欺師を、レイプ魔を殺した。マフィアを殺した、ギャングを殺した。悪人を、犯罪者を殺した。殺した。殺した。殺した…。血塗られた両手を見ても何とも思わない自分にパニッシャーは何の疑問も抱かなかった。
あの日、家族がセントラルパークで死んだ日から全てが変わった。あの日、あの場所で妻、娘、息子が殺されていたからこそ今の自分がある。だから自分は犯罪者を殺すのだ。一匹残らず根絶する、一人も残さず淘汰する。その考えで今日まで戦ってきた。例え他のヒーローから白い眼で見られようとも自分の主義主張を曲げなかった。
―――――つまらない
不殺を是とする他のヒーローに対してパニッシャーが抱いた感情がこれだ。なぜ司法の裁きに委ねるのか、なぜ捕らるだけで満足するのか、なぜ更生の機会を与えるのか、なぜ刑務所に入れるだけで済ませるのか。
―――――お前達は甘いんだ
パニッシャーはそう言い放った。パニッシャーは他のヒーローとは違う。犯罪者を許さない、犯罪者を生かさない、犯罪者を認めない。パニッシャーはそう信じて疑わなかった。パニッシャーは悪人を許せない。悪人を見逃す事が出来ない。悪人を野放しにしてしまえば、また誰かを傷つけてしまうかもしれない。悪人を裁かずして、一体誰が悪人を裁くというのか?悪人を裁くのは法だ。だが法というのは万能ではない。必ずその法の抜け道を探してくる悪党が出てくる。
そしてそんな悪党に自分の家族は殺された。司法や警察でさえ手が出せない強大なマフィアが相手では法律など意味があるのだろうか?然るべき究極の状況では法律など無力なのだ。法の通用しない「悪」の前に市民は無力だという事を他のヒーローは理解できていない。赤髪の美女は暫く独房にいるパニッシャーを無言で見つめると、去っていった。それから1時間もしない内に新たな来客が来た。随分とこの施設では自分は人気者なのだとパニッシャーは自嘲する。今度は人間嫌いの吸血鬼…アサシンのサーヴァントである吸血鬼の女だ。吸血鬼の女は懲罰房にいるパニッシャーに対して憎まれ口を叩いてきた。
「ふんっ、相変わらず陰気臭い顔ね。アンタみたいな奴がいるからこの世界はいつまで経っても変わらないのよ」
「俺を嘲笑いに来ただけならさっさと帰れ。俺はお前のストレス発散の道具じゃないんだ」
パニッシャーは冷たくあしらった。すると吸血鬼の女は眉を潜める。
「悪人を始末するっていう大義名分で大量殺人を行うのが正義の味方だって言うの? ハッ、笑わせないでくれる?」
「勘違いしているようだが、俺は自分の事を"正義の味方"なんて思った事はないし、ましてや他人に対して名乗った事もない。それにお前には関係のない話だ」
「あんたが何を考えていようが勝手だけどね、私にとっては迷惑なのよ。あんたのその独善的な思考、如何にも人間らしいわ。だから私は嫌いなの。あんたをこのまま置いておくとこっちの気分まで悪くなりそう。……まぁ、いいか。どうせ今日限りだし」
そう言って吸血鬼の女は去って行った。パニッシャーは溜息をつく。
「……何なんだ、あいつは」
この施設にいる英霊は変わり者が多い。そのバリエーションはアベンジャーズやX-MEN以上と言っていいだろう。王族なり軍人なり科学者なり作家なり実に多種多様な連中がいる。暫くすると自分を拘束した亜麻色の髪の毛の少女が懲罰房の前に来た。亜麻色の髪の少女は懲罰房にいるパニッシャーに声を掛けてくる。
「えっと…パニッシャーさん。少しお話してもよろしいでしょうか?」
パニッシャーは答えなかった。この娘は■■■■のサーヴァントであり、食堂で暴れたパニッシャーを取り押さえてこの懲罰房に入れた。
「あなたは食堂で何故彼女に発砲したのでしょうか?」
「決まっている。あの女はこれまで何人もの人間を食い殺しているんだろう?なら犠牲が出る前に俺が対処したまでだ。生前に犯した罪なら帳消しに出来ると思っているんなら大間違いだぞ?俺の中には刑期満了や時効なんていう単語は存在しない。大体お前等は悪党に優しすぎる」
「それでもいきなり問答無用で銃を発砲するというのは間違っていると思います。彼女はこの■■■■に英霊として召喚された存在であり、今は私達の味方です。部外者であるパニッシャーさんは分からないかもしれないですが、私達は彼女とも上手くやっています」
「上手くやっている、いないの問題じゃねぇ。俺は目に着いた悪は殺す。この施設は他にも沢山の英霊がいるんだろう?なら一人か二人間引いた所で戦力の減退にはならねぇよ」
食堂にいた大柄な女は自分の口からハッキリとこれまで多くの人間だの妖精だのを食い殺してきたという情報を
「そのような考えはどうかと思います。あなたは自分が悪と決めつけた相手を一方的に攻撃して、自分の行動に正当性があると思い込んでいるだけではありませんか?」
「うるせぇな。正義とか悪だとか、そういう問題じゃないんだよ。あいつはどう考えても悪人だろうが」
「……パニッシャーさん、この世界は善と悪に二分される程単純ではないのです。確かに彼女は生前に多くの命を奪ったかもしれません。しかしだからと言って貴方に彼女を裁く資格はないはずです」
「サーヴァント共に法律や司法も機能しない。だから俺が裁くんだ。生前に罪を犯したサーヴァントの連中は素直に裁判受けて刑務所に入って服役でもするのか?」
パニッシャーは亜麻色の髪の少女に対して一歩も譲らない姿勢を見せる。すると■■■の隣に立香がやってきた。この■■■■に所属する人類最後のマスターである。
「■■■、おじさんの様子はどう?」
「あ、先輩。相変わらずです…」
人類最後のマスターである少年は、懲罰房の窓から中にいるパニッシャーを覗いた。
「正直、俺は貴方の行動は理解できない。けど、少なくとも貴方は悪人じゃない。悪事がしたいから悪い事を行うんじゃなくて、貴方はただ自分の行動が正しいと信じて動いているだけだ」
パニッシャーは少年に対して言葉をかけようとしたが、見ていた夢はそこで途切れた。
まさかのパニッシャーさんに対する説教回でした。パニッシャーさんってシビルウォーの時も投降してきた丸腰のヴィランを即座に射殺しているから、気の合う英霊は少なそう。
今回登場した鯖達の名前はあえて伏せているけど、口調とか名称で誰かは分かると思います。キャップやパニッシャーの見ている夢は果たして未来に起こる事なのでしょうか?それとも…?