アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです   作:ドレッジキング

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今回は真の黒幕の登場回。ぶっちゃけFGO勢じゃコイツらに勝てないだろ…(;^_^A




番外編② 人としての弱さ(前編)

立香は極地用カルデア制服に着替え、マシュと共にシミュレータールームに来ていた。先ほどマシュとダ・ヴィンチに自分が抱えていた感情を吐き出す事ができ、胸のつかえが少し取れたような気がした。誰にも言えず、ずっと心の奥底で抱えてきた感情を吐露する事ができたからだろうか。

 

(マシュにあんな事を言った後で、またマシュに甘えてもいいんだろうか?)

 

(でも、いつまでもマシュに頼ってばかりじゃダメだ。マシュが俺の事を慕ってくれているのは嬉しい。だけど、俺もマシュに何かしてあげられるはずだ)

 

「先輩、どうしましたか?」

 

「えっ!?い、いや、何でもないよ」

 

立香はマシュに話しかけられ、慌てて返事をする。

 

「そうですか?少し元気が無いように見えたので心配になりました」

 

「そうかな…?」

 

これまで立香は人類最後のマスターとして戦う覚悟と、汎人類史を取り戻す為に異聞帯という行き止まりの人類史を滅ぼさなければならない苦しみに耐える事を周囲から求められ続けた。立香も自分が戦わなければ多くの人達が死ぬという事は分かっていたが、それでも心の底では納得できずにいた。そんな時にようやく立香はマシュに自分の本心を打ち明けられた。普通の生活を送り、普通の人生を歩みたかったという事を伝えたのだ。

 

だが、今になって立香は不安になった。自分にとって大切な存在であるマシュに自分の本当の気持ちを伝えてしまった事で、今まで築き上げてきた関係が崩れてしまうのではないかと。

 

「あのさ、マシュ……」

 

「何でしょうか?」

 

「マシュは俺の事……どう思ってるの……?さっきは部屋であんなに泣いちゃったけど……俺は……覚悟が足りない弱虫なのかな…?」

 

「そんな事はありません!今まで…今までずっと誰にも言えなかったんですよね…?辛い時も苦しい時も、自分の弱さを押し殺し続けて……先輩は本当に強い人です……」

 

「そっか……ありがとう……」

 

「けどもしまた、自分の中の苦しみや悲しみを吐き出したくなったら遠慮なく私の胸を借りてください!」

 

マシュは天使のような笑顔で立香に言う。

 

「うん、わかった。その時はよろしく頼むよ」

 

「はい!」

 

その時、アナウンスでダ・ヴィンチの声が聞こえてきた。

 

『はいはーい。お二人さん準備はいいかい?』

 

「はい!いつでもいけます!」

 

「私も大丈夫です!」

 

立香とマシュがそう言うと、周囲の空間が変わり、大きな平原へと出た。シミュレータールームでは周囲の環境も自由に変える事ができ、これまで戦った敵との戦いで使用した地形を再現する事もできる。

 

『よし!それじゃあ早速始めよう!』

 

「了解です」

 

「わかりました」

 

『ルールは簡単!今回は二人一組で模擬戦をしてもらう!お互いの戦闘スタイルを知り、連携を深める為の訓練だ!二人とも、用意はいいかな?いくよ……』

 

ダ・ヴィンチちゃんの合図で立香とマシュはお互いに距離を取り、戦闘態勢に入る。

 

『レディ……ゴー!!』

 

ダ・ヴィンチちゃんの掛け声と同時にマシュは盾を構え、立香に向かって突進する。

 

「いきます!はぁ!!」

 

魔術の素養がない立香は、ノウム・カルデアに召喚された多くのサーヴァント達から戦闘技術を教えて貰っている。魔術に関してもメディアから教わっているものの、立香本人に魔術の才能が無い為、こうして格闘訓練を重点的に行っている。立香は迫りくるマシュの攻撃を何とか避け、カウンターで拳を放った。しかしデミサーヴァントであるマシュは立香よりも遥かに身体能力で優っており、立香の放った右ストレートを華麗に避けつつ立香の背後に回り込み、盾で殴り掛かった。マシュの盾で殴られた立香は吹き飛ばされ、地面に倒れ込んでしまう。

 

「くっ……まだまだ……!」

 

「やりますね……」

 

「今度はこっちから行くぞ……!」

 

「来てください!」

 

立ち上がった立香は再び構える。マシュは立香の攻撃を避けながら、隙を見て攻撃を行う。立香はマシュの攻撃を受け流しつつ、反撃の機会を伺う。マシュのパンチやキックを紙一重で避けると、立香はマシュの懐に入り、腹部に強烈な一撃を叩き込んだ。が、人間である立香のパンチではマシュにダメージを与える事はできなかった。マシュは立香の右腕を掴み、そのまま立香の身体を宙に放り投げた。立香は空中で体勢を整え、両足で着地すると、すぐにマシュに攻撃を仕掛ける。立香は打撃技だけでなく、組み付きも織り交ぜてマシュにダメージを与えようとするが、マシュはそれらの攻撃を全て回避した。

 

(このままじゃダメだ……!)

 

マシュは防御に徹するばかりで、積極的に攻めてはこなかった。立香はマシュのガードの上からでも構わないからとにかく殴ろうと試みるが、マシュのガードは固く、立香の打撃では突破できない。

 

(こうなったら……!)

 

立香がそう思った瞬間だった……。突如として上空から雷が降り注ぎ、二人の周囲に落ちてしまう。雷が地面に直撃した事により、立香とマシュの周辺に大きなクレーターができた。

 

「い、いきなり雷が降ってくるなんて……びっくりしました……」

 

「うん…突然の落雷には驚いたよ」

 

立香とマシュは雷が落ちた事に驚き、空を見上げる。そこには、巨大なドラゴンが浮遊していた。

 

「ダ・ヴィンチちゃん、これって俺とマシュの模擬戦じゃなかった!?」

 

立香が叫ぶがダ・ヴィンチからの反応がない。

 

「あれ…?ダ・ヴィンチちゃん…?」

 

「先輩!ドラゴンが地上に降りてきます!指示を!」

 

巨大なドラゴンは地面に降り立つと、立香とマシュを睨む。既にマシュは大盾を構えて戦闘態勢に入っていた。しかしその時、ドラゴンの身体がグロテスクに変形していく。直視するのも憚れる程に生理的嫌悪感を催す姿に変化していく。ドラゴンはスライム状の形態から別の姿へと変異していくのだ。そして巨大なドラゴンはグリフォンへと変形したかと思えば、その数秒後には大きな蜘蛛へと変異した。これまでの特異点や異聞帯においてこのような変異を繰り返すエネミーと戦闘をした事などない立香とマシュはお互いに顔を見合わせる。

 

「マシュ…俺達あんなのと戦った事はあったっけ…?」

 

「いえ、私も覚えがありません……」

 

二人は困惑するが、目の前の巨大な蜘蛛は突如として液体に変化し、そのまま地面にぶちまけられた。

 

「こ、今度は水に変化した…。何なんだこのエネミーは……」

 

マシュは警戒しながら、盾を構える。だが水へと変化したエネミーはそれっきり襲ってこなかった。

 

「先輩…今のエネミーは…」

 

 

マシュがそう言いかけた時、上空から声がした。

 

「今のは俺が作り上げたものだ。出来がいいだろう?」

 

マシュと立香は上を見ると、白人の中年男が空に浮遊しながらこちらを見下ろしていた。中年男は緑を基調としたスーツを着ており、地上へと降り立つと真っすぐに立香とマシュの方を向く。

 

「あの…どなたでしょうか…?」

 

マシュは中年の男に尋ねると、男は口を開く。

 

「俺の名はノーウェン・リース」

 

「あの…ノーウェンさんはシミュレータールームで作られたのでしょうか?私や先輩は貴方と戦闘した記録は無いのですが…」

 

「俺はシミュレーターで作られたホログラフじゃない。れっきとした生身の人間だ。それよりもこの彷徨海とやらは俺の新しい住居に相応しい。気に入ったぞ」

 

マシュと立香はノーウェンの言葉の意味が分からなかった。シオンやゴルドルフからノーウェンが新しく彷徨海に入居するなどという話など聞いていないからだ。マシュは不思議そうな表情を浮かべる。「えっと……どうしてここに住もうと思ったんですか?ここは居住スペースではありませんよ」

 

「それはお前達が決める事じゃない。俺が決める事だ。この漂白化された地球は俺が暮らすには丁度いい世界だ。そしてこの彷徨海は俺の住居とする。文句はあるまい?」

 

マシュは困り果てる。何故ならノーウェンの言っている事がまるで理解できなかったから。立香とマシュはノーウェンが生き残りの魔術師だろうと思っていた。

 

「オズボーンの仲間にやられて死亡したと思った矢先にこの世界で目を覚ましたんだ。俺はここで第二の人生を歩むとしよう。ようやく静かに生きられる場所に辿り着けたのだ」

 

マシュや立香の都合も無視して勝手に話を進めるノーウェン。そんなノーウェンに対してマシュは言う。

 

「ちょっと待ってください。あなたは誰なんですか?どうしてこの場所を自分の住まいにしようと思ったんですか?」

 

マシュの質問に対してノーウェンは不敵な笑みを見せる。

 

「気に入ったからだ。俺もできる限り暴力的な手段は用いたくはないんだ。さっさとこの彷徨海から出ていく事を薦めよう」

 

余りに身勝手なノーウェンの言い分にマシュは呆気に取られる。このノーウェンという正体不明の男の言動がまるで理解できない。シミュレータールームのバグか何かだとしか思えなかった。

 

だが、ノーウェンは続けて言う。

 

「俺の言っている事が今一つ理解できていないようだな。仕方ない、少しばかり俺の力を見せてやろう」

 

ノーウェンが指をパチンと鳴らすと、マシュのラウンドシールドが一瞬で消失した。

 

「な…!?」

 

マシュは突如として自分の盾であるラウンドシールドが消えた事に驚愕する。一方で立香はマシュの盾が消え去った事を疑問に思う。

 

(今のは一体……?)

 

立香はマシュの盾が消える直前、マシュの盾が分解されたように見えた。

 

「まだ終わりじゃないぞ?」

 

そう言うとノーウェンはまた指を鳴らす。すると今度は立香が来ていた極地用カルデア制服が分解されていく。極地用カルデア制服が全て消失し、立香は一糸纏わぬ姿となった。

 

「そんな…!?カルデア制服が一瞬で…!?」

 

「ちょ!?先輩…!裸になっています……!」

 

マシュは顔を赤く染めながら立香から視線を逸らすと、立香は慌てて両手で自分の股間を隠した。

 

「ま、マシュ…えっと…見ちゃった…?」

 

「見てません!私は何も見てませんから……!大丈夫です……!私は何も見えていませんでした……!だから安心してください……!あぁ恥ずかしい!こんな状況なのに先輩の事を変に意識してしまいます……!」

 

マシュは赤面しながら立香に背を向ける。立香はマシュに自分の裸を見られた事で、顔から火が吹き出そうな程に恥ずかしくなった。

 

「俺の力が理解できたか?その気になればお前達を粒子レベルにまで分解して永遠に大気中に漂わせる事だってできるんだぞ?」

 

ノーウェンが立香とマシュに行使した力は最早魔術などというレベルではない。分子操作能力による強制分解だ。

 

ノーウェンは自分の力を自慢するように語るが、マシュは首を横に振る。

 

「いえ、理解できません……。貴方は本当に人間なんですか?ただの人間のはずがない……」

 

マシュの言葉にノーウェンは笑う。

 

「俺の力はお前達が使う魔術とは次元が違う。俺の能力は魔術なんていう陳腐なものじゃない。俺の力はもっと高尚で偉大なものだ。お前達のいるこのシミュレータールームも既に俺が支配する空間と化している。外部と連絡などできないし、この部屋からは絶対に脱出する事はできない。お前達はもう逃げられないんだよ」

 

マシュと立香はノーウェンの言葉に戦慄するが、ノーウェンは続ける。

 

「この俺の支配下にある世界では俺の思い通りに物事が動く。お前達に拒否権はない。大人しく俺に従うしかない」

 

ノーウェンの言う事はハッタリではない。そう感じる立香とマシュだったが、ここで更なる来訪者が現れた。ノーウェンの横の空間が歪んだと思うと、二人の人影が現れた。一人は炎で燃え盛る頭部と、青を基調とした鎧が特徴的な大男。そしてもう一人は外国人らしき禿頭の老女である。二人はノーウェンの隣に立つと、立香とマシュの方を向く。

 

「初めまして、わたしの名はドルマムゥ。キミが人類最後のマスター藤丸立香君と、そのサーヴァントであるマシュ君だね?」

 

ドルマムゥと名乗った燃え盛る頭部を持つ男は立香とマシュに挨拶する。悍ましい見た目をしてはいるが、紳士的な口調で語り掛けてきた。立香とマシュも慌てて自己紹介をした。人は見掛けによらないという事だろうか。

 

「立香君、わたしがキミの心の中に語り掛けていた者だよ。カルデアという悍ましい組織によって人生を破壊された君に救いの手を差し伸べたのがこのわたしだ」

 

そう、立香の心に語り掛けていた声はドルマムゥだったのだ。ドルマムゥはカルデアに騙されて南極に連れてこられ、そこでの事故が原因で人類最後のマスターとして特異点修復の旅路を歩む事となった。そして特異点修復の次は白紙化した地球を取り戻す為の戦いをこうして強いられている。

 

「それにしてもマシュ君が立香君の苦悩を受け止めてあげられるとは意外だったね。マシュ君は立香君に対して戦う事しか求めていないと思っていたのだが、悪い意味で裏切られたよ」

 

ドルマムゥはまるで馬鹿にするような口調で話すと、マシュはドルマムゥの言葉に顔を赤く染めながら反論する。

 

「私はこれまでの戦いで先輩と共に戦ってきました!先輩は先輩なりに戦っているんです!私は先輩の事を誰よりも理解していますから先輩が苦しんでいる事も分かっています!だから私は先輩を支えます!」

 

「私は…先輩の抱いている苦しみと悲しみも受け止めてあげたいんです…。先輩が全然平気じゃないことぐらい私も前々から気付いていましたから……」

マシュは顔を赤く染めながら立香の方を見ると、立香はマシュを見て微かに微笑んだ。だがマシュの言葉を聞いたドルマムゥは鼻で笑う。

 

「ふぅん……。キミ達の関係はそこまで進んでいたのか……。これは面白い事を知った。だが残念だね。立香君が抱えている悩みは君の想像を上回るものだ。キミ一人が彼の苦しみや悲しみ…そして怒りを受け止めた所で他の者もそうだとは限らない。例えばこのノウム・カルデアに召喚されているサーヴァント達は、立香君の弱音を聞いて受け入れてくれるかな?古い時代に英雄として名を馳せた者達であれば彼を臆病者と蔑み、罵倒するかもしれない。彼等は立香君に弱さなど求めていない、彼等が求めているのは他の世界を滅ぼしてでも汎人類史の為に戦おうとする不屈の意思と鋼の精神だ。そんなサーヴァント達が立香君の心の奥底に隠してきた"弱さ"を受け入れられるものかね? 」

 

「それは…」

 

マシュはドルマムゥの言葉に反論できなかった。確かにこのノウム・カルデアに召喚された英霊達の中には数多の戦争を勝利し、戦い抜いてきた者も多い。それこそ古代や神代に名を刻んだ英傑英雄の集まりだ。そんな彼等は人類最後のマスターである立香に対して戦う事を求めている。中には「マスターの心が折れるようなら自分が殺す」と言うサーヴァントすら存在する。

 

しかし、マシュは立香の事を誰よりも理解していた。立香が心の底では苦しんでいる事をマシュも受け入れており、先程立香がこれまで抱えてきた苦しみを自分とダ・ヴィンチに対して吐き出してくれたのだから。だが他の英霊であれば、弱音を吐き、終わる事のない戦いに精神を擦り減らし、他の世界を滅ぼし続ける業を背負う事への苦しみを吐露する立香を受け入れてくれくれるのだろうか?マシュの不安を感じ取った立香はマシュの肩に手を置くと、マシュは顔を上げて立香の顔を見る。立香はマシュの瞳を見つめると、立香はマシュの頬を撫でた。

 

「ありがとう、マシュ。俺の事を考えてくれたんだよな」

 

「先輩…私は先輩がどんなに弱音を吐いても…どんなに涙を流しても味方でいます…!だから、一人で苦しまないでください!」

 

マシュはそう言うと立香を抱き締める。その抱擁はまるで母親が子供を抱くように優しかった。立香に対して強さや逞しさだけを求め続ければ、いずれ立香は壊れてしまう。ごく普通の少年としての人生を投げうって人理修復という過酷な旅路を歩むことを選んだ立香はまだ17歳の少年である。多感な年頃の立香にとって人理を、そして汎人類史を取り戻す戦いの日々はあまりにも残酷すぎた。だからこそマシュは弱さを隠し通してきた立香の本心を受け止めたかった。

 

「俺はマシュが居なかったらとっくに潰れていたと思う……。だからマシュが傍にいてくれるだけで救われているんだ……」

 

「先輩……」

 

「美しい絆じゃないか。だが他の英霊達はどうだろうね?彼等はマシュのようにキミの苦しみ、悲しみ、弱さ、脆さを受け止められるものかな?試しに会ってみるといい、彼等がキミの弱さをどう受け止めてくれるのかをね…」

 

ドルマムゥがそう言った直後、気が付くと立香はノウム・カルデアの廊下に立っていた。




マシュは逆ラッキースケベできて良かったね(^_^)

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