アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです 作:ドレッジキング
放課後、凛から真っすぐ家に帰るように促された士郎はスティーブと共に帰宅し、セイバーから先日戦ったサーヴァントの一人であるランサーについて話し合っていた。ランサーと戦ったセイバーはランサーの正体に心当たりがあるらしく、ランサーが持つゲイ・ボルクという槍の名称から、ランサーの正体がアイルランドの大英雄であるクーフーリンである事を士郎とスティーブに話した。
「……で、強いのか。そのクーフーリンってヤツは」
「この国では知名度が低いですから存在が劣化していますが、それでも十分過ぎる能力です。こと敏捷性に関しては他の追随を許さないでしょうし、彼の宝具はこの戦いに最も適した武器だと思います」
スティーブも士郎を助けた際、クーフーリンと戦闘になったが、その際もクーフーリンは自分の槍の事をゲイボルクと言っていた。クーフーリンの技量と身体能力は超人血清を打ち、人間の限界レベルの身体能力と、数多の戦場で場数を潜り抜けてきたスティーブでさえも圧倒された。恐らくサーヴァントとしての地力も相当高いだろう。
「宝具……?ああ、あの槍か。そういえばアイツの槍、最後にヘンな動きを見せたけど、アレがゲイボルクってヤツなのか?」
「……おそらくゲイボルクの伝承は諸説あります。曰く、足で投擲する呪いの槍だとか、貫いた瞬間に内部から千の棘を生やして相手を絶命させる魔槍だとか」
「……?なんか、まったく違う言い伝えじゃないのか今のは。そんなんで伝説の武器だなんて言えるのか?」
士郎の問いかけにセイバーは答える。
「ですから、続きがあるのです。ゲイボルクの能力は様々な形で伝えられてますが、その全てに"心臓を穿つ"という一節が残っている。……それは武器としての能力ではなく、あくまで持ち主の技量だと思っていましたが、間違いだったようですね。魔槍の正体―――ランサーのゲイボルクの能力は文字通り心臓を穿つモノです」
「つまり、アイツの槍は――――」
「ええ。使えば必ず敵の心臓を穿つ魔槍なのでしょう。空間をねじ曲げているのか、因果律を変えているのか。ともあれ、槍自体の呪いとランサー自身の技量でしょうね。こと一対一の戦闘において、これほど効率的な武器もありません。なにしろまったく無駄がない」
セイバー曰く、ランサーの槍は城を破壊するだけの破壊力は無いが、対人戦において相手の心臓を穿てばその時点で勝負が付くという。更にランサーのゲイボルクは消費する魔力もそこまで多くなく、
省エネの魔力で確実に相手の心臓を穿つ必殺の宝具を繰り出せる事になる。話を聞く限りでは、スティーブはクーフーリンのゲイボルクの話を聞き、例えアベンジャーズのハルクでもクーフーリンのゲイボルクで心臓を穿たれれば死は免れないだろうという危機感を覚えた。ハルクは基本的に近接戦闘を行うので、必然的にクーフーリンの持つゲイボルクの間合いで戦う事となる。多数のヒーローがチームを組まなければ手に負えないハルクであるが、ゲイボルクの話を聞く限りではクーフーリンであれば単独でハルクを倒す事も不可能ではないだろう。
「つまりは派手さは無いが堅実に勝利を掴み取るサーヴァントってわけか。けどその割にアイツは無駄が多かったな。殺し損ねた俺を衛宮邸まで追ってきた時は直ぐに殺さずに遊んでいたし」
そう、スティーブに逃がしてもらった士郎はそのまま家へと帰宅したが、ランサーは士郎が暮らす衛宮邸まで士郎を追跡してきたのだ。
「ですね。ランサー自身、むらっけのある人物のようです。非情な人物ではありましたが、どこか憎めない一面がありました」
「セイバー、ヤツは学校でアーチャーとの戦闘を目撃したシロウをわざわざ家まで追跡してまで殺そうとするようなだぞ?"憎めないヤツ"じゃなくて単なる悪漢だろう」
スティーブは戦いを見てしまっただけの士郎を始末しようとしてきたクーフーリンに対して明確な嫌悪感を抱いている。
「そうですね。ですが、ランサーは確かに私との戦いの最中にも、何故か本気で戦おうとしなかった節が見られます。理由は分かりませんが……」
「それじゃあ他のヤツの事だけど」
「待ってくださいシロウ。屋敷の門を人がくぐりました」
「え?そんなコト分かるのか……?ってもうこんな時間!?
まずい、きっと桜が帰ってきたんだ!」
呼び鈴の音がなり、玄関から「お邪魔します」という桜の声が聞こえてくる。
「セイバー、悪いんだが、その」
「判っています。部屋に戻っていますから、私の事はきにせずに」
そう言うとセイバーは部屋へと戻っていく。
「シロウ、セイバーの事をサクラに隠し通すのも大変だな……」
「桜にセイバーの存在を気取られないようにするにはどうすれば良いんしょうか?」
「難しいな。セイバーがこうしてシロウの家に滞在して、尚且つサクラが毎日夕飯を作りにシロウの家へとやってくる。いつ鉢合わせになるか分からない状況だ」
スティーブと士郎が悩んでいると、部屋に凛と桜が入ってきた。
「ただいま。感心感心、ちゃんと先に帰ってたわね」
「お邪魔します先輩、ロジャース先生。珍しいですね、先輩がこんなに早く帰ってくるなんて」
桜は嬉しそうに笑っている。
「よし、準備は完璧っと。それじゃあ始めるとしましょっか」
凛は気合を入れて台所に向かっていく。
「先輩……?あの、お夕飯の支度なんですけど……」
「ああ、今日は遠坂の番だからいい。桜は朝作ってくれたんだから、夜は任せてくれ。遠坂とロジャース先生、クリント先生、ロマノヴァ先生が居るうちは皆で夕飯を作るから」
「あ……は、はい。先輩がそう言うのなら、そうします」
夕飯を作る役割を凛やスティーブに奪われる形となった桜はどこか落胆したような表情を見せた。今朝もクリントとナターシャに朝食を作る役割と取られてしまったので、自分のする事がなくなるのが嫌なのだろう。逆に言えばそれだけ先輩である士郎の役に立ちたいという気持ちが強いのだろうか?士郎は自分の部屋へと戻り、夕飯が出来上がるまで自室で寝ているようだ。
それから一時間後、クリントとナターシャと共に帰ってきた大河は出来上がった中華料理に感嘆の声を上げていた。人数が人数なだけに量はかなり多い。士郎、凛、桜、大河、スティーブ、クリント、ナターシャの計7人分の料理を作る事になったのだが、多めに買い出しをしておいて正解だったようだ。その夜は7人で食卓を囲み、学校での話で華を咲かせた。
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一夜明け、台所ではスティーブと士郎が一緒に朝食の準備をしていた。桜は今日は来れない事を昨夜士郎に伝えていた為、今朝は来ていない。
凛はリモコンを使ってテレビの電源を入れると、朝のニュースがやっていた。
「またこのニュースやってるんだ」
テレビのニュース番組から流れる報道を士郎とスティーブが聞き流していると、聖堂病院で起きた殺人事件についての特集が組まれていた。何でも黒いコートを着込んだ欧米人の大男が病院に来ていた来院していた外国人の男を窓の外から投げ落として殺害し、病院に入院していた幼い子供を連れて逃走したのだという。
「物騒な事件だな、キャップ」
リビングルームでテレビを見ていたクリントが言った。スティーブ達は犯人について心当たりがあった。パニッシャーである。そしてニュースは新都で起きたガス漏れ事故の続報を報じていた。
「新都の方でガス漏れによる事故だって。……バカな話。そんなのあっちだけじゃなくて、こっちの町にだって起きてるのに」
「遠坂。それ、どういう意味だ?」
「だから原因不明の衰弱でしょ?何の前触れもなく意識を失った人間が、そのまま昏睡状態になって病院に運ばれるって話。もう結構な数になってるんじゃないかな。今のところ命に別状はないらしいけど、この先どうなるかは仕掛けたヤツの気分次第でしょうね」
「遠坂、まさかそれも他のマスターの仕業だっていうのか」
「じゃあ他の誰の仕業だっていうのよ。いい加減慣れてよね、貴方だってマスターなんだから」
「それは―――そうだけど。……なんで今まで教えてくれなかったんだよ、遠坂は」
士郎は納得いかないという風に言う。
「こっちの件はそれほど簡単じゃないから。学校で結界を張っているマスターは三流だけど、こっちのマスターは一流よ。相手を死に至らしめる事はせず、命の半分だけを吸収して力を蓄えている。……そりゃあ集めるスピードは遅いけど、その代わりに魔術師としてのルールにはひっかからないし、無理をする必要があない。このマスターは遠く離れた場所で、町の人たちから"生命力"っていう、最も単純な魔力を掠め取っているわけ」
「遠く離れた場所からって……そんな所から町中の魔力を集められるっていうのか、そいつは」
「よっぽど腕の立つ魔術師なんでしょうね。新都と深山という二つの町をカバーできるだけの広範囲の"吸引"なんて、大がつく魔術師の業だもの」
凛はガス漏れ事件の犯人の持つ魔術の腕を推測する。
「……いや、それよりも優れた霊地を確保したのかもね。冬木の町には龍脈らしきものがあるって父さんも言っていてたし、そこに陣を布けば生命力の搾取ぐらいは簡単か……」
「?ちょっと、遠坂」
「父さんの書庫にそれらしい資料はなかったし、あるなら大師父の書庫か……いやだなあ、あそこ今でも人外魔境だし、出来れば行きたくはない。……となると後は綺礼に訊くしかないか……いや、だめだめ、あいつに借りを作るなんてもっての他だわ」
凛は士郎が問いかけてもブツブツと独り言を言うだけで士郎の声に気づかない。士郎はそんな凛を心配そうに見つめる。魔術といえば、スティーブ、クリント、ナターシャの知り合いにドクター・ストレンジがいるのだが、彼に直通する電話を使って相談する事は可能だ。先日のランサーやバーサーカーとの戦闘で、サーヴァントの持つ力を思い知らされたスティーブ達はストレンジに援軍を頼むべきかを考えた。神秘の塊であるサーヴァントの相手は流石に荷が重く、ハルクやソー、キャロルといった面子を連れてこなければ厳しい。だがスティーブ、クリント、ナターシャが本当に憂慮しているのは戦力の差ではない。聖杯戦争という戦いを止める存在がいないという事実だ。町の人間達は意識不明にされたり、学校には結界が張られたりとマスターやサーヴァントは町の人間に対する配慮が無いどころか、魔力の燃料として率先して一般人を利用しようとしている。スティーブ達は自分達だけでは手に負えないと判断し、ストレンジに相談しようと考えていた。そして士郎は先程からぶつくさと呟いている凛を心配して声をかける。
「遠坂?大丈夫か?」
「えっ!?あ、ああ、うん、平気よ、士郎」
凛は士郎の呼びかけでようやく我に返ったようだ。そしてナターシャがキャップに対して小声で言ってくる。
(ねぇキャップ)
(何だナターシャ?)
(この冬木の市民達に魔術師とサーヴァントの存在を広めるのはどうかしら?この町の人達は自分達が聖杯戦争に巻き込まれているとも知らずに日常生活を送っている)
確かにナターシャの言う通り、冬木の市民は聖杯戦争どころか魔術師やサーヴァントの存在さえ認知していない。"神秘の秘匿"とやらは凛から散々説明されたが、そんなものは所詮魔術師の都合でしかなく、一般人を巻き込むのは許される事ではない。ならばいっそ、魔術師やサーヴァントの存在を市民に知らせてやればいいというのがナターシャの考えだ。それさえできれば魔術師の行う犯罪を世間に知らしめる事ができるし、聖杯戦争に参加した魔術師とサーヴァントを裁判に掛けられる。だが凛がそんな事を許す筈がない。凛はセイバーのマスターである士郎を魔術師の世界に引き込もうとしており、士郎を魔術師に仕立て上げようとしているようにも見える。だがスティーブは士郎にとって本当に戦うべき敵は他のマスターやサーヴァントでもなく、魔術協会、聖堂教会という二つの組織ではないかと思っていた。士郎は第四次聖杯戦争が原因の火災で実の両親を失っているし、魔術協会と聖堂教会は冬木の大火災は単なる事故だという情報操作を行い、真実を隠蔽した。アベンジャーズのメンバーを揃えて本格的に介入する事も検討せねばならない。
「……ねぇ、何か考え事しているのロジャース先生?」
凛がスティーブに尋ねてくる。凛に対して魔術師や魔術の存在、聖杯戦争の事を市民に広めるなどと言えば、激怒して止めにくるに違いない。
「ああ、ちょっとな」
「ふぅん……まぁいいけど。ところで、あなた達がこの街に来た目的って何だったかしら?」
凛は興味なさそうに言った後、スティーブ達の目的を思い出して尋ねる。
「士郎を護る事だ。生憎と詳細は私やクリントも伝えられていないがね」
「私にはそれ以外にも何か企んでいるように見えたんだけど気のせいかしら?」
女の勘というやつだろうか、凛はスティーブが考えている事に気付いているようだ。聖杯戦争の事を冬木市民に広めるなどと言えば、確実に凛と敵対関係になる。それは出来れば避けたいので黙っているしかないだろう。凛は冷酷な性格というわけではないが、やはり魔術の世界で生きる魔術師なのだから。スティーブ、クリント、ナターシャは朝食を済ませると、士郎、凛の二人と共に家を出て、学校へと向かった。
うん、凛とは敵対しちゃう未来しか見えない(^▽^;)
それとキャップ達のせいでセイバーが藤ねえ、桜と初邂逅するイベントを潰してしまった…。この世界線ではセイバーと信頼関係を築くのは難しそうですねえ