アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです 作:ドレッジキング
パニッシャーさんが藤丸君の代理はとてもじゃないが無理でしょw
けどパニッシャー自身は藤丸君の為に働く気満々というのが何とも…(;^_^A
あれから10日が経ち、様々な検査を受けさせられた末に手枷を外してもらい、ようやく両手が自由になった。パニッシャーはノウム・カルデアのモニタールームにいるマシュとダ・ヴィンチに呼び出される。二人は部屋の中央にあるモニターを指差す。そこにはベッドの上で毛布を被りながら嗚咽を漏らしている立香の姿があった。
「先輩はここ10日間、酷く取り乱し続けてずっとあの調子です」
「そうか……」
パニッシャーは立香の姿を見ながら、マシュ達に尋ねる。
「で、用件は何なんだ?」
「うん、君を呼んだ理由は他でもない。君がここに来た理由でもあるんだけど……。この10日間、君を入念に検査した結果、君は藤丸君を超える程の高いマスター適正を持っている事が分かったのさ!ちなみにレイシフトの適正値は藤丸君よりは劣るけどね」
ダ・ヴィンチは一瞬で眼鏡を掛けつつ、パニッシャーのマスター適正が非常に高い事を説明した。
「藤丸君も君もサーヴァントを召喚する事が出来る。君の場合はその力が異常に強い。君がサーヴァントを召喚すれば、恐らくサーヴァントの霊基が君に引き寄せられて召喚されるだろう」
「だが元々このノウム・カルデアにいる立香のサーヴァントはどうなる?」
「うん、それなんだけどね…。ちょっと面倒なんだけど、マスター権を君に譲渡すれば今まで召喚したサーヴァント達を君が使役できるんだ。藤丸君はあの調子だし、いつ治るかも分からない状態だから、君に代理を頼むしか無いんだ……。これはゴルドルフ君やホームズとじっくり話し合った結果、辿り着いた結論なのさ」
ダ・ヴィンチは申し訳なさそうな顔でパニッシャーに言う。
「……やっても構わん。だがそれはお前等の為じゃねえ。あの藤丸立香という坊やの為だ」
パニッシャーとしてはカルデアもサーヴァントも好きではない。だが人類最後のマスターとして選ばれた立香が背負っている業は理解している。だからこそ立香の代理となる事を受け入れたのだ。
「それじゃ決まりだね。藤丸君の代理という事になるけど、キミにも令呪を宿してもらう。いいかい?」
「それで構わん。こんな俺でも人理とやらを救えるんならそうしてやるさ」
「それではサーヴァントの皆さんが待つブリーフィングルームに行きましょう」
マシュとダ・ヴィンチは部屋を出るとパニッシャーもそれに続いた。このノウム・カルデアのサーヴァント達には既にパニッシャーが立香の代理になる事が伝えられており、第二のマスターとしてサーヴァント達と共に戦わなければならない。が、立香が持つコミニケション能力があってこそ扱いの難しいサーヴァント達をこれまで纏められてきた。中には立香自身の人間性に惹かれ、サーヴァントとして召喚された者もいる。そんなサーヴァント達がパニッシャーの事を快く思うはずがなかった。更にパニッシャー自身の性格を見てもサーヴァント達との関係性が上手くいく可能性は低いだろう。マシュとダ・ヴィンチは内心で溜息をつくが、今はとにかくパニッシャーにサーヴァント達を引き合わせなければならない。治療中のカドックが目覚めれば彼にマスターをしてもらう事もできなくはないが、元々クリプターである彼がノウム・カルデアの為に働く可能性は低く、サーヴァント達もカドックを信頼する事はできないだろう。
「実はカドック・ゼムルプスっていう我々カルデアと敵対していたクリプターの一人を治療中なんだけど、彼に頼むわけにもいかないしね…。彼も魔術師なんだけど、藤丸君の代理は厳しいと思うんだ」
「……」
マシュとダ・ヴィンチはパニッシャーを連れてサーヴァント達が集まるブリーフィングルームへと向かう。
「パニッシャーさん、こちらです」
マシュがパニッシャーを案内すると、そこには既に多くのサーヴァントが集まっていた。マシュとダ・ヴィンチはパニッシャーを紹介する。
「パニッシャーさんは、皆さんのマスターである先輩の代理を務める事になりました。先輩が動ける状態ではないので、しばらくの間は彼の指示に従ってください」
マシュの説明にサーヴァント達はざわめく。先日、食堂でサーヴァントの一人に対して銃を発砲して他のサーヴァントも負傷させる程に暴れたパニッシャーを立香の代理にするという話を聞いて誰もが納得できるはずもなかった。
それにパニッシャーの人間性を見ても、立香のような親しみやすさは感じられない。常に剣呑な空気を纏い、冷徹な眼差しを向けてくるので立香とはまるで違う。
「ピグレットが動けないっていうのは分かるけどさぁ、どうしてよりによってそんな奴に代理をさせるんだよ?」
「そうよ!そんな奴、信用できないわ!」
「マシュ、ダ・ヴィンチ、あなた達が何を考えているのか分からないけれど、私は反対よ。その男にマスターの代わりを任せる事はできないわ」
「みんな落ち着きなよ、立香だって万能じゃないんだからさ。こういう事態を想定してなかったわけじゃないでしょう?」
ブーディカが口々に不満を言うサーヴァント達を宥める。
「確かに立香君はここ最近、精神的に不安定な状態が続いているようだネ。原因は不明にしろマスターが動けないという状態は非常に不味い」
「ミスターパニッシャーのマスター適正値が非常に高い事はダ・ヴィンチが証明してくれている。ミスター立香が動けない今、彼の協力を得る方が我々にとっても得策だろう」
ホームズとモリアーティの二人は立香の状態を考慮すればパニッシャーに代理を務めさせるのは仕方ないと考えているようだ。だがそれでも一部のサーヴァントはパニッシャー自身の攻撃性と冷酷さを苦々しく思っている。カドックはクリプターである上に、汎人類史を裏切り異星の神についたいわば反逆者である。そんなカドックよりも、立香の為に動いてくれるパニッシャーの方がマシという事だろう。
「しかしだ、いくらマスター適正値が高いとはいえ、その男が本当にマスターの代わりが務まるのかね? マスターの実力は知っているが、そいつの実力は知らん」
「そうですとも。その方、ますたぁと違ってとても強そうではありませんもの」
鬼一と清姫は得体の知れないパニッシャーに対して不信感を抱いているようだ。確かにパニッシャーには立香のような柔軟性とコミュニケーション能力の高さは見受けられず、どちらかと言えば一匹狼タイプに見える。パニッシャーはマシュとダ・ヴィンチに対して自身の経歴を一応伝えていた。ニューヨークにおいて自警団としてギャングやマフィアといったあらゆる犯罪者を片っ端から始末していたという経歴は嘘ではない。
「ほう、あの男は、それなりに修羅場を潜ってきたというわけか」
手元にあるデバイスでパニッシャーの経歴を見たスカサハが感心したように言う。
「余は別に構わぬぞ。喜べパニッシャーとやら!貴様には余の奏者となる事を許そう!」
一方のネロは相変わらず平常運転だ。
「皆さん、先輩と私は妖精國で何度かパニッシャーさんに助けてもらいました。パニッシャーさんは先輩に代わって南米異聞帯に行く事を望んでいます」
「確かに彼の人間性を危険視するのは分かる。けど彼の藤丸君を救おうという気持ちは本物なんだ。彼はあくまでも一時的にマスターになるだけで、君達本来のマスターは藤丸君のままさ」
多くのサーヴァント達はパニッシャーがマスターとなる事に難色を示したようだが、最終的にマシュとダ・ヴィンチが説得する事でようやく納得したようだ。カドックよりはマシとはいえ、消去法で選ばれただけに過ぎない。サーヴァント達はパニッシャーという得体の知れない男に対して不安を抱いた。
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様々な手続きを済ませ、パニッシャーは自分の右手の甲に刻まれた令呪を見る。これで正式にパニッシャーはノウム・カルデアの第二のマスターとなった。当然、立香が復帰すればパニッシャーはお払い箱になる予定なのだが、立香が復帰するまでの繋ぎとして一時的にマスターを務める事になったのだ。
(まあ、いいさ。あの坊やには休んでもらった方がいい。いや…戦いから完全に身を引かせるべきだ)
そう考えて廊下を歩いてると、前方に誰かが歩いているのが見えた。アナスタシアだ。アナスタシアはパニッシャーに気づくと、警戒心を見せる。無理もない、昨日までマスターであった立香が精神状態が安定していない理由で部屋で療養し、代わりにパニッシャーが代理となったのだから。
「……あら?貴方はパニッシャー」
数時間前のブリーフィングルームでアナスタシアはパニッシャーがマスターとなる事に不満の声を上げていた。そのせいもあって、アナスタシアはパニッシャーに対し、あまり良い印象を抱いていない。
「……」
「……」
沈黙が流れる。先に口を開いたのはパニッシャーだった。
「お前に聞きたい事がある」
「……何かしら?」
「俺の事をどう思っている?」
「正直に言うと余り好きになれないわ。だって、マスターの代わりなんて務まるはずがないじゃない」
アナスタシアは実に率直な感想をパニッシャーに対して言う。パニッシャー自身は悪人ではないが、犯罪者を狩る事しか頭になく、サーヴァント達に対しても敬意を払わない。寧ろ冬木での一件以来、サーヴァントに対して悪感情を抱いているのだから。
「現代に現れた未練がましい亡霊共を束ねる程度、造作もないだろう」
「そういう意味じゃなくて、あなたみたいな得体の知れない人間がマスターに成り代わるのが不安なのよ。第一、あなたからは私達のマスターである立香のような温かみを感じられない……」
アナスタシアはパニッシャーが自分達サーヴァントに対して向ける視線に敵意や殺意が混じっている事を敏感に感じ取ったのか、嫌悪感を示す。
「あなたは寧ろ私達を憎んでいるように見える。どうして?」
パニッシャーは黙ったまま何も答えない。だが、その態度こそがアナスタシアの指摘が正しい事を証明していた。
「あなたは私達が嫌いだと言わんばかりに睨みつけてくるのは何故なの?私は自分に向けられてくる殺意や敵意は直ぐに分かるわ。だって私はそういう人間達に家族共々殺されたんだもの」
パニッシャーは黙ったままだったが、やがて観念したかのように溜息を吐くと、ゆっくりと語り始める。
「お前達がサーヴァントだからだ。それ以外に理由があるか?」
「そんなの理由じゃないわ。あなたはサーヴァントが大っ嫌いなんでしょう?だから、私達と仲良くしようとしない。違うかしら?」
アナスタシアの言葉にパニッシャーは何も言い返さない。アナスタシアは自分の予想が当たっていた事に満足したのか笑みを浮かべる。
「……お前は聖杯戦争に召喚された事はあるか?」
「いえ、覚えは無いわ。もしかしたら別の世界の私は聖杯戦争に召喚されていたかもしれない」
冬木での聖杯戦争の事を思い出したパニッシャーは唇を噛み締める。"別の世界"とはいえ、家族を口封じでランサーに殺された立香や、戦いに巻き込まれた住民達、メドゥーサによって精を吸われた市民の存在は聖杯戦争とそれに参加する魔術師、サーヴァントに対する怒りを促進させる。目の前のアナスタシアもそういった事をしていたとすれば……。
「お前も聖杯戦争に参加して、市井の人間を魂喰いで殺したり、派手に宝具を展開して周囲を氷漬けにしたりしているのかもな。お前自身が覚えていないだけかもしれんが。お前はこれまで罪のない人間達を一人も殺していないと胸を張って言えるのか?」
「……」
パニッシャーの言葉にアナスタシアは沈黙する。そう、南極にあるカルデアを襲撃した異聞帯のアナスタシアの存在が、汎人類史のアナスタシアの精神を苦しめてきたのだ。彼女だとて南極のカルデアにいた職員を皆殺しにしたのは異聞帯側の自分だと割り切ろうとした。しかしこうしてノウム・カルデアに召喚され、マスターである立香と信頼関係を築く内に自分の心が日々罪悪感で押し潰されそうになっていく。マスターである立香は心の奥底にある自分への恐怖と憎しみを表に出さず、笑顔でアナスタシアを受け入れ、接してくれる。その事が余計にアナスタシアの心を痛めつけた。そんな立香の姿勢に安堵し、寄りかかる自分が恐ろしかった。立香が優しくしてくれる度に、アナスタシアは心の何処かで怯えていた。異聞帯の自分が立香の大切な人達を殺したという事実。そう、汎人類史側の自分とは違う存在だと分かっていた筈なのに…、自分は立香に甘えてしまったのだ。そしてそんなある日、あの出来事が起きた。
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「―――私は、あなたに想われる資格はありません]
「―――あなたに恩を返せません」
「―――あなたに触れる資格がありません」
「私は、貴方にとって……獣国の皇女に他ならないのですから」
アナスタシアは自分の中に入ってきたマスターである立香に対して言う。しかし立香はハッキリと言った。
「―――それは違う」
立香の言葉に、アナスタシアは語気を荒げて否定した。
「違わない!違わない、違わない、違わないの!何をやっても贖えない、償えない……!なのにあなたはいつも笑顔で!私を受け入れてくれて!……奥底で、怖がって憎んでいても、それを表に出そうとしないで……!それに安堵してしまう自分が、それに寄りかかってしまう私が、本当に、心の底から嫌いだった……!!」
アナスタシアは感情を露わにして叫ぶ。その叫びは悲痛なものだった。
「あなたは優しすぎるわ!あなたは気遣っているつもりなのかもしれないけど、私にとってはそれが辛いの!だって、だって……、あなたは私の事を恨んでいるでしょう!?」
アナスタシアの言葉を聞いた立香は何も言わずに黙っていた。しかし立香は何も答えずともアナスタシアの言葉にしっかりと反応していた。
「私はあなたの大切な人達を奪った!私が殺したようなものじゃない!殺したのが異聞帯の私だとしても、私はあなたに優しくされる価値なんてないわ!」
アナスタシアは自分の気持ちを吐露するが、立香は何も言わない。しかしアナスタシアの行いを許す事はできなかった。そして立香はアナスタシアに歩み寄る。が、アナスタシアは近づこうとする立香から離れる。
「絆を結ばないで!寄り添わないで!手を繋がないで!もう……これ以上はダメなの。お願い……このまま、死なせて……!」
アナスタシアはそう言うが、立香は歩みを止めない。
「――アナスタシア」
「あ――マスター――?お願い、はなれて……」
「君を――死なせない」
「あ……」
アナスタシアの体中の細胞が、嬉しいと悲鳴を上げている。抱きしめられて、快感を迸らせている。自分は抱きしめられる価値は無いと思っていた。思っていた筈なのに――
「私のこと……怖いでしょう?」
「怖いよ、でも……」
「でも……?」
「きみに罪を着せる気はない。それはあの皇女…異聞帯側のきみに対しても失礼だ」
「――!」
予想外の答えにアナスタシア自身、理解するのに少し時間を要した。
「あの皇女のやったことは絶対に許せない。でも、あの行動は彼女のものだから」
異聞帯側のアナスタシアはマスターであるカドックの為に働いたのだ。カドックの為に獣国の皇女となり、その身で彼を庇う程に。それが恋なのか愛なのかはアナスタシア自身には理解できない。
それでも彼女は彼女の抱いたものの為に戦ったのだ。……それを、その罪を、その想いを、身勝手に強奪してはいけなかった。
「……マスター。私、恐らくとても面倒ですよ?うじうじして、陰気で、身勝手で、我が侭で、依存心が強いと来ています。あなたの言葉で揺り動かされましたが、それでも一朝一夕でこの性格が変わるはずもなく。また、こんな事をやらかすかもしれません。それでも、あなたは――また、私を守ってくれますか?」
アナスタシアの問いかけに立香は笑顔で、力強く答えた。
「自分にできる範囲で精一杯、がんばってみるよ」
立香の言葉にアナスタシアは顔を綻ばせる。
「……はい、マスター」
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「……異聞帯側の私が南極で働くカルデアの職員達を皆殺しにしたわ。そして…その職員達は私のマスターである藤丸立香にとって大切な人達だった」
アナスタシアの言葉を聞いたパニッシャーは沈黙する。
「異聞帯側の私がした事とはいえ、マスターは汎人類史側の私に対して少なからず恐怖と憎悪を抱いていたのは事実よ。けどマスターはそれを表に出す事はなく、笑顔で私を受け入れてくれた。私はそれがとても辛かった……」
だがアナスタシアは立香の身を挺した行動で救われた。罪悪感から夢の中に閉じこもり、死にたがっていた自分を立香は助けてくれたのだ。
「私は、マスターに何も返せていない。だから恩返しがしたいの……。私は……マスターに幸せになって欲しい」
アナスタシアの言葉にパニッシャーは黙っていた。
「パニッシャー、あなたの過去に何があったのかは知らないわ。何故あなたが私達サーヴァントを憎むのかも分からない。でも、このノウム・カルデアに召喚された今の私にとってのマスターは藤丸立香ただ一人だけ。それだけは分かって」
アナスタシアはそう言うとパニッシャーの前から立ち去った。
仮にパニッシャーがカルデアのマスターになったらなったで、色んなサーヴァント達と絶対トラブル起こしそう(;^ω^)
アナスタシアの幕間で彼女が好きになったんで、幕間での話を今回に組み込みました。アナスタシアってフランクさん的には悪判定されんだろうか…?