アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです   作:ドレッジキング

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【悲報】パニッシャーさん、また出番無し


シミュレータールームってこういう事もやろうと思えばできる筈……。解釈違いだったらどうしよう(´・ω・`)


番外編⑥ 家族との空間(前編)

「……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

立香の目からは涙がとめどなく流れ出る。

 

「……ぐす……うぅ……!」

 

立香は両親との思い出を思い返す。両親は立香に優しかった。両親はいつも立香に笑顔を向け、立香を抱きしめ、頭を撫でてくれた。立香が泣けば、優しく慰めてくれる。立香が寂しいと言えば、一緒に遊んでくれる。立香はそんな両親に恩返しすらできていない。10日以上もマイルームに引きこもり、涙を流し続けたというのに、まだ悲しみが収まらない。

 

「何で父さんと母さんが死ななきゃいけないんだ……!2人は何も関係ないのに……!ただ俺の帰りを待っていただけなのに……!どうして2人があんな目に遭わないといけないんだよ……!」

 

自分がもう少し早く帰っていれば、両親が死ぬ事はなかったかもしれない。両親が殺される前に自分が戻ってきてさえいたら、こんな悲劇は起きなかったはずだ。いや、記憶操作を施された状態で帰っても両親を自分の親だと認識できなかっただろう。自分はカルデアに騙され、南極に連れていかれた挙句に人類最後のマスターとして特異点の修復…聖杯探索へと行かされた。人理焼却を防ぎ、世界を元に戻しても、自分を生んでくれた両親は帰らぬ人となってしまった。ただの高校生である立香には余りにも過酷な現実である。

 

「俺……まだ父さんと母さんに恩返しもできてない……。なのに、こんなところで……」

 

立香は立ち上がり、トボトボと廊下を歩き始めた。廊下を歩いていると、サーヴァント達から声を掛けられるが、そんなサーヴァント達の声を無視して立香は通り過ぎていく。そしてそんな立香の態度が気に入らなかったのか、スカサハが声を掛けてきた。

 

「おい、貴様。私を無視するとはいい度胸ではないか」

 

スカサハは立香の身体を掴んで自分の方に向かせた。そしてスカサハは涙で真っ赤になった立香の目を真っすぐ見る。

 

「なんだその顔は。一体どうしたというのだ」

 

「……」

 

「ふん、だんまりか。所で今のお主は随分と腑抜けた面構えをしているな」

 

数多くの勇猛なケルトの勇士達を教え導いた武芸の達人であるスカサハにとって、両親の死に動揺している立香の態度は気に食わなかったようだ。

 

「今までのお主であればそのような顔はしなかった。何があったのかは知らんが、少しは己の未熟さを恥じたらどうだ」

 

両親の死を聞かされ、悲しみに暮れる自分の事をスカサハは"未熟"だと断じた。詳細は知らないとはいえ、今の悲しみに暮れた立香の顔を見ればそう思うのも無理はない。何より立香は汎人類史を取り戻す為に戦う人類最後のマスターとしての責務が重く圧し掛かっている。

 

「10日以上もマイルームに引きこもり続け、出てきたかと思えばその顔か。お主は自分の立場を理解しているのか?自分の感情に振り回され、周りに迷惑を掛け続ける。それがどれだけ愚かな行為なのか、お主には分からんか」

 

スカサハは厳しい言葉を投げかけるが、立香は黙ったままだ。ケルト神話の時代から戦いに明け暮れてきたスカサハにとって、現代人の立香の抱える悲しみなど理解できないのも当然である。

 

「…………」

 

「ふん、まぁよい。今のお前に何を言っても無駄なのは分かった。しかしだ、いつまでも落ち込んでいる暇は無いぞ。お前にはやるべき事がある筈だ」

 

スカサハの言葉に立香は無言のままだ。これまで人理修復の為にカルデアで戦い続け、人理焼却が終わりようやく家に帰れると思った矢先に地球白紙化現象が起き、地球の表面が漂白されてしまった。だが漂白化された地球を元に戻せば両親に会える…。そう思っていた時にムニエルから両親は魔術協会の執行者に消された事を知った。両親は自分を心配して探していただけなのに、協会の手により始末された。こんな仕打ちを受けた立香はカルデアで戦い続ける事に意義を見出せずにいた。

 

「貴女には分からないよ…俺の悲しみなんて……」

 

スカサハからの厳しい言葉に対して立香は反論する。

 

「あぁ、分かるはずもない。悲しみに暮れるなとは言わんが、お前には自分に課せられた使命がある筈だ。それを果たさず、自分の感情を優先させるのは感心せんな」

 

スカサハは立香の悲しみに暮れる気持ちは理解できなかった。何故なら彼女はケルト神話の時代に生まれた存在であり、現代に生きる人間ではないからだ。しかしそれでもスカサハは立香に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

 

「お前が背負っているのは世界を救う事だ。そんなお前が悲しみに暮れてどうする。悲しみに暮れるのは、それができるだけの余裕が出来てからにしろ」

 

スカサハはそう言うと立香の身体から手を離すと立香の目の前から立ち去った。現代人とは価値観が違うとはいえ、スカサハなりに立香の事を気遣っているのだろう。だが立香はその気遣いに応える事はできず、俯いたままだった。

 

「自分の感情を優先させて悪いのかよ……。俺だって……俺だって悲しみに暮れる権利くらいはあってもいいじゃないか……」

 

これまでの戦いで立香は弱音を吐かず、怯えず、挫けずに戦ってきた。しかし今回の件は今までの戦いと比べてあまりにも過酷過ぎる。立香はずっと恐怖に震えたり、逃げ出したいという感情を抑えて戦い続けてきた。だがようやく思い出した自分の両親の死を知ってしまい、その心の拠り所を失ってしまった事で立香の心は完全に折れた。血を分けた父と母はもうこの世にはいない。自分が生きている意味はあるのだろうか?そもそも自分はどうしてこんな過酷な運命を背負っているのだろうか?

 

「何で俺なんだよ……何で俺がこんな戦いを続けなきゃならないんだ……。俺はただ普通に生きていたかっただけなんだ……。それなのに……」

 

立香は涙を流す。記憶操作で封じられていた両親の記憶を思い出してからは、普通の暮らしに対して憧れが強くなった。自分が暮らしていた街の風景、自分が通っていた学校、自分が遊んでいたゲームセンター、自分が食べていた食事、自分が着ていた服、自分が見ていたテレビ番組、自分が読んでいた漫画、自分が聞いていた音楽、自分が観ていた映画、自分が触れてきた文化、自分が体験してきた思い出、それら全てが漂白された。

 

「父さん……母さん……会いたい……もう一度だけで良いから会いたいよぉ……」

 

立香は泣きながら呟く。立香とてまだ17歳。親に甘えたい年頃なのだ。それ故に立香は両親に会いたいと願う。だが協会の執行者によって殺された今では最早叶わぬ夢となった……。立香は自分のマイルームに戻ると、北欧異聞帯で共闘した雷神から貰った携帯端末を取り出す。

 

『もし其方が本当に追い詰められ、どうしようもなくなった時はこの端末で"我ら"を呼び出せ。さすれば其方の助けとなろう』

 

雷神からそう言われ、この端末を渡された。そして立香は端末にある赤いボタンを押してみる。端末からは電子音が鳴り響くだけで特に変化は無く、端末の画面も砂嵐だ。

 

「……何だ、何も起こらないじゃないか」

 

立香はそうつぶやくとマイルームから出て、シミュレータールームへと向かった。

 

 

 

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マイルームを出た立香は、ノウム・カルデアのシミュレータールームに一人で来ていた。様々な環境を再現し内部で体験する事が可能なバーチャル・リアリティシステムを備えているシミュレータールームはサーヴァント達が戦闘訓練に用いているが、立香は違った。内部からでもある程度操作が可能なので、立香は自分が暮らしていた家とその近所……そして自分の両親を再現させる。こんな事をしても意味はない事は分かっている、所詮は再現度の高いバーチャル・リアリティシステムによる仮想現実に過ぎないからだ。だがそれでも立香は疑似的な家族に会える事に喜びを感じていた。

 

「父さん、母さん……」

 

立香はシミュレーターで再現した自分の実家の前に立ち、玄関の扉を開けて出てくる父と母の姿を見て涙を流す。そして父と母の胸に飛び込み、今まで留守にしていた事を詫びた。

 

「父さん、母さんゴメン……!ちょっと遠い所に行っていたんだ……。寂しかったよね……?」

 

立香は両親に抱きつき、今まで自分が何をしてきたのかを話した。自分が今こうしていられるのは、ノウム・カルデアの皆のおかげだと。だがそんな立香の頭を、父は優しく撫でた。

 

「大丈夫だ。俺と母さんはいつまでもお前の帰りを待っていた。だからもう泣くんじゃない」

 

「立香、あなたは私達の自慢の息子よ。あなたの頑張りはお母さんが一番よく知っているわ。でもね、無理は禁物よ。たまにはお父さんや私に甘えても良いのよ」

 

立香は両親の優しい言葉を聞き、顔を綻ばせる。例えバーチャル・リアリティで作られた虚像であろうとも、立香にとってはかけがえのない存在だ。

 

「父さん……母さん……。これからは…これからはずっと一緒だよ?」

 

そう言って立香はシミュレーターで再現した我が家の中に両親と共に入っていく。自分の家の匂い、雰囲気、その全てが再現されている。立香は居間に入ると、ソファーに座ってテレビを見る。

 

そして立香の両隣には両親が座り、立香と共にテレビを見始める。立香は母の膝の上に頭を乗せた。年頃の高校生である自分が母親にこんな真似をするのは気恥ずかしいが、今はこうして母に甘えていたい。

 

「あら立香。久しぶりに膝枕をしたいのかしら?甘えん坊さんねぇ……」

 

母はそう言いながら立香の頭を優しく撫でた。

 

「うん……。母さんに甘えたくて仕方がないんだ……」

 

立香は照れ臭そうに言うと、目を瞑って母の温もりを感じる。南極のカルデアに騙されて連れていかれ、終わりの見えない戦いの日々を送っていた立香にとって、この瞬間は心が安らぐ一時であった。人類最後のマスターである立香は、この時ばかりは両親に甘える一人の少年に戻れたのだ。

 

「母さん……俺……頑張ってるよ……。俺……普通に生きていたかっただけなんだ……。それなのに……こんな戦いに巻き込まれて……こんな戦いに……俺……俺……」

 

立香は涙を流しながら呟く。両親はそんな立香の頭を優しく撫で続けた。

 

「大丈夫だ立香、お前はよくやっている。それは俺たちがよく分かっている。今までずっと辛かったんだろう?もう我慢しなくて良い。俺と母さんはいつでもお前の味方だ。だから安心して泣きなさい」

 

「立香……貴方は本当によくやってくれたわ……。辛い事もたくさんあったでしょうけど、それでも諦めずに戦ってくれた……。私たちの誇りよ……。だからもう泣かないで……」

 

立香は両親の愛に包まれ、幸せそうな表情を浮かべた。

 

「父さん……母さん……ありがとう……」

 

辛い戦いの日々の連続だった。自分はただ普通の生活を送りたかっただけだというのに、そんな人生を世界は許さなかった。だが今だけは違う。自分の事を一番に考えてくれる両親がいる。自分の事を褒めてくれた両親がいる。立香は両親に感謝の言葉を告げると、ゆっくりと眠りについた。

 

 

 

 

 

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立香がシミュレータールームで再現した両親に甘えている様子を、制御室からマシュ、ダ・ヴィンチ、ホームズ、ゴルドルフは見ていた。両親の死を受け入れられず、シミュレータールームに籠ってバーチャル・リアリティによって再現した両親と幸せな時間を過ごしてきた立香。その時間は彼にとってかけがえのないものであった。

 

「先輩……」

 

マシュはモニターに映る立香が、両親と幸せそうにしている姿を見て涙を流す。

 

「先輩は今まで普通の生活に戻る事なんて考えられずに……ずっと戦ってきました……。あんなに幸せそうな先輩の顔を見ていると、凄く……凄く胸が痛いです……」

 

食堂でムニエルから立香の両親は魔術協会によって殺された事を聞かされ、悲しみに暮れる立香はシミュレータールームに入り、自分の家族を再現して両親の愛情を確かめようとしている。所詮はシミュレータールームの虚像ではあるが、今の立香はそれにすらすがりたい程に追い詰められており、マシュはそんな立香を見て涙を流す。

 

「藤丸君はここ最近精神的に追い詰められ過ぎた……。今思えば年頃の男の子である藤丸君は南極に連れてこられてから戦いばかり。しかも彼の両親は魔術協会によって殺されてしまった。いくらなんでも可哀想過ぎるだろう……」

 

ダ・ヴィンチは立香の境遇を思い浮かべて悲しげな表情を浮かべる。そしてゴルドルフも、モニターに映る立香の姿を見て悲しげな表情を浮かべている。記憶を操作して両親との思い出すら消され、ようやく両親の事を思い出したと思ったら肝心の両親は既にこの世にはいない。あまりにも残酷すぎる現実に、ゴルドルフですら目尻に涙を浮かべる。

 

「我々には汎人類史を取り戻すという使命がある!その為には彼には戦いに復帰してもらわなければならん!復帰しなければならんのだが……ならんのだが……!」

 

ゴルドルフは立香の現状に心を痛めるが、それ以上に自分が何もできない事に歯痒さを感じている。魔術の世界とは縁の無かった何も知らない立香を騙す形で南極に連れて行ったのはカルデアである。

 

立香から平穏な日常と両親との幸せな生活を奪い、過酷な運命を背負わせたのは自分達だという事を自覚しているゴルドルフやダ・ヴィンチは、シミュレーターで虚像の両親に甘える立香を連れ戻す資格など無いと思っている。だがそれでも、マシュは立香の事を心配する。マシュは立香が今までどんな思いで戦ってきたのかを知っている。マシュは立香の苦しみを理解した上で、立香に戦いに戻ってほしいと願っている。

 

「本当は私も先輩には幸せでいて欲しいと願っています……。ですが……ですが漂白化した地球を元に戻さないといけない使命を帯びて戦っているのも事実なんです……。こうしているだけでは漂白化した地球は元に戻らない……汎人類史は蘇らない……。先輩に戦う事を辞めろとは言えません……。ですが……ですが先輩に少しでも休息を取って欲しいとも思っているんです……」

 

マシュは立香に幸せになって欲しい気持ちと、人類最後のマスターとして汎人類史を取り戻して欲しいという気持ちが複雑に絡み合っている事に悩み苦しんでいる。マシュの言う通り漂白化された地球を元に戻さない限り、人類は滅びる。人類最後のマスターとして、立香は戦い続けなければならない。

 

「先輩は優しい人です。ですがその優しさ故に、先輩は自分の傷を癒せずにいる……。これまでの戦いで誰よりも辛かったのは先輩自身なのに……今までそれを出さずにいた……」

 

「ダ・ヴィンチちゃん、ホームズさん、新所長……。私たちは先輩に対して"人理の為に戦うマスター"として戦う事を無意識の内に強いてきたのではないでしょうか…?だからこそ先輩は私たちに自分の心の内を見せないようにしていたのでは……?」

 

マシュはダ・ヴィンチ達にそう問いかけると、ダ・ヴィンチ達は暗い表情を浮かべた。自分達が何も知らないまま南極のカルデアに来た立香に対してどれ程重大な使命と責任を課してしまったのだろう?そう考えるだけで、ダ・ヴィンチ達の胸は痛んだ。

 

「……我々は彼を戦いの道へと引きずり込んだ。彼が漂白された地球を取り戻す為に戦い続けている事は紛れもない事実だ。我々としては彼には戦いから身を引いてもらいたいところではあるが、それは彼の願いに反する。彼だって……藤丸君だって地球を元に戻したいという気持ちはあるからね。けど藤丸君の両親が魔術協会に始末されていただなんて……」

 

ダ・ヴィンチはモニターに映る両親と楽しいひと時を過ごす立香を見て、複雑な心境を抱く。

 

「とにかく今は藤丸君をそっとしておいた方がいい。今は……今だけは彼に家族との触れ合いの時間を提供してあげたいんだ……。それがたとえ束の間の時間であってもね」

 

ダ・ヴィンチの言葉にマシュとホームズ、ゴルドルフは同意するように小さく首を縦に振った。

 

 

 

 

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立香がシミュレータールームに閉じこもってから数日が経過した。その間、立香は一度も食堂に姿を見せず、食事や入浴などはシミュレータールーム内で済ませており、マシュ達がシミュレーション・ルームに入って声をかけても反応がない。まるでずっとシミュレータールームで虚像の両親との生活を楽しんでいたいかのようだ。そんな立香の行動にサーヴァント達は不安の声を上げ始めた。ノウム・カルデアの食堂には多くのサーヴァント達が集まり、今回の立香の行動を問題視し始めている。サーヴァントの中で真っ先に立香の行動を問題視したのはスカサハである。

 

「全く、あやつはいつまで引き籠っているつもりなのか。虚像に過ぎん自分の親との日々をいつまでも楽しむとはな」

 

今の立香は、ノウム・カルデアに集まったサーヴァント達のマスターとして相応しくない行動を取っている。これまで立香は自分の置かれた逆境にもめげず、人理修復の為の戦いをこなしてきた正に人類最後のマスターとして相応しい少年だった。だが今の立香は年相応の弱さと、両親への愛に餓えた一人の子供である。仮想空間の中で作り上げた偽物の両親と生活している姿を見て、少なくないサーヴァント達が立香に対して失望を露わにしている。

 

彼等からすれば汎人類史を取り戻す為の重要な戦いを放棄して、シミュレータールーム内で創造した自分の家族との触れ合いの方を優先しているのだから面白くないのは当然だろう。だがこのまま立香を放置しておくわけにもいかない。南米に潜伏している異星の神の打倒の為には立香に立ち上がってもらわなければならないのだから。そんな中、モードレッドが立香の行動に不満の声を上げる。

 

「マスターの奴、いい加減にしろよな。いくら何でもオレ達サーヴァントをほったらかしにしすぎだろ」

 

モードレッドは立香が部屋に閉じこもっている事に苛立ちを募らせ、他のサーヴァント達に視線を向ける。

 

「お前たちもマスターの行動には疑問を持たねぇのか?オレ達には重要な使命がある筈なのに、肝心のマスターは戦いそっちのけで自分に都合の良い空間で親と楽しく暮らしてんだぜ?これじゃあオレ達がここに召喚された意味がねえだろ」

 

「確かにその通りですね。でも、先輩は今、ご自身の心の傷と向き合っている最中です。もう少し待ってあげましょう」

 

マシュはそう言うが、モードレッドは反論する。

 

「もう少しって言うが、具体的にいつになるんだよ!10日以上もマイルームに引きこもっていたかと思えば今度はシミュレータールームで偽モンの親と仲良く暮らしてるとか、役割を放棄してるのと同じじゃねぇか!」

 

だがマシュは首を横に振る。

 

「先輩のご両親は既に亡くなっているんです。先輩は両親を失った悲しみを癒すために、ご自分の心を落ち着かせる必要があったんですよ」

 

「今はそんな悠長な事をしている場合じゃねえだろ!あいつの気持ちは分かるけど、こんな事を続けていたら本当に取り返しのつかない事になるぞ!」

 

「落ち着いてください、モードレッドさん。先輩は私達のマスターであると同時に、まだ17歳の子供です。心が不安定になっているのは仕方ありません」

 

「仮にもマスターはオレ達サーヴァントを率いるべき人類最後のマスターだろ!?自分の立場と置かれた状況を少しは考えやがれ!こうしている間に異星の神とやらが攻めてきたら、どの道やられちまう!」

 

マシュとモードレッドの口論を耳にして、ブーディカが二人の間に割って入る。

 

「待ちなよモードレッド。アンタは立香に対してああしろこうしろって色々求めすぎだよ」

 

「なっ……!オレは何も間違った事は言ってないぞ!」

 

「あんたが言っている事も間違ってはいないよ。でも、あたしらサーヴァントは人間じゃない。マスターだって一人の人間の人格を持った存在なんだ。だから、あんたらサーヴァントと違ってマスターは自分の感情を上手くコントロールできない時だってあるの。今まではそれを表には決して出さなかったけど……今の立香は違う。立香は元々魔術とは縁の無いどこにでもいる男の子だった」

 

「そんな立香は人類最後のマスターとしての重すぎる責任を負わされている。あの子にはあたしらサーヴァントを束ね、人類史を取り戻さないといけないっていうプレッシャーもある。そんな中、マスターはずっと自分の心を押し殺してきた。だから……立香の悲しみも分かってあげて欲しいの。彼はあたしやアンタみたいに戦乱の時代で育ったわけじゃない」

 

ブーディカの言葉に、周囲のサーヴァント達も立香が抱えてきた苦悩を理解した上で、彼に怒りをぶつける事は筋違いだと納得する。

 

「だけど……このままじゃいけないとはあたしも思ってる。今は状況が状況だからね…。立香が自分の意思で戦いに戻ってきてくれればそれに越したことはないんだけど……現状では難しいと思う……」

 

ブーディカの言う事は最もであり、現状では立香を戦いに復帰させる事は難しいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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それから更に数日が経過した。立香は相変わらずシミュレータールーム内の仮想世界にて偽の両親との平和な生活を楽しんでいる。そんな中、アナスタシアはシミュレータールームの入り口に立ち、中にいるであろう立香の事を思っていた。

 

「今のマスターはあの時の私と同じ……。家族に囲まれた世界で幸せに暮らし続けたいと思っている……。けど……けどそれは間違い。だってかつての私がした過ちと同じ事をしているのだから……」

 

アナスタシアは今の立香を見て、かつて自分がした行いを重ねた。

 

「マスター……。私はあなたの優しさに救われた。だから……」

 

――――今度はわたしがマスターを助ける番……!

 

アナスタシアは意を決して立香がいるシミュレータールームの中に入っていく。




藤丸君は色々背負いすぎ、抱えすぎなんだよな…( ;∀;)


原作のスカサハだったらシミュレータールームに乗り込んで藤丸君の首を刎ねてたかもしれない……

今回の立香の行動を見れば確実に何人かのサーヴァントは座に退去しそうだし、シミュレータールームに閉じこもってる立香を殺しにかかりそう(-_-;)
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