アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです 作:ドレッジキング
翌日、パニッシャーは立香、マシュ、ダ・ヴィンチと共に昼食を食べていた。立香がマスターとして復帰したので、とりあえずはパニッシャーは立香が戦闘不能になった時の予備員として待機する事となった。
「しかしまぁ、昨日は驚いたよ。まさかパニッシャー君があんなに怒るとはね」
ダ・ヴィンチは昨夜の食堂で自分とマシュに対して怒りを露わにしたパニッシャーを思い出しながら言う。パニッシャーは立香の事を心配しているが故に、彼を戦いに引き込んだカルデアの人間であるマシュとダ・ヴィンチに怒りをぶつけた。立香は騙される形で拉致同然に南極のカルデアに連行され、そこで記憶操作を施された上に特異点修復の旅へと行かされたのだから、普通に暮らしている高校生であった立香には余りにも過酷な運命だと言える。
「……俺は別にお前らを許した訳じゃない。だが、立香がこの先も戦いを続けると言うならば、俺も出来る限りの支援をしてやろうと思っただけだ」
パニッシャーはぶっきらぼうな口調で言う。だがそれは立香に対する優しさでもあった。
「……おじさんありがとう。俺の事をそんなに心配してくれて」
「誰がおじさんだ!?いや、お前から見れば十分におじさんだが……」
パニッシャーは立香に突っ込みを入れる。するとマシュが笑いながら言う。
「あははっ、パニッシャーさんって見た目に反して優しいですよね」
マシュの言葉にパニッシャーは黙る。パニッシャーは愛想こそ悪いが、善人や弱者には不器用ながらも手を差し伸べる一面もある。そんなパニッシャーに対して立香は言う。
「パニッシャー、俺の事をそこまで気にかけてくれて本当に感謝している。だけど、俺の事はもういいんだ」
立香は両親を失った悲しみに暮れていたが、今は悲しみを乗り越え、自分の使命を果たそうとしている。そしてそんな立香やパニッシャーの所にルーラーのジャンヌと、ジャンヌオルタが来る。二人共シミュレータールームから自分の意思で出て来た立香を祝福しているようだ。
「マスター、もう大丈夫なんですか?」
「うん、もう平気だよ」
立香は笑顔で答える。どうやら二人はシミュレータールームから出てきても、立香の事を心配していたらしい。
「ふん、ようやく出てきたようですね。けどマスターちゃんのくそ雑魚メンタルじゃ、戦いなんて無理でしょうけど」
ジャンヌオルタは煽るようにして立香に言うが、本気で馬鹿にしているわけではない。むしろ彼女なりに立香の事を心配していたのだ。
「カルデアっていうのは英霊のクローンでも量産しているのか?同一人物が多過ぎるだろ」
「違う違う、クローンじゃなくて英霊の"別側面"っていうやつさ。例えばルーラーのジャンヌと、ジャンヌ・オルタは同じジャンヌでも性格が全然違っているだろう。あれと同じようなものだと考えてくれればいい」
パニッシャーの指摘に対し、ダ・ヴィンチは苦笑しながら言う。確かに同じ存在でありながらも、異なる個性を持つのは当然だ。更に言えばそれぞれのクラスもルーラーとアヴェンジャーで違っている。そんな時、ジャンヌ・オルタがパニッシャーの事を興味深そうに見つめる。
「ところであなたはアヴェンジャーの素質があるみたいね?私とちょっとお話しましょうよ」
「は?」
突然の申し出にパニッシャーは驚く。そんなパニッシャーの様子を見てマシュは思わず吹き出しそうになる。
(パニッシャーさん、絡まれてます…)
確かにパニッシャーの行動原理を考えればアヴェンジャーの素質があるとは言えなくもないのだが……。そんなこんなでパニッシャーはジャンヌ・オルタから絡まれる羽目となってしまった。
「ほら、私の言った通りじゃない。やっぱりあなたの魂は復讐者なのね」
ジャンヌ・オルタはそう言いながらパニッシャーの肩に手を乗せた。ジャンヌオルタの言動にマシュは困惑するが、一方で立香はどこか納得したような表情を浮かべる。
「俺と違ってお前は犯罪者や悪人を憎んでいるっていうタマじゃないだろ」
自分に絡んでくるジャンヌ・オルタに対してパニッシャーは思わず突っ込んでしまう。
「私は悪人だから憎いとかそういう話をしているんじゃないの」
ジャンヌオルタはパニッシャーの言葉に呆れつつも、彼の言葉を否定する。
「俺は悪しか殺さない。善人を殺すのは御免だ」
「……ちなみに私の属性は混沌・悪なんだけど、アンタ的にはどうなのかしら?」
ジャンヌ・オルタはジロリと睨みつけるようにパニッシャーを見つめる。そんなジャンヌオルタに対し、パニッシャーはため息をついた。
「その属性に違わず、実際に民間人や非戦闘員を殺しまわるようなら、そん時は俺がお前を殺してやるよ」
「あら?アヴェンジャーである私に対して非戦闘員殺傷禁止っていう倫理観を期待するなんて、随分と甘い考えをしているのね」
ジャンヌ・オルタはそう言って笑う。
「それならお前は微小特異点の修正任務で、自分が現地の民衆を虐殺して回ってるとでも言いたいのか?」
流石にマスターである立香がそんな事を命じる筈もないのだが、ジャンヌ・オルタの性質上、そういう事態になっても不自然ではない。そんなパニッシャーの指摘に対し、ジャンヌ・オルタは首を横に振る。
「私がそんな下らない真似をする訳がないじゃない」
「はいはい、二人共そこまで~」
ダ・ヴィンチはジャンヌ・オルタとパニッシャーの間に割って入った。ジャンヌ・オルタとパニッシャーのやり取りを聞いている内にマシュは苦笑いを浮かべている。
「ところで、聖杯を巡って七騎のサーヴァントが争う聖杯戦争だが……冬木で行われた聖杯戦争では多くの市民が命を落とした。俺が行ったのはこことは違う並行世界の冬木の聖杯戦争だが、お前達もこの戦いを知っているんだろう?」
パニッシャーの言葉に立香とマシュは初めて自分達がレイシフトした場所……特異点Fである2004年の冬木の事を思い出す。あの特異点での冬木市は聖杯戦争によって壊滅的な状態になっており、あの戦いで多くの人々が犠牲になったであろう事は容易に想像できた。
「聖杯戦争というのも人理とやらの為の戦いなのか?」
そう言うとパニッシャーはルーラーのジャンヌの方を見る。
「いえ……聖杯戦争というのは人理の為の戦いとはまた別のものです。聖杯戦争というのは万能の願望器である聖杯を巡って七騎の英霊達が最後の一人となるまで戦うという儀式の事を指します」
ジャンヌの説明を聞いたパニッシャーは腕を組む。
「つまり聖杯戦争でのお前達サーヴァントは世界を守る為ではなく、各々の願いの為に戦っていたと?」
「はい、そうなります」
ジャンヌの言葉にパニッシャーはため息をつく。
「くだらんな。世の為人の為でなく、自分の願望の為の私闘か」
そう言って呆れた表情を浮かべるパニッシャー。聖杯戦争で多くの市民に多大な迷惑をかけている事を指摘されたジャンヌ達は何も反論する事ができない。だが元々サーヴァントというのは人々の為に戦うヒーローとは違う。人理を守る為に戦う事はあれど、聖杯戦争という己の願望を叶える聖杯を巡る戦いでは自分を召喚した魔術師をマスターとし、その命令に従って動く駒に過ぎない。
「俺はこの世界とは異なる並行世界で行われた聖杯戦争をこの目で見た。お前達サーヴァントの手によって精気を奪われたり、戦闘の余波で巻き込まれて死んだりした冬木の市民を大勢見た。お前達二人はマスターの命令ともあれば躊躇なく市民を手に掛けるんだろう?違うか?」
パニッシャーはジャンヌとジャンヌ・オルタの目を真っ直ぐ見ながら質問する。
「確かに聖杯戦争で多くの人々が巻き込まれて犠牲になる事は否定できません……。しかしそれは聖杯戦争における必然的な流れであり、仕方のない事なのです……。私は聖杯戦争におけるルーラーのサーヴァントですが、それでも完璧に犠牲者が出るのを防げるわけではありません……」
ルーラーだとで万能ではない、聖杯戦争での違反者を取り締まり罰するとは言ってもルーラーに隠れて魂喰いや殺人を行う者も存在するとジャンヌは説明する。
「それじゃ結局あってないようなもんだろ。それに聖杯戦争に参加したマスターの中には自分の願望のために無関係な人間を巻き込む輩もいるはずだ。その上でサーヴァントもマスターとグルになっているパターンだってある……」
パニッシャーの言葉にジャンヌは顔をしかめる。
「……えぇ。貴方のおっしゃる事も分かります。私のルーラーとしての権能も万能とは言い難いもの。全ての人々の救済は不可能に近いでしょう」
聖杯戦争には監督役やルーラーのサーヴァントもいるとはいえ、それが十全に機能しているとは言い難い。それにサーヴァントの中には多数の民間人を巻き添えに宝具を展開したり、建造物を始めとするインフラの破壊まで行う者もいる。とはいえノウム・カルデアが行っている空想樹伐採は汎人類史を取り戻す為の戦いであり、それに関してはパニッシャーも賛同している。
「お前達も俺の目の届く範囲で聖杯戦争に参加するようなら、そん時は俺がお前等2人を殺してやるよ」
パニッシャーはジャンヌとジャンヌ・オルタに睨みを利かせ、殺気を放つ。
「面白いじゃない、やってみなさい。まぁ、私達がアンタなんかに殺されるはずがないけどね」
「いい度胸だ。だがそんな態度を取ってられるのも今の内だけだぞ」
2人の会話を聞いているマシュは不安そうな表情を浮かべる。そうしてジャンヌとジャンヌ・オルタは去っていった。そうしてパニッシャーは食事を再開したものの、ふとあるサーヴァントがパニッシャーの目に入った。アサシンのサーヴァントである虞美人である。虞美人はノウム・カルデアに宿敵であるクリプターの一人、芥ヒナコの正体であり、中国異聞帯でカルデアに倒された。
が、今ではこうしてノウム・カルデアのサーヴァントとして活動しているのだが、パニッシャーはそれが気に入らない。汎人類史を裏切ったクリプターの一人である芥ヒナコ、もとい虞美人がこうしてノウム・カルデアに所属している事実には吐き気すら催してくる。クリプターや異星の神のせいで空想樹が地球に飛来し、地球全土が白紙化してしまったのを考えれば、パニッシャーの考えも無理はないかもしれない。立香の代理としてマスターとなったパニッシャーはダ・ヴィンチからサーヴァント達の伝承や詳細を聞かされていたので、虞美人がどういうサーヴァントなのかも知らされていた。パニッシャーは席を立ちあがると、虞美人の席まで近づいていく。
「虞美人…いや、"元"芥ヒナコか。クリプターの一人として人類を裏切った女が、こうしてノウム・カルデアの食堂で食事をするっていうのはタチの悪い冗談か何かか?」
「何よ、文句でもあるわけ? 私はこの通り、ちゃんとしたサーヴァントなんだから別に構わないでしょ」
パニッシャーは舌打ちをする。
「そういう問題じゃねぇんだよ。サーヴァントになろうがお前が生前に犯した罪は帳消しにならん。罪ってのはずっと付いて回るんだからな。クリプターから鞍替えしたつもりだろうが、一度人類を裏切っている分際で何を偉ぶった事を言ってる」
「ふんっ、アンタが許そうと許すまいと関係ない。それに、あの時と違って今は項羽様に会える機会がある。それだけで十分よ」
そう言うと、虞美人は椅子から立ち上がり、その場から去ろうとするが、パニッシャーは懐から銃を取り出し、後ろから虞美人の背中に向けた。
「あれだけの事をしておいて反省も後悔も無し、か。清々しい程のクズだ。お前と同じ空間にいるだけで吐き気がする」
パニッシャーは引き金を引くと、乾いた音が食堂に響き渡る。が、銃弾は虞美人には命中しなかった。パニッシャーの銃をブラダマンテが弾き飛ばしたからである。
「邪魔をするな…」
「いいえ、止めさせていただきます!」
そう言ってブラダマンテはパニッシャーの前に立ち塞がる。するとパニッシャーの背後にはいつの間にか虞美人の姿があった。パニッシャーは背後からの攻撃に備えようとするが、それよりも先にパニッシャーの腹部に衝撃が走る。虞美人がパニッシャーの腹部に蹴りを喰らわせたからだ。虞美人の軽い蹴りだけで100kgを超えるパニッシャーが何メートルも吹き飛ばされ、食堂のテーブルをなぎ倒しながら壁に激突してしまう。
「ちっ……」
パニッシャーはどうにか立ち上がるが、虞美人は目にも止まらぬ速度でパニッシャーとの距離を詰めると、パニッシャーの首を締め上げ、片手で彼の身体を持ち上げる。
「この私に銃を向ける事の意味、わかってんでしょうね……?」
パニッシャーは苦しそうな表情を浮かべながらも、「ああ、そうだ。お前は俺にとって駆除対象、だから銃でも砲弾でもぶちかましてやる!」と答えた。
パニッシャーの言葉を聞いた瞬間、パニッシャーの首を掴む力が強くなる。
「ぐぁ……!?」
「人間っていうのは、自分勝手な生き物よね。自分の都合の良い正義で他者を裁きたがる。アンタみたいにね…!」
虞美人は冷徹な眼差しでパニッシャーを見上げ、更に力を込めていく。が、パニッシャーの首を絞める虞美人を、立香とマシュが止めに入る。
「待ってください!それ以上やったらパニッシャーさんが死んでしまいます!!」
「気持ちは分かるけど、ここで殺したところで何も解決しないよ!!」
「……ふん」
虞美人はパニッシャーを床に投げ捨てる。解放されたパニッシャーは咳き込みながら呼吸を整えた。
「けほっ、ごほ……。助かったぜ、ありがとよ。マシュに立香」
虞美人はつまらなそうに起き上がるパニッシャーを見ると、その場を去っていく。
「マシュ、立香、クリプターだった芥ヒナコ…虞美人をこうして自分達の仲間に引き入れるなんて何を考えているんだ?クリプターは世界を……人類を裏切った連中なんだぞ?」
パニッシャーは立香とマシュに問いかける。しかし二人はパニッシャーに答えようとせず、ただ黙って俯くだけであった。その様子にパニッシャーは呆れたようにため息をつく。
「まあ良いさ。お前らが何を考えていようが知った事じゃない。だがこれだけは覚えておけ、ああいう手合いっていうのは心の底から反省したり後悔したりする事は絶対にない」
「確かに……ヒナコさんはクリプターの一員でした。ですが英霊の座に登録され、こうしてノウム・カルデアのサーヴァントとして召喚されています。ならば……」
「甘いんだよ、マシュ。あいつはそういう奴だ。自分の願いを叶える為なら何だってする。お前達の味方でいるのはたまたま項羽っていうサーヴァントがこのカルデアにいるからあの女の手綱を握れているだけに過ぎん」
パニッシャーは虞美人への嫌悪感を露わにするが、そこにダ・ヴィンチが来た。
「パニッシャー君、相手の過去の所業や悪事にばかり目を向けてしまうのは君の悪い癖だ。藤丸君はこのカルデアに召喚されたサーヴァント達が過去に犯した悪行を知った上で彼等のマスターになっている。思想は各々違えど、こうして今は汎人類史の為に戦っているという共通点があるからこそ、団結できているんじゃなかったかな」
「……」
強烈な個性を持つサーヴァント達が一つになれているのも、マスターである藤丸立香という一人の少年の持つ器の大きさ、そして懐の深さ故だろう。だからこそカルデアに召喚されたサーヴァントは皆立香に協力的だし、彼を人類最後のマスターとして信頼しているのも頷ける。だがパニッシャーは生前に極悪の所業をしでかしたサーヴァントを許容しない。パニッシャーは立香とマシュの思想の甘さに辟易しつつ、食堂から去って行った。
リンボとかレジライだったら見た瞬間殺しに行きそう(;^ω^)
パ二パ二のフィジカルじゃぐっちゃんに勝つのは流石に厳しかったか。