アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです   作:ドレッジキング

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頑なに柳洞寺に攻め込む事を士郎に提案するセイバーは今見ても頭悪いと思うのは自分だけだろうか……(;^ω^)

士郎の方がよっぽど状況判断能力あるぞ。


第19話 神秘の秘匿

慎二の住む家から出て来た士郎が、地面まで届くほどの髪の長い妖艶な美女に見送られて出て来た。スティーブは士郎に駆け寄ると、慎二から何もされていないかどうか尋ねる。

 

「シロウ、大丈夫だったか?彼から何かされてないか?」

 

「心配いりませんよロジャース先生。慎二は俺にそんな事をするような奴じゃないです」

 

間桐慎二という少年はこの聖杯戦争に参加しているマスターの一人ではあるが、友人である衛宮士郎には手を出していないようだ。士郎がセイバーのマスターである事を知りつつ、無傷で返したというのは不幸中の幸いである。セイバーがいない今の状態では士郎はひとたまりもない。だからこそスティーブは士郎の後を付けたのだ。そして士郎は慎二から聞かされた情報をスティーブに伝える。

 

「ロジャース先生、慎二の話によれば柳洞寺に聖杯戦争のマスターが潜伏しているそうです」

 

士郎の言葉にスティーブは目を見開く。連日新都で起きていたガス漏れによる意識不明事件も柳洞寺に潜伏しているマスターが関与している可能性が極めて高く、慎二のサーヴァントが言うには"魔女"らしい。魔女というからにはキャスターのクラスか。

 

「シロウ、一旦家に戻ろう。リンやクリント、ナターシャにもこの事を報告しなければ」

 

「分かりましたロジャース先生。慎二の奴は"早めに叩かないと厄介"って言っていました」

 

スティーブは士郎は家路を歩いている際、士郎から柳洞寺についての説明を受けた。そして士郎が指差す方向にある山を見る。あの山の中腹に柳洞寺があるというのだ。スティーブは柳洞寺がある山をじっと見ていると、士郎の友人である柳洞一成が二人に声をかけてきた。一成は士郎とロジャースを見ると、こちらに近付いてくる。

 

「む?午後の授業をボイコットした男がこんなところで何をしている。それにロジャース先生も一緒か」

 

スティーブは一成とも面識があり、彼は士郎と凛が通っている穂群原学園の生徒会長を務めている。

 

「よ。学校、もう終わったのか?」

 

「終わったとも。生徒会でやる事もないので帰ってきたのだが、何かあったのか。見たところ、ロジャース先生と二人でお山を眺めていたようだが」

 

「ああ、別に何かあった訳じゃない。なんとなく家に帰りたくなっただけだ。ロジャース先生はそんな俺に説教をしていたんだよ」

 

何故スティーブと一緒だったのかについて咄嗟に嘘を付く士郎。確かに授業を途中で抜け出してきたのは事実だし、そんな士郎と一緒に授業を抜け出したスティーブは士郎に対して説教していた……という事にしておいた方が都合が良いのだ。

 

「やれやれ。なんとなくで授業を休まれては、教師は商売あがったりだ。ロジャース先生はそんなお前を心配してくれているんだからキチンと感謝しなければな。

 

――――で。何故お山なんぞを拝んでおったのかと訊いているのだが」

 

「…………ちょっとな。一成、一つ訊くけど。最近さ、何か変わった事、ないか?」

 

「ふむ。変動など茶飯事だが、さりとて劇的な境地に至る事もなし。お山は日々これ平穏、しかるに平穏こそ日常よ」

 

「わるい一成。真面目な話をしているんだ」

 

「し、失礼な!こっちだって真面目だぞ!」

 

「みたいだな。ならいいんだ、取り越し苦労だった」

 

「え……?変化って、寺にか……!?」

 

「ああ。お山ではなく寺の空気がうわついている。親父殿の知り合いらしいのだが、少しばかり厄介な客人を迎えていてな。これが結構な美人であるから始末が悪い。まったく、皆も女一人に何を騒いでいるのやら」

 

「女って――――柳洞寺って、尼さんいたっけ?」

 

「おらぬ。訳ありでな、祝言まで部屋を貸し与えているのだが――――いや、これが確かに美しい人でな、

 

井戸から水を汲む姿など、俺でも目を奪われるほどだ」

 

「む、いかん。だから女生はいけないんだ、女生は。色欲断つべし、落ち着け一成」

 

一成はぶつぶつとお経を唱え始めた。スティーブが士郎から聞いた話では一成は柳洞寺の跡取り息子であり、高校を卒業したら家を継いで僧侶となるらしい。一成の話の通り、確かに本来女人禁制の寺に美しい女性が入って来ては、修行に勤しむ僧侶たちの心も乱れるというもの。

 

しかし士郎が慎二から聞いた話によれば、マスターは柳洞寺を根城にしているという。多くの僧侶達が修行する場所を本拠地にするという事は、寺の僧侶達がグルだったりするのだろうか?それともマスターが使う魔術によって僧侶達が操られているのか?いずれにせよ柳洞寺の調査はしなければならないだろう。

 

「もしもーし、大丈夫か一成」

 

「問題ない。修行不足なので、より精進したいと思う」

 

そう言うと一成は住宅地の奥へと歩いていった。スティーブは士郎と柳洞寺にいるマスターの話をしつつ、家路に着いた。

 

 

 

 

***************************************************

 

 

 

 

「な、ライダーのマスターに会ってきたって、いつの話よそれ!?」

 

「そんな馬鹿な!一人で敵のマスターに会うなどと、自分の身をなんと考えているのですか!」

 

夕食後、桜と大河が家に帰り、士郎が今日ライダーのマスターに会った事を凛とセイバーに告げると、案の定二人から驚かれた。

 

「うわ、待て、落ち着けってば……!大丈夫、怪我なんてしてないから、そう怒らないでくれ」

 

士郎は慌てて凛とセイバーを宥めようとする。

 

「怒るなどと――――いえ、私は怒ってなどいませんっ。シロウの行動に呆れているだけです」

 

「……右に同じ。ま、すんだ事を言っても始まらないわ。それで、どういう事なのよ士郎」

 

凛とセイバーは明らかに怒った目で士郎を見ている。マスターである士郎が自分のサーヴァントであるセイバーも同行させずに敵のマスターの根城に行くのだから、怒るのも無理はない。

 

「シロウ、貴方はもう少しマスターとしての自覚を持つべきです」

 

セイバーは厳しい口調で言う。

 

「落ち着いてくれセイバー。その事は反省しているからさ……。そんでライダーのマスターと会ったのは今日の午後だ。話し合いをするっていうから付き合ったけで、別に戦った訳じゃない」

 

「見れば判るわ。で、ライダーのマスターはどんなヤツだったの」

 

「どんなヤツかって、慎二だよ。ロジャース先生と一緒に学校で結界を探っていたら声をかけられてな。話があるから付いてこいって、間桐の家まで行ったんだ」

 

「な――――――慎二って、本当にあの慎二!?」

 

士郎の言葉に凛は驚く。慎二がライダーのマスターだという事実がよほど意外だったのだろう。

 

「ああ。ライダーも慎二に従ってたし、聖杯戦争も知ってたぞ。なんでも間桐は由緒正しい魔術師の家系なんだって?」

 

「え―――――ああ、うん、それはそうだけど……そんな筈はないのよ。間桐の家は先代でもう枯渇している筈だもの。何があろうと間桐の子供に魔術回路はつかない。これは絶対よ」

 

スティーブも士郎から慎二の家は魔術師の家系だと聞かされている。だが間桐家の人間は既に魔術師が持つ魔術回路を持たなくなっており、慎二も妹の桜にも魔術回路は無い筈だ。

 

「ああ、慎二もそう言っていた。けど知識だけは残ってたんだと。長男である慎二にしか教えなかったそうだから桜は知らないとか。……ようするにさ、俺と似たタイプのマスターなんだよ、あいつ。自分には魔力がないから遠坂の感知にもひっかからないとか言ってたぞ」

 

「……そう。まずったわね、たしかにそういうケースだってあるか……。魔導書が残っているんならマスターになるぐらいはできるだろうし、ああもう、それじゃわたしの行動ってアイツに筒抜けだったんだ、ばか」

 

凛はぶつぶつと独り言を言っている。

 

「わたしのミスだわ。慎二の事はしっかりマークしておくべきだった。知っていたら結界を張らせるなんて事もなかったのに」

 

「ああ、いや。学校の結界は慎二じゃないって言ってたぞ。学校にはもう一人のマスターがいるんだとさ」

 

「ええ、それはそうでしょうね。学校にはまだ一人、わたしたちお知らないマスターがいるのは明白よ。けど士郎。貴方まさか、結界を張っていないっていう慎二の言葉を信じてるの?」

 

「……いや、そこまでお人好しじゃない。慎二が学校にいる以上、半分の割合で慎二の仕業だと思う。あとの半分は、まだ正体が知れないマスターだろ」

 

「半分ねえ……その時点で大したお人好しだと思うけど。ま、それはそれでいいわ。そういう余分なところが貴方の味だし、だからこそ慎二は正体を明かしたんだろうしさ」

 

凛は呆れと感心が混ざったような表情を浮かべる。

 

「まあいいわ。それで慎二と何を話したの?」

 

「自分と手を組まないか、だとさ。慎二のやつも戦うつもりはないらしい。だから顔見知りとなら強力したいって風だったけど」

 

「え――――士郎、まさか慎二と」

 

「いや、俺は断った。それが普通だろ。もう遠坂と手を組んでるし。返事をするにしたって、ちゃんと遠坂に話を通さないと駄目じゃないか」

 

「あ……うん。それは、そうだけど。でも断ったって、言った?」

 

「ああ。さっきはああ言ったけど、慎二への返答は俺の独断でやっちまった。遠坂の耳に入れるような話でもなかったし。……あ、それともやっぱり早まったのか、俺?」

 

「……別に。士郎の判断は正しいんじゃない?まあ、アンタ個人にお呼びがかかったんなら、わたしが文句を言う筋合いでもないけどさ」

 

完全に聖杯戦争のマスター同士の会話にスティーブ、クリント、ナターシャの3人は入り込む余地が無かった。慎二は士郎の友人だと聞くし、その士郎は今マスターとして、同盟を組んでいる凛と話をしている。

 

あくまでも聖杯戦争とは関係のない部外者であるスティーブ達は自分達が蚊帳の外に置かれている気分だった。そして士郎は自分が慎二の家で会ったというライダーの事について話していた。

 

「えっとね、サーヴァントがどんな英霊かは呼び出されたマスターに左右されるって話。

 

けっこう似たもの同士になるのよ、マスターとサーヴァントは。つまり高潔な人物がマスターなら、それに近い霊殻をした英霊が召喚される。逆に言えば心に深い傷を持った人間が英霊を呼び出せば、同じように傷を負った英霊が現れるわ。士郎がライダーに感じた違和感はそれでしょうね。歪な心を持つマスターは、時として英雄ではなく英霊に近いだけの怨霊を呼び出してしまうのよ」

 

凛の言葉を聞き、クリントがスティーブに小声で話す。

 

(なあキャップ。キャップがもし聖杯戦争でサーヴァントを呼び出せば凄い英雄が来るんじゃないか?)

 

クリントは冗談半分で言っているのだろうが、スティーブは少しだけ想像してしまった。もしも自分が聖杯戦争に参加してサーヴァントを呼び出したら、一体誰が出るのだろうかと。いや、自分が聖杯に対して望むものはないし、聖杯戦争という戦いに参加するつもりもない。

 

「英雄に近い怨霊……それってまさか、前に遠坂が言っていた――――」

 

「ええ。血を見るのが大好き、人殺しなんてなんとも思わないような暴虐者よ。実際、残忍さだけが伝承に残っている英雄だっているんだから、そういうヤツがサーヴァントになってもおかしくないわ」

 

(キャップ、という事はカーネイジの野郎がこの世界にいたらアイツも英霊とやらになっちまうのか?)

 

(冗談でもない事を言うなクリント)

 

カーネイジの恐ろしさはキャップやクリント、ナターシャが一番よく知っている。カーネイジ……クレタス・キャサディは間違っても英雄として名を残すような存在ではないし、第一彼はヴィランである。歴史に名を残す手段が善行や偉業ばかりではないのは理解できるが、カーネイジが英霊になるなど全くもって笑えない。

 

「……まあライダーの事はそれだけだ。最後にもう一つあるんだけど、これが一番重要かも知れない。なんでもさ、ライダーの話じゃ柳洞寺にもマスターがいるらしい。そいつは町中の人間から魔力を集めいているそうあんだけど、この話、二人はどう思う?ロジャース先生、クリント先生、ロマノヴァ先生も聞いて欲しい」

 

「柳洞寺……?柳洞寺って、あの山のてっぺんにある寺のこと?」

 

「だからそうだって。なんだ、思い当たる節でもあるのか遠坂」

 

「まさか、その逆よ。柳洞寺なんて行った事ないもの。どんなマスターか知らないけど、そんな辺鄙なところに陣取ろうなんて思わないわよ、普通」

 

「だよな。俺も柳洞寺にいるって聞いた時は驚いた。いくら人目につかないっていっても、寺には大勢の坊さんが生活しているんだ。怪しい真似をしたらすぐに騒ぎになると思う」

 

「ふーん……いまいち信用できないわね、その話。仮にそうだとしても、柳洞寺って郊外のさらに郊外にあるんでしょ?そこから深山と新都、両方に手を伸ばすなんて、大魔術っていうより魔力の無駄遣いよ。集めた魔力を使っても、そんな大規模な術は不可能だもの」

 

凛の言い方から察するに、いくら魔術師といえども術の範囲や規模には限界があるようだ。

 

「いえ、シロウの話は信憑性が高い。あの寺院を押さえたのなら、その程度の魔術は自然に行えるのですから」

 

「?セイバー、あの寺院って―――柳洞寺のこと知ってるのか?まだ連れて行った事ないぞ、俺」

 

セイバーの言葉に首を傾げる士郎。

 

「忘れたのですかシロウ。私は前回も聖杯戦争に参加しています。この町の事は熟知していますし、あの寺院が落ちた霊脈という事も知っています」

 

「――――落ちた霊脈!?ちょっと待って、それって遠坂邸の事よ!?なんだって一つの土地に、地脈の中心点が二つもあるっていうのよ!」

 

凛はセイバーの言葉に納得できないとばかりに声を上げる。

 

「それは私にも判りませんが、とにかくあの寺は魔術師にとって神殿とも言える土地です。この地域の命脈が流れ落ちる場所と聞きますから、魂を集めるには絶好の拠点となるでしょう。魔術師は自然の流れに手を加えるだけで、町中から生命力を回収できる」

 

「……そんな話、初めて聞いたわ。けど、確かにそれなら町の人間から生命力を掠め取っていく事もできるわよね……」

 

スティーブ達の世界にいる至高の魔術師ドクター・ストレンジであれば似たような事は可能だろう。いや、彼なら霊脈に頼らずとも自分の力だけで出来る筈だ。

 

「あの寺が霊脈だとしたら、まず真っ先に押さえようとするのがマスターでしょう?おかしいじゃない、なんで他の連中はそんな場所を見逃してるのよ」

 

凛やセイバーの言う事が正しければ、確かに柳洞寺は魔術師にとってこの上ない理想的な立地である。それゆえに凛は

 

何故他のマスター達が柳洞寺を狙わないのか不思議に思っているようだ。

 

「いや、だから柳洞寺があるからだろ。悪用されないよう見張ってるんだって」

 

「柳洞寺の僧侶はみんな純粋な修行僧じゃない。わたしたちみたいに外れた連中じゃないんだから、そんな人たちを丸め込むぐらいマスターなら造作もないわ」

 

「何だ、お前は自分のような魔術師が外れた連中だっていう自覚はあったんだな。ちゃんと自覚があるようで感心したぜ」

 

クリントは凛に対して皮肉るように言う。そんなクリントの言葉を聞いた凛はムっとした表情でクリントを睨んだ。

 

「ええ、確かにわたしたちみたいな魔術師は世間や社会から外れてますけどね、そんな外れた連中が行う聖杯戦争に首を突っ込んでいる物好きな人たちは何処の誰でしたっけ?ああ、ごめんなさい。別にバートン先生の事を言ってるわけじゃないのよ。ただ、その物好きな人たちのせいで迷惑を被っている人間がいる事を知ってほしいだけだから」

 

凛は満面の笑顔をしつつ、クリントに対して皮肉を言う。表情こそ笑顔だが目は全く笑っていない。"迷惑を被っている人間"というのは自分の事を指しているのだろう。最も、本来部外者が関わってはいけない聖杯戦争に積極的に関与してくるスティーブ、クリント、ナターシャの3人をこうして受け入れている時点で凛も相当にお人好しだが……。暗示でスティーブ達の記憶を消したり、自分のサーヴァントであるアーチャーをけしかけたりしないだけマシかもしれないが、凛も色々とストレスを溜め込んでいるのだろう。聖杯戦争の事もあるが、その他の大部分はスティーブ達が原因であるのは明白だ。

 

「クリント、余りリンを煽るな。彼女はまだ子供なんだぞ」

 

「誰が子供よ!」

 

凛はスティーブの物言いに、火でも吹かんばかりに口をガーッ!と開きながら怒鳴る。

 

「遠坂もバートン先生も落ち着いて」

 

士郎は凛とクリントの間に割って入り仲裁をする。クリントも凛も面白くないという顔をしつつ、互いに顔をプイっと横に向けた。そして話の続きとばかりにセイバーが口を開く。

 

「話を続けましょう。確かにマスターならばあの寺院……柳洞寺を制圧するのは容易いでしょう。しかし、あの山には

 

マスターにとって都合の悪い結界が張られているのです」

 

「?わたしたちに都合の悪い結界……?」

 

セイバーの言葉に凛は首を傾げる。

 

「はい、あの山には自然霊以外を排除しようとする法術が働いている。生身の人間に影響はありませんが、私たちサーヴァント

 

には文字通り鬼門なのです」

 

「自然霊以外を排除する――――それじゃサーヴァントはあの山には入れないって事!?」

 

「入れない事はありませんが、能力は低下するでしょう。足を踏み入れる度に近づいてはならないという令呪を受けるようなものですから」

 

「――――それじゃ、どうやって柳洞寺のマスターはサーヴァントを維持しているのよ」

 

「いえ、寺院の中に入ってしまえば結界はありません。もとより結界とは寺院を守る境界線と聞きます。結界は外来者を拒むだけの物ですあkら、それ以上の能力はありません」

 

「……じゃあなんとか中に入ってしまえば、サーヴァントを律する法術はないって事?……けどおかしいな。そんなふうに寺院を密閉させたら地脈そのものが止まるじゃない。せめて一本ぐらい道を開けておかないと、地脈の中心点には成り得ないんじゃない?」

 

「はい。寺院の道理で言えば、正しい門から来訪した者は拒めません。その教えに従っているのか、寺に続く参道にだけは結界は張れないと聞きました。あの寺院は正門のみ、わたしたちサーヴァントを律する力が働いていないのです」

 

「……なるほど。そりゃそうよね、全ての門を閉じたら中の空気が淀むもの。……ふうん、ただ一つだけ作られた正門か……」

 

「私が教えられる事はそれだけです。―――では結論を。マスターがいると判明したのですから、とるべき手段は一つだけだと思いますが」

 

セイバーは自分のマスターである士郎を見つめるが、士郎は沈黙している。敵の居場所が割れたのであれば早急に叩くべき……。確かにセイバーの言い分は間違ってはいない。

 

「わたしはパス。どうも罠くさいし、正直それだけの情報じゃ動けないわ。相手のホームグラウンドに行くんなら、せめてどんなサーヴァントを連れているのか判明するまで待つべきよ」

 

「……意外ですね。凛ならば戦いに赴くと思ったのですが」

 

「侮ってもらって結構よ。こっちはアーチャーがまだ本調子じゃないし、しばらくは傍観するわ」

 

凛のサーヴァントであるアーチャーはセイバーにやられた時の傷がまだ完全に癒えていないようだ。凛からすれば自分のサーヴァントが受けた傷が回復していない状態で柳洞寺にいるマスターの所に殴り込むなどという危険は犯せない。

 

そんな凛の言葉に納得したようにセイバーは士郎に対して言う。

 

「わかりました。それではシロウ。私たちだけで寺院に赴きましょう」

 

「――――――」

 

そして士郎はセイバーの言葉に対して一呼吸置いて答えた。

 

「いや、俺も遠坂と同じだ。まだあそこには手を出さない方がいい」

 

だが士郎の言葉にセイバーは反論してくる。

 

「な……貴方まで戦わないというのですか……!?バカな、今まで体を休めていたのは何の為です!敵の所在が判明した以上、打って出るのが戦いというものでしょう!」

 

セイバーは納得できないとばかりに声を荒らげる。

 

「――――それは分かっている。けど待つんだセイバー。柳洞寺にいるマスターがそこまで用意周到なヤツなら、絶対に罠を張っている。そこに何の策もなしで飛び込むのは自殺行為だ。遠坂の言う通り、せめてアーチャーが回復するまで待つべきだと思う」

 

声を荒げるセイバーに対して士郎は落ち着いた声で言い返した。

 

「そのような危険は当然です。初めから無傷で勝利を得ようなどと思っていません。敵の罠が体を貫こうと、この首を渡さなければ戦える。どのような深手を負おうと、マスターさえ倒せればいいのではないのですか!」

 

だがセイバーは攻めるのが最善だと士郎に言い放つ。

 

「な――――バカ言うな、怪我をしてもいいなんてそんな話あるか!危険を承知で行くのはいい。けどそんな特効は馬鹿げてる。……俺はマスターとして、セイバーにそんな危険な真似をさせられない」

 

士郎の言う通り、セイバーが提案しているのは無為無策の自殺行為に等しい。戦場で例えるなら特攻隊が行うようなやり方だ。敵がどのような場所に陣地を敷き、どのような結界を張り巡らせているのかを先程士郎や凛に説明していた割には、そんな敵の拠点に突撃を仕掛けるというのは余りにも頭の悪い作戦である。自分の力を過大評価しているのか、それとも敵の戦力を過小評価しているのかは分からないが、セイバーの提案は士郎にとって許容できるものではなかった。

 

そしてセイバーは士郎に対して諭すように言ってくる。

 

「……何を言うかと思えば。いいですかマスター、サーヴァントは傷を負う者です。それを恐れて戦いを避けるなど、私のマスターには許しません」

 

だがセイバーの言動をみかねたスティーブが二人の間に割って入る。

 

「待ってくれセイバー。シロウの言う事も一理ある。敵の拠点にどのような脅威があるのかを説明したのは君自身だろう?だからこそ士郎は柳洞寺に攻め入るのは時期尚早だと言っているんだ。彼の言う事も分ってやってくれ」

 

「しかし……」

 

セイバーは士郎の意見に賛成できないようだ。

 

「セイバー、戦術的な観点から言えば君のしようとしている事は単なる特攻だ。向こうは正直に正面対決で戦ってくれるような相手とは限らない。柳洞寺という魔術師にとって最高の拠点にいるのだから」

 

「ですが……!私はこのまま引き下がる訳にはいかないのです。柳洞寺にいるマスターがどんな者なのかは知りませんが、私はここで退くわけには……!」

 

セイバーは呆れる程の頑固者のようだ。

 

「セイバー、自分の力を過信するのは勝手だが、それで死んでは元も子もないぞ」

 

「……それは余計なお世話というものですよスティーブ。貴方が私を心配する必要はありません。それに、貴方は聖杯戦争とは関係のない部外者。あれこれと口出しされる謂れはありません」

 

セイバーは頑なに自分の考えを変えようとしない。

 

「ロジャース先生もセイバーも落ち着いて…!」

 

士郎はスティーブとセイバーを宥めるように言う。

 

「とにかく、こっちから仕掛ける事はまだしないぞ。俺だって柳洞寺にいるマスターは放っておけない。けど俺たちは戦える状態じゃないんだ。お前だってランサーからやられた傷はまだ癒えてないんだろう?こんなんで戦ってやられちまったら、それこそ誰が柳洞寺のマスターを止めるんだ」

 

「いいか、こっちから打って出るのはおまえの傷が治って万全の状態になってからだ。それに文句があるんなら、さっさと他のマスターを見つけてくれ」

 

「…………」

 

セイバーは納得できないといった表情をしつつも、静かに首を縦に振る。

 

 

 

 

 

******************************************************

 

 

 

 

「ふぅぅ~、気持ちいい……」

 

湯船に浸かる凛は目を閉じて大きく息を吐く。凛は入浴剤を入れた湯舟に肩まで使ってゆっくりとくつろぐ。

 

「丁度いい湯加減だわ。やっぱりお風呂に入るのが一番ね」

 

凛は満足そうに呟き、湯舟のお湯で顔を洗った。凛は部外者でありながら聖杯戦争に首を突っ込んでいるスティーブ、クリント、ナターシャの事を考えていた。(まったく、あの3人ときたら……。何を考えているのかは分からないけれど、私の知らないところで勝手に色々と動いてくれちゃって)

 

正直な所、凛は3人の行動に迷惑している。本来であれば神秘の秘匿の関係上、聖杯戦争に関わってしまったあの3人の記憶を消すか、口封じで殺すかをしなければならないのだが、凛はそれをするのを躊躇していた。

 

(部外者の癖にあれやこれやと口出しされても困るのよね……。どうにからならいものかしら、この頭痛の種は……!)

 

凛は苛立ちを露わにする。凛は湯舟に肩まで浸かったまま、天井を見上げて物思いに耽っていた。その時、凛は自分の頭の中に念話で話しかけてくる声を聞いた。

 

「凛、どうやら大分苛立っているようだな」

 

「アーチャー!?」

 

セイバーに斬られた際のダメージが抜けていないアーチャーはまだ本調子ではないとはいえ、霊体化した状態でやり取りをするだけなら可能だ。だがサーヴァントとはいえ、年頃の少女である凛が風呂に入っている時にアーチャーが自分の肉体を晒すのは問題がある。アーチャーは凛の視界に入らないよう、彼女の背後から語り掛ける。

 

「アーチャー、貴方まだ本調子じゃないんだから無理しないでよ。って、わたしが風呂に入っている時にわざわざ念話してくるなんて、何かあったわけ?」

 

湯舟に浸かっている凛は後ろを向き、霊体化したアーチャーと互いに背を向けてる格好で会話をしている。

 

「……ったく、幾らサーヴァントと言っても女の子が入っている風呂場にまで入ってくるなんてデリカシーがないんじゃないの、アンタ」

 

凛はアーチャーに呆れながら文句を言う。

 

「それは悪いとは思っている。だが君には伝えておくべきだろう。スティーブ、クリント、ナターシャの3人は聖杯戦争の事を冬木の市民にバラす事を話していたぞ?あの3人が学校の屋上で会話していた内容を盗み聞きさせたもらった」

 

アーチャーの言葉に凛は思わず湯舟から立ち上がる。

 

「ちょっと待ちなさいよ!! 何よそれ、どういうこと!? あいつらが聖杯戦争や魔術師の事を冬木の市民にバラすですって!?そんな事をすれば神秘の秘匿に反するじゃない!!」

 

そう、神秘の秘匿は魔術師全体に共通するルールのようなものだ。神秘は限られた存在達のみが知るからこそ神秘足りえるものであり、大勢の人間に知られればそれだけ神秘は薄まる。ましてや一般の人間達に広く知れ渡れば根源に至る事を目標とする魔術師にとって致命的になりかねない。凛とて父から魔術刻印を受け継ぎ、遠坂家の当主としての立場がある。

 

「あいつ等……本気でそんな事を考えているわけ……!?」

 

凛は怒りを露わにする。凛とて魔術師の端くれではあるが、一般の人々を巻き込みたくないという気持ちはある。しかし、だからといって一般人に聖杯戦争の存在を知らせていい理由にはならない。そのような事をすれば世界から神秘が消え失せ、魔術師達は研究を続けられなくなる。

 

「聖杯戦争に首を突っ込むだけに飽き足らず、一般市民にまでその事実を漏らそうとするなんて、ふざけんじゃないわよ……! あいつ等、一体何を考えてるのよ!」

 

「凛、手を打つなら早い方がいいに越した事はないが……君はあの3人を殺せるのかね?殺すのが嫌なら暗示を掛けるなりして口を塞ぐしかないと思うが?」

 

「…………」

 

凛はスティーブ、クリント、ナターシャの3人をどうするのかを考える。暗示を用いれば3人の記憶はどうにかできるが、問題はあの3人だけではない。聖杯戦争が始まる前に自分に接触してきたスパイダーマンとパニッシャーの事だ。あの2人もスティーブ達と何らかの関わりがあるのは明白である。下手に暗示による記憶操作をした所で感づかれるのは目に見えているのだ。

 

「アーチャー、あんたの言いたい事は分かる。わたしがあの3人を殺せるかどうか、でしょ?」

 

霊体化した状態のアーチャーは黙ったまま何も言わず、ただ凛を見つめていた。

 

「あいつ等を始末するのは簡単だけど……あいつ等はセイバーのマスターである士郎を守っている。あいつ等を殺せば……士郎が黙ってはいないでしょう。けどわたしも魔術師としてあの3人がやろうとしている事は見過ごせないの。」

 

アーチャーは凛の答えを聞いて納得したのか、それ以上は何も言うことはなかった。そして凛は脱衣所で濡れた身体を拭き、パジャマに着替える。脱衣所を出て廊下を歩いていると、スティーブが向こうから歩いてきた。

 

「やぁリン。明日もよろしく」

 

「えぇ、こちらこそ」

 

凛がそう言うとスティーブは満足そうな表情を浮かべつつ、風呂場の方に向かう。凛は去っていくスティーブの背中に向けて無表情のままガンドを撃つポーズを取る。

 

「ば~ん」

 

凛は小さく呟くと、そのまま自室へと戻っていった。




エミヤさん盗み聞きはいけませんねぇ(・∀・)ニヤニヤ
サーヴァントとはいえ年頃の女の子が入っている風呂場に行くのは色々不味いですよ


それはそうとアメコミって他社間のクロスオーバーでも平然とヒーロー同士が対立してたりするけど、ああいうのって向こうの文化的なものなのかな?JLA/アベンジャーズや、バットマン/パニッシャーとかはお互いの主義や価値観のぶつかり合い的なバトルだったし。勿論全部が全部敵対するわけではないけど、クロスオーバーでも平然と他社キャラとぶつかり合うのが向こうの文化なんですかね……(^_^;)


日本でもソシャゲではよく他作品間のコラボがあるけど、上記のアメコミのクロスオーバーのようなガチ対立するのって全然見かけない。日本のクロスオーバーって大抵が共闘に落ち着いちゃうし(少なくともバットマン/パニッシャーのように両者が喧嘩別れするような終わり方はまず見ない)

向こうは主張し合ってナンボの文化なんでしょうか?
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