アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです 作:ドレッジキング
「み、見事……」
小次郎は自分に勝利したウルヴァリンを褒め称える。そしてウルヴァリンが爪を抜くと、小次郎は数歩後ずさりしつつ地面に倒れる。ウルヴァリンにとって恐ろしい程の強敵だった小次郎。恐らくゴーゴン……トミ・シシド以上の剣技の持ち主であろう。
「大したヤツだぜ。あんな剣術はオレも今まで見た事がねぇ。だがオレには勝てねぇ」
「ふっ……。其方の肉体の特性を見誤った私の敗北という事か……」
「ああ、そうだ。オレのヒーリングファクターってのはそうそう簡単に破られねぇよ」
ウルヴァリンがそう言うと、小次郎の瞼は閉じられていく。ウルヴァリンは階段を上がり、柳洞寺へと乗り込もうとした時、背後から気配を感じ取る。振り返るとそこには金髪の美しい髪の毛に、青い甲冑を着込んだ少女が立っていた。少女はウルヴァリンの方を警戒した目で見ている。ウルヴァリンは衛宮士郎の家に居候しているスティーブ達から、士郎について色々と聞かされていた。そして今自分の目の前にいる甲冑を着込んだ金髪の少女は外見的特徴がスティーブの言っていた士郎のサーヴァントと一致している。そう、今自分を見つめている少女こそがセイバーだ。彼女は小次郎を倒したウルヴァリンを警戒した様子で見つめている。当然だろう、サーヴァントである小次郎と戦い、あまつさえ勝利してしまったのだから。
「……貴方は何者か?その気配、只者ではないようだが」
「オレはウルヴァリンだ。お前さんのマスターであるシロウ・エミヤの家に居候しているスティーブの仲間だよ」
「貴方はスティーブの仲間だったのですね……」
ウルヴァリンの言葉に、セイバーは意外そうな顔をする。
「そういうこった。お前さんの事はスティーブ・ロジャース……キャップから色々聞いている。この柳洞寺にサーヴァントがいるって事も知っているようだな。そんでお前さんのマスターであるシロウはどこに行ったんだ?」
ウルヴァリンの言葉にセイバーは答えない。この柳洞寺にいるキャスターのサーヴァントを討伐しようと士郎に進言したが、彼からは反対され、仕方なく独断専行でこうして来たのだから。
「答える義務はありません」
「そうかい。それじゃ二人で一緒にこの寺にいるサーヴァントを倒してみねぇか?」
ウルヴァリンの言葉にセイバーは目を丸くする。
「正気ですか?」
「ああ。どうせオレ達はこの階段の上の寺に潜伏しているサーヴァントを倒さなきゃならねぇからな。それにお前だって戦いたくてウズウズしてるだろ?」
その言葉にセイバーは少し考えた後、頷く。
「だったら話は早ぇ。一緒になればもしかしたら倒せるかもしれないぜ?」
ウルヴァリンの言う事は最もだ。セイバーは仕方なくウルヴァリンと共に階段を駆け上がっていく。ウルヴァリンの足の速さはサーヴァントであるセイバーにも劣らないものがあり、セイバーもその事に驚いているようだった。階段を登りきると目の前には境内へと続く柳洞寺の門があり、二人は警戒しつつ中へと足を踏み入れていく。
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コヤンスカヤとパニッシャーはホテルの一室でテレビを見ていた。相変わらずガス漏れ関連のニュースばかりやっている。コヤンスカヤはソファに座った隣にいるパニッシャーの腕と自分の腕を絡ませ、夫婦のように密着していた。
「……何ベタベタしているんだ?お前みたいな奴が俺にくっついて来るな」
「そう言いつつ、無理に振りほどこうとしていない辺りが優しいですねえ♪もしかして満更でもない感じです?」
ニヤニヤした顔でコヤンスカヤはパニッシャーの顔を上目遣いで見つめる。そしてコヤンスカヤは何を思ったのか、立ち上がると自分のスカートとパンティを下にずらした。するとコヤンスカヤの尻から上の部分から太い尻尾が生えてきたではないか。桃色のモフモフした毛で覆われており、思わず手で触れたくなるぐらいフサフサしていた。流石のパニッシャーもコヤンスカヤの尻尾を見て目を丸くしている。
「私はこの通り、人間ではありませんので。特別に貴方には私の尻尾をブラッシングする権利を差し上げます」
「……は?」
返答に困っているパニッシャーに対して、コヤンスカヤはブラッシング用のブラシを手渡した。
「さあ、どうぞ。遠慮なさらず」
「……分かった」
断れる空気でもなかったので、パニッシャーは大人しく従う事にした。ブラシを持ち、コヤンスカヤの太くて長い尻尾を丁寧にブラッシングしていく。手触りの良い毛で包まれていて、まるで最高級の毛布にくるまれているような心地良さだ。尻尾を生やしているのを見る限り、コヤンスカヤは獣人の一種なのだろうか?とパニッシャーは考える。
「中々お上手じゃないですかあ♪どうですか?私の自慢の尻尾の感触は?」
「ああ、悪くないな」
「ふふ、素直じゃないんですからぁ~♪」
その後も暫くの間、部屋には沈黙が続いた。特に気まずいという訳でもなく、むしろ心地よい時間だった。するとパニッシャーのブラッシングを見ていた立香がコヤンスカヤの元まで来ると、彼女の尻尾に顔を埋めた。突然の出来事にコヤンスカヤは驚きを隠せない。どうやら彼の方もモフモフの魅力に取り憑かれてしまったようだ。
「ちょ、ちょっと!いきなり何を!」
慌てるコヤンスカヤを後目に、立香は彼女のモフ尻尾を堪能していた。
「うん……すごく気持ちいい……」
モフモフの毛に埋もれながら顔をすり寄せるその姿は、さながら猫のようだった。そして立香は今度はコヤンの尻尾の上に座す。まるでソファのような座り心地だ。
「ふにゃあああああああっ!?何してるんですか貴方は!?」
突然の事に驚いたコヤンスカヤは飛び上がってしまった。
「まったくもう……!いきなり人の尻尾を椅子代わりにするなんて……!」
「だっておばさんの尻尾、モフモフして気持ちいんだもん」
「お、おばさ……!?」
コヤンスカヤは笑顔ではあったが額に怒筋を立てて怒っていた。だが本気で立香の事を嫌がっている風には見えず、むしろ喜んでいるように見える。
「ふーん、そうですかー。そんなに私の尻尾がお気に入りですかー」
そう言ってコヤンスカヤは立香の為に自分の尻尾を上下に動かしてあげる。すると彼はその柔らかな毛並みに包まれて幸せそうな表情を浮かべた。コヤンスカヤはその様子を見て満更でもない様子だった。が、ついバランスを崩してしまい、立香は尻尾から落ちたと思いきや、コヤンスカヤが立香の小さい身体を受け止めてあげた。が、今度は彼女の胸に顔を埋める事になったのだが……。
「あらあらまあまあ♪私の胸に可愛いお顔を押し付けちゃってぇ♪そんな大胆な男の子にはオシオキが必要かしらぁ♪」
そう言いながら、コヤンスカヤは服越しに自らの豊満な胸を揉み解しながら意地悪そうに微笑む。パニッシャーはコヤンスカヤの口から「私は反吐が出るほどに人間が嫌い」と聞かされていたが、立香をあやす彼女の姿を見る限り真の意味での人間嫌いとは思えなかった。コヤンスカヤの価値観など知りたくもないパニッシャーではあるが、何にせよ単純な存在ではない事は確かのようだ。
「おばさんの胸柔らかーい……」
一方、コヤンスカヤの胸に顔を埋めている当の本人は何も気にしていない様子で胸の感触を楽しんでいた。彼の頭を撫でながらコヤンスカヤは言う。
「あら嬉しいこと言ってくれるじゃない?ならお姉さんがもっと気持ち良くさせてあげちゃおうかな~?」
そう言うと彼女は胸元のボタンを少し外して胸の谷間を見せると立香はあまりの迫力に思わず息を呑む。が、流石に幼い子供に対してするものではないとしてパニッシャーからストップが入る。
「待て。その子はまだ5歳だぞ?お前みたいな変態じゃあるまいし」
「あっらー?私より年下の癖に生意気言っちゃってぇ?そういう子はお仕置きしちゃいますよ?」
そう言ってコヤンスカヤは立香を抱き抱えてベッドへと寝転ぶ。
「ねぇ、ボク?女の子の悦ばせ方を教えてあげようかしら?」
蠱惑的な目で立香を見つめながら彼の頬にそっと手を添える。
「うふふ♪冗談よ。貴方くらいの年頃の男の子はね、まだまだ女に興味を持たないものよ。けどねぇ、立香クン?貴方には将来素敵な女の子が彼女になるかもしれないわよぉ?」
そう言いつつ、コヤンスカヤは立香の頭を撫でる。一方の彼は特に恥ずかしがる事もなく平然としていた。すると今度はコヤンスカヤの方から彼に言う。
「でもまあ……貴方が望むのなら私が色々教えて差し上げても構いませんわよ?おませさんな男の子は嫌いじゃないですから♪」
が、流石に見かねたパニッシャーが立香を抱き寄せてコヤンスカヤから引き離す。
「やり過ぎたぞ。言っとくが俺の国じゃ犯罪だからな?」
調子にのったコヤンスカヤを睨むパニッシャー。彼は小さな立香の身体を自分の子供のように優しく抱き抱えている。
「あらあら、パパの介入ですか? こんな可愛い子を独り占めしようだなんて……ふふっ」
しかし当の彼女は悪びれる様子もなく不敵な笑みを浮かべている。
「僕、おじさんもおばさんも好きだよ?だから喧嘩しないで」
だが純粋な立香はパニッシャーとコヤンスカヤの仲を勘違いしていた。
「んふふ~♪やっぱり子供は素直で可愛らしいですわねぇ~。イジメ甲斐……じゃなくて可愛がり甲斐がありますよ」
「一瞬目が怪しかったような気がするが……。まぁ、あまりこの子に変な真似はするな」
パニッシャーが呟くと、コヤンはベッドから降りてパニッシャーにの耳元に顔を近づけて呟く。
「案外優しいんですね♪もしかして、死んだ自分の息子と重ね合わせてたりします?」
その言葉に思わずコヤンスカヤを睨みつける。が、当の彼女は余裕の表情を見せていた。
(クソッ……本当にムカつく女だ)
苛立つパニッシャーを後目に、コヤンスカヤは部屋にあるシャワー室へと入って行った。パニッシャーは立香を降ろし、しゃがんで彼と目線を合わせる。
「いいか立香。おじさんとおばさんが君を護る。それは君が思っているような親切じゃない。俺達の都合だ。俺達は君の為じゃなく、自分達の都合の為に戦うんだ。それでもいいのか?」
しかし立香は無邪気に微笑んでいた。
「うん! だって二人はヒーローだもん!」
そう言って立香は笑顔でパニッシャーに抱き着いた。
「そうか……」
正直、ヒーローなどと呼ばれるような素晴らしい行いをしてきたわけではない。やっている事は犯罪者や悪党に対する容赦のない制裁と殺戮だ。真のヒーローというのはキャプテン・アメリカやスパイダーマンを始めとするアベンジャーズの面々の事だろう。だが家族を全員殺され、一人ぼっちとなった今の立香にとってはパニッシャーこそがヒーローなのだ。
「おじさんって見た目は怖そうだけど、本当はとっても優しい人」
「……俺は優しくなんかない。本当のヒーローってのはもっと立派な人達の事を言うんだよ」
(ヒーローなんていない……この世界じゃ尚更な……)
そう、この冬木市はおろか、今パニッシャーがいるこの世界にアベンジャーズのようなヒーローは存在しない。この街に暮らす人間が死んでも、気にすら掛けない者たちが集まり、聖杯を巡る戦い……聖杯戦争をしているのだから。魔術師もサーヴァントも自分の願いを叶える事に盲目的になり、他人の犠牲を何とも思わない連中ばかりだ。パニッシャーがベッドに腰を降ろすと、立香が膝の上に乗って来る。最初は遠慮がちだった彼も最近ではすっかり馴れたのか積極的にスキンシップを求めてくるようになった。
「ねぇ……人間って死んだらどこに行くのかな?僕のパパとママとお姉ちゃんはどこに行ったの……?」
立香は顔を上げながらパニッシャーに尋ねてくる。"君の家族は君の心の中で永遠に生き続ける"などという安っぽい言葉で慰めるのは簡単だ。だがそれでは何も解決しない。いや、問題のすり替えでしかない。5歳の幼い子供に対して家族の死を受け入れさせる事がどれ程に残酷なのかを知らない人間が言うセリフだ。
「それは誰にも分からない事だ」
すると今度は少し悲しそうな顔で尋ねて来た。
「じゃあさ、もし願い事が叶うとしたら、また家族と一緒に暮らしたいって願ってもいい?」
立香の言葉はパニッシャーの心に突き刺さる。あの時……セントラルパークでマフィアの処刑現場を目撃したパニッシャーの妻、娘、息子は口封じとして全員命を落とした。死んだ家族はもう生き返らない、生き返ったとしてもあの頃の生活に戻れる筈もない。今のパニッシャーは数えきれない程多くの犯罪者を殺し、その手は血にまみれているのだから。だがその思いとは別にパニッシャーは答えた。
「ああ……。君はそう願った方がいい」
パニッシャーはそう言って立香を抱き寄せる。
「おじさん……パパとママに……お姉ちゃんに会いたいよ……」
そう言って泣き出す立香を抱き締めて頭を撫でてやる。この子はまだ両親と姉を失った悲しみを乗り越えられていない。この子には家族が必要だ。たとえそれが仮初めのものであっても……。しばらくして落ち着いた立香は顔を上げて言った。
「ありがとう……おじさん」
そう言うと立香はパニッシャーの膝の上から降りる。するとシャワー室のドアが開いて中から濡れた身体をバスタオルで拭くコヤンスカヤが出て来た。
「さぁ、もうおねんねの時間ですよ坊や。良い子にして寝ないとパパとママとお姉さんのように痛い目にあいますよ?ほら、早くベッドに入って下さいな」
コヤンスカヤにそう言われ、立香はダブルベッドの中央に寝そべる。そしてパニッシャーは立香の隣に横になった。それを見たコヤンスカヤは薄目になる。
「ふ~ん、立香クンは両サイドに私とアナタを寝かせるのがお望みですか」
「この子の希望だそうだ。お前はどうする?俺はどちらでも構わんぞ」
するとコヤンスカヤは髪をタオルで拭きながらベッドに入って来た。彼女はバスローブを脱ぎ捨てて全裸となり非常に色っぽい。彼女がベッドの上に乗るとスプリングが少し軋んだ音を立てた。
「……せめてバスローブぐらい羽織れ。立香が見ているんだぞ?」
するとコヤンスカヤは挑発的な笑みを浮かべて言う。
「あらあらぁ?もしかしてこの私に欲情しちゃってますぅ?まあ無理もないですよね。だって私の身体って完璧ですから」
「うん!すごく綺麗!」
それを聞いてコヤンスカヤは気を良くしたのか、更に体を近づけてくる。
「うふふ。お世辞でも嬉しいですよ。ほら、もっと近くで見ていいんですよぉ?ほぉら、ほぉら」
コヤンスカヤは自分の胸を強調するかのように立香に押し付ける。むにゅりという感触が伝わってくると同時に、何とも言い難いいい香りが漂ってきた。
「……子供の教育に著しく悪影響だな」
そう言ってコヤンスカヤの顔を押して立香から引き離す。だがコヤンスカヤは全く気にしていないようだった。
「そうでしょうか?私としてはむしろこのまま大きくなってくれた方が楽しいのですがねぇ。ふふ」
そうして立香はパニッシャーとコヤンスカヤに挟まれるようにしてベッドに入り、布団をかけた。傍からみればまるで本当の夫婦とその子供のようだ。コヤンスカヤは消灯して部屋を暗くする。部屋の明かりはベッド脇のスタンドライトのみだった。やがてコヤンスカヤは布団をめくると、パジャマ姿の立香の身体に密着して抱き着いた。コヤンスカヤの柔らかい胸が当たる。
「調子に乗るな」
が、パニッシャーはコヤンスカヤの頭に軽い拳骨を食らわせた。それでもなお彼女は嬉しそうな表情を浮かべている。立香の方も満更ではなさそうで、コヤンスカヤに懐いていた。パニッシャーはそんな立香の様子を微笑ましく見つつ、眠りにつく。
コヤンのモフ尻尾気持ちよすぎだろ!
それはそうと、パニッシャーとニキチッチの絡みを早く描いてみたい……