アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです   作:ドレッジキング

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お久しぶりです!第3話となります!

教会の地下の子達って他のルートではどうなったんだろう?(´・ω・`)
セイバールートでしか存在を確認できないんだよなー…


第3話 口封じ

 たとえば魔術師について。

 

 半人前と言えど魔術師であるのならば、自分がいる世界を把握するのは当然だろう。

 

 端的に言って、魔術師とは文明社会から逸脱した例外者だ。

 

 だが例外者と言えど、群れを成さねば存在していられない。切嗣はその群、魔術師たちの組織を"魔術協会"と教えてくれた。

 

 ……加えて、連中には関わらない方がいい、とも言ってたっけ。

 

 魔術協会は魔術を隠匿し魔術師たちを管理するのだという。要するに魔術師が魔術によって現代社会に影響を及ぼさないように見張っているのだが、魔術の悪用を禁ず、という事ではないのが曲者だ。

 

 切嗣曰く、魔術協会は神秘の隠匿だけを考えている。ある魔術師が自らの研究を好き勝手に進め、その結果一般人を何人犠牲にしようと協会は罰しない。彼らが優先するのは魔術の存在が公にならない事であって、魔術の禁止ではないのだ。

 

 ようはバレなければ何をしてもいいのだという、とんでもない連中である。

 

 ともあれ、魔術協会の監視は絶対だ。大抵の魔術研究は一般人を犠牲にし、結果として魔術の存在が表立ってしまう。

 

 故に一般社会に害をなす研究は魔術協会が許さない。

 

 かくして魔術師たちは自分の住み家で黙々と研究するだけに留まり、世は全て事もなし―――という訳である。

 

 ……魔術を何に使うのであれ、安易に使えばよからぬ敵を作るという事。

 

 他人を傷付けるという目的で行われるのであれば猶更―――

 

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 

 言峰教会の地下にその子達はいた。教会の地下の光も届かない闇に10年間も囚われていた。

 

 この10年間ひたすらに絞り尽くされてきた。絶え間なく身体と精神を苛まれ、穢され、嬲られ続けた。

 

 拷問…という表現ですらも生ぬるい地獄の責め苦の毎日を送ってきた。あの男が…人間の見た目をして神父の服を着ただけの悪魔、怪物、鬼畜…どのようにアレを言い表したらよいのか分からない。

 

 最早アレを同じ人間だとは思いたくなかった。

 

 10年前の大火災によって家族を喪った自分と他の子達全員をあの男が引き取った。

 

 自分達以外に一人男の子いたが、その子は別の里親に引き取られた。

 

 自分達はあの日、あの男が運営する冬木教会へと足を踏み入れた。あの時は自分と他の子達がこんな運命を辿るなど夢にも思っていなかったが…

 

 そうして今日に至るまで筆舌に尽くし難い程の苦痛と恐怖と絶望を味わい続けた。そんな毎日の中で自分達の精気…生命力…活力…気力…何もかもが絞り尽くされた。アレは

 

 自分と他の子達が今どうなっているのか、どういう状況なのか、それすらも分からない。意識すらもハッキリせず、五感も最早機能していない。今こうして生きている時点で奇跡としか言い様がなかった。

 

 

 …否、生きているのではない、アレに生かされ続けているのだ。死ねばこの苦しみから解放されるだろう。だがアレがそれを許すだろうか?

 

 認めはしない、許容はしない、許しはしない。自分達の生殺与奪権はアレが握っている。自分達から何もかもを奪い取る気だ。

 

 この暗闇の世界に助けなど来る筈もない。最初の3年は助けが来るという望みを持ち続けた。だが無駄だと分かった。来る日も来る日もアレが行う残忍非道な責め苦の嵐に泣き叫び、絶望した。

 

 そしてアレは笑っていた。

 

 苦痛に歪む自分の顔を見ながら微笑していた。

 

 自分の目からとめどなく流れる涙を見ながら微笑んだ。

 

 人とも思えぬ獣じみた自分の悲鳴と絶叫を聞きながら口元を歪ませた。

 

 「もうこれ以上痛い目に遭わせるのはやめて」という必死の懇願を聞き流しながら笑っていた。

 

 アレは自分や他の子達の苦しみ、痛み、悲しみ、絶望を見る事を楽しみにしている。

 

 地獄の悪魔ですらも裸足で逃げ出すであろう凄惨極まる所業を喜々として行っているのだ。

 

 この地獄から自分達を解放してくれる者など何処にいるのか…?

 

 誰か…この地獄からす助けて…

 

 何処に…

 

 いる…の…?

 

 

 

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 パニッシャー…フランク・キャッスルは昨夜保護した少年が入院しているという聖堂病院へと足を運んでいた。昨夜の槍男の言葉通りであるならば、奴があの子を狙うのは必然。

 

 魔術師という存在であるならば、この子が入院している病院を割り出すなど簡単な事だろう。目撃者は消すというやり方である以上、あの少年を見殺しにする事はフランクにはできなかった。

 

 病院の受付で少年が入院している病室を聞き出すと、5階にある少年の病室へと足を運んだ。

 

 病室に入ると、少年はベッドから起き上がった状態で窓の外をじっと見つめていた。そして病室の隅にある椅子にはカウボーイハットを頭に被った中年の白人男が座っていた。

 

 身長はおよそ160cm程であろうか。190cmあるフランクとは30cmも離れている。

 

 しかし小男は身長の低さに対して不釣り合いな量の筋肉に覆われていた。

 

 服の上からでも鍛え抜かれた逞しい肉体をしているのが分かる。特に腕の太さはフランクにも劣らないだろう。

 

 ゴリラのような厚い胸板に、丸太の如く太い腕…この男と喧嘩になれば多少の上背があった所で素人ではどうにもなるまい。

 

 外見こそ荒々しく粗野な雰囲気を纏っている小男だったが、昨夜フランクが保護した少年を良く気遣っていた。

 

 医師の話によれば、昨夜の青い槍男によって家族を皆殺しにされた事による精神的なショックが大きいらしい。

 

 「…それでこの子の家族を殺した野郎は?」

 

 「逃げられた。だがアイツは必ずその坊やを狙いに来る。目撃者は消すっていうのが連中のやり方らしい。あの魔術医者の言った通りだ」

 

 「お前さんが後少し駆けつけるのが遅かったらこの子も殺されていただろうな…」

 

 "口封じ"…この言葉にフランクは自分の家族があの場所…セントラルパークでの出来事を思い出した。

 

 フランクの家族はマフィアの行う処刑の現場を偶然目撃してしまったのだ。そして家族は…

 

 時々フランクは思う。もしあの日…あの現場で死んだのは自分だけで、家族が生き残っていたらどうなっていたのか?

 

――――――妻だけが生き延びていたら

 

――――――娘だけが生き延びていたら

 

――――――息子だけが生き延びていたら

 

 今の自分がしている事と同じ事をしていたのか?

 

 もしかしたら家族なら違う道に進んだのかもしれない。

 

 

 「……」

 

 その時、ベッドに座り、虚ろな目で窓の外を見ているだけだった少年がフランクの方に目を向けた。

 

 「……じさん」

 

 「…!」

 

 「おじ…さん…?」

 

 フランクの方を見る少年の目は微かに精気を取り戻したかのような輝きを見せた。少年の瞳はフランクを捉えて離さなかった。昨夜、家族が謎の槍男に皆殺しにされている現場に駆け付けた目の前の処刑人は自分の命の恩人である。

 

 フランクが駆け付けるのがもう少し遅ければ自分も殺されていたに違いない。

 

 「…俺がもう少し早く駆け付けていればお前の家族は死なずに済んだかもしれん。すまん…」

 

 フランクは少年に謝罪する。もう少し自分が駆け付けるのが早かったなら家族全員を助けられた。だが遅れたせいでこの子の家族は…

 

 「俺がしてやれるのは…」

 

 フランクがこの子にしてあげられる事は最早決まっていた。

 

 「…?」

 

 「俺がお前にしてやれる事はただ一つ――――――」

 

 

 奴を…あの槍男を"制裁(パニッシュ)"する。

 

 「…!」

 

 フランクの…否、"制裁者(パニッシャー)"の気迫に当てられた少年は瞳孔を開いた。

 

 「おじ…さん…」

 

 「だから安心しろ。お前の家族の仇は取る。必ずな…」

 

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  

 

 

 フランクと小男は少年の病室を出ると、病院の廊下の椅子に腰掛けながら今後の打ち合わせをしていた。

 

 「ミスターフランク、それで槍男をここで待ち伏せるつもりか」

 

 「あぁ、だが昼間の内はとりあえず安全だろうよ」

 

 「あの子は俺が護衛しとくぜ。お前さんの言う槍野郎が来たら俺が相手してやるよ。お前さんは与えられた任務を遂行しな」

 

 「恩に着るミスターローガン。ベビーシッターの経験はアンタの方がありそうだからな」

 

 「五月蠅ぇ」

 

 冬木市で行われる聖杯戦争にはルールが設けられており、人目を避ける為基本的に夜間に行われるようだ。

 

 フランクはDrストレンジから聖杯戦争の事について詳しく聞かされている。

 

 「最も、白昼堂々殺しに来る可能性も無いとは言い切れんがな」

 

 「それと最近ニュースで"ガス漏れ"事件が相次いでいるみたいだがこりゃ…」

 

 「間違いなく聖杯戦争が関係しているだろうな」

 

 ストレンジから聖杯戦争は人目を避ける云々言われてはいたが、民間人を盛大に巻き込んでいるではないか。

 

 「そういえばお前さん、学園に潜入しているキャップ達も知らない情報をストレンジから教えられたんだろ?」

 

 「そうだ、俺は俺のやるべき事をやるだけだ」

 

 そう言うとフランクは懐から用紙を取り出す。用紙には顔写真とプロフィールらしきものが書かれていた。

 

 「アンタにだけは見せておくよミスターローガン。ストレンジから渡された資料だ」

 

 「俺はストレンジからこの世界の魔術師について詳しく聞かされてな。この資料に書かれている小娘(ガキ)も今回の戦争の参加者なんだそうだ」

 

 「この写真の嬢ちゃんがどうかしたのか…っておい、この嬢ちゃんは…」

 

 資料の写真に写っているのは十代半ば程の少女である。

 

 「あの魔術師から言われたよ、"この世界の魔術師にまともな倫理観など期待するな"ってな」

 

 聖杯戦争による戦いを目撃した者は記憶を消されるか最悪口封じに殺される…ストレンジから聞かされていた情報だ。

 

 実際にその現場を目の当たりにしたフランクは嫌でもストレンジの言葉を信じるしかなかった。そしてあの教会にいた神父…あの男は間違いなく超が付く程の悪党だ。

 

 「俺からすりゃこの街で行われる聖杯戦争とやらに参加している連中は全員標的だ。勿論この資料の小娘もな」

 

 「分かった上で参加しているのか、それとも知らずに参加しているのかは知らんが今日中にこの小娘(ガキ)に挨拶しに行ってやる」

 

――――――遠坂凛

 

 資料に書かれていた少女の名前である。

 

 「分かっているマスターは現時点でこの娘だけだ。今の内に口減らしした方が不幸な被害者が出ずに済むしな」

 

 「この嬢ちゃんはキャップ達が潜入している学校の生徒だぜ? それにストレンジが協力者にした方がいいとも言っていた。そんな事すりゃキャップ達が黙ってないぜ?」

 

 「俺はキャップは尊敬しちゃいるが、それでも何でも言う事を聞くわけじゃねぇ。それにキャップだってこの小娘(ガキ)が聖杯戦争のマスターである事は知っている筈だ」

 

 「仮にキャップが止めたとしてもこの小娘(ガキ)があの坊やのような子や他の民間人を平然と巻き込むようなクズなら…アンタなら言わずとも分かってるな?」

 

 「全く…ストレンジの野郎はアンタを制御できると思ってンのかね、そうなったらもうお前さんは止められねぇからな」

 

 「それも承知で俺をこの世界に向かわせたんだろうよ」

 

 ローガンは苦笑いを浮かべつつ、病院を出るフランクを見送った。




パニッシャーって投降してきた無抵抗なヴィランすら射殺する人だからね(;^_^A


やっぱどんな鯖でもマスターの命令とあらば民間人消すんだろうか?(令呪があるし)
サーヴァントってあり方からしてアベンジャーズやX-MENといったヒーロー達と相容れないような気がするけど実際どうなんだろう?

民衆を守る為に召喚されてるわけじゃないし。FGOみたいな人理修復案件で召喚
されるならともかく聖杯戦争だと…

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