アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです 作:ドレッジキング
「うん、美味しい!ロジャース先生達が作った朝食は本当においしいわ!」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
朝食当番であった士郎が土蔵で寝過ごしていた為、代わりにスティーブ、クリント、ナターシャの3人が朝食を作る事となった。士郎は凛の魔術レッスンによる疲れからか、寝坊してしまったようなのだ。そこでスティーブ達が代わりに朝食を作る事となったのだが、大河にも概ね好評だ。料理の腕前は流石に士郎には適わないのだが、それでも十分過ぎる程の出来栄えであった。
「うーん、我ながらいい味だな。これは美味い!」
「ああ、そうだな。でもまあ、俺はもう少し甘い方が好みだがな」
3人が作った食事は凛も美味しそうに食べている。
「ロジャース先生達って案外料理もできるのね。意外だわ」
「ははは、ありがとう」
スティーブ、クリント、ナターシャの3人という人手がいたからか、料理が出来上がるスピードも早かった。士郎もスティーブ達が作った料理を食べているが、自分が作れなかった事を若干残念がっているように見えた。そんな中、大河がふとこんな事を言い出した。
「そういえば最近物騒よねー。ほら、聖堂病院で起きた事件とかさ」
新都で起きた事件……というと聖堂病院でパニッシャーが殺人を起こした件だろう。白昼堂々と殺人事件を起こすとは過激な手段が得意な彼らしいといえばらしいが、別の世界まで来てもやる事は同じなのだと感じた。それ以外にもガス漏れ事故による意識不明者が出ているが、これは元凶であるキャスターを倒したのでもう起きる心配はないだろう。
大河は朝食を食べ終えると学校へと向かっていった。士郎は今日も学校を休んで家でセイバーと鍛錬を続けるつもりらしい。聖杯戦争中であるわけだし、授業中にサーヴァントやマスターが襲ってこないとも限らない。それ以前に士郎は魔術師としてもマスターとしても未熟だという事はセイバーや凛が散々口にしているのだ。だからこそ二人は士郎に生き残ってもらうべく彼を鍛え上げている。朝食後、衛宮邸にある道場にて士郎はセイバーと竹刀で打ち合っていた。といっても士郎が一方的にセイバーにやられている光景が続いているだけだが……。セイバーは女性とはいえサーヴァントだ。フィジカル面からしても人間とは違い過ぎる。そんな彼女と鍛錬とはいえ打ち合った所で結果は見えている。
「ハァハァハァ……くそ、また負けた……」
セイバーから容赦なく竹刀で打たれた士郎は道場の床に寝転ばされ、セイバーの猛攻で完全にダウンしていた。息も絶え絶えの状態であるが、まだ目には闘志が宿っていた。だがセイバーの竹刀で何度も打たれてるせいか、ダメージが蓄積しているのだろう。中々起き上がれないでいた。
「シロウ!いつまで寝ているのですか! 立ちなさい!」
セイバーは倒れている士郎に向かって檄を飛ばす。可憐な少女であるセイバーだが、士郎を鍛える為に鬼教官のような厳しさを見せている。しかし、その厳しい指導にもめげず、士郎はふらついた足で立ち上がる。聖杯戦争を勝ち抜く上でこれぐらいでへこたれるわけにはいかないのだろう。
「まだまだこれからだ……!」
士郎は竹刀を構え直すと、再びセイバーに挑んでいく。何度やっても結果は変わらないというのに諦めない姿勢には好感が持てるのだが、やはり限界というものがあるだろう。だが自分よりも圧倒的に上の存在相手に繰り返し挑む事は無駄ではない。着実に実力を付けるという意味では確かに理にかなっている。セイバーとの特訓を繰り返せば、そこらのチンピラの数名は軽く倒せる程度にはなれるだろう。いや、もっと上の存在も倒せるかもしれない。但しそれは"普通の人間"に限定されてしまうが。凛はセイバーによって竹刀で打たれる士郎を上機嫌そうに見ている。
「やるじゃない、アイツ」
スティーブ、クリント、ナターシャの3人も暫くは士郎とセイバーの試合を見ていたが、スティーブが突然声をかける。
「セイバー、ここは私と試合をしてみないか?」
スティーブの言葉にセイバー、士郎、凛は目を丸くする。先日はクリントが竹刀を持ってセイバーと戦ったが、今度はスティーブがセイバーとやる形となる。
「ふ~ん、ロジャース先生がセイバーとね……面白そうじゃない」
セイバーは構え直し、改めてスティーブと対峙する。汗だくの士郎は凛の隣に座ると、二人の試合を見守る事にした。道場の中央ではセイバーとスティーブが対峙しているが、こうして見ると二人の身長差が嫌でも目立つ。167センチの士郎と比べても小さいセイバーであるが、188センチにもなるスティーブと比べればまさに大人と子供の差である。だがそれでもセイバーの方が優勢である事に変わりはない。それもそのはず、彼女はサーヴァントであり普通の人間とは根本から異なるのだ。スティーブはあえて竹刀は持たずに素手でセイバーに挑むようだ。
「竹刀を持たなくてよいのですかスティーブ?」
「ああ、私はどうも竹刀は合わない」
そう言ってスティーブは構える。得物であるヴィブラニウム製のシールドを使わないのはこれがあくまでも試合だからだろう。セイバーは無構えの状態だが、何時戦いが始まってもおかしくない状態だった。二人の間に張り詰めた空気が漂い、その緊張感は士郎と凛にも伝わっていた。
「―――シロウ、合図を」
「あ、ああ……」
セイバーに促され、士郎は試合の開幕を告げる声を上げた。
「始め!」
士郎の合図と共に動いたのはスティーブだった。それとほぼ同時にセイバーは目にも止まらぬ突きを繰り出す。士郎はこの突きに反応できず、何度も道場の床に寝転ばされる羽目になった。当然ながら士郎と凛にはセイバーの突きが見えていないが、スティーブはしっかりと捉えていた。そして眼前に迫って来る突きを紙一重で避けるのと同時に、セイバーの腕を掴むと、そのまま投げに移行する。これには流石のセイバーも少しばかり驚いている様子だった。
そして背負い投げの要領でセイバーの身体を浮かせる。彼女の小柄な体が宙に浮き上がり、そのまま床へと叩きつけられると思われたが――次の瞬間、セイバーは強引にスティーブの投げから脱出した。サーヴァントの身体能力をパワーを駆使して力づくで投げから脱すと、空中で身体を回転させて床に着地する。そのまま再び剣を構えて、今度は自分から攻めに出た。しかし対するスティーブも簡単に負けるつもりはなく、正面からセイバーの攻撃を受け止める。セイバーが竹刀を持っているのに対してスティーブは素手だ。しかしスティーブは経験と動体視力をフル稼働させ、セイバーの竹刀による攻撃を的確に捌いていた。まるで熟練された剣術家の様にも見える程、その動きは非常に洗練されているように見える。
「す、凄い……!ロジャース先生がセイバーとあんなに戦えるだなんて……!」
目の前で繰り広げられている光景を見て、思わず感嘆の声を漏らす士郎。一方、彼の隣にいる凛は冷静に戦況を分析していた。
「……ロジャース先生は普通の人間だけど、所謂"超人血清"っていう特殊な薬を打っているって聞いたわ。そのお陰で人間の限界レベルの身体能力を発揮できるんだって。けどそれではサーヴァントには及ばない。試合とはいえあのセイバーとあそこまで戦えるって事は並大抵の場数を踏んできてないわ。戦い方を見ても熟練の戦士だもの」
凛でさえもスティーブの持つ卓越した技量に舌を巻いていた。人間の最高レベルのフィジカルと数多の戦いを潜りぬけてきた事で得た経験でセイバーと互角に渡り合っているのだ。だが、それはあくまでも剣道の試合に過ぎない。実戦となれば話は別だろう。最も、スティーブ自身は素手なので剣道の試合かと言われると怪しいが……。セイバーとの鍛錬では一方的に彼女に打ちのめされていた士郎は、スティーブが素手の状態でも彼女と渡り合えているのを見て、改めてスティーブの実力の高さを思い知った。魔術師でもない、さりとてサーヴァントでもない人間であるスティーブが試合とはいえセイバーと戦えているという事実。
「確か超人血清だったっけ?ロジャース先生はその薬を打ってあそこまでの身体能力を得たんだとか……。身体強化なら魔術師からすれば造作もないけど、素のフィジカルであれだけ強いなんてね……」
魔術師は魔術を用いて自らの肉体と身体能力を強化する事ができるが、魔術を発動しなければ常人と変わらない魔術師と比べ、スティーブは常時人間の最高レベルの身体スペックを発揮できるという違いがある。セイバーはスティーブの持つ実力を見抜いたのか、竹刀を振るうスピードを徐々に上げていく。
普通の人間であればまず知覚できない程の速度の突きや払いをスティーブは的確に回避し、捌いていく。セイバーは剣筋を読まれないようにフェイントを交えながら攻撃を繰り出すが、それを悉く防ぐ。以前膠着状態が続くものの、ついにそれが崩れ去る時がきた。セイバーの放った突きを身を屈めて回避し、そのまま間髪入れずにレスリングのタックルを仕掛けるスティーブ。しかし、セイバーは素早く反応して飛び退りこれを躱す。そして再び両者の間に距離が空いた。
「やりますねスティーブ。貴方の強さは私の想像以上です」
「君こそ凄いじゃないか。私より若い女の子なのにここまでの剣技を持っているとは驚いたよ」
互いに称賛の言葉を送る二人だったが、ここでセイバーが口を開く。
「ですが貴方はあくまでも人間。サーヴァント相手ではどの道長くは持たないでしょう。これが実戦であるならばもう数回は死んでいます。貴方の力はその程度なのです」
超人血清を打っているとはいえ、人間の最高レべルの身体能力とヴィブラニウムの盾。そして数多くの戦場で培った経験と技術、卓越したリーダシップを武器としているスティーブは単純な力でいえばハルクやソー、ルーク、キャロルには適わないだろう。
「それでは少しばかり本気を出しましょう。どれだけ人間とサーヴァントでは力の差が如何ともし難いのかを貴方に教えてあげます。貴方の強さを見て、シロウが変に自信を付けてしまっては困りますので」
セイバーがそう言い終わった瞬間に彼女の身体は消えた。否、余りのスピードゆえに姿が消えたようにしか見えないからだ。音速に近い踏み込みでスティーブに突きを繰り出すセイバー。が、スティーブは長年の経験と直感を武器に、迫りくるセイバーの竹刀の切っ先を回避しつつ、カウンター気味に彼女の上着を掴み上げる。腕そのものを掴んでも腕力に任せて振りほどかれるだけ。ならば衣服そのものを掴んでしまえばいい。そしてスティーブは背負い投げの要領で勢いよくセイバーを投げようとするが、セイバーはその場に踏みとどまる事で投げられるのを回避しようとする。投げようとするスティーブに対してセイバーが踏ん張ったせいで、彼女の着ていた上着が豪快に破れてしまった。これは凛のお下がりを借りたものだと聞いたのだが、スティーブはやってしまったと後悔する。
「あ……っ!?」
「やりますねスティーブ。私の突きを回避しつつ距離を詰めて私に投げ技を仕掛けてくるとは」
セイバーはそう言って構えを取る。今のセイバーは自分がどんな格好をしているのかまるで無頓着だ。上着が破れてしまったせいで彼女の胸を覆う下着が丸見えになっているのだ。
「せ、セイバー……。そ、その……」
「ちょ!?私がセイバーに貸した服なのよそれ!?」
「申し訳ありません、リン。ですが私は別に気にしませんので」
「セイバーのせいじゃないわよ!ちょっとロジャース先生!少しは手加減してよね!」
「……すまない、つい熱くなってしまったようだ」
士郎はセイバーの控えめな胸を覆う下着につい目が行ってしまう。あの下着も凛がセイバーに貸したものなのだろうか……?そう思っていると、凛がジト目で自分を見ている事に気付く士郎。
「セイバーの下着が気になるのかしら?というかジロジロ見てるんじゃないわよ!この変態!」
と言われてしまう。だが、それは仕方のない事だと士郎も思う。何故なら男なら誰だって見てしまうのだから。
「スマン遠坂!」
「ハハハっ。リン、男の性ってやつだ。シロウも女の子に興味を持つ年頃なのさ」
セイバーが着用している下着を見て顔を赤らめる士郎に怒る凛に対して、クリントが笑い声をあげながら言う。
「だからってじろじろ見るもんじゃないでしょ」
凛はクリントに対して呆れ交じりで言う。
「はあ……まったく、何でこんなことになったのよ……」
スティーブが強引にセイバーを投げようとした事で彼女の上着を破いてしまい、気まずくなったのかその日の鍛錬はここで終わりとなった。そして士郎は2階にある凛の部屋に移動し、彼女の課した課題を受ける事となった。昨夜士郎は凛が用意してくれたランプに強化を施そうとしたが、悉くを割ってしまった。根本的な魔術の使い方が間違っていると凛から指摘された事を思い出す士郎。今まで土蔵で繰り返してきた鍛錬は誤りであったのだと思い知らされ、こうして凛から魔術の基礎を伝授されているのだ。
「ほら、今日はランプを40個用意したわよ。これだけあれば幾つかは成功するんじゃない?」
そう言って凛は机の上に置かれた小さな蝋燭の入った籠を指差す。
「ありがとう遠坂。けど、本当にこんなので上手くいくのかな……?」
自信なさげに呟く士郎。すると部屋をノックする音が聞こえた。凛が扉を開けるとそこには盾を持ったスティーブがいた。
「お邪魔させてもらうよ」
そう言って部屋に入って来るスティーブ。
「リンから魔術の手ほどきを受けていると聞いて持ってきたんだ。これは私が"キャプテン・アメリカ"として活動する際に武器にしている盾だ。ヴィブラニウムという君たちがいるこの世界には存在しない金属で造られている。これを強化できるかどうかは分からないが、ランプのように簡単に壊れたりはしない筈だ」
そう言って持ってきた盾を士郎に渡す。星条旗の星マークが付いたキャプテン・アメリカの持つ象徴とも呼べるシールドを眺める士郎。
「……ロジャース先生が使っている盾に魔力を通すのか」
「面白そうじゃない。ランプを何個も割られるよりはマシだわ。やってみなさい、士郎。盾ならランプよりも構造がシンプルだし」
確かに凛の言う通り、ランプと盾では構造が違う。造りが単純な盾であれば士郎の魔力を通せると考えているようだ。
「それじゃやってみる。ええと……失敗して壊しちゃった時はごめん」
「構わないよ。私は盾が無くても戦ってみせる」
スティーブの言葉を聞いた士郎は盾の構造を読み取り、自分の魔力を通し始める。ヴィブラニウム製の盾という士郎や凛にとっても未知の金属に魔力を通せるのかどうかは分からないが、とりあえず試してみる価値はあるだろう。士郎が盾に魔力を通している姿を見ていた凛だが、スティーブから話があると言われ、部屋の外に出て廊下に出る。
「話って何かしら?私は士郎に魔術を教授しないといけないからなるべく手短にね」
「リン、学校に張られている結界だが、やはり生徒達を避難させるべきだと思う。君が時間稼ぎをしたとはいえ結界そのものを完全に取り払えているわけじゃないだろう?」
スティーブの提案に対して凛は"またその話か"、と言う表情をする。
「避難っていうけど、騒ぎを大きくして聖杯戦争の事が漏れでもしたらどうするの?魔術の存在も聖杯戦争の事も普通の人間には知られちゃいけないって何回も言ってるでしょ?」
凛の言葉を聞いたスティーブは困った表情になる。しかしすぐに気を取り直して彼女に反論し始めた。
「だけど魔術師同士の戦いだ。無関係な人を巻き込むわけにはいかないだろ?」
「分かってるわよそんなこと。けど神秘の秘匿っていうのは聖杯戦争以上に魔術師にとっては守らなくちゃいけないルールなの。巻き込まれた人間は……そりゃ運が無かったとは思うけど……」
凛との話は相変わらず平行線を辿っている。しかしながら魔術師でもないスティーブ、クリント、ナターシャに対して魔術や聖杯戦争の存在を知らせたにも関わらず暗示の魔術をかけるなり口封じで始末しようとしない辺り凛も随分お人好しだ。だがスティーブ達の行動によって魔術の存在が公に広まってしまうような事態は避けたいのだろう。魔術師としては例外的にお人好しかもしれない彼女だが、魔術師の守るべきルールはしっかりと遵守するタイプのようだ。結局話は纏まらず、生徒を避難させたいというスティーブの提案を凛は却下してしまった。
士郎って剣だけでなく盾も投影できるのを考えると、キャップの盾も投影できる筈。ヴィブラニウムの盾を魔術で強化すればサーヴァントにもダメージを与えられたりして?
そういえばアルトリアってアベンジャーズの面々と比較しても強い部類に入るんだろうか?凛がマスターの状態なら魔力供給も十分だし、少なくともルーク・ケイジやアイアンフィストでは勝つの難しいと思う。