アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです 作:ドレッジキング
右腕の肘部分を折られた慎二は絶叫をしながら床に尻もちを突き、その場に倒れ込んでしまう。関節を折られれば大抵の人間は痛みに悶絶するが、慎二は殊更に痛がっている様子であった。
「ぎぃいいいッ!!! ああぁああぁあああああ!!!」
大袈裟とも呼べる声で叫びながら折られた肘を抑える慎二。そんな彼を士郎は鬼のような形相で見下ろしている。完全に頭に血が昇っている様子だ。スティーブも士郎がここまで激怒しているのは見た事がなく、激痛で顔を歪める慎二の顔面に容赦なく蹴りを入れた。慎二は教室の壁に叩きつけられ、鼻血を出しながら蹲うずくまる。
「ら、ライダー……!何をしてる!?早く僕を助けろ……!」
が、士郎に顔面を蹴り飛ばされた慎二は即座にライダーに助けを求める。ライダーは慎二の言葉を聞いて士郎との距離を詰めようとするも、咄嗟にスティーブは彼女にタックルをかまして阻止する。ライダーの攻撃を受ければ士郎ではひとたまりもないだろう。スティーブはメドゥーサの上に跨り、マウントポジションを取る。サーヴァント相手にこんな体勢など意味がない事を知りつつ、士郎の為に時間を稼ぐ事にした。自分が持つありったけの力でライダーを抑えようとするスティーブ。
「……」
だがしかし、ライダーにとって人間との力比べなどは児戯にも等しいものだ。馬乗りにされているにも関わらず、力ずくでスティーブの身体を跳ね除けたライダーは自分の得物である鎖付きの短剣を手に取り、それでスティーブに斬り掛かる。サーヴァントの攻撃速度は人間では反応できないが、スティーブは超人血清を打った強化人間。研ぎ澄まされた五感と人間の限界の身体能力、これまで培ってきた戦いの経験をフル稼働させ、ライダーの短剣を躱す。その身のこなしはさながらハリウッド映画のアクションシーンのように軽やかだ。
だが地力ではライダーには到底敵わない。そう考えていると、教室の扉からクリントが弓矢でライダーを狙っているのが見えた。先程窓から外に投げ落とされたが、クリントはそんな程度でくたばるタマではない。得意の弓矢から矢が放たれ、それに気付いたライダーは素早くクリントの放った矢を弾き返した。攻撃を防いだ隙を見てスティーブは距離を詰め、ライダーに前蹴りを叩き込んだ。強化人間であるスティーブの蹴りをまともに受けたライダーの身体は大きく後方に飛ばされ、教室の壁に叩き付けられた。が、すぐさまライダーは体勢を立て直してスティーブに猛攻撃を仕掛けてくる。スティーブの得物であるヴィブラニウムの盾は教室に落ちており、取りに行く余裕など無かった。
今の手持ちにある武器といえば自身の身体だけだ。それに引き換え相手は鎖付き短剣を持っているというのに。しかも教室には大勢の生徒が倒れているので踏まないように注意しなければならない。この状況は非常に不利だった。いくら超人血清を打っていても常人より丈夫なだけであって無敵というわけではない。こんな敵を相手にするのは分が悪い。だがスティーブはサーヴァントの特性を凛からよく聞いていたのだ。それに士郎と凛の特訓。目の前のライダーを倒す算段が無いわけではなかった。
(どうにかして隙を作らないと……)
スティーブはライダーの攻撃をどうにか回避しつつ、相手の動きを観察する。そして教室に気絶から回復したナターシャが勢いよく入って来た。ナターシャは自分の手首に巻き付けてあるガントレットから電気針をライダー目掛けて射出した。この針に刺されば3万ボルトもの電流が流れ込んでくる。普通の人間ならひとたまりもない筈だ。だが、ライダーは難なく針を叩き落としてしまう。そしてナターシャとの距離を詰めると容赦なく短剣を振るおうとする。が、スティーブが咄嗟にライダーの背後から羽交い絞めにして動きを妨害する。
「何をしているライダー!!このままじゃ衛宮に殺されるんだぞ!早く僕を助けろ!!」
教室の壁にもたれながら慎二が叫んでいる。一方の士郎は慎二の前に立つと、慎二の胸倉を掴み上げた。
「慎二……お前がどうしても結界を止めないっていうんなら……!」
慎二を殺さんと言わんばかりの表情で凄む士郎。それを見たライダーは羽交い絞めにしているスティーブを力づくで振りほどくと、士郎目掛けて突進していく。そして慎二の胸倉を掴む士郎の腹に蹴りを入れ、それによって士郎は派手に吹き飛ばされた。内臓をやられたのか、口から血を吐きながら悶絶する士郎だったが、すぐに立ち上がって再び構える。そして拳を構えてじりじりと近付いてくるライダーを睨みつけた。その様子を見たスティーブもまた警戒して身構える。そんな中で最初に動いたのは意外にもナターシャだった。ナターシャは床に落ちていたヴィブラニウムの盾を掴むと、士郎目掛けて投げた。
「シロウ!それを取って!」
「え!?」
士郎はわけも分からないといった顔でナターシャが投げた盾を受け止める。
「シロウ!私の盾を"強化"するんだ!」
スティーブはメドゥーサと距離を詰めて彼女に拳や蹴りを繰り出しつつ、士郎に向かって叫ぶ。スティーブが何を言おうとしているのかを瞬時に理解した士郎はヴィブラニウムの盾を自分の魔力で強化する事にした。
「――――基本骨子、解明。――――構成材質、補強」
自分の体内の魔術回路に魔力が流れるのを感じる士郎。衛宮邸での凛との特訓の際にスティーブの持つこの盾を強化させる訓練を行ったのだ。ヴィブラニウムと言う未知の物質に魔力を通す作業は思ったよりも苦戦したが、コツを掴みさえすればどうという事はなかった。今、士郎は自分の中の魔術回路から生成される魔力の全てをこの盾に注ぎ込む。そうでもしなければライダーに攻撃を通す事ができないからだ。ヴィブラニウムの盾は士郎から流れた魔力によって光り輝いていた。
「――――全工程、完了」
そうして盾に魔力を注ぎ込む作業が完了した。
「ロジャース先生!この盾を使って!!」
士郎は叫ぶと同時にイダーと交戦するスティーブ目掛けて盾を勢いよく投げた。スティーブは身体を捻りながら自分の背後に飛んでくる盾をキャッチした。オリンピックの体操選手を上回る体捌きとバネは目を見張るものがあった。そんなアクロバティックな動きで再度身体を回転させつつ魔力で強化されたヴィブラニウムの盾をライダーの顔面に力の限り叩き込む。鈍い音が教室に響き渡り、ライダーは教室の壁に叩きつけられてしまう。スティーブ、ナターシャ、士郎はライダーが起き上がるのを警戒して、身構えるがライダーは壁にもたれた状態のまま動かない。やはり士郎の魔力を通したお陰でサーヴァントである彼女にダメージが通ったのだ。
「……倒した、のか?」
スティーブは先程まで猛威を振るっていたライダーがこんなにアッサリと倒れるとは思っていなかったのだろう。拍子抜けといった表情をしていた。そして戦闘不能になったライダーを目にした慎二は動揺を隠せていなかった。後はマスターである慎二に対する処遇だ。未だに学校に張られている結界は解除されていない。ライダーは戦闘不能状態ではあるが死んではいないのだろう。ライダーに警戒しつつスティーブは慎二の前に立った。
慎二がマスターの状態のメドゥーサは弱いんですが、それを差し引いても呆気なさ過ぎのような……?(;^_^A