アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです   作:ドレッジキング

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パニッシャーVSクー・フーリン回です。パニッシャーの言う通り、現代で罪を犯している時点でその他のヒーローからも犯罪者ないしヴィラン判定食らうと思う……。


第33話 処刑人とクランの猛犬

「起きてください」

 

パニッシャーは添い寝をしていたコヤンスカヤに身体を揺すられ、重い瞼を開けた。ベッドに取り付けられたデジタル時計に目を向けるとまだ深夜の0時を過ぎた辺りだ。だというのに何故起こしてくるのだろうか?不機嫌そうにパニッシャーが思っているとコヤンの口からは信じられない言葉が出て来た。

 

「あの子が……立香クンがどこにもいませんわ!」

 

「……何だと?」

 

コヤンの口から出た言葉にパニッシャーは飛び起き、急いで服を着始める。5歳の子供がこんな深夜に一人でどこに行くというのか。

 

「俺のグロック17が無くなっている……。立香が持ち出したのか」

 

「済みません……私が目を覚ました時には既にあの子は……」

 

「なら急ぐぞ。早く立香を探し出さなければ」

 

パニッシャーは部屋のドアを開け、廊下に出ると急いでコヤンと共に外へと出る。フロントに連絡している時間すらも惜しい。ホテルの外に飛び出すと新都の街を駆け抜けた。全力疾走で立香を探し回るがあの子に行く当てなどあるのか?街を彷徨い歩いている可能性が高いので、このまま探していればいずれ見つかるとは思うが……。そもそもなぜ立香はホテルを1人で抜け出したのかが気がかりだった。

 

「……あの槍野郎か」

 

そう、立香と初めて会った日の夜、立香の家族を皆殺しにした赤い槍を持った男……サーヴァントのランサーを探しに行った可能性が高い。わざわざパニッシャーの愛銃のグロック17を持ち出している事からも分かる。

 

「あなたが槍野郎と呼んでいるサーヴァント……彼はアイルランドの神話における大英雄クー・フーリンですわ。魔槍ゲイ・ボルクを駆使するケルトの勇士にして"クランの猛犬"という異名も持っています。人間のアナタでは万に一つ……いえ、億に一つでも勝ち目はありませんわ」

 

コヤンスカヤは走りながらランサーの真名と彼の詳細について説明を続ける。立香の家族を殺したサーヴァントはクー・フーリンというアイルランドの英雄だというのだ。パニッシャーとてクー・フーリンの名前ぐらいは聞いた事がある。

 

「だから何だ?」

 

「え……?」

 

コヤンスカヤとしてはクー・フーリンの恐ろしさと強さをパニッシャーに力説したつもりでいたが、そんな彼女の説明をパニッシャーは一蹴した。これは決してクー・フーリンの恐ろしさを軽んじているわけではない。

 

「アイツがアイルランドで名を馳せた英雄?それがどうしたというんだ」

 

「私の説明を聞いていまして?クー・フーリンはサーヴァントとしても相当の強さを持っているんですよ?そんな彼に人間に過ぎないアナタが敵うわけが……」

 

「だが殺す手段が無いわけじゃないんだろう?それ英雄って呼び方は似合わん。あの野郎はただの犯罪者でヴィランだ。自分の生きていた時代で、自分の国でどれだけの功績や武功を上げて周囲から英雄だと祭り上げられようが、現代に来て市民を手に掛けた時点で俺が今まで殺してきたクズ共の同類だ」

 

パニッシャーはコヤンに対してクー・フーリンを英雄ではなく悪党と言い切った。パニッシャーの信条に照らし合わせれば戦う力のない民間人を手に掛けるクー・フーリンはただのヴィランと変わらず、現代から排除されるべき異物に過ぎないのだ。神話や伝承の存在であるならばその中だけの存在でいろ。現代にまで出てきて無辜の民の血を流すのであればその時点で英雄に非ず。

 

「……ふふっ、アナタらしい考えですわね。でも残念ながらクー・フーリンを殺す手段はそう多くはありません。彼は魔槍ゲイ・ボルクの他にもルーン魔術まで使えますから。現代兵器を持っているとはいえ常人の範囲の肉体と身体能力しかないアナタでは勝ち目なんてありませんわ」

 

クー・フーリンがサーヴァントである時点で常人のパニッシャーでは戦う手段も倒す手段も限られてくる。

 

「だが、俺はやる」

 

「まあ、アナタならそういうと思いましたけど。それにしてもクー・フーリンは何故立香クンの家族を殺めるような真似を……。まぁ、あの子の家族が聖杯戦争の戦いの様子を偶然目撃したって可能性がありますわね」

 

神秘の秘匿の為、聖杯戦争を目撃した民間人に対して取る手段は二通り。記憶を消すか、殺して口封じをするか。クー・フーリンは後者を取ったのだ。あの日の夜、パニッシャーが立香の家に入っていなければ間違いなく立香はクー・フーリンに殺されていた。あの男には償いをさせなければならない。クー・フーリンへの怒りを燃料にしてパニッシャーは夜の街をコヤンスカヤと共に走る。その時、遠くから銃声が聞こえてきた。

 

「……!?」

 

「ここからそう遠くはありませんわね。急いだ方がよろしいのではなくて?」

 

コヤンスカヤと共に、銃声のした方に全力疾走するパニッシャー。すると新都の路地裏へと辿り着いた。路地裏の暗がりの向こう側では真紅の槍を持った槍兵が、子供の眼前に槍の穂先を突き付けている光景が飛び込んできた。

 

「立香!!」

 

パニッシャーの叫び声を聞き、立香とクー・フーリンはこちらを向いた。

 

「テメエは……」

 

クー・フーリンは髑髏のマークが施された黒いコートを着るパニッシャーと視線をぶつけ合う。

 

「あの日以来だな槍野郎。またご自慢の槍で無抵抗の市民を殺すつもりか?」

 

パニッシャーは二丁拳銃を素早く抜いて構えつつ、クー・フーリンと立香の方に近付いていく。

 

「おじさん……!」

 

クー・フーリンはゲイ・ボルクの穂先を立香の眼前から離し、その隙を突いて立香はパニッシャーの元に駆け寄る。

 

「怪我はないか立香?」

 

立香は泣きながらパニッシャーに抱きつく。パニッシャーは立香を抱きしめ、彼の背中をポンポンと軽く叩く。

 

「うん……ありがとう。おじさんは大丈夫?」

 

「俺は平気だ。それで、どうしたんだ? 何があった?」

 

立香はパニッシャーから離れると、袖で涙を拭きながら事情を説明した。自分一人だけで家族を殺したクー・フーリンを倒すべく、パニッシャーの銃を持ち出し、ホテルの部屋を出て新都を彷徨い、当てもなく歩いているとクー・フーリンに見つかってしまったという。立香から事情を聞いたパニッシャーは立香をコヤンスカヤに預け、自分はクー・フーリンと相対する。

 

「コヤンのお姉さん……」

 

立香はしゃがんでいるコヤンの胸に飛び込んでくる。

 

「あらあら、甘えん坊さんですね」

 

コヤンスカヤはそう言うと立香の頭を撫でる。立香はコヤンの柔らかい胸で自分の涙を拭いている。よほどクー・フーリンが恐ろしかったのだろう。

 

「よしよし」

 

コヤンは立香を抱っこしながら立ち上がるとその場を素早く離れる。立香を安全な場所まで避難させておかないとクー・フーリンの攻撃で死にかねないからだ。

 

「私は立香クンを安全な場所まで送りますので、アナタはここでクー・フーリンを食い止めてください」

 

「……わかった」

 

コヤンスカヤの言葉に頷くパニッシャーは暗がりの向こうに立つクー・フーリンと対峙する。クー・フーリンの得物であるゲイ・ボルクはまるで血の色を思わせる真紅の輝きを放っているように見え、暗がりだからこそ禍々しさが際立っているように見える。そして何より恐ろしいのはクー・フーリンの眼光だ。まるで血のような赤い瞳は見ているだけで背筋が凍りそうになる。そんな殺気に満ちた目で睨まれれば並の人間なら恐怖のあまり発狂してしまうだろう。しかしパニッシャーとてこれまで数多くのギャングや犯罪者を処刑し続けて来た私刑執行人である。踏んだ場数は数えきれず、自分よりも遥かにスペックが上のスーパーヴィランを倒した事さえあるのだ。心の臓を抉り取る魔槍と、暴発寸前の殺戮銃が対峙しているような構図だった。両者の間には猛烈な殺気が漂っており、少しでも動けば殺し合いが始まる事は間違いないと思われた。

 

「ここでお前を殺してやる。現世との別れは済ませたか?」

 

「ほざけクソ野郎。テメエこそ墓穴掘って死ぬ準備はできてんだろうな?」

 

「そんな玩具で俺を殺すつもりか?現代兵器相手に槍で挑む大馬鹿野郎は駆除するに限る」

 

パニッシャーが言うと同時に、二丁拳銃が火を噴いた。スカーレットウィッチとドクターストレンジの合作である特殊な魔術が込められた銃弾は対象に必ず命中する効果を持っているものの、狙った場所に当てられないというのが欠点だった。それ故に大量の弾丸で相手を無力化させるのがセオリーなのだが、クー・フーリンは自分のスキルを用いてパニッシャーの銃口から放たれた銃弾を打ち落としていく。が、銃弾の効果もあり、太腿や肩が撃ち抜かれてしまう。それでも怯む事なく槍を構えるクー・フーリンは、まさに狂戦士そのものだった。それを見たパニッシャーは二丁拳銃を構えながら後退するも、クー・フーリンは亜音速に達する踏み込みで距離を詰めて来る。

 

「……!!」

 

身体能力で人間とサーヴァントでは天と地の差があり、鍛えた常人程度のスペックのパニッシャーでは限界があった。それでもパニッシャーは間一髪で眼前に迫るゲイ・ボルクの刺突を回避しつつ、クー・フーリンの脇腹に蹴りを入れ、その勢いを利用し距離を取る。しかし背後が壁になっており、距離を取るのも限界があった。パニッシャーは再度銃を構えて引き金を引こうとするも、それより早くゲイ・ボルクの穂先がベレッタM92を切り裂いてしまった。反応速度も瞬発力も何もかもが違い過ぎる。武器を失ったパニッシャーに対し、余裕たっぷりな様子のクー・フーリンは言う。

 

「おいおいどうした? まさかもう終わりかよ?」

 

それに対して言葉を返す代わりにパニッシャーは懐からナイフを取り出してクー・フーリンに突き付ける。

 

「そんなナイフで俺が殺せると思ってんのか?」

 

クー・フーリンとの距離は離れており、彼に接近する前にゲイ・ボルクの餌食になるのは確実だった。しかしパニッシャーは言う。

 

「ナイフだから、近付かなきゃ相手を殺せないとでも思ったか?」

 

そう言い終わるのと同時に、なんとナイフの穂先がクー・フーリンに向けて射出されたのだ。ロシアの特殊部隊スペツナズが用いたとされる飛び出しナイフであり、スイッチを押せば時速60kmのスピードでナイフが標的に向かって飛んでいく仕組みだ。しかしそんなナイフによる奇襲もアッサリとクー・フーリンに見切られてしまい、ゲイ・ボルクによって弾かれてしまう。

 

「一発芸としては面白いけどな」

 

やはり絶望的だ。普通の人間であるパニッシャーとサーヴァントの中でも上位に入るであろうクー・フーリンとでは力量差がありすぎる。だがそれでも、この程度で諦める程パニッシャーの心は弱くない。パニッシャーはこの瞬間にもクー・フーリンを打倒する方法を考えているのだから。パニッシャーは心の中でコヤンスカヤに対して早く駆け付けろと悪態を突きつつ、眼前のクー・フーリンへの攻撃を続行する事にした。




士郎の時も加減して遊んでましたし、パニッシャー相手でもやっぱり遊んでいます(でないと速攻でフランクさんが死んでしまうんで)
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