アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです   作:ドレッジキング

46 / 90
凛も魔術師なんで魔術師のルールは守りますよねぇ。しかしそんなルールは無視するのがキャップ。


第35話 いい加減にしろ!

「ああもう!先生たちは何を勝手な事をしているのよ!」

 

衛宮邸に帰宅してからというもの、凛の大声が先程から響き渡っている。彼女が怒っている原因については勿論、学校の生徒達を殺そうとした慎二とライダーのコンビと戦った件についてだろう。いや、正確にはその二人と戦った後のことについてスティーブ、クリント、ナターシャの3人を責め立てている。仮にもサーヴァントであるライダーを撃退したことについては凛は目を丸くして驚いていた。それはもう士郎が吹き出しそうになるレベルで目を見開いていたぐらいなのだ。しかしスティーブ達3人が士郎との連携で慎二とライダーを学校から退散させた後、警察に対して事情を詳しく話したのだ。無論、警察はサーヴァントのことや魔術師のこと、聖杯戦争のことについて知るハズもないので耳を傾けてはくれなかったが、その事について凛は激怒していた。衛宮邸に帰宅してから凛に対して学校が慎二とライダーのコンビに襲われた事を警察に話したと伝えてさえいなければ凛もここまで怒らなかっただろう。

 

「警察に聖杯戦争やサーヴァントのことを話すなんてどうかしてるわ! 聖杯戦争ってうのは市民どころか警察にだってバレちゃいけないの!わたしが散々あなた達に神秘の秘匿について説明したのを忘れたわけ!?」

 

神秘の秘匿……普通の人間に魔術師やサーヴァントの事を漏らしてはいけないというルールのようなものだ。どんな魔術師であろうとこのルールだけは守らなければならないというのにスティーブ達は平気で警察にこの事を話したのだ。最も、スティーブ、クリント、ナターシャの3人はアベンジャーズであって魔術師ではないのだが。冬木で行われる聖杯戦争に関わって以降、凛から口酸っぱく"神秘の秘匿"について説明された。

 

「神秘のことが世間に広まればわたしみたいな魔術師にとって大いに問題になるの!それはつまり魔術協会に目をつけられるってことなのよ!? ただでさえ今の魔術師たちは昔と違って衰退しているっていうのに……!」

 

掟を破ろうとする魔術師は協会から制裁が下されるとも説明を受けた。だがそれで納得するスティーブ達ではない。聖杯戦争のことなど知らない学校の生徒たちが危うく犠牲になりかけたのだ。民間人の犠牲者が出るよりも神秘の秘匿を優先する凛に対してスティーブ達は眉をひそめる。

 

「リン、あのままだったら学校の生徒たちは間違いなくライダーの魔術で殺されていただろう。学校にいる大勢の知り合いが死ぬよりも神秘の秘匿が大事なのか?」

 

「……!」

 

スティーブの言葉に対して凛は睨んでくる。彼女も魔術師である以上は魔術ないし神秘が一般の人間に漏れるのを防ぎたいはずだ。だが学校には凛の友達もいたというのに、その友達がライダーに殺されそうになったとしても魔術師としてのルールの方が大切だと言いたいのだろうか。少なくともスティーブは凛がそんな冷酷な少女ではないと思っている。

 

「何よ、言いたい事があるのなら言ってみなさいよ」

 

そう言って凛は一歩前に踏み出す。スティーブと凛では身長差があるので凛が見上げる形となっている。

 

「君は魔術師としての掟……神秘の秘匿とやらの方が学校にいる大勢の友達や知り合いよりも大切なのか?」

 

スティーブは真剣な眼差しで凛を見据える。

 

「わたしは父から魔術師になる為の教育を受けてきたの。遠坂の家を継ぐために、この冬木のセカンドオーナーとしての役割を継ぐために。魔術師の家系に生まれた以上は普通の生き方なんてどの道無理なのよ。……そんなのあんた達に言われなくたってわかってるわよ。わたしが今までどんな風に生きてきたかも知らずに偉そうなこと言わないでよ」

 

凜は顔をそむけて窓の外を見る。彼女の横顔には苦悩の色が見て取れた。しかし、だからと言ってこんな魔術師同士の殺し合いである聖杯戦争で知り合いが死ぬ状況になっても魔術師としての生き方を優先するのは間違ってる。一般的な魔術師の価値観については凛から説明を受けたものの、スティーブには到底受け入れられなかった。魔術師という時点で普通の一般人と違うことぐらいは理解できる。しかしながら現代社会で生きる以上は一般人のフリをしなければいけない。凛は遠坂家の当主にして魔術師であるが、同時に普通の高校に通う少女でもある。俗世から離れた研究者ではない、一般人としての"側面"も持つ凛。しかしながら彼女は魔術師として生きる道を選んでいる。

 

「仮に学校での戦いで君の友人が命を落とした場合、それを"仕方のない犠牲"と割り切れるのか?」

 

「っ……!」

 

痛いところを突かれたのか凜の表情が曇る。いくら戦いに身を投じているとはいえども、友人の死を受け入れる事ができるのだろうか?そもそも学校にいた生徒たちは聖杯戦争の参加者ではないし、聖杯戦争のことなど知る由も無い普通の市民である。凛だとて魔術師同士の殺し合いである今回の戦いで市民に犠牲が出るのを快く思っているわけではない筈だ。

 

「なによ……。元々聖杯戦争に無関係な癖にいちいち首を突っ込んでくるアンタたちにあれこれ言われる筋合いは無いわ」

 

凛は冷たい視線をスティーブ達に向けながらそう言い放った。確かにスティーブ達は聖杯戦争には無関係だし、部外者という事もよく理解していた。それでも今回のように聖杯戦争の事など何もしらない民間人を危険に晒すような行為を行うというのであれば遠慮なく介入する。下手をすれば学校中の生徒がライダーの結界の犠牲になっていたかもしれなかったのだから。

 

「柳洞寺のキャスターは新都の人々の生命力を吸い取り、マスターであるシンジは自分のサーヴァントのライダーを使って君の通う学校にいた生徒たちを皆殺しにしようとしていた。聖杯戦争は関係のない人間を平然と巻き込んでも良いというルールだったのか?」

 

スティーブも負けじと凛を睨む。そんな二人を見て、クリントとナターシャも少し表情を険しくして成り行きを見守っていた。

 

「わたしが関係の無い人間が死ぬのを気にしてないように見える?別に民間人を助けるなとは言っていないわ。あくまでも魔術やサーヴァントの存在を知られる事が問題なのよ」

 

この期に及んでまだ神秘の秘匿の方が大事なのかとスティーブは内心で呆れていた。そもそも神秘の秘匿は魔術師たちの勝手な都合だ。巻き込まれる側にとっては迷惑以外の何物でもない。

 

「神秘の秘匿なんて所詮は君たち魔術師の都合に過ぎないだろう?そんなものに付き合わされて巻き添えを食らうのは御免被りたいね」

 

「……へえ、言うじゃない」

 

スティーブの言葉に凛は眉を吊り上げている。だが彼女の口から反論の言葉は出てこない。凛だとて本当は分かっているのだろう。神秘の秘匿はあくまで魔術の世界の問題であって、現代の世界で生きる人々には関係ない事なのだと。それでも凛とて魔術の世界に生きる人間である。魔術師として生きる以上はルールに従わなければならない。傍から見ていたクリントはそのルールを守るためであれば学校の知り合いや友人まで犠牲にするのかと凛を問い詰める。

 

「魔術師の掟のためなら知り合いが何人死のうが平気だってのかよ!?」

 

「……わたしは遠坂家の当主である以前に魔術師なの。それがどういう事か、貴方たちには分からないでしょうね」

 

「お前いい加減にしろよ!この街に住んでいる人間の都合をガン無視して戦ってるのはお前等魔術師だろうが!」

 

クリントは今にも凛に掴み掛からんばかりの勢いで怒声を上げる。だがそれに対して冷静な口調で返答するのは意外にもナターシャだった。彼女は凛の方をジッと見据えながらこう言ったのだ。

 

「リン、貴女は本当に自分の知り合いや友達が聖杯戦争の巻き添えで死んでも平気なの?」

 

……その言葉に凛は一瞬言葉に詰まる様子を見せたが、すぐに強い意志を感じさせる瞳ではっきりと答えた。

 

「……構わないわ。わたしはもう覚悟してるもの。遠坂家に生まれた人間として……いえ、聖杯戦争に参加すると決めた時点でそんな状況になるのは想定済みよ」

 

そう言い終わると同時に、スティーブの掌が凛の頬を捉えた。未成年の少女である凛に手を上げてしまうとはらしくないと思ったが、それでもスティーブは大人として少女を叱らねばならないと思ったのだろう。叩かれた頬を抑えながらも、まだ納得していない様子の凛に対し、今度は落ち着いた声でこう告げたのだった。

 

「君の言っている事は正しいだろう。君は魔術師の世界で生まれ、魔術師として生き、魔術師として死ぬのだろう。それは否定しない。だが君の周囲の人間は君が魔術師である事を知っているのか?今回の聖杯戦争で命を落としてしまう状況になるのを想定していたのか?世界は君たち魔術師が中心というわけではないんだろう?彼らは魔術師の都合で死んでしまっても仕方のない犠牲で済まされるんだ」

 

凛の右頬はスティーブに打たれたせいで赤く腫れている。しかし凛は泣き出す事もしなければ反論することもなく、黙って彼の言葉に耳を傾けていた。

 

「黙ってないでなんとか言えよリン!冬木のセカンドオーナーっていうのは住んでいる市民の生殺与奪権まで握っているのか!?」

 

クリントは凛の胸倉を掴んで叫ぶように言った。

 

「ちょ!落ち着いてくださいバートン先生!」

 

今まで見ていた士郎は慌てて凛の胸倉を掴んでいるバートンを引き離した。しかしそれでも怒りが収まらないのか、その形相はとても険しいものだった。一方凛の方はと言うと、胸倉を掴まれていたにも関わらず平然としていた。まるで最初からこうなる事が分かっていたかのように、だ。

 

「……やれやれね。だから部外者を引き入れるのは反対だったのよ」

 

凛は呆れ果てた表情でため息混じりに言った。そして、彼女はスティーブ達に視線を向ける。そこには静かな怒りを感じさせる目をしていた。

 

「衛宮君。貴方も聖杯戦争に参加しているマスターなら、この3人の先生のいう事を聞いていたらいけないって理解できるわよね?間違いなくこの人達は聖杯戦争を滅茶苦茶にしようとしているわ」

 

「それは……確かにそうかもしれないけど……」

 

「ハッキリ言って邪魔なのよ。聖杯戦争についてあれやこれやと口出しするばかりか、サーヴァントや魔術師の事も警察に話したんだから」

 

「遠坂の言う事も理解できる。それでも俺は……ロジャース先生たちの行動が間違っていたとは思ってない」

 

「ハァ!?」

 

士郎の言葉に凛は素っ頓狂な声を上げる。凛からすれば警察を呼んだり、サーヴァントの存在を明かすなど論外なのだ。それを当の本人が否定したのだから無理もないだろう。しかし、士郎は譲らなかった。士郎はまっすぐな目で凛を見詰めながら言う。

 

「やっぱり聖杯戦争で無関係な人たちが巻き込まれるなんて俺には耐えられない。なら……この戦争や魔術師のことを街の人達に伝えてもいいと思うんだ」

 

「ちょっと、何言ってるのよ!!神秘の秘匿がどれだけ大事かについて散々話したでしょ!?そもそも私達魔術師の存在自体が世間一般の人からしたら……!」

 

「だとしてもだ!そんなルールを守って犠牲になる人たちを見て見ぬふりするなんてできない!」

 

士郎の言葉に凛は口をあんぐりと開けていた。まさか士郎の口からこんな言葉が出るとは思わなかったのだろう。確かに士郎の言い分も分かるのだが、それをすれば魔術師たちにとってどれだけ深刻な事態になるか。

 

「士郎!アンタこの先生たちから影響受けてるんじゃないの!?」

 

今度は凛と士郎が睨み合う事態となってしまった。士郎としてはスティーブ達の行動に賛成しているのだろう。しかし凛からすれば士郎やスティーブのやろうとしてる事は全ての魔術師に対する敵対行為に他ならない。最悪、士郎やスティーブたちを殺す状況になるかもしれないのだ。凛は腹を決めて士郎に対して魔術による催眠を発動させようとする。記憶処理をしておかないと取り返しのつかない事態になりかねない。

 

――――が、その時だった。




キャップのビンタって凄く痛そう……(-_-;)

士郎がスティーブの行動に賛同するかについては悩んだんですけど、士郎自身も聖杯戦争が原因の大火災で実の両親を亡くしていますから……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。