アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです   作:ドレッジキング

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ハチワレの猫の次はキジトラの猫だ!とりあえず凛、そこ代われ


第36話 キジトラの猫

『ニャ―』

 

スティーブ、クリント、ナターシャ、士郎、凛の5人は泣き声のする方向を見た。そこには一匹のキジトラがちょこんと座っているではないか。いつの間に衛宮邸の居間に入り込んだのかは知らないが、近所の野良猫だろうか?しかしその割にはやけに毛並みが良い。だとすれば飼い猫……?突然現れたキジトラの猫を見て凛は身構える。魔術師にとって猫を使い魔にする事など朝飯前だ。だとすればこのキジトラも聖杯戦争に参加したマスターの誰かが送り込んだに違いない。そう考えれば凛が身構えるのも納得がいくが、鳴き声をあげるまで誰にも気付かれなかったという事実の方が恐ろしい。仮にも凛とて魔術師である。他の魔術師の使い魔にここまで接近を許すほど未熟ではない筈だ。

 

『ニャ』

 

キジトラの猫は鳴きながら凛に近付いてくる。見る限りでは人馴れした野良猫にしか見えない。しかし油断してはならない。なぜなら猫の使い魔とは魔術師にとってはポピュラーな使役獣だからだ。しかし猫の口から発せられた言葉に一同は驚愕する。

『……成程、君がリン・トオサカか。そしてそこの少年はシロウ・エミヤ。お初にお目にかかる。私の名はドクター・ストレンジだ』

 

まさかこのキジトラの猫がドクター・ストレンジだとはスティーブ達も予想が付かなかった。いつの間にこちらの世界に来たのであろうか?アベンジャーズにも参加している至高の魔術師ドクター・ストレンジが来てくれるとはこれ程心強いことはない。

「ストレンジ、いつこちらの世界に来たんだ?」

 

『つい数時間前だ。こうして猫の姿で君達の前に現れたのには訳がある』

 

「ワケ?」

 

『こちらの世界……つまりシロウとリンがいるこの世界に入ろうとしたのだが、見えない力に弾かれてしまったのだ。何故私が弾かれたのかを調べてみたのだが、どうやら私の持つ力が強すぎたためらしい。強大な力を持つ存在はこちら側の世界に入れないようになっているのさ。だがスティーブ、クリント、ナターシャ。君たちの力はあくまでも常人の範囲内に収まっている。ソーサラー・スプリームとしての力を持つ私では入れずとも、君たちであれば入れたというわけだ』

 

そう、至高の魔術師たるドクター・ストレンジの持つ力は計り知れない。強力無比、変幻自在の魔術を操り、超常現象すらも引き起こせるストレンジのパワーは世界すらも滅ぼせるだろう。アベンジャーズのメンバーの中でも間違いなく上位に入る。そしてそんなストレンジ本人は今スティーブ達がいるこの世界に入り込む事ができない。だからこうしてキジトラの猫の身体を借りている状態なのだ。

 

『余り強い力を持っていると私のように弾かれて入れない。この猫の身体を借りてようやく行動が出来るというわけだ』

 

そしてキジトラのストレンジは、凛や士郎の足に自分の身体を擦り付けてくる。猫としての本能には抗えていないということだろう?スリスリ……ゴロゴロ……にゃぁ……っと気持ちよさそうに鳴いてくるキジトラのストレンジに少し呆れながらも、その可愛らしさを堪能できる余裕も出てきた。そもそも身体を擦り付けるのは猫が他者に行う挨拶のようなものだ。

 

「ふ~ん、随分可愛いじゃない」

そう言って凛はしゃがみ込み、右手でキジトラの頭を撫でる。頭の上を撫でられるのが気持ちいいらしく、思わず顔をとろけさせてしまうキジトラのストレンジ。が、今の私服姿の凛はミニスカートだからか、キジトラ状態のストレンジからは凛のスカートの下が思いっきり……。

 

『おやお嬢さん、君の大事な所が見えてしまっているよ?』

 

ミニスカートでしゃがんでいるのでストレンジからはモロに見えてしまっているのだ。そんなストレンジの言葉を受けて凛の顔は真っ赤になる。そして……。

 

「ちょ!?どこ見てんのよぉぉぉぉぉっ!!」

 

と叫ぶと同時に、真っ赤な顔のまま右ストレートでストレンジを殴り飛ばしたのだった!! 殴られた勢いで吹っ飛ぶストレンジ。吹っ飛ばされた先にあった棚の角に後頭部をぶつける!ガンッ!という鈍い音と共に頭を強打し、そのまま床の上に倒れるストレンジ。

 

「おいおい!傍目から見りゃ猫虐待だぞお前!」

 

そう言いつつクリントはキジトラのストレンジの元に駆け寄り、抱き起した。一方凛は顔を真っ赤にしたまま怒り狂っている。

 

「まったく!人のスカートの中身覗き見るとか最低!」

 

「いや、今のストレンジのサイズ的に、しゃがめば見えてしまうだろう……。それにほら、君のスカートの丈は短いし……」

 

「うるさいっ!!ああもう!猫の姿してるけど、声的に良い年したオジサンでしょそのストレンジって人!絶対性格悪いわ!最悪だわ!」

 

……単にスカートの中が見えていると忠告しただけのストレンジだが、そんな言葉だけで凛から性格が悪いと言われてしまうのは不憫だろう。

 

『ニャ―』

 

しかし凛に殴られたにも関わらずキジトラのストレンジはニャ―と鳴いた。どうやら抗議しているらしい。

 

「だから、あんたの事情なんて知ったこっちゃないのよ!こっちはね、あんたみたいな変態のせいで恥かいたんだから!」

 

可愛らしい声で鳴くストレンジに対してまだ怒りが収まらないのか、凛はストレンジを睨みつけたまま言う。しかし見た目が可愛らしいキジトラの猫だからか、流石に凛もこれ以上ストレンジを殴る気にはなれないらしい。すると今度はストレンジの方から凛に話しかけるのだった。

 

『ニャー!』

 

「な、何よ……?」

 

ストレンジは尻尾をピンと立てて凛に近付いてくる。尻尾を立てるのは猫にとって機嫌が良い時なのであるが。

 

『ニャ―』

 

「……もう、わかったわよ。さっきは殴って悪かったわ」

 

凛はしゃがむと近付いてきたストレンジの背中を右手で撫でる。するとストレンジはゴロゴロと喉を鳴らしながら目を細めた。どうやら喜んでいるらしい。その様子を見た凛は少し安堵したような表情を浮かべる。偉大なるソーサラー・スプリームらしくない可愛らしさであるが、凛が本当のストレンジの姿を見たらどんな反応をするのか見物である。

 

『ふぅ、猫の身体を借りていると猫の本能が出てしまうようだ。それよりもシロウ・エミヤ、リン・トオサカ。君達には話しておかなければならない事がある。これは君達にとって非常に重要な話だ』

 

先ほどとは打って変わって真剣な声色で言うストレンジ。見た目はキジトラの猫でもやはり中身は至高の魔術師である。彼の言葉には不思議な重みがあった。ストレ

 

『特にシロウ、君には強くなってもらわなけれなならない。今のままでは君が今回の聖杯戦争を生き残る事は不可能だろう。私が直々に魔術の指導をしよう』

 

「魔術の指導……?アンタが俺に?」

 

『そうだ。魔術の知識に関しては任せたまえ』

 

そう、こんな可愛らしい姿をしていてもソーサラー・スプリームである。スティーブ、クリント、ナターシャの3人はストレンジがどれだけの魔術を扱える存在なのかを何度も目の当たりにしている。元々士郎には魔術回路が備わっており、凛から指導を受けているのだが、教育係がストレンジになれば今以上に成長するのは間違いない。

 

「あら?この猫ちゃんが衛宮くんを指導するですって?それはわたしの役割なのだけど?」

 

凛は腕を組みながら不機嫌そうに言う。凛はストレンジの持つ魔術の腕前を知らないのだから無理もない。元々ストレンジはこの世界に存在しない魔術師なのだ。しかし凛の態度にも関わらず、ストレンジは凛の足に自分の身体を擦り付けて来る。傍目からはキジトラの猫が凛にスリスリしているようにしか見えないだろう。

どうやらストレンジは猫の身体を最大限に活用しているらしい。猫の姿でいれば警戒心も抱かれにくいし、威圧感や不安も相手に与えない。何よりも愛らしい猫の鳴き声で甘えてくるのだから女の子である凛からすれば抗い難い可愛さだ。これもストレンジの戦略の一つなのかとスティーブ達は疑ってしまうが。

 

「もう、なによ。スリスリしてきて……可愛いじゃないの」

 

自分の役割を奪われそうになって不機嫌になる凛であったが、キジトラ猫のスリスリ攻撃によって陥落してしまう。

 

『ニャ―♪』

 

「これが正真正銘の"猫被り"ってやつかしら?このモフモフな毛並といい、この甘え声……。中身はアレなのにね」

 

凛はキジトラ・ストレンジのモフモフした毛並みを撫でながら、どこか羨ましそうに言った。

 

『この猫の状態でも一応魔術は扱えるんだ。人間の状態に比べれば扱える力は制限されるがね』

 

「それで、衛宮くんにどういう指導をしてくれるのかしら?」

 

凛がそう尋ねると、キジトラ・ストレンジが床をじっと見つめながら何かを唱え始めた。すると一瞬床が光ったかと思うとポッカリと穴が開き、中から書物が出てきた。どれも魔術師が読む魔導書である。しかも十数冊はありどれもが分厚く年代も古かった。中にはカビだらけのものさえあったが、それが余計に神秘的な雰囲気を醸し出している。凛がこの数を見ると流石に驚きを隠せない様子で呟いた。

 

「うわっ、凄い数の本ね……これは全部あなたのものなの?」

 

『いや、これらの本は借りているだけだ』

 

「ふーん、誰に借りたの?」

 

『ロンドンの時計塔にある図書室から拝借したものだ。中にはロードという高位の魔術師が愛読しているのも幾つかあるな』

 

「え……?と、時計塔から借りれるもんなの?聞く限りじゃ貴方は魔術師っていうから魔術教会に伝手でもあるのかしら?」

 

『いや、時計塔に知り合いなどいない』

 

「は……?」

 

キジトラ・ストレンジの言葉に凛は嫌な予感がした。

 

『別の世界から来た私が彼等に許可を貰えると思うかね?少しばかり"拝借"させてもらっただけだよお嬢さん』

 

悪びれもなくいうキジトラ・ストレンジ。凛はその言葉を聞いて暫く口をあんぐりと開けたまま塞がらなかった。が、数十秒後には衛宮邸全体に轟かんばかりの怒声が響き渡った。

 

「なに盗んでんのよアンタはーーーーーーーー!!!???」

 

衛宮邸のガラスが割れんばかりの大絶叫が響き渡った。士郎、スティーブ、クリント、ナターシャの4人は余りの大音量の凛の怒号に思わず耳を塞ぐ。間近でこれを聞けば常人であれば鼓膜が破れる可能性すらあるだろう。

 

「きょ、協会からなんてもの盗んでんのよ!?し、しかもロードからも借りた……盗んだのよね!?協会からの執行者が差し向けられでもしらたどう責任取るのよ!!??」

 

凛の咆哮にも似た怒鳴り声はまだ止まない。彼女の怒りは収まるどころか更にヒートアップしていく一方だ。

 

『落ち着きたまえリン。借りたものはちゃんと返すさ』

 

「そういう問題じゃないのよーーー!!完ッ全に窃盗罪じゃない!」

 

窃盗どころか時計塔への不法侵入も恐らくしているだろう。にも拘らずキジトラ・ストレンジは余裕の態度を崩していない。

 

「お、追手とか差し向けられてない!?尾けられたりしてない!?下手すれば私にまで危険が及ぶかもしれないでしょ!」

 

『盗人一人に追跡者を差し向けるほど協会は暇なのかね?それに今は緊急事態だ。私としても泥棒のような真似はしたくなかったのだが背に腹は代えられなかったのでね』

 

「ねぇ士郎……、この糞猫もう一回ブン殴っていい……?」

 

素敵な笑顔を士郎に向けている凛だが、額には幾つもの怒筋が浮き出ている。そんな彼女に対しスティーブ達は苦笑いをしながら宥めていた。

 




とりあえず窃盗罪ですよストレンジ……(^_^;)

胡散臭いオッサン魔術師に指導されるよりは、キジトラの可愛い猫ちゃんに指導される方がいいよね♪
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