アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです   作:ドレッジキング

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ついに別々に行動していたメンバーが顔合わせします。


第48話 合流

夜の闇が深まる冬木の街。月明かりに照らされた間桐邸の姿が、ウルヴァリンことローガンの目の前に浮かび上がった。古めかしい和風建築は、その佇まいだけで不吉な雰囲気を醸し出している。ローガンは鋭い目つきで建物を観察しながら、口元に苦い笑みを浮かべた。彼の来訪の目的は明確だった。学校に結界を張り巡らせ、罪もない生徒たちを一網打尽にしようとした間桐慎二とそのサーヴァント、ライダー。彼らの凶行を未然に防ぐため、キャプテン・アメリカの指示で間桐邸の監視に当たっていたのである。

 

ローガンは鼻先で軽く嘆息を漏らす。彼の特殊な体質、即ち驚異的な回復力を持つヒーリングファクターが、時として彼を過酷な任務へと駆り立てる。それは彼の宿命であり、同時に呪いでもあった。

 

「ちっ、またこんな面倒な仕事を押し付けられちまった」

 

低い声で呟いたローガンの言葉が、夜風に乗って消えていく。その瞳には、任務への覚悟と共に、微かな疲れの色が宿っていた。

 

ローガンは静かに間桐邸の周囲を歩き始めた。その足取りは獣のように軽く、しかし確かな存在感を放っている。彼の鋭敏な感覚が、建物の中から漂う異様な空気を察知する。それは人間の感覚では捉えられないような、魔術の残滓とでも呼ぶべきものだった。

 

「ここの連中、ただものじゃねぇな」

 

ローガンの呟きには、警戒と共に僅かな興奮が混じっていた。彼の中で眠る野生の本能が、危険を察知し、それに応えようとしているのだ。

 

間桐邸の窓からは微かな明かりが漏れている。その光は、まるで誘蛾灯のように、ローガンの好奇心を刺激した。しかし、彼は慎重に距離を保ち、建物の外周を巡回し続ける。その姿は、獲物を狙う狩人のようでもあり、同時に領土を守る番犬のようでもあった。

 

ローガンは立ち止まり、ポケットからシガーを取り出した。火をつけ、深く煙を吸い込む。煙が夜空に向かって立ち昇る様子を見つめながら、彼は過去の任務を思い返していた。

 

「まったく、オレの能力のせいで、いつも厄介な仕事ばかりだぜ」

 

夜の静寂を破るかのように、虫の音が耳に届いた。ウルヴァリンは眉をひそめ、その不自然さに戸惑いを覚える。冬の寒さが肌を刺すこの季節に、虫の声など聞こえるはずもない。彼の鋭敏な感覚が、周囲の異変を察知し始めた。

 

ローガンは慎重に辺りを見回し、耳を澄ませる。その姿は、まるで獲物を追う狩人のようだ。しかし、彼の警戒は空振りに終わることはなかった。突如として、背後から涼やかな声が響き渡る。

 

「こんな夜更けに、何をしているのでしょうか」

 

その声の主は、紫の長髪を風になびかせるライダーだった。彼女の姿は、月光に照らされ、幻想的な美しさを放っている。ウルヴァリンは、その突然の出現に驚きを隠せない。しかし、彼の表情には、警戒と共に僅かな興味の色も浮かんでいた。

 

ライダーの問いかけに、ウルヴァリンは独特の皮肉めいた笑みを浮かべる。その表情には、危険な状況下でも冷静さを失わない彼の性格が如実に表れていた。

 

「お前さんのマスターのファンって言えば分かるかい?」

 

ウルヴァリンの言葉には、緊張を和らげようとするユーモアが込められていた。しかし、その目は真剣そのもので、ライダーの動向を注視している。両者の間に流れる空気は、一触即発の緊張感に満ちていた。

 

ライダーは、ウルヴァリンの言葉に反応を示さない。その表情は相変わらず無表情で、目隠しの下に隠された目は、彼の真意を探るかのように見つめている。夜風が二人の間を吹き抜け、ライダーの長い髪が優雅に舞う。この奇妙な邂逅は、聖杯戦争という異常な状況下でしか起こり得ないものだった。現代に蘇った英霊と、突然変異によって特殊な能力を得た男。二つの異なる世界の住人が、今、この瞬間に向き合っている。

 

ウルヴァリンの脳裏に、キャプテン・アメリカの言葉が蘇る。慎二本人の戦闘能力は取るに足らないものの、ライダーというサーヴァントを従えている以上、その危険性は無視できないという警告だ。月光に照らされた路上で、ウルヴァリンはその言葉の重みを再認識する。

 

夜風が二人の間を吹き抜け、緊張感が漂う空気をさらに冷たいものにする。ウルヴァリンの鋭い目がライダーを捉え、その姿勢からは一触即発の気配が感じられる。しかし、彼の声には、単なる敵意だけでなく、深い洞察力に基づいた問いかけが込められていた。

 

「聞かせてくれ。学校の生徒たちを殺そうとした時、何も感じなかったのか?」

 

ウルヴァリンの言葉は、夜の静寂を切り裂くように鋭く響く。その問いかけには、単なる非難ではなく、ライダーの内面を探ろうとする意図が感じられた。彼の目は、相手の反応を逃すまいと、ライダーの仮面の奥に潜む感情を読み取ろうとしている。

 

ライダーは、その問いに即座には答えない。彼女の長い紫髪が風に揺れ、その姿は月光の中で幻想的な美しさを放っている。しかし、その静寂の中に、何か言葉にできない重圧が感じられた。マスターの命令と自身の意志の狭間で揺れる英霊の姿が、そこにはあった。

 

ウルヵァリンの心の奥底で、サーヴァントに対する複雑な思いが渦巻いていた。過去の英雄や偉人たちが現代に蘇ったという事実は、彼にとっても驚くべきものだった。しかし同時に、彼らが現代の倫理観や法律を軽々と踏み越えてしまうのではないかという懸念も拭えない。その矛盾した感情が、彼の胸中で激しくぶつかり合っていた。

 

月明かりに照らされた路上で、ウルヴァリンはゆっくりとライダーに近づいていく。その動きは、獲物に忍び寄る野生動物のようでありながら、同時に慎重さも感じさせた。彼の鋭い目は、ライダーの仮面の奥に潜む本心を探ろうとしている。

 

夜風が二人の間を吹き抜け、ライダーの長い髪が優雅に舞う。その姿は幻想的でありながら、同時に危険な緊張感も漂わせている。ウルヴァリンは、その美しさの裏に隠された真実を見抜こうとするかのように、ライダーを見つめ続けた。

 

「お前さん、本当はどう思ってるんだ?」

 

ウルヴァリンの低い声が、夜の静寂を破る。その言葉には、単なる尋問以上の重みが込められていた。それは、異なる時代、異なる価値観を持つ者同士の、避けられない対話の始まりでもあった。ライダーは依然として無言を貫いている。しかし、その姿勢にわずかな変化が見られた。それは、ウルヴァリンの言葉が彼女の心の琴線に触れたことを示唆しているかのようだった。

 

月光に照らされた路上で、時が止まったかのような静寂が流れる。ウルヴァリンの鋭い眼差しがライダーを捉え、その仮面の奥に潜む真実を探ろうとしていた。夜風が二人の間を吹き抜け、ライダーの長い髪が優雅に舞う。その姿は幻想的でありながら、同時に危険な緊張感も漂わせている。

 

ライダーはゆっくりと顔を上げ、目隠しの下から、まるでウルヴァリンの魂を見透かすかのような視線を向ける。彼女の唇が僅かに開き、声を発するための準備を整えているかのようだ。その瞬間、周囲の空気が一層重くなったように感じられた。ウルヴァリンは息を呑み、全神経を集中させてライダーの言葉を待つ。彼の鋭敏な感覚が、相手の微細な動きや表情の変化を逃すまいと研ぎ澄まされていく。この瞬間、彼は単なる戦士ではなく、異なる時代の魂を理解しようとする探究者のようでもあった。

 

夜の静寂を破り、ライダーの声が低く、しかし明瞭に響く。

 

「あなたには理解できないでしょう。私たちサーヴァントの宿命を」

 

その言葉には、深い悲しみと諦めが滲んでいた。それは単なる返答ではなく、異なる時代、異なる価値観を持つ者の苦悩の表れでもあった。ウルヴァリンは、その言葉の重みを感じ取りながら、さらに踏み込もうとする。この対話が、単なる敵対を超えた何かに発展しようとしていることを、彼は本能的に感じ取っていた。

 

 

ウルヴァリンは深い嘆息を漏らし、その表情に複雑な感情が浮かぶ。戦いの不可避性を悟りながらも、それを受け入れることへの躊躇いが見て取れた。彼の筋肉が緊張し、戦闘態勢に移行する瞬間、背後から微かな物音が聞こえてきた。

 

その音に反応し、ウルヴァリンは素早く振り返る。そこに立っていたのは、紫色の長い髪を持つ少女、間桐桜だった。月明かりに照らされた彼女の姿は、儚げでありながら、何か言いようのない存在感を放っていた。

 

ウルヴァリンの記憶が、まるでフィルムを巻き戻すかのように過去へと遡る。彼の脳裏に、ある奇妙な出来事が蘇った。全裸のまま街中を彷徨っていた少女を、この間桐邸まで送り届けたことがあったのだ。その時の少女が、今目の前に立っているという事実に、ウルヴァリンは一瞬、戸惑いを覚える。

 

桜もまた、ウルヴァリンの顔を見て、かつての出来事を思い出していた。彼女の目に、驚きと恥じらい、そして何か言葉にできない感情が浮かぶ。二人の視線が交差し、そこには言葉では表現しきれない複雑な思いが込められていた。

 

夜風が三人の間を吹き抜け、桜の長い髪が優雅に舞う。その瞬間、時間が止まったかのような静寂が訪れる。ウルヴァリン、ライダー、そして桜。三者三様の思いが交錯する中、状況は新たな局面を迎えようとしていた。

 

月光に照らされた路上で、緊張感漂う空気が一瞬にして和らいだ。桜が、ウルヴァリンとライダーの間に静かに歩み寄る。彼女の動きには、戦いを避けようとする決意と、両者への配慮が滲んでいた。その姿は、まるで平和の使者のようでもあった。

 

ウルヴァリンは、目の前の光景に戸惑いを隠せない。彼の鋭い直感が、この状況の不自然さを察知していた。しかし同時に、桜の存在が醸し出す穏やかな雰囲気に、彼の戦意が徐々に薄れていくのを感じる。

 

桜は、か細いながらも芯の通った声で口を開いた。

 

「お二人とも、お願いです。戦うのは、やめてください」

 

その言葉には、単なる懇願以上の力が込められていた。ウルヴァリンとライダーの視線が、思わず桜に釘付けになる。彼女の真摯な態度が、この場の空気を一変させていた。

 

ウルヴァリンは、軽く咳払いをしてから、柔らかな口調で応じる。

 

「ああ、分かったよ。お嬢ちゃん。俺たちだって、別に喧嘩したくて来たわけじゃないからな」

 

その言葉には、普段の彼からは想像もつかないような優しさが滲んでいた。桜の存在が、彼の内なる優しさを引き出したかのようだ。

 

ライダーもまた、桜の介入に驚きを隠せない様子だった。しかし、その表情には安堵の色も見て取れる。彼女は静かに頷き、声を潜めて答えた。

 

「サクラの言う通りです。無用な争いは避けるべきでしょう」

 

三者三様の思いが交錯する中、不思議な和やかさが漂い始めた。ウルヴァリンは、ふと笑みを浮かべる。彼にとって、このような平和的な解決は珍しい経験だった。

 

「そういや、お嬢ちゃん。あの時は大変だったな。今度は服を着て歩いてるみたいで安心したよ」

 

ウルヴァリンの軽口に、桜の頬が赤く染まる。しかし、その表情には恥じらいと共に、かすかな笑みも浮かんでいた。ライダーは、その様子を見て微笑む。この奇妙な三者会談が、思いがけない方向に進んでいることを、誰もが感じ取っていた。

 

 

ウルヴァリンの脳裏に、キャプテン・アメリカから聞いた情報が蘇る。桜は聖杯戦争に参加していないという事実。その情報源が衛宮士郎であったことも思い出す。さらに、魔術師の家系では、子供だからといって安易に魔術の知識を与えることはないという話も耳にしていた。これらの断片的な情報が、ウルヴァリンの頭の中で複雑に絡み合い始める。

 

月明かりに照らされた路上で、ウルヴァリンの表情が微妙に変化する。彼の鋭い目が、桜とライダーを交互に見つめる。その眼差しには、単なる警戒心を超えた、深い疑問の色が宿っていた。

 

目の前の光景は、彼が知り得た情報とは明らかに矛盾している。魔術とも縁がないはずの桜が、慎二のサーヴァントであるライダーの前に平然と立っている。さらに驚くべきことに、ライダーは桜の名前を知っているようだ。この不自然な状況に、ウルヴァリンの直感が鋭く反応する。

 

彼の頭の中で、疑問が次々と湧き上がる。なぜ桜はここにいるのか。ライダーとの関係は何なのか。そして何より、キャプテン・アメリカから聞いた情報は本当に正確だったのか。これらの謎が、まるで複雑な迷路のように彼の思考を巡る。ウルヴァリンは、眉間にしわを寄せながら、じっと桜を見つめる。その眼差しには、単なる疑念だけでなく、真実を見抜こうとする鋭い洞察力が宿っていた。彼の鼻先が微かに動き、まるで真実の匂いを嗅ぎ取ろうとするかのようだ。

 

(何かおかしいぜ)

 

ウルヴァリンは心の中でつぶやく。この状況の不自然さが、彼の戦士としての本能を刺激していた。しかし同時に、桜の儚げな姿に対する不思議な親近感も感じていた。これらの相反する感情が、彼の胸中で激しくぶつかり合う。

 

 

ウルヴァリンの鋭い洞察力が、目の前の状況を分析し始める。彼の脳裏で、断片的な情報が複雑に絡み合い、新たな推論を形成していく。慎二が士郎に語った言葉、桜が聖杯戦争に関わっていないという主張、そして魔術の知識さえ持ち合わせていないという説明。これらの情報が、今目の前で展開される光景と明らかに矛盾していることに、ウルヴァリンは確信を持つ。

 

ウルヴァリンの思考は更に深まる。桜が直接のマスターでないにしても、何らかの形で聖杯戦争に関与していることは明白だ。この事実は、単なる情報の一つではなく、戦況を左右しかねない重要な要素であると、彼は直感的に理解する。

 

夜風が彼の髪を揺らし、その動きに合わせるかのように、ウルヴァリンの思考も新たな方向へと展開していく。士郎や凛といったマスターたちと桜が戦うという最悪のシナリオが、彼の脳裏をよぎる。しかし、すぐにその可能性を打ち消すような別の考えが浮かぶ。ライダーを倒せば、慎二や桜は自動的に聖杯戦争から脱落する。この単純かつ効果的な解決策が、ウルヴァリンの中で形を成していく。それは、桜が慕う士郎との直接対決を回避する道筋でもあった。

 

ウルヴァリンの目に、決意の色が宿る。彼の表情には、複雑な状況を整理し、最適な解決策を見出した者特有の冷静さが浮かんでいた。しかし同時に、その眼差しの奥底には、桜への不思議な親近感も垣間見える。

 

彼は深く息を吐き、周囲の空気を慎重に読み取る。この夜の静寂の中で、重要な決断が下されようとしていた。ウルヴァリンの次の一手が、この複雑な状況をどう動かすのか。その答えは、まだ誰にも分からない。ただ、彼の鋭い直感が、この夜に隠された真実への道筋を示そうとしていることだけは確かだった。

 

 

 

 

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深夜の静寂が支配するホテルの一室。窓から漏れる月明かりだけが、わずかに部屋の輪郭を照らし出していた。ベッドでは立香が安らかな寝息を立てている。その傍らで、パニッシャーは完全武装の姿で椅子に腰かけ、不穏な空気を感じ取るように周囲を警戒していた。

 

彼の鋭い目は、わずかな物音も逃すまいと部屋中を注視する。手には常に愛銃が握られ、いつでも戦闘態勢に入れるよう備えていた。この異常な緊張感は、単なる疑心暗鬼ではない。パニッシャーの長年の経験が、何か危険な予兆を感じ取っていたのだ。

 

コヤンスカヤは、そんなパニッシャーの様子を興味深そうに眺めながら、優雅に椅子に座っていた。彼女の口元には、いつもの意味ありげな微笑みが浮かんでいる。

 

「あらあら、随分と警戒心が強いのね。でも、それは決して悪いことじゃありませんわ。むしろ褒めてあげたいぐらいですわ」

 

コヤンスカヤの言葉に、パニッシャーは無言で頷く。彼の表情からは、いつもの鋭さが感じられた。

 

「ただね、貴方が狙っているクー・フーリンは、単なる槍を振り回す戦士じゃありませんのよ」

 

コヤンスカヤの声には、警告の色が混じっていた。パニッシャーは彼女の方を向き、その言葉に耳を傾ける。

 

「彼が使うルーン魔術は、想像以上に応用力が高いの。私たちがこのホテルに潜伏していることを見つけられるのも、時間の問題かもしれませんわ」

 

その言葉に、パニッシャーの眉間にしわが寄る。彼は無意識のうちに、銃を握る手に力を込めていた。

 

「まあ、聖杯戦争に参加しているサーヴァントですから、私たちの事は後回しにされているのかもしれませんわね♡」

 

コヤンスカヤは軽く笑いながらそう言ったが、その瞬間、二人の表情が一変する。部屋の扉から、突如として猛烈な殺気が漂ってきたのだ。

 

パニッシャーとコヤンスカヤは、まるで息を合わせたかのように同時に動き出す。パニッシャーはベッドに駆け寄り、寝ている立香を素早く抱き上げる。一方、コヤンスカヤは窓に向かい、一瞬で開け放った。

 

「さぁ、時間がありませんわ。私が貴方たちを抱えて飛び出しますから、しっかりと捕まっていてくださいね」

 

コヤンスカヤの声には、いつもの余裕が感じられた。彼女は軽々とパニッシャーと立香を抱え上げ、窓から外へと飛び出す。その動作は、まるで重力を無視しているかのように軽やかだった。

 

夜風が三人の顔を撫でる中、コヤンスカヤの長いピンク色の髪が風になびいていた。彼女の表情には、危険な状況下でも楽しんでいるような微笑みが浮かんでいる。

 

「うふふ♡ こういうスリルも悪くありませんわね。でも、お二人とも私にしっかりとしがみついていてくださいね。落としちゃったら大変ですから」

 

パニッシャーは無言で頷き、立香を守るように抱きしめながら、コヤンスカヤの体にしがみついた。立香は突然の出来事に目を覚まし、驚きの表情を浮かべている。

 

「おじさん...お姉さん...どうしたの?」

 

立香の不安げな声に、コヤンスカヤは優しく微笑みかける。

 

「心配しないで、リツカくん。ちょっとした夜のお散歩よ。すぐに安全な場所に着きますから」

 

そう言いながら、コヤンスカヤは三人を抱えたまま、驚くべき速さで建物の外壁を滑り降りていく。その姿は、まるで重力を自在に操るかのようだった。

 

人気のない夜の街を、三人の影が素早く駆け抜けていく。パニッシャーは背後を警戒しながら、時折振り返っては銃を構えている。コヤンスカヤは、そんな彼の様子を見て軽く笑う。

 

「あらあら、随分と真面目なのね。でも、そういうところ、嫌いじゃありませんわ♡」

 

コヤンスカヤは軽やかな動きで地上に着地すると、周囲を素早く見渡した。その表情には、いつもの余裕とは異なる緊張感が漂っていた。夜の闇に包まれた街並みは静寂に包まれているが、その静けさの中に潜む危険を彼女は敏感に感じ取っていた。

 

「私が囮になりますわ。その隙に逃げてくださいね」

 

コヤンスカヤの声には、いつもの艶やかさの中に、わずかな焦りが混じっていた。彼女の目は、パニッシャーと立香を交互に見つめ、その安全を確認するかのようだった。

 

夜風が三人の周りを吹き抜け、コヤンスカヤのピンク色の長い髪が優雅に舞う。その姿は、まるで月夜に咲く一輪の花のようだった。しかし、その美しさの裏には、計算された強さと狡猾さが隠されていることをパニッシャーは感じ取っていた。

 

「まったく、流石はアルスターの英雄ですわね。こんなに早く追ってくるなんて...」

 

コヤンスカヤは小さな溜め息をつきながら呟いた。その声には、敵の能力を認める皮肉めいた感心が込められていた。

 

彼女は突然、パニッシャーと立香に近づくと、それぞれの頬にキスをした。その唇の感触は柔らかく、一瞬の出来事だった。

 

「うふふ♡ これで私の魔力が少しは守ってくれるはずです。さぁ、急いで!」

 

コヤンスカヤは軽やかに身体を反転させると、驚くべき跳躍力でビルの壁面を駆け上がっていった。その姿は、まるで重力を無視しているかのようだった。パニッシャーは一瞬の戸惑いを見せたが、すぐに我に返った。彼はコヤンスカヤの言葉を信じ、立香の手を強く握ると、暗い路地へと駆け込んでいく。

 

「おじさん、お姉さんは大丈夫なの?」

 

立香の不安げな声に、パニッシャーは走りながら答えた。

 

「あいつなら大丈夫だ。俺たちは逃げるぞ」

 

パニッシャーの声には、普段の冷静さが戻っていた。彼は立香を守ることに全神経を集中させ、周囲の気配を探りながら走り続ける。

 

夜の街を駆け抜ける二人の姿は、闇に溶け込むように消えていった。背後では、ビルの屋上で何かが起きているような気配が感じられたが、パニッシャーはあえて振り返らなかった。今は立香の安全が最優先だ。そう心に誓いながら、彼は足を速めていった。

 

 

 

 

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深夜の静寂を破る激しいノックの音が、衛宮邸に響き渡る。その音は、まるで災厄の前触れのように、不吉な響きを持っていた。しばらくの間、音に応える気配はなかったが、やがて邸内に明かりが灯り、誰かが近づいてくる足音が聞こえ始めた。引き戸がゆっくりと開かれ、そこに現れたのは寝間着姿の遠坂凛だった。彼女の髪は乱れ、目元には寝起きの名残が残っている。不機嫌そうな表情で引き戸を開けた凛の目の前に広がった光景は、彼女の脳裏に衝撃を与えた。

 

そこには、先日公園で彼女とステゴロタイマンを繰り広げたパニッシャーが、5歳ほどの男の子を連れて立っていたのだ。凛の目は徐々に大きく見開かれ、口はポカンと開いたまま。彼女の表情は、まるでコミカルなアニメのキャラクターのように、驚きのあまり固まってしまったかのようだった。

 

「え...えぇぇぇ!?」

 

凛の声は、寝ぼけ眼から一気に覚醒したかのように、高くなった。彼女の目は、パニッシャーと男の子を交互に見比べ、まるでピンポン球のように行ったり来たりしている。

 

「ちょ、ちょっと待って...わたし、まだ寝てる?これって夢?」

 

凛は自分の頬をつねり、痛みを確認する。しかし、目の前の光景は変わらない。パニッシャーはいつもの無表情を貫き、男の子は困惑した様子で凛を見上げている。

 

「あ、あの...もしかして...」

 

凛は震える指でパニッシャーと男の子を指し示した。

 

「あなた、子供連れで夜這いに来たの?」

 

その言葉を聞いた瞬間、パニッシャーの表情が一瞬だけ崩れた。男の子は首を傾げ、状況が理解できていない様子だ。

 

「いや、違う」

 

パニッシャーの冷静な否定に、凛は頭を抱えた。

 

「もう、わたし何言ってるのかわからなくなってきた...」

 

凛は深呼吸をし、自分を落ち着かせようとする。しかし、その努力も空しく、彼女の混乱は収まる気配がない。

 

「とにかく...入って」

 

凛は諦めたように二人を中に招き入れた。彼女の頭の中は、まだ現実と夢の狭間で揺れ動いているようだった。衛宮邸の静かな夜に、思いもよらない来訪者たちが足を踏み入れる。この夜が、どんな展開を見せるのか、誰にも予測できないまま。

 

深夜の衛宮邸のリビングルームに、思いもよらない顔ぶれが集まっていた。スティーブ、ナターシャ、クリント、士郎、凛、セイバー、そしてパニッシャーと立香。眠気と緊張が入り混じった空気が、部屋全体を包み込んでいる。

 

パニッシャーは無表情を保ちながら、これまでの経緯を簡潔に説明していく。その声は低く、しかし部屋中に響き渡るほど明瞭だった。立香を守るため、やむを得ず彼らの拠点である衛宮邸に来たという事実に、全員が驚きの表情を浮かべている。スティーブは腕を組み、深刻な面持ちで話を聞いている。ナターシャは鋭い目つきでパニッシャーを観察し、クリントは時折立香の方を気にかけながら状況を把握しようとしていた。

 

「まさか、こんな形で再会することになるとはな」

 

スティーブの言葉に、パニッシャーは無言で頷いた。二人の間には、複雑な空気が流れている。

 

一方、立香は明らかに落ち着かない様子で、キョロキョロと周囲を見回している。その不安げな姿に、士郎は思わず声をかけずにはいられなかった。

 

「大丈夫だよ。ここは安全だから」

 

士郎の優しい声に、立香は少し安心したように見えた。しかし、その目には依然として不安の色が残っている。凛は、この予想外の事態に眉をひそめながらも、冷静さを取り戻そうとしていた。

 

「ちょっと待って。わたしたちが何もかも引き受けるわけにはいかないわ。でも...」

 

凛の言葉が途切れる。彼女の目が、不安そうにしている立香に向けられる。その瞬間、凛の表情が柔らかくなった。

 

セイバーは、静かにこの状況を見守っていた。彼女の鋭い直感が、この一件が単なる偶然ではないことを告げているようだった。

 

「フランク、お前の判断は正しかった」

 

クリントが、珍しく真剣な表情でパニッシャーに語りかける。その言葉に、部屋の空気が少し和らいだように感じられた。

 

しかし、この一時の平穏が長く続くとは誰も思っていない。彼らは皆、これから始まる新たな局面に、それぞれの覚悟を胸に秘めていた。深夜のリビングルームで、運命の歯車が静かに、しかし確実に回り始めていたのだ。

 

パニッシャーの存在は、他のヒーロー達にとって常に議論の的であった。彼の容赦ない制裁方法は、多くの仲間から批判や嫌悪の目を向けられる原因となっていた。しかし、今この瞬間、リビングルームに集まった面々の表情には、そうした過去の軋轢を感じさせるものは見当たらなかった。

 

「立香を守って欲しい」

 

パニッシャーの言葉は、静かではあるが強い決意に満ちていた。その声音には、普段の冷徹さとは異なる、何か人間味のある響きがあった。キャプテン・アメリカことスティーブは、一瞬の躊躇もなくその申し出を受け入れた。

 

「分かった、フランク。我々にできることは全てやろう」

 

スティーブの返答に、部屋の空気が少し和らいだ。しかし、パニッシャーの表情は依然として厳しいままだった。

 

「俺一人では、クー・フーリンから立香を守りきれない」

 

その告白は、パニッシャーにとって珍しく自身の限界を認めるものだった。部屋の中にいる全員が、その言葉の重みを感じ取った。

 

スティーブの目に、一瞬だけ過去の記憶が蘇る。シビルウォーの際、パニッシャーが投降してきたゴールドバグとプランダラーを目の前で射殺した時のことだ。あの時、スティーブはパニッシャーを激しく叩きのめした。その時の怒りと失望が、一瞬よみがえる。

 

しかし、スティーブはそれを押し殺し、現在の状況に意識を戻した。目の前にいる不安そうな立香の姿を見て、彼は決意を固めた。

 

「フランク、過去にどんなことがあっても、今は関係ない。立香を守ることが最優先だ」

 

スティーブの言葉に、他のメンバーも同意の意を示した。ナターシャは静かに頷き、クリントは軽く肩をすくめてみせた。

 

「まあ、子供を守るってんなら、俺らの出番だよな」

 

クリントの軽口に、部屋の空気が少し緩んだ。しかし、全員の表情には依然として緊張が残っていた。彼らは皆、これから始まる戦いの厳しさを予感していたのだ。パニッシャーは無言で頷いた。彼の目には、普段とは異なる感情の色が浮かんでいた。それは感謝なのか、それとも別の何かなのか、誰にも分からない。しかし、この瞬間、彼らは一つの目的のために団結していた。立香を守るという使命が、過去の対立を超えて、彼らを結びつけていたのだ。

 

クリントは、緊張感漂う部屋の空気を和らげようとするかのように、ふと立香と凛を交互に見比べた。彼の目が、まるでピンポン球のように二人の間を行ったり来たりする。そして、突如として彼の顔に悟ったような表情が浮かんだ。

 

「おいおい、待てよ。二人とも、姉弟みたいに似てるじゃないか!」

 

クリントの声が、静まり返っていた部屋に響き渡る。全員の視線が一斉に立香と凛に集中した。確かに、二人とも黒髪に青い瞳を持ち、顔立ちにも似たところがある。

 

凛は一瞬、目を丸くして立香を見つめ、次の瞬間には顔を真っ赤に染めた。

 

「ちょ、ちょっと待って!わたしにそんな弟いないわよ!」

 

凛の慌てた様子に、部屋の空気が一変する。スティーブは思わず口元を押さえ、ナターシャは小さくため息をついた。

 

士郎は目を見開いて二人を見比べ、まるでテニスの観客のように首を左右に振る。

 

「う、うわ...本当に似てる...」

 

立香は困惑した表情で周りを見回し、最後に凛に視線を向けた。

 

「お姉ちゃん...?」

 

その一言で、凛の顔がさらに赤くなる。

 

「違うってば!わたしは、わたしは...」

 

言葉に詰まる凛を見て、クリントが大笑いを始めた。

 

「おっと、これは大発見だな。遠坂凛、秘密の弟がいたとは!」

 

パニッシャーでさえ、珍しく眉をひそめている。セイバーは困惑した表情で凛を見つめ、何か言おうとして言葉を飲み込んだ。

 

部屋中が騒然となる中、凛は両手で顔を覆い、うずくまりそうになっている。

 

「もう...こんな展開、聞いてないわよ...」

 

凛の呟きは、笑い声にかき消されていった。緊張感漂っていた部屋は、一瞬にしてお笑い劇場と化していた。この予想外の展開に、全員が一時的に危機を忘れ、笑いに包まれたのだった。

 

立香を別室で休ませた後、リビングルームの空気が一変した。先ほどまでの和やかな雰囲気は消え失せ、重苦しい緊張感が漂い始めた。パニッシャーの表情は、いつもの無感情な仮面の下に、何か言い難い感情を秘めているようだった。

 

「立香の家族は全員、クー・フーリンに殺された」

 

パニッシャーの低い声が、静寂を破る。その言葉の重みに、部屋中の空気が凍りついたかのようだった。スティーブたちの表情が、一瞬にして厳しさを増す。

 

士郎の目が大きく見開かれた。彼の脳裏に、ある記憶が蘇る。

 

「そういえば...聖杯戦争が始まる直前に、長い刃物による一家殺人事件があったはずだ」

 

士郎の言葉に、全員の視線が集中する。彼は続けた。

 

「まさか...立香くんが、その時の生き残りなのか」

 

その推測に、凛が息を飲む。彼女の目に、恐怖と同情の色が浮かぶ。

 

「聖杯戦争を目撃した人間は...」

 

凛の言葉が途切れる。しかし、全員がその先を察していた。口封じのために記憶を消されるか、最悪の場合は始末される。そのルールを思い出し、スティーブの拳が握りしめられる。その手に、怒りと正義感が込められているのが見て取れた。

 

「これは看過できない」

 

スティーブの声には、普段の冷静さは微塵も感じられなかった。その青い目には、燃えるような決意が宿っていた。

 

ナターシャは無言で腕を組み、深刻な表情で考え込んでいる。クリントは、先ほどまでの軽口が嘘のように、厳しい表情で窓の外を見つめていた。

 

セイバーは、静かに目を閉じている。しかし、その姿勢からは、何か重大な決意を固めているのが感じ取れた。

パニッシャーは、全員の反応を冷静に観察していた。彼の目には、仲間たちへの信頼と、これから始まる戦いへの覚悟が混在していた。部屋の空気は、重苦しさを増していく。しかし、同時に何か強い決意のようなものも感じられた。彼らは皆、立香を守るという共通の目的のために、今まさに団結しようとしていたのだ。




衝撃!凛には弟がいた!?(違う)
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