アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです   作:ドレッジキング

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いよいよ物語も終盤です。


第57話 蘇生

衛宮邸のリビングに、落ち着かない空気が漂っていた。セイバーは、時折窓の外を見やりながら、明らかな不安の色を浮かべている。キャップは、彼女の様子を気にかけるように見守っていた。

 

「シロウの帰りが遅すぎます、スティーブ」

 

セイバーの声には、抑えきれない焦りが滲んでいた。彼女の翠の瞳が、再び窓の外を見る。日は既に西に傾きつつあり、街路に長い影を落とし始めていた。キャップは、静かに腕を組みながら応じる。その表情には、セイバーと同じ懸念が浮かんでいた。

 

「ああ、確かに。普段なら、この時間には戻っているはずだ」

 

キャップの言葉に、セイバーの眉間に深い皺が刻まれる。彼女の手が、無意識のうちに剣を持つ形に握られる。

 

「聖杯戦争は、基本的に夜間に行われる決まりです。しかし...」

 

セイバーの言葉が一瞬途切れる。彼女の脳裏に、学校での出来事が蘇ってきた。間桐慎二が、昼間からライダーを使って学校の生徒たちを襲おうとした事件。その記憶が、彼女の不安をさらに掻き立てる。キャップは、セイバーの言葉の意図を理解したように頷く。彼の目には、決意の色が宿っていた。

 

「ルールを無視する輩は、いつの世にもいる。シロウを探しに行こう」

 

その言葉に、セイバーの表情が一瞬にして引き締まる。彼女の体から、戦士としての気配が漂い始める。

 

「はい。慎二のような、ルールを無視する輩の存在も考慮しなければなりません」

 

セイバーが立ち上がる。その動作には、無駄のない優美さが感じられた。キャップも、シールドを手に取る。二人の間に流れる空気が、一気に緊張感を帯びる。彼らの目には、士郎を守るという共通の使命が宿っていた。外の空が、徐々に夕暮れの色を濃くしていく中、新たな戦いの予感が、静かに忍び寄っていた。キャップは素早い動作でテーブルの上に紙を置き、ペンを走らせる。その手際の良さには、長年の経験が滲んでいた。クリントとナターシャへの簡潔な状況説明と、彼らの協力要請が記された。

 

その時、部屋の入り口に新たな影が現れる。ウルヴァリンが、いつもの無愛想な表情で立っていた。彼の鋭い目が、状況を瞬時に把握する。

 

「ガキの捜索か?オレの鼻なら、奴の匂いを追えるぜ」

 

ウルヴァリンの声には、いつもの荒々しさがあった。しかし、その言葉には確かな自信が込められていた。セイバーの目が、一瞬だけ期待の色を帯びる。

 

キャップは、ウルヴァリンの申し出に頷きながら応える。

 

「助かる。君の能力があれば、シロウの居場所を特定できる」

 

正午過ぎの陽光が、まだ強く地上を照らしている中、三人は衛宮邸を飛び出した。ウルヴァリンは、地面に身を屈めるようにして士郎の足跡を確認する。その鼻が、かすかに動く。

 

「こっちだ。商店街の方へ向かってる」

 

ウルヴァリンの声を合図に、三人は一斉に走り出す。彼とキャップの脚力は、人間の限界をはるかに超えていた。しかし、セイバーは難なくその速度についていく。むしろ、まだ余裕さえ感じられた。セイバーの姿は、普段着のままだった。しかし、それは彼女の戦闘能力を制限するものではない。必要とあらば、一瞬で霊衣を纏い、剣を具現化することができる。その事実が、彼女に確かな安心感を与えていた。冬木の街並みが、三人の姿を飲み込んでいく。時計の針が、午後12時30分を指している。その時間帯は、通常の聖杯戦争の戦いには不適切なものだった。しかし、それだけに異常事態の可能性は高まる。ウルヴァリンの鼻が、再び動く。彼の目に、新たな情報を捉えた色が浮かぶ。

 

「匂いが変わってきてやがる。この先で、何かが起きたようだぜ」

 

 

 

 

****************************************************************

 

 

 

 

廃屋の薄暗い空間に、大河の絶望的な叫び声が響き渡る。その声は、まるで魂そのものが引き裂かれるような痛みを帯びていた。天井から伸びる鎖が、彼女の激しい動きに合わせて不気味な音を立てる。

 

レスターは、その光景を高みから見下ろすように眺めていた。彼の目には、獲物を仕留めた満足感と、新たな残虐性への期待が宿っていた。

 

「さあて、これでお前の役目も終わりだな」

 

レスターの声が、冷たく空気を切る。彼は、ゆっくりと大河に近づくと、鎖を外すための鍵を取り出した。金属が触れ合う音が、静寂を破る。

 

解放された瞬間、大河の体が床に崩れ落ちる。しかし、その弱々しさは一瞬のことだった。彼女は、まるで本能に突き動かされるように、士郎の遺体へと駆け寄る。

 

「士郎...士郎...!」

 

大河の叫びには、もはや理性的なものは何も残っていなかった。それは、ただ純粋な悲しみと絶望の表現だった。彼女の手が、士郎の冷たくなった頬に触れる。その感触が、さらに彼女の心を引き裂いていく。

 

「嘘...嘘よ...! こんなの...絶対に...!」

 

短い茶色の髪が、激しい首振りと共に乱れ飛ぶ。大河の目から溢れる涙は、まるで止まることを知らないかのように流れ続けていた。その一滴一滴が、床に落ちる度に、彼女の心の痛みを表現しているかのようだった。

 

レスターは、その光景を楽しむように眺めている。彼の唇には、残虐な笑みが浮かんでいた。標的の抹殺と、それによって生まれる人間の苦しみ。その全てが、彼の歪んだ愉悦を満たしていく。廃屋の空気が、さらに重くなっていく。それは、絶望と狂気が混ざり合ったような、異様な雰囲気だった。大河の嗚咽が、静かに、しかし確実にその空間を満たしていった。

 

レスターの手が、ダーツを構えるように上がる。その目には、新たな殺意が宿っていた。しかし、その動きは完遂されることはなかった。廃屋の奥から、円形の盾が閃光のように飛来する。その軌道は、まるで意思を持つかのように正確だった。

 

レスターは、咄嗟の反応で身を捩る。盾が空を切る音が、わずかに彼の耳を掠める。その瞬間、廃屋の入り口に二つの影が現れる。アベンジャーズのコスチュームに身を包んだキャプテン・アメリカと、その隣には戦闘態勢を整えたウルヴァリンの姿があった。甲冑を纏ったセイバーが、一瞬の躊躇いもなく士郎の元へと駆け寄る。その姿は、まるで風のように優雅で、同時に剣のように鋭かった。

 

「この野郎!」

 

ウルヴァリンの雄叫びが、空間を揺るがす。彼の体が、まるでバネが弾けるように前方へ跳躍する。その動きは、人間の限界を遥かに超えていた。

レスターの目が、一瞬だけ驚きの色を見せる。しかし、すぐにいつもの残虐な笑みを取り戻した。彼の手から、複数のダーツが放たれる。それぞれが、致命的な軌道を描いて飛来する。

 

「へへっ、オレのダーツを避けられるかよ?」

 

その挑発的な言葉に、ウルヴァリンの腕からアダマンチウムの爪が伸びる。その鋭利な輝きが、廃屋の薄暗がりを切り裂く。

 

「クソ野郎が...!」

 

ウルヴァリンの爪が、空中のダーツを次々と叩き落としていく。その動きは、まるで舞うように流麗で、同時に獣のように野性的だった。金属が激突する音が、連続して響き渡る。レスターは、その状況を見て表情を歪める。彼の手から、さらに多くのダーツが放たれる。それは、まるで銀の雨のように空間を埋め尽くす。ウルヴァリンの体が、その雨を潜り抜けるように動く。彼の動きには、長年の戦闘経験から培われた正確さがあった。切っ先がかすめた箇所は、瞬時に治癒していく。

 

「なに...!?」

 

レスターの声に、初めて動揺の色が混じる。ウルヴァリンの姿が、彼の目前に迫っていた。その爪が、冷たい光を放っている。

 

「死ね!」

 

ウルヴァリンの爪が、レスターの喉元を狙って振り下ろされる。しかし、レスターもまた並の相手ではなかった。彼の体が、バク転のように後方へ跳躍する。その動きは、まるでサーカスの曲芸のように華麗だった。

 

二人の間に、一瞬の静寂が訪れる。それは、まるで嵐の目のような、危険な静けさだった。レスターの目に、これまでにない警戒の色が浮かぶ。一方、ウルヴァリンの姿からは、抑えきれない殺意が滲み出ていた。この対峙が、新たな戦いの幕開けとなることを、誰もが予感していた。廃屋の空気が、さらに重くなっていく。二つの存在が、互いを牽制しながら、次の一手を探っていた。セイバーが士郎の体を静かに抱き上げた瞬間、彼女の瞳が驚きの色を帯びる。その表情の変化を、すぐ傍にいたキャップが見逃すことはなかった。セイバーの腕の中で、かすかに、しかし確かな生命の息吹が感じられた。

 

「シロウが...息をしています」

 

セイバーの声には、安堵と驚きが混ざり合っていた。キャップの目が、瞬時に士郎の胸に刺さったダーツへと向けられる。

 

「ダーツを抜かなければ...」

 

キャップの手が、慎重にダーツに伸びる。その指先には、長年の戦場での経験から培われた確かな技術が宿っていた。彼は、一気にダーツを引き抜く。その瞬間、驚くべき光景が二人の目の前で展開される。士郎の胸の傷が、ゆっくりと、しかし確実に癒えていく。傷口が閉じていく様子は、まるで時間を逆行させているかのようだった。

 

「これは...ヒーリングファクター?」

 

キャップの声には、明らかな驚きが含まれていた。彼の頭の中で、ウルヴァリンの持つ能力との類似性が閃く。しかし、その回復の様子には何か異質なものが感じられた。それは単なる肉体の再生能力とは、どこか異なる神秘的な輝きを帯びていた。セイバーの目には、複雑な感情が交錯していた。彼女の手が、そっと士郎の胸に触れる。その接触で、士郎の回復がさらに加速したかのように見えた。

 

「信じられない...」

 

キャップの呟きが、静かな空気を切る。彼の経験則では説明のつかない現象を目の当たりにして、彼の科学的な理解が揺らいでいた。その時、士郎の唇が微かに動く。それは、まるで深い眠りから目覚めようとする者のような、かすかな動きだった。セイバーの腕の中で、彼の命が確実に蘇っていくのを感じることができた。レスターは戦況の変化を見て取ると、不敵な笑みを浮かべた。その表情には、まるで全てを計算済みであるかのような余裕が滲んでいた。

 

「へへっ、やっぱりな。オレのターゲットは、そう簡単には死なねえってことか」

 

その言葉を残し、レスターの体が影の中へと溶けるように消えていく。その動きには、まるで練習を重ねたかのような無駄のなさがあった。ウルヴァリンが追いかけようとするが、既にその姿を捉えることはできなかった。一方、セイバーの腕の中で、士郎の意識が徐々に戻り始めていた。彼の瞼が、ゆっくりと開かれる。その目に最初に映ったのは、セイバーとキャップの心配そうな表情だった。

 

「ロジャース先生...セイバー...申し訳ありません」

 

士郎の声は、まだ弱々しかったが、その中には確かな後悔の色が滲んでいた。彼の目には、自らの軽率な行動を悔いる色が浮かんでいた。

 

「藤ねえが危険な目に遭うかもしれない。だから...一人で...」

 

その言葉が途切れる。キャップの表情が、厳しさを帯びながらも、どこか理解を示すように変化する。彼は、仲間を守るために無謀な行動を取ってしまう気持ちを、痛いほど理解していた。

 

「シロウ。誰かを守りたい気持ちは分かる。だが、それは時として最悪の結果を招くことがある」

 

キャップの言葉には、長年の戦いの中で得た教訓が込められていた。セイバーも、静かに頷きながら、士郎をしっかりと抱きしめる。大河の泣き声が、まだ廃屋に響いていた。その声に、士郎の表情がさらに苦しみに歪む。彼の無謀な行動が、大切な人々を深く傷つけてしまったことを、痛感させられる瞬間だった。

 

セイバーは、母親が悪さをした子供を叱るような表情で士郎を見下ろす。その目には、これから繰り広げる説教への並々ならぬ意気込みが宿っていた。

 

「シロウ。後ほど、みっちりとお話をさせていただきますから、覚悟しておいてくださいね」

 

その言葉の裏に潜む恐ろしさに、士郎の顔が青ざめる。セイバーは、そんな士郎を軽々と抱き上げた。甲冑を着た少女が大の男を抱え上げる光景は、どこかシュールだった。

 

その時、キャップの脳裏に重大な事実が閃く。彼は、ゆっくりと振り返る。そこには、目を見開いたまま固まっている大河の姿があった。彼女の表情は、まるでブルースクリーンエラーを起こしたパソコンのように、完全にフリーズしていた。

 

「え?え?ちょっと待って...セイバーちゃんが...甲冑...?士郎が...生き返った...?」

 

大河の言葉が、まるで壊れたテープレコーダーのように途切れ途切れになる。彼女の頭上には、ほぼ見える形で「???」の文字が浮かんでいるようだった。キャップは、深いため息と共に頭を抱える。これで魔術の秘匿という大原則が、見事に木っ端微塵に粉砕されたことは明らかだった。「神秘の秘匿」という概念が、まるでガラスの城のように派手に崩壊していく様子が、彼の脳裏に浮かぶ。

 

「まあ...説明するのは難しいと思うが...」

 

キャップの言葉が宙に浮く中、大河の目が急に輝きを増す。

 

「分かったわ!これって全部、コスプレよね!士郎も特殊メイクで...そう、スティーブ先生の趣味なのよね!?」

 

その強引すぎる解釈に、その場にいた全員が言葉を失う。キャップの表情が、「それでいい」という諦めと、「いや、違う」という良心の間で激しく揺れ動く。大河の目に浮かぶ期待の色を前に、キャップは観念したように肩を落とす。時に、真実を語らないことも、相手を守ることになる。彼は、そう自分に言い聞かせるしかなかった。

 

一方、ウルヴァリンは、この状況を見て鼻を鳴らす。

 

「ったく、面倒くせえことになったぜ」

 

その言葉が、この状況を完璧に要約しているようだった。

 

「つまりだね、藤村...これは全て...その...」

 

キャップの言葉が、まるで迷子の子供のように宙をさまよう。アメリカの英雄、キャプテン・アメリカが、一人の日本人女性教師の前で言葉に詰まるという、歴史的な瞬間が今まさに展開されていた。

 

「ええと...ロジャーズ先生?それって本当にコスプレ...じゃないの?」

 

大河の目が、子犬のように期待を込めて輝く。その純粋な眼差しに、キャップの良心が更に激しく引き裂かれる。士郎も、状況を収拾しようと必死に頭を巡らせていた。しかし、「実は藤ねえ、英霊を召喚して戦う魔術師の戦いに、アメリカのヒーローチームが介入してきたんだ」とは、どう考えても説明できる代物ではなかった。

 

「あ、そうそう!これって、その...アメリカの...」

 

士郎の言葉が空中分解する。セイバーは呆れたように目を細め、ウルヴァリンは鼻で笑う。

 

「なるほど!アメリカの新しい教育方法なのね!先生が生徒と一緒にヒーローごっこをして、絆を深めるってやつでしょ?」

 

大河の驚くべき解釈に、キャップと士郎が同時に「それだ!」という表情を浮かべる。しかし、すぐにその説明の破綻点に気づく。

 

「でも...なんで士郎が死んだように見えて...復活したの?」

 

その鋭い指摘に、キャップの表情が再び崩れる。隣では士郎が冷や汗を垂らし始めていた。

 

「それは...最新のアメリカンマジック...?」

 

キャップの苦し紛れの説明に、ウルヴァリンが思わず噴き出す。セイバーは、この状況が面白いのか、わずかに口元を緩めていた。

 

「へえ!さすがアメリカ!でも...」

 

大河の目が、セイバーの甲冑に向けられる。

 

「どうしてセイバーちゃんだけ中世ヨーロッパ風なの?」

 

その質問に、今度はセイバーの表情が凍りつく。キャップと士郎の目が泳ぎ始める。そして二人の口から、同時に出てきた答えは─

 

「コスプレ文化交流!」

 

その場の空気が、一瞬にして凍り付く。ウルヴァリンは、もはや笑いを堪えることを完全に諦めていた。




これは気まずいw
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