アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです 作:ドレッジキング
ウルヴァリンは疾風のように言峰に向かって跳びかかる。その動きは、まるで天井の低い地下聖堂を完全な戦場として認識しているかのよう。小柄な体格を活かし、閉所での戦いを得意とする野生の本能が、彼の全ての動きを支配していく。
「今度は獣と戦えというわけか」
神父の声が響き渡るなか、ウルヴァリンの爪が月光のように閃く。その攻撃は、パニッシャーの比ではない速度と破壊力を持っていた。空気を切り裂く鋭い音が、地下聖堂に木霊する。
「甘いぜ、神父」
ウルヴァリンの爪が、言峰のカソックを引き裂いていく。しかし神父の動きもまた、尋常ではない。彼は懐から黒い剣を取り出すと、それを容赦なくウルヴァリンめがけて投擲した。
「黒鍵か...」
凛の声が、緊張に震えていた。しかし、投げ付けられた剣は、ウルヴァリンの体を貫くことはない。彼のアダマンチウムの骨格が、その全てを弾き返していく。
聖堂の奥では、セイバーとランサーの戦いが繰り広げられていた。二人の英霊の戦いは、まるで光と影の舞踏のよう。その激しさは、この狭い空間を揺るがすほどの威力を持っている。
「ふん、面白い相手が現れたものだ」
言峰の口元に不敵な笑みが浮かぶ。彼は次々と黒鍵を投げつけていくが、そのどれもがウルヴァリンの肉体を傷つけることはできない。それどころか、投擲の隙を突いて、獣の爪が神父の防御を少しずつ切り崩していく。
地下聖堂の空気が、戦いの熱気で満ちていく。棺の中の子供たちが、まるでこの戦いの行方を見守るかのように、かすかに身動ぎしている。
「シロウ、この子たちは大火災の...」
キャップの言葉が、重い空気の中に沈んでいく。士郎は無言で頷くだけ。その瞳には、自分と同じ運命を辿りながら、まったく異なる地獄へと落とされた者たちへの深い痛みが宿っている。
「許せない...これは絶対に許せない!」
クリントの声が、怒りに震えていく。その手に握られた弓が、まるで共鳴するかのように震えている。ナターシャは冷静な表情を保っているものの、その碧眼には容赦のない殺気が宿っていた。
「今ここにいる戦力なら、言峰もランサーも確実に止められる」
クリントがそう提案すると、キャップは状況を素早く分析し始める。セイバーの剣、凛の魔術、そして彼らの戦闘力。確かにこの戦力であれば、勝機は十分にある。
「衛宮くん...」
凛の声が、不安げに士郎を呼ぶ。彼女は後見人である言峰の本質を知り、戦慄を隠せないでいる。その傍らで、士郎は棺の中の子供たちを見つめ続けていた。
自分は切嗣に救われ、新たな人生を歩み始めることができた。しかし、この子たちは違う。彼らは地獄の業火から救い出されたはずが、さらに深い闇へと投げ込まれてしまった。その現実が、士郎の心を深く抉っていく。
「バートン先生の言う通りよ。ここで全員が力を合わせれば...」
凛の言葉に、キャップが静かに頷く。地下聖堂に充満する怒りと憎悪が、まるで実体を持つかのように渦巻いている。その中心で、運命に翻弄された子供たちの魂が、かすかにうめきを上げていた。
「久しいではないかセイバー。まさかこのような場所で再会することになろうとは」
螺旋階段の頂から、傲慢な声が響き渡る。その声に、戦いを繰り広げていた全ての者が動きを止める。視線が一斉に上方へと向けられていく。そこに立っていたのは、まさに王と呼ぶに相応しい存在。黄金の鎧を纏い、血のように赤い瞳で下界を見下ろす男の姿に、セイバーが息を呑む。
「貴方は...アーチャー...!?」
セイバーの声が震えている。それは驚きというよりも、むしろ深い警戒を含んだ響きを持っていた。
金色の男は、その反応を愉しむかのように唇を歪める。その表情には、この世の全てを所有する者だけが持ち得る、絶対的な尊大さが刻まれていた。
「ほう、異世界の雑種どもまでもが此処に集っているとは」
螺旋階段を照らす光が、男の鎧を煌々と輝かせる。その眼差しには、キャップたちを見下すような冷笑が浮かんでいた。
ウルヴァリンが低い唸り声を上げる。その野生の本能が、目の前の存在の危険性を察知したかのよう。クリントは無言で弓を構え、ナターシャは銃の安全装置を外す。
「ふん。これほどの雑種が集まったところで、我を楽しませることなど叶うまい」
その言葉には、まるで虫けらを見るような蔑みが込められていた。男の背後に、金色の光輪が浮かび上がり始める。それは、この世の全ての宝を支配する者の印。地下聖堂の空気が、一瞬にして戦場へと変貌を遂げていく。死体の並ぶ棺からは、かすかな悲鳴が漏れ始めていた。
金色の空間が、まるで花が開くように男の背後に広がる。その中から無数の武具が、光の雨となって降り注ぐ。セイバーは咄嗟に身を翻すも、ランサーとの間合いを引き裂かれる形となって後退を余儀なくされていく。
「無駄な足掻きだな」
黄金の鎧の男は、まるで神々しい光に包まれたかのように地下聖堂へと舞い降りる。その傍らには、言峰が静かに立っていた。
「言峰、随分と面白い見世物を用意してくれたではないか」
「ああ。どうだ、気に入ったか?」
神父の口調には、どこか愉悦めいたものが混じっていた。二人の間には、長年の付き合いから来る不思議な親密さが漂っている。
ウルヴァリンの爪が、月光のように輝きを放つ。キャップの盾が、正義の象徴として二人に向けられる。だが─。
「控えい!」
男の一喝が、地下聖堂全体を揺るがす。その声は、まさに王そのものの威厳を帯びていた。ウルヴァリンの動きが止まり、キャップの表情が強張る。
それは単なる大声ではない。この世の全てを統べる者の言葉。その重圧は、まるで天が地を押しつぶすかのような威力を持っていた。空気そのものが、男の前で跪くように凝固していく。
「我の前で刃を向けるとは、雑種どもの分際で随分と傲慢だな」
黄金の鎧が、より一層眩い輝きを放ち始める。それは死体の並ぶ地下聖堂を、まるで王の玉座へと変えてしまうかのような存在感を放っていた。
「図が高いぞ下郎共。この我に刃を向けるとは、よほどの覚悟があるのだろうな?」
黄金の鎧が、冷たい嘲笑を込めてそう告げる。その瞳には、全てを見下すような絶対的な威圧が宿っていた。
「クソ野郎...!」
ウルヴァリンの唸り声が響き渡る。次の瞬間、彼の体が弾丸のように前方へ飛び出す。その動きは、まるで暴発した拳銃そのもの。アダマンチウムの爪が、黄金の鎧を目掛けて閃く。
「愚かな獣め」
男の横で空間が歪み始める。それは、まるで現実そのものが裂けるかのような異様な光景。その裂け目から一筋の槍が、稲妻のような速度で射出されていく。
「ぐっ...!」
ウルヴァリンの腹部を、槍が容赦なく貫く。その勢いのままに、彼の体は後方へと吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。壁に突き刺さった槍は、まるでウルヴァリンを蝶の標本のように固定してしまっていた。
「ローガン!」
キャップの叫びが響く中、ウルヴァリンの赤い瞳には、なお闘志の炎が燃え続けていた。腹を貫かれても、その獣性は少しも衰えていない。それどころか、より一層激しさを増しているようにすら見える。
キャップは、一瞬の交戦で既に全てを理解していた。黄金の鎧を纏う男の前に、彼らの戦力は余りにも無力。クリントもまた、その事実を直感的に悟っている。セイバーがこの場にいるとはいえ、男の放つ威圧は、人知を超えた領域のものに思えて仕方がない。
「貴様は一体何者だ?」
キャップの問いかけに、神父が意味ありげな笑みを浮かべる。男は、まるでこの場にいる全ての存在を玩具のように見下ろしながら、口を開いた。
「問いを投げるか?雑種風情が、王たる我に向けて?」
その言葉には、この世の全てを所有する者の絶対的な自信が込められていた。黄金の鎧が、より一層眩い輝きを放つ。
「我が拝謁の栄に浴してなお、この面貌を見知らぬと申すなら、そんな蒙昧は生かしておく価値すら無い」
高らかな笑いが、地下聖堂に木霊する。それは純粋な傲慢さを持った、王の宣言のようでもあった。男の背後に、再び金色の空間が広がり始める。その中には、数え切れないほどの宝具の輪郭が浮かび上がっていく。
*************************************************************
ここは何処なのだろう。もう随分と長い間、その答えを探し続けてきた。時間の感覚も、自分が何者なのかという記憶も、全てが曖昧な靄の中。ただ確かなのは、永遠とも思える苦痛の感覚だけ。
「──────」
誰かの声が聞こえる気がする。それは自分の声なのか、それとも他の誰かの叫びなのか。もはやそれすら判別できない。ここにいる全ての存在が、一つの苦悶となって溶け合っているのかもしれない。
「──────」
かすかな呼びかけが、意識の底から湧き上がる。それは誰の願いなのか。この棺の中で生かされ続ける魂たちの集合意識か、それとも個々の叫びなのか。眼窩から、一筋の血が零れ落ちる。それは涙と呼ぶにはあまりに僅か。一滴にすら満たない、極小の赤い雫。しかし、その微量の血液が、まるで呼び水となるかのように地下聖堂の空気を変質させていく。
「──────」
棺の中の魂たちが、かすかに震えている。それは恐怖ではない。むしろ、この永劫の苦痛に終止符を打つ何かを、本能的に感じ取ったかのよう。
血の雫が床に落ちた瞬間、地下聖堂の温度が急激に上昇し始める。それは単なる熱ではない。罪なき者への暴虐を糺す、業火そのものの温度。
「──────」
その呼びかけは、もはや言葉というよりも、この場所に囚われた全ての魂の共鳴。生かされ続けることを強要された存在たちの、最後の願い。
地下聖堂の闇が、まるで生き物のように蠢き始める。それは復讐の炎を纏った存在を受け入れようとしているかのよう。眼窩から流れた血が、まるで道標となって、地獄の使者を此処へと導いていく。
棺の中の魂たちは、もう一度だけ声を合わせる。
「──────来たれ」
──────来たれ、
やっぱ教会の地下に来るのはあの人も外せないよね。