アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです 作:ドレッジキング
アベンジャーズタワーの会議室は、マンハッタンを背景に、緊迫した空気に包まれていた。ドクター・ストレンジは、猫の体から戻ったばかりの疲労感を押し殺しながら、メンバーたちに状況を説明していく。
「その世界には、私たちのような強大な力を持つ存在は、そのままの姿では入れない。それは恐らく、世界そのものが異なる法則で成り立っているからだ」
ストレンジの言葉に、トニーが腕を組みながら応える。彼の表情には、科学者特有の探究心が浮かんでいた。
「つまり、君が猫を媒体にしたように、何らかのバッファーが必要だということかい?」
その理解は正確だった。ストレンジは頷きながら、ホログラフィックディスプレイに映し出された冬木市の地図に目を向ける。
「ドルマムゥも同様だ。彼は間桐桜という少女の精神に寄生することで、その世界に干渉しようとしていた」
キャロルが、腕を組んで前に乗り出す。その瞳には、戦士としての鋭い光が宿っていた。
「私の力は、向こうの世界では使えないということ?」
その問いに、シーハルクが法廷さながらの冷静な分析を加える。彼女の緑の肌が、会議室の照明に照らされて淡く輝いていた。
「私たちの力が通用しない世界で、スティーブたちはどうやって戦っているのかしら」
ルークは重い溜息と共に椅子に深く腰掛ける。彼の表情には、仲間を危険な状況に置いていることへの焦りが浮かんでいた。
「一番気になるのは、キャップたちが何と戦っているかってことだ。オレたちにできる支援は限られているみたいだが」
その言葉にバッキーが静かに頷く。彼の金属の腕が、かすかに光を反射させている。
「少なくとも、俺やバッキーなら向こうでも戦える。俺の強化も、あの世界の法則でも許容される範囲内だろう」
サムは、腕を組みながら状況を整理する。フォルコンとしての経験が、戦術的な思考を促していた。
「だとすれば、バッキーを支援に向かわせるのが最適解か。ストレンジ、他に気をつけることは?」
ストレンジは、マントを翻しながら立ち上がる。その姿には、至高の魔術師としての威厳が漂っていた。
「あの世界には、"魔術"という概念がある。しかし、それは私たちの知る魔術とは本質的に異なる。それを理解せずに介入すれば、予期せぬ事態を引き起こす可能性がある」
トニーのホログラムが、新たなデータを表示する。それは冬木市で観測された異常なエネルギー反応を示すものだった。
会議室の大型モニターに、スティーブたちの姿が映し出される。その表情には、これまでにない暗い影が宿っていた。静寂の中、スティーブの重い声が響き始める。
「状況は予想以上に深刻だ。この街には、"聖杯戦争"の監督を務める神父がいる。言峰綺礼という男だ」
トニーは眉を寄せながら、ホログラムのキーボードを操作する。彼の指先が、データを追いかけるように素早く動く。
「その神父が、君たちの言う"非道な実験"を行っていたというわけか」
スティーブの青い瞳が、一層の厳しさを増す。モニターを通してでさえ、その怒りは明確に伝わってきた。
「教会の地下で私たちが目にしたものは...十年前の大火災で生き残った子供たちだった。言峉は彼らを生きたまま魔力の供給源として使っていた」
その報告に、会議室の空気が一瞬で凍りつく。シーハルクの緑の肌が、怒りで僅かに震えているのが見て取れた。
「まさか...子供たちを実験台に?それも十年もの間?」
キャロルの声には、戦士としての冷静さを超えた激しい憤りが込められていた。クリントが画面越しに頷く。その表情からは、アベンジャーズの一員としての冷静さが消え失せていた。
「さらにその男は、"ギルガメッシュ"という英霊を従えていた。世界最古の英雄王を名乗る男だ」
ストレンジの表情が、一瞬だけ強張る。至高の魔術師である彼にとって、その名は特別な意味を持っていたようだ。
「ギルガメッシュ...メソポタミア神話の王か。彼が実在したとなると、その世界の歴史観も私たちの知るものとは異なるということだな」
サムが、状況を整理するように口を開く。その声には、戦術家としての冷静さが滲んでいた。
「でも、その英雄王はもう倒れたんだろう?問題は言峰という神父と、彼のサーヴァント...ランサーだ」
ナターシャが画面越しに補足する。彼女の声には、スパイとしての鋭い分析力が感じられた。
「警察の捜査も、既に闇に葬られつつある。この事態に、私たちは座視できない」
ルークの拳が、無意識のうちにテーブルを強く握りしめる。その力で、強化されたガラスにさえヒビが入りそうだった。
「子供たちへの非道な仕打ち...オレたちにできることは、何でもすべきだ」
会議室に重い沈黙が流れる。しかし、それは優柔不断な沈黙ではなく、確固たる決意を秘めた静寂だった。バッキーが立ち上がり、金属の腕を握り締める。
「俺が向かう。スティーブ、そちらで待っていてくれ」
「ゴーストライダーが現れ、ギルガメッシュを倒したんだ」
スティーブの報告に、ストレンジの表情が微かに歪む。至高の魔術師の直感が、この状況の異常性を察知していた。彼はマントの襟を無意識に掴みながら、沈思黙考に入る。
トニーは、ホログラフィック上にゴーストライダーのデータを展開させていく。その指先には、科学者特有の探究心が宿っていた。
「地獄の復讐者か。確かに、あの力なら世界最古の英雄も燃やし尽くせるかもしれないね」
しかし、ストレンジの眉間の皺は深まるばかりだった。彼の頭の中で、これまでの経験が整理されていく。自身が猫の体を借りなければならなかった理由。ドルマムゥが桜の精神に寄生せざるを得なかった制約。そして、それらと相反するゴーストライダーの自由な行動。
「最後の攻撃で、ギルガメッシュの魂を喰らい尽くしたらしい」
クリントの補足に、会議室のメンバーが様々な反応を示す中、ストレンジだけが沈黙を保っていた。彼の瞳には、この状況の裏に潜む不可解な謎への警戒が浮かんでいた。
「復讐の精霊が現れたことで、子供たちは救われた...か」
ナターシャの言葉に、誰もが安堵の表情を浮かべる。しかし、ストレンジの胸の内では、疑問が渦を巻いていた。強大な力を持つ存在が、そのままの姿であの世界に干渉できるはずがない。それは彼自身が、痛いほど理解している法則のはずだった。
「とにかく、バッキーを送り込む準備を始めよう」
トニーの提案に、全員が同意の意を示す。しかし、ストレンジの思考は、依然としてゴーストライダーの謎に囚われていた。その異常な状況が、何を意味するのか。答えは、まだ誰にも見えていなかった。
「他に報告することはないかい?」
ストレンジの問いかけに、スティーブは一瞬躊躇いを見せる。彼の表情には、話すべきか迷う様子が浮かんでいた。
「ああ...実は、シロウが一度、死んでいた」
その言葉に、会議室の空気が一変する。ストレンジの顔から血の気が引いていく。その反応は、至高の魔術師としては異様なほどの動揺を示していた。
「詳しく話してくれ」
ストレンジの声が、普段の冷静さを失っている。スティーブは状況を説明し始める。レスターによる藤村大河の人質事件。一人で乗り込んだ士郎の心臓をダーツで貫かれた瞬間。そして、セイバーの接近による不可解な蘇生。
「まさか...!」
ストレンジの叫び声が、会議室に響き渡る。彼の体が、マントごと激しく震えていた。トニーが眉をひそめる。ストレンジがここまで取り乱すのは、極めて異例のことだった。
「このままでは、ドルマムゥがそちらの世界に顕現してしまう!」
その警告に、全員が困惑の表情を浮かべる。キャロルが身を乗り出し、状況の説明を求めようとする。しかし、ストレンジの目は既に遠くを見つめ、何かを必死に計算しているようだった。
「どういうことだ?士郎の死と、ドルマムゥの顕現に、どんな関係が?」
サムの問いかけは、全員の疑問を代弁するものだった。しかし、ストレンジは説明を放棄したかのように、急いで呪文を詠唱し始める。
「バッキー、君の出発を早める必要がある。今すぐにでも」
その切迫した声に、会議室のメンバーは戸惑いを隠せない。シーハルクは法廷で相手を追い詰めるような鋭い視線を向ける。しかし、ストレンジの焦りは収まる気配がない。
「時間がない。クリント、そちらの様子に変化はないか?特に、桜という少女の状態は?」
モニター越しのクリントが、首を振る。ストレンジの表情が、さらに暗さを増していく。ルークは苛立たしげに椅子から立ち上がる。しかし、説明を求める彼の声も、ストレンジには届かないようだった。会議室に、得体の知れない緊張が満ちていく。ストレンジの異常な反応の裏に、何か決定的な危機が潜んでいることは明らかだった。しかし、その正体は、まだ誰にも見えていない。
こっからがクライマックスに向けた戦いの始まりです。