アベンジャーズが第五次聖杯戦争に介入するようです 作:ドレッジキング
「なぜシロウの死が、ドルマムゥの顕現に繋がるんだ?」
スティーブの問いかけに、通信画面越しのストレンジが深い溜息をつく。至高の魔術師は、何か重大な決断を下すかのように、しばし沈黙を保った。
「説明しよう。そもそも私たちがその世界に介入することになった原因から話す必要がある」
ストレンジの声には、事態の深刻さを物語る重みが込められていた。マントが僅かに揺れる中、彼は説明を続ける。
「私たちの世界を侵食していた"泥"。あれは聖杯戦争という儀式から生まれたものだ。そして、それを私たちの世界に送り込んだのは、間違いなくドルマムゥ」
クリントが眉を寄せる。その表情には、状況を理解しようとする鋭い観察眼が宿っていた。
「じゃあ、ドルマムゥは両方の世界を行き来できるってことか?」
その推測に、ストレンジは首を振る。映像越しでも、彼の表情の深刻さは十分に伝わってきた。
「いや、そこが問題だ。あの世界には、私たちのような強大な力を持つ存在は、そのままの姿では入れない。私自身、猫の体を借りなければ干渉すらできなかった」
ナターシャが前のめりになる。スパイとしての直感が、何か重要な事実を察知したかのようだった。
「では、なぜドルマムゥは"泥"を送り込むことができた?」
ストレンジの表情が、さらに暗さを増す。彼の瞳には、この事態の背後に潜む危険への警戒が浮かんでいた。
「それは恐らく、シロウという存在が鍵となっている。彼には、両方の世界を繋ぐ特別な何かがある。ドルマムゥはそれを利用しようとしているんだ」
会議室の空気が、より一層重くなる。スティーブたちの表情には、まだ理解しきれない疑問が浮かんでいた。しかし、事態が彼らの想像以上に複雑化していることは、確かだった。
「シロウは、聖杯戦争において極めて特異な存在なんだ」
ストレンジの言葉が、会議室のスクリーンに響く。その声音には、事態の重大さを物語る響きが含まれていた。
「彼の生死は、この戦いの帰趨を決定づける。言ってみれば、歴史の分岐点に立つ存在とでも言うべきかな」
マントを翻しながら、ストレンジは説明を続ける。スクリーンに映し出された彼の表情には、至高の魔術師としての冷静な分析と、同時に切迫した危機感が混在していた。
「なんで一人の坊主の死が、ドルマムゥの顕現に繋がるんだ?」
クリントの素朴な疑問に、ストレンジは意味深な微笑みを浮かべる。
「歴史の乱れだよ。シロウのような重要な存在が死ぬことで、歴史の流れそのものが大きく揺らぐ。その揺らぎこそが、ドルマムゥにとっての隙間となる」
スティーブが眉を寄せる。その表情には、説明の核心を掴もうとする真摯さが浮かんでいた。
「想像してほしい。時間という織物があるとして、そこに突如として大きな裂け目が生じる。シロウの死は、まさにそんな裂け目を生み出す。歴史が修復を試みる僅かな間隙に、ドルマムゥは完全な顕現を果たすことができる」
ストレンジは両手を広げ、まるで目の前に見えない織物を示すかのような仕草をする。
「私たちがキジトラの猫や間桐桜を介さなければならなかったのは、その世界の法則が強大な力の直接的な干渉を拒絶するからだ。しかし、歴史の乱れが生じている間は、その法則すら一時的に機能を停止する」
ナターシャが、鋭い視線を投げかける。
「つまり、シロウを殺すことができれば、ドルマムゥは自由に行動できるということ?」
ストレンジは静かに頷く。その仕草には、事態の深刻さを物語る重みが込められていた。
「その通りだ。歴史の乱れは、まるで世界の免疫システムが一時的に停止するようなものだ。通常なら拒絶される存在でも、その隙間を突いて侵入することができる。ドルマムゥはそれを狙っているんだ」
会議室に重い沈黙が落ちる。スクリーンに映るストレンジの表情は、さらに厳しさを増していた。
「ドルマムゥにとって、この機会は限られている」
ストレンジは、マントの襟を無意識に掴みながら説明を続ける。その表情には、状況を分析する冷静さと、差し迫る危機への警戒が混在していた。
「聖杯戦争の期間中だけが、彼の干渉が可能な時間窓なんだ。私たちの世界で見せる "気まぐれな破壊の芸術家" としての振る舞いは、あちらではできない」
その皮肉めいた言い回しに、クリントが思わず苦笑する。会議室のモニターに映るストレンジの姿が、微かに揺れる。
「けど、シロウは死んで復活した。これはどういう意味を持つの?」
ナターシャの鋭い質問に、ストレンジは思案げに顎に手を当てる。その仕草には、複雑な計算を行う魔術師特有の慎重さが滲んでいた。
「死と復活。この矛盾した事象は、歴史の乱れを...そうだな、"半熟"の状態にしたと言えるかもしれない。永続的な死ほどの裂け目は生じないが、その代わり、ドルマムゥの顕現までにより多くの時間を要する」
スティーブの青い瞳が、真剣な光を宿す。キャプテンとしての直感が、この状況の危うさを察知していた。
「とはいえ、油断は大敵だ。蛇は常に獲物の隙を狙っている。私たちにできるのは、シロウの命を何としても守り抜くことだけだ」
ストレンジの警告が、重い余韻を残して会議室に響き渡る。モニターに映る至高の魔術師の表情には、もはや普段の余裕は見られなかった。
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商店街の雑踏が、士郎とローガンの周りを流れていく。人々の笑い声や喧噪が、まるで別世界の音のように二人の耳に届く。士郎の手には買い物袋が握られ、その中身が時折カサカサと音を立てる。
ローガンは常に周囲を警戒し、鋭い嗅覚で敵の気配を探っていた。彼の野生の本能は、いつ現れるかもしれない敵の存在を察知しようとしている。
「ローガンさん...あの子供たちは、十年もの間...」
士郎の声が途切れる。教会の地下で目にした光景が、未だに彼の脳裏から離れない。自分と同じ大火災の生存者でありながら、言峰の実験台として苦しめられ続けた子供たち。その運命の理不尽さが、士郎の心を深く抉っていた。
「坊主、オマエは生きてる。その事実を大切にしろ」
ローガンの声には、荒々しさの中に秘められた優しさが混じっていた。彼もまた、長い人生の中で数え切れないほどの理不尽を目にしてきた。
「でも、もし俺があの時...」
士郎の言葉を、ローガンが遮る。その目には、何か強い決意のようなものが宿っていた。
「過去は変えられねえ。オマエにできるのは、今を生きることだ。それが生き残った者の、唯一の贖罪の方法かもしれねえ」
その言葉に、士郎は立ち止まる。ローガンもまた足を止め、振り返って少年を見つめる。二人の間に、理不尽な運命を生き抜いた者同士の、言葉にならない理解が流れる。
「実はよ、坊主。キャップたちの本当の狙いは、もっと上を向いてる」
ローガンの言葉は、何か重大な秘密を明かすかのように、意味ありげな響きを持っていた。その眼差しが、遥か遠くを見つめるように細められる。
「上、ですか?」
士郎の素朴な疑問に、ローガンは不敵な笑みを浮かべた。買い物袋を持つ手が、その重みを再確認するように動く。
「魔術協会だ。10年前の大火災も、今回の事件も、全部闇に葬ろうとしてる連中さ。キャップはそいつらにも、一発かましてやるつもりでいる」
その言葉に、士郎の動きが止まる。協会への挑戦―――それは凛が聞いたら卒倒しかねない暴挙だった。魔術世界のトップに楯突くなど、正気の沙汰とは思えない。
「まさか...遠坂が聞いたら」
士郎の言葉が、宙に浮いたまま消える。ローガンは、まるで悪戯を楽しむ子供のような表情で続ける。
「フューリーって男が提案してたぜ。ヘリキャリアでドカーンと乗り込んで、協会の連中にお灸を据えてやろうってよ」
ヘリキャリア。
聞き慣れない言葉が、士郎の脳内を素通りする。文字通り、頭の中が「?」で埋め尽くされていく。それは恐らく、この世界の常識では測れない何かなのだろう。
「その...ヘリキャリアっていうのは?」
士郎の問いに、ローガンは意外そうな表情を浮かべる。まるで空気の存在を知らない者に出会ったかのような驚きだった。そして、その表情はすぐに理解に変わる。確かに、この世界にヘリキャリアが存在するはずもない。
「まあ、いずれ分かるさ。そいつが現れた時には、凛のアゴが外れるかもしれねえがな」
その言葉に込められた意味を、士郎はまだ理解できない。ただ、何か途方もないものが、この街に降り立とうとしているという予感だけが、彼の背筋を冷たく走り抜けていった。
ヘリキャリアで時計塔カチコミはガチでやりそうなんだよねw