幽霊少女が俺の恋愛成就を全力で阻止してくる。   作:雨宮照

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第八話「猛暑」

「とんでもない目にあったよぉ……」

 あれから迫りくるハトたちを必死に避け、逃げてきて。

 今は公園の中央、憩いの場みたいになっているベンチで休憩していた。

「あのね、いつもはあんなにハトさんいたりしないんだよ?」

「ああ、そうなんだろうな……」

 手を顔の前でわたわたさせて弁解する彼女。

 それをすんなり認めるどころか知っていた風な俺に、今は不思議そうにしている。

 それにしても。

「いい場所だなあ……」

「だねえ……」

 木ノ葉が案内してくれたこの公園は、実に素晴らしい場所だった。

 まず、背の高くて包容力のありそうな木々は太陽の光を浴びてきらきらと輝き。

 公園内はゆったりとしたスペースと遊び場に分かれているのだが、遊び場からは子どもたちの楽しそうな笑い声が聞こえてきて、憩いの場では地域のお年寄りがのんびりと談笑している。

 基本的に外で読書をするときにはイヤホンをして外界との関わりを遮断する俺だが、ここの環境は絶妙に心地いい環境音を提供してくれるため、その必要もない。

 俺たちは太陽の眩しすぎる光を文庫本の真っ白な紙に反射させ、物語の世界を楽しんだ。

 しかし……俺たちはそれから五分もしないうちに音を上げ、読書を切り上げたのだった。

「いや、暑すぎるよ! 五月ってこんなに暑かったっけ⁉ 地球温暖化が原因か⁉ エルニーニョ現象か⁉ エルニーニョって誰だよ! 連れて来いよ! ぶん殴ってやる!」

「暑すぎるよお! だってさっき下着姿のちっちゃい兄妹が水鉄砲してたもん! 水鉄砲って真夏の遊びだよ⁉ 濡れてもすぐ乾く環境じゃないとやらないやつだよ⁉ でもやるよね今日ここでなら! だって濡れてもすぐ乾くくらいにはカラカラに晴れてるからねえ!」

 もやしっ子二人には、暑くなってきた外で読書なんてのはガラに合わなかったようで。

 俺たち二人は早々に公園のベンチをあとにして、近くのカフェに雨宿りならぬ日光宿りをしにやってきていたのだった。

「いやぁお兄ちゃん、ほんとに暑かったね。今なら小食な木ノ葉でもきゅうりの一本や二本、丸のみできる気がするよ」

「ほんとだな。暑さもここまでくると日陰の涼しさがよく分かるというか、クーラーのきいた部室のありがたみが嫌というほど理解できたというか……」

 二人して疲れ切って、だらんとしてしまう俺たち。

 そんな干乾びたもやし二本が鎮座しているテーブルに、少し呆れた顔のウエイトレスさんが飲み物を運んでくる。

 コーヒーが飲めない木ノ葉はオレンジジュースで、俺はアイスコーヒーだ。

 ちなみにケーキとプリンも頼んだが、もう少し後にくるようだ。

 グラスに入った氷をかき混ぜながら、木ノ葉が話を続ける。

「よく考えたら、あのおじいさんたちサングラスに帽子姿だったもんね……。オシャレなのかと思って流してたけど、普段から行ってる人はよく暑さが分かってたんだ……」

「それもあるだろうし、年齢的にも暑さの感覚が分からなくなってるんだろうな……」

 あの怪しいグラサンのお年寄りたちは、本来の目的でサングラスを使っていたということか。

 基本的に引きこもっている俺たち二人には、サングラスが遠い存在過ぎてその正式な用途すらまともに思い浮かばなかったらしい。

 

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