その日の夜のことだった。
アパートの風呂を出て、しばらくパンツで過ごして。
何気なくテレビを点けたらやっていた心霊特番を、ぼんやりと見つめていた。
番組では、高名な霊媒師のおじさんや住職たちが幽霊についての見解を語っている。
「ふうん、俺も将来こうやって霊能力者としてテレビに出てちやほやされないかなぁ……」
最初はそんな風に、何の考えもなしにテレビを見だした。
しかし、番組の途中、彼らの幽霊に関する見解を述べるコーナーで……。
『でも、幽霊っていうのは寂しいものですなぁ……。前世の未練にとらわれて、ずっとこの世とあの世の間を彷徨っている。我々霊能力者がしてやれることは、強制的に彼らを成仏させることですが……本当なら、最後に彼らには前世の未練を解決してすっきりと成仏して欲しいところです』
言った霊媒師の言葉に、その場にいた霊能力者全員が頷き、しっとりした空気が流れる。
そんな画面の向こうの光景が俺は――この日から、心に焼き付いて離れなくなる。
幽子だって今は楽しそうに俺に憑いてくるが、もとはこの世になにか未練があって成仏できてない身だ。やっぱり、彼女だって未練を解決したいに決まってるだろうし……いつまでも幽霊でいるのは彼女にとって良くない。
でも、幽子の未練ってのが彼女にももう分からないのなら解決のしようもないし……。
「あ、怜太さん。お風呂出てたんですね~」
と、そこまで考えたところでどこかに行っていた幽子が帰ってきた。
「さあ、今日は近所のおうちで最新のテレビゲームを見せてもらいましたよー!」
一緒にやりましょう! と明るく告げてくる彼女。
そんな不自然過ぎるほど明るい彼女を横目に、俺はパジャマを着て、うちに最新のゲームはないと彼女に諭す。
彼女は「えへへ……」いつものように小さく笑って見せたが、表情がいつもより硬すぎる。
さっきまで俺が彼女を成仏させようと考えていたのが伝わっていたのか――それとも、俺がそのあと彼女を成仏させたくない、もっと一緒にいたくないと思ってしまったのが伝わってしまったのか、その真相は分からない。しかし、どちらの思考がバレていたにせよ、彼女がそれでいい思いをしなかったのは表情や態度から理解できた。
俺がそれを思って頭を抱えてぼーっとしていると――
「……じゃあ、オセロでもして遊びますか! ほらほら、はやく!」
――なんて、幽子はその思考を掻き消すかのように、精一杯俺に甘えてくるのだった。