幽霊少女が俺の恋愛成就を全力で阻止してくる。   作:雨宮照

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第六話「服装」

 食事の内容は、合宿感のある繊細ではない製法の料理ながら、なんとも美味な食材を味わう不思議な体験であった。採れたての野菜に、大きな鍋で一度に作るシチュー。

 それを長テーブルで並んで食べるという、学生感満載の食卓。

 宿泊学習の初日、より親睦を深めるのに適切なこの空間に、思わず親指を立て合う俺と成瀬。

 それを見守る他の二人も、満足そうな笑みを浮かべている。

「私も、去年に戻ってもう一度宿泊学習したいわ~」

「先輩は修学旅行があるじゃないですかー。お土産待ってますよ?」

「それとこれとはまた別じゃない。うちの学校、修学旅行はホームステイだし……」

「いいなあ沖縄。木ノ葉も早く行きたい!」

「言ったわね? 三年間、意外とあっという間に過ぎるわよ?」

「ぐ……。そ、それは嫌かも……」

 シチューを食べて、自家製のイチジクのパンを食べて。

 サラダを食べて、時にはギャーギャー言いながらイナゴを食べる。

 そんな幸せな時間は、それこそあっという間に過ぎて――

「しまった、長くしゃべり過ぎた!」

「ちょっと押しちゃったわね……」

――本来の予定を、大幅に無視するカタチとなってしまっていた。

施設の人は焦らなくてもいいと言ってくれたが、打ち合わせなどの都合もある。

全員で残りの食事をパパっと片付け、残るは――って。

「お前なにくつろいでお茶飲んでるんだ!」

「うわぁ! お兄ちゃん急に大声出さないでよ!」

 仲間内だととことんマイペースな木ノ葉に、俺から怒りの大声が飛ぶ。

 するとそれに驚いた木ノ葉は、飲んでいたお茶をこぼしてしまった。

 そしてそのお茶は長机をツーっと伝って流れていき、そして……。

「ああっ! お茶が成瀬の服に!」

「わたしのワンピースがぁ!……冷たい!」

 成瀬の白いワンピースに、滴り落ちてしまっていた。

「なんでいつもわたしこんな役回りなのぉー!」

「ご、ごめん姫香ちゃん……」

 事態が大ごとになってしまい、シュンとして謝る木ノ葉。

 本来なら怒ってしかるべき場面だが、優しい成瀬は怒らない。

「それはわざとじゃないってわかってるからいいんだけど……着替えが……」

「ああ……」

 それよりも問題は、成瀬の服が濡れてしまって替えがないことにあった。

 今日は打ち合わせがメインの予定だから問題ないが、残りの二日間は実際に飯盒炊飯などを体験するため、汚れてもいいジャージである必要がある。

 今日着ていたワンピースが濡れてしまったということは、これからその替えのジャージを着用しなければいけないということ。すなわち洗濯したとしても三日目は今日のワンピースを着ることになってしまい、活動ができなくなってしまうのだ。

 不測の事態に頭を捻る一同。こういう場合、どうしたらいいのだろう……。

 考えていると、生徒会長として数々の問題を乗り越えてきた秀才、音垣先輩が手を挙げた。

「月城くん、あなた……今着ている服はなにかしら?」

「ええと、ジャージですけど…………あっ」

 ……考えるまでもなかった。

 俺は替えのジャージを持ってくると、成瀬に渡す。

 これならば、洗ったジャージは三日目に乾き、全員ジャージで活動できるじゃないか。

 今回の一件は先輩の頭の良さを証明するというより、他のメンバーの頭の悪さが露呈した、たいそう先輩にとっては不安を掻き立てる出来事となってしまった。

 

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