「ってことはなに! 今日はわたしたち全員同じ部屋で寝るってこと⁉」
「お兄ちゃんとお泊まり⁉ お泊まりとお兄ちゃん⁉」
悪魔の宣告から少しあと。
しばらく呆然としていたものの、ようやく事態を飲み込めた一同は急に慌ただしく色めき立ち、冷静さを失っていた。
……お泊まりとお兄ちゃんって、逆にしたら意味わかんないな。
「怜太さんとお泊まり⁉ ドキドキしてきました!」
「お前はいつも一緒に住んでるだろ……」
なぜか幽子のやつも、女子たちと同じようにソワソワとし出す。
女子の中にひとり男子が混ざって宿泊となれば否定的な意見がたくさん出て来るものだと思ったが、そんなことはないようで俺としては一安心。
ただ、俺がいつまで冷静でいられるかって問題はあるが……。
「みんな~? わかってると思うけど、この旅行中に問題を起こしたら私の報告で即刻退学処分だからね~?」
『…………はい』
……冷静でいないわけにはいかなくなったから、そこはあまり考えなくていいか。
全員の背筋が冷えて気持ちが引き締まったところで、俺たちは外に出て、次の行動を開始することにした。
せっかく山の奥まで来たんだ。
どうせなら部屋にこもっていないで、自然の遊びを満喫したい。
「お兄ちゃん、部屋で読書してたいよぉ……」
根っからのインドア派である木ノ葉は反対しているようだが、無視だ無視。
どうせ他のメンバーが全員外に行けばついてくるんだから、最初から一緒に行動しよう。
と、しばらく山の整備された道を歩いていると、川の中流みたいな部分に出た。
流れの速い上流とは違って、少し緩やかな水音が耳に心地いい。
この辺は釣りのスポットとして人気も高いらしいが、幸い今日は誰もいない。
思う存分川遊びができそうだ。
「きゃっ、冷たい!」
早速ジャージの裾をまくった成瀬が、川の中にゆっくりと入っていく。
しかし、川の底にはコケがたくさん生えていたようで、すぐに彼女は非常に嫌そうな顔をしてこちらを振り返った。
「ぬるぬる……なんか、カエルみたいでいやだ……」
カエルみたいなのは木ノ葉をはじめとして俺たちも嫌なので、場所移動。
今度は、流れのほとんどない小川みたいな場所に出た。
人工の小さな橋もかかっていて、ここならゆっくり遊べそうである。
念のため文庫本を持ち歩いていた木ノ葉もちょうど木陰を見つけて、座って読めるため満足そうである。俺は網を用意して、橋に向かう。
「スタッフさんが言ってたけど、この辺りは小川でも小さい魚がすぐ網にかかるらしい。人数分の網があるから、皆で一緒に捕らないか?」
俺の提案に、成瀬と先輩が好印象を示し、近づいてくる。
そして網を片手に――それっ!
水の中で振るうと、全員の網の中になにかが入っていた。
ワクワクしながらみんなで網の中を確認する――と。
「うぎゃっ! なんだこれ、ぬるぬるしてる!」
「ひゃあっ! これって……オタマジャクシ⁉」
「ああああ、オタマジャクシがジャンプして……!」
大量にとれたオタマジャクシが、地上でビチビチと暴れはじめた!
「んっ……あっ……服の中にぃぃぃぃ!」
「あっ……ああっ、やめてぇ……!」
中には信じられないような動きで服の中にまで侵入するやつもいて、橋の上は大混乱だ。
それに……!
「月城……んっ! これ、とってぇ……ひゃぁん!」
「月城くん、私の背中の子も……んっ……!」
なんか、オタマジャクシに翻弄される二人が妙にエロい!
俺の視線は彼女たちに釘付け。もう俺のところに来るオタマジャクシなんて気にならない!
ただ、彼女たちを刺激するオタマジャクシの集団は休まるどころか動きを活発にしていき……!
「月城くん……っ、もう、ダメぇ……!」
「月城ぉ……わたし……んんんっ!」
二人はもう、妙にエロいなんていう次元じゃない、とんでもなく卑猥な格好を晒してしまっていた!
……さすがに、これはおかしい。
俺は、彼女たちの姿を凝視しながらも辺りをチラチラと確認。
すぐそばに、ぷかぷかと元凶が浮いているのを見つける。
「へっへっへ! お嬢ちゃんたち、私のエンドレスオタマジャクシをくらった気分はどうかなぁ? ケケケケケ!」
「お前の仕業かぁぁぁぁ!」
そんなセリフが聞こえたと同時に必殺技、水鉄砲!
「あ、ちょ……卑怯じゃないですか怜太さん!」
水に濡れると体が一瞬霧散する幽子から、俺は文芸部の女子二人を救い出したのだった。