それから、俺たちは部屋に帰ると、少し早めにお風呂をいただくことにした。
というのも、当日のスケジュールだと、午後の活動は山の散策だ。
そのままお風呂に入って、汗を流す。それが一番気持ちのいい行動だろう。
今日もその予習として、同じように行動しようというわけだ。
……まあ、もちろんオタマジャクシでぬるぬるになった身体を洗いたいってのが一番の理由ではあるが。
「じゃあ、お兄ちゃん。お先に!」
木ノ葉が言って、女子連中がぞろぞろと部屋を出る。
他の二人に関しては、なるべく着替えやバスタオルなどの荷物に粘液が付かないよう、細心の注意を払って歩いている様子だ。
彼女たちはそれでも俺に小さく手を振ると、また嫌そうな顔で大浴場へと歩いて行った。
その声が遠のくと、俺は部屋で一人になる。
……こうなると、少し寂しいものだ。
さっきまではずっと男女の区別なくワイワイと楽しんでいたが、裸の付き合いとなればそういうわけにもいかない。
唯一の異性ということで、一人ぼっちにならざるを得ないのは仕方ないのだが……。
女子たちに遅れて風呂の準備をしながら、俺は小さくため息を吐いた――と。
そんな風に哀愁を感じていると、肩になにか当たるものがある。
女子たちは既に浴場に向かったはずだし、幽子は俺に触れない。
だとすると――え、なんだろう。こわい。
幽霊ならば幽子で慣れているからそんなに怖くないが、他の存在だった場合、最悪俺は殺されかけるんじゃないだろうか。そうでなくても、気持ち悪い虫だとか、ええと、他には――。
恐怖でフル回転する頭を振って、その中にある思考をいったん取り払う。
そして、考えても結果は同じ。行動あるのみと自分に言い聞かせ――後ろを、振り向いた!
「――って、なんだこれ!」
振り向いてみると、肩に乗っていたのは水色をした柔らかい布。
それが無害なものだと分かると、俺は手に取って広げてみる。
するとその布は三角形にひらりと形よく広がって――
「……パンツじゃねえかっ!」
――パンツの形を作り出したのだった。
っていうか、パンツだった。
やれやれ、また幽子の仕業か……と、俺はパンツを丁寧に畳み、持ち主に返そうとする。
だが、もちろんこのパンツを見ただけで俺が誰のものか瞬時に分かるわけもなく――。
結果、俺は誰もいない女子の部屋で彼女たちの荷物を漁るド変態としての活動を余儀なくされるのだった。
……いや、なんだろう。
やましい気持ちは微塵もないのにすっごいドキドキする!
「ええと……まず、これは……木ノ葉の鞄だっけ」
無音の緊張に耐え切れず、俺は最初に木ノ葉の鞄を標的にして、漁り始める。
すると、彼女の鞄の中には本がぎっしり。いつ読むつもりで持ってきたんだろう。
一度その本たちを外に出し、中をよく見る。
と、断然見やすくなった収納の奥に、小分けにされたポーチのようなものを発見する。
開けてみるとそれはビンゴ、彼女の下着を入れておく袋だったみたいで、中からは数枚のブラジャーとパンツが押収された。
……ただ、俺はそれを収穫すると同時にあることに気付く。
「――見たところでこれ、どうやって誰のか見分けるんだ!」
初めは数が一枚足りないとか、好みの系統が同じだとか、そういうことで見分けがつくと思っていた。
しかし、蓋を開けてみれば木ノ葉のポーチには三日分とは思えない量の下着が入ってるし、色や種類の系統はものによって全然違うし――詰んでるじゃないか!
俺は、自分が意味もなく変態的な行為をしたことに気付いて落胆する。
そして肩を落とすと同時に、首も下を向けてカクンと落としたところで――
「そうだ、匂いがまだあったじゃないか!」
――後輩女子の下着から薫る甘い匂いに、新たな手掛かりを見出したのだった。