まず、俺は警察犬の如く、肩に乗っていた水色のパンツの匂いを嗅ぐ。
「うーん……木ノ葉の下着に比べると……ちょっと柑橘系の匂いが強いかな?」
よって、彼女は捜査の対象から外れる。
続いて、成瀬はどうだろう。
俺は成瀬の鞄を手に取ると、目の前の畳において物色を始める。
彼女の場合も木ノ葉と同じく整理がきちんとされていて、すぐに宝の在処が分かるようになっていた。
そのうちのピンクのパンツを手に取り、匂いを確かめる。
「ええっと……成瀬のは甘い匂いが強くて……これも違うなぁ」
しかし、またも当てが外れたようである。
俺は彼女のパンツをきれいに畳んで元の場所に戻すと、一応それに向かって拝んでおいた。
いつかもう一度、お目にかかれますように。
そして、最後のターンが俺に巡ってくる。
――何を隠そう、我らが部長、音垣先輩のパンツを捜索しようというのだ。
実際、他の二人が違っていたということは必然的に彼女がこのパンツの持ち主だと考えていいわけである。
しかしだ! 俺は、冤罪を許さない立派な捜査官である。
きちんと先輩のパンツを嗅いでみなければ、確証は得られまい。
そう意気込むと、俺は彼女の鞄を手に取り、中を物色。
パンツの在処を探すのであった。
だがしかし、数分後。
「――あの人のパンツ、どこにも見当たらないんだけど!」
俺は、彼女の鞄を前に、途方に暮れていた。
え、だって、他の二人よりも整理されたこの鞄の中から、どうして見つからないの!
こんなに探して見つからないってことは――まさか、先輩って――履かない人⁉
予期せぬ疑惑の浮上に、俺は驚愕する。
ってことは、今日ご飯を食べていたときも、会議していたときも、オタマジャクシが入り込んで悶絶してたときも――パンツを履いていなかった⁉
「あの人って、実は一番の変態だったんじゃ……」
ひとつ深いため息を吐くと、俺は宿舎の古い天井を見上げながら考える。
思えば、これまでたくさんの変態に出会ってきたものだ。
大衆の視線の中、全裸でリンボーダンスをしようとする露出幽霊。
先輩である俺のシャツをいつの間にかしゃぶっていたおしゃぶり後輩。
そして、パンツを履かないノーパン先輩……かぁ……。
ダメだ、考えれば考えるほど頭が痛くなる――と、そんな風に頭痛薬ではどうにもならなそうな頭の痛みに俺が苦しんでいるときだった。
……カシャ。
耳に飛び込んできたその機械音は、聞きなじみのあるシャッター音。
スマホの、カメラによるものだ。
驚いて音のする方向を向くと――そこには。
ニヤニヤしながらスマホをこちらに向けている、同居人の幽霊の姿があった。