「おわっ、ちょっ、お前なに撮ってんだよ!」
初めて幽霊を見たときに負けず劣らず驚いて、思わず訊ねてしまう俺。
すると、彼女は嬉しそうに「そんなの当たり前じゃないですか」と前置きしてから、自らの行動について一言で語った。
「女友達のパンツを漁ってハァハァしている変態がいたんで、記録しておきました」
「……言い訳の余地がない!」
どうしようも、なかった。
目撃証言もさることながら、証拠の写真まで押さえられている。
しかも、あのスマホは確か成瀬が使っているものだ。
こんな場面が撮影されていたら、俺は軽蔑されてしまうだろう。
「どうしました、怜太さん。私も大概ですけど、怜太さんだってド変態じゃないですかぁ~。この写真を成瀬ちゃんが見たら、どう思いますかね~?」
……くっそ……対処のしようが、ない。
しかしこのままでは、成瀬に見つかった俺の写真は全員の知るところとなり、今回の宿泊はおろか、学校に戻っても彼女たちに仲良くしてもらえるかどうか……。
……ええい、考えていてもしょうがない! 行動あるのみだ!
吹っ切れた俺は、対幽霊用に昼間考案しておいた策を実行に移すことにした。
この状況を打破できるとしたら――これしかない!
「くらえええええええええええええええええ!」
決心すると、俺は手に持ったそれを、幽子に向かって思いっきり投げつける。
効果はあるか分からないが、試してみる価値はある。
果たして、幽子に俺の攻撃は通用したのか――?
「……うわっ、なんですかこれ。びっくりしたじゃないですか! 透けて当たらないですけど!」
「…………それは、クチナシの実だ」
「…………死人にクチナシ⁉」
……結果、普通に当たらなかった。
いや、だって、聞いたことあるじゃん死人にクチナシ!
絶対意味違うってわかってたけど、ロビーの売店で買っておいたんだよ!
もう一度幽子の方を見ると、彼女は非常に呆れたような顔でこっちの様子を窺っている。
……仕方ないので、普通に土下座して写真は消してもらいました。
パンツ騒動が終わり、さっきの賑やかさが去った室内。
みんなの鞄を元に戻し、俺も大浴場に行く支度をしながら幽子と話す。
「うーん、それにしてもあのパンツ、どこから降ってきたんだろうな……」
「ほんとですよね……私が怜太さんに向かって投げた私のパンツが、どうして怜太さんの肩にあるんでしょう……?」
「……犯人お前じゃねーか」
自作自演でかなり惨いことをしてくれたものだ。
これは一刻も早く、湯船につかって疲れをとる必要がありそうだ。
「じゃあ、俺は風呂に行ってくるから、お前は留守番でもしててくれ」
「ぶー、もうちょっといてくれてもいいのに…………」
幽子はああ言っているが、水に濡れるといったん霧散する彼女。
さすがに大浴場まではついてこないだろう。
俺は今日何度目かわからない大きなため息を吐いて、部屋を後にした。
……余談だが、音垣先輩は下着を一式風呂に持って行っていただけだったらしい。
変な疑惑をかけて申し訳ございませんでした!