「ただいまー」
風呂から上がって部屋に帰ると、既に女子三人は部屋に帰っていた。
いくら男子に比べて入浴時間が長いとはいえ、後から入った俺よりも遅いことはなかったらしい。
俺と同じく浴衣姿の三人は、同じ浴衣を着ていてもそれぞれ違った感想を抱かせる。
木ノ葉は究極のインドア派ならではの白い肌が目立つ、可憐な少女の様相。
成瀬は、その健康的なハリのある肌と体型を武器にした、抜群の着こなし。
そして先輩は、豊満な身体を艶めかしく浴衣に包んだ、爆発的大和撫子といった感じだ。
眺めていると、視線に気づいた成瀬が「あ、月城……ちょっとこっち来て!」と手招きする。
なんだか不服そうな残り二人の視線を感じつつ、俺が近づいていくと――
「月城、あのさ……。夜、寝る前に時間ある……?」
「え、うん。もちろん大丈夫だけど」
「……じゃあさ、わたしと二人で……ちょっとお話しない?」
――なんて、小さく首を倒しながら言う彼女にお誘いを受けてしまった。
彼女の線の細さがよく分かる着物と相まって、愛らしさにくらくらする。
俺はその魅力に押しつぶされそうな心臓をなんとか持ちこたえさせ、彼女に肯定の意を表した。しかし。
「……ほんとにっ!……えへへ、ありがと!」
そのあとに続いた彼女のお礼と笑顔は、俺を骨抜きにするには十分で。
やっぱり俺は成瀬のことが好きなんだなって、再確認することになったのだった。
それから、テレビを見たり本を読んだり、各々自由な時間を過ごして。
夕食の時刻になったので、全員でまた食堂に向かうことになった。
到着すると、他の宿泊客もちらほらいて、木ノ葉の人見知りが発動する。
具体的には、妙に伏し目がちになったり、前髪で目を隠したり。
落ち着きのない挙動不審な感じが外に漏れだしている。
しかし、それも豪華な山のサチや川魚に彩られた食事を見るまでの話だったようで。
食事を前にして女子三人はテンションが上がり、たくさん写真を撮っていた。
近くに浮いている幽子もこれには興味が湧いたようで、滝のようによだれを垂らしている。
「当日はここで、脱衣所の忘れ物をチェックする……と」
先輩が、当日の流れを確認してメモを取り。
それが終わると、リーダーとして食事を始める挨拶をこなしてくれる。
「それじゃあ、今日の祝福と明日の成功を願って、乾杯!」
『カンパーイ!』
彼女の合図で一斉に箸を持ち、食べ始める文芸部。
サクッと揚がった川魚の天ぷらに、山葵の葉を使ったピリ辛のおひたし。
そのどれもが新鮮で、俺たちの鈍感な舌をも刺激する。
「ほんとに美味しいね、月城!」
「ああ、来てよかったな」
それは、さっき風呂であったことも、今日の疲れも吹っ飛んでしまうほどに美味しくて。
俺たちは、今日という日と生徒会、および音垣先輩に全力で感謝のテレパシーを送った。
……もちろん伝わってる気はしないから後できちんと言葉で伝えます。