幽霊少女が俺の恋愛成就を全力で阻止してくる。   作:雨宮照

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第八話「先鋒」

「怜太さん、ダメじゃないですかー! 私という女がありながら、複数人の女の子と関係を持つなんて!」

「誤解を生むような言い方をするな! それとお前は俺の何なんだ!」

 数分後。

 なにやらツーショットということで急に張り切り出した女子たちに部屋を追い出され、先に待っているようにと指定されたのがここ、浴場の前の憩いの場。

 マッサージチェアやベンチが並んでいて噴水も見えるため夕食後は賑わっていたみたいだが、夜も更けたこの時間に他の宿泊客が来ることはなく、自販機から時折鳴る「ブゥン」という音だけが辺りに響いている。

 あと、ついでに幽霊の喚く声も聞こえる。非常に耳障りだ。

「別にですね、成瀬ちゃんだけなら問題ないですよ? 一人だけですしポンコツですし!」

 人の気も知らないでプンスカと怒る幽子。

 俺はこれから女の子と二人っきりになるから、少しでも気持ちを落ち着けたいのに……!

 っていうか、さらりと今成瀬のことポンコツって言わなかったか?

 ……いや、確かに成瀬を表現する上でこれ以上ないくらいに的確だとは思うんだけど……いつも色々と失敗させてる側のこいつが言うとなんだか腹立たしいな! 成瀬が可哀想だ!

「なのにですね、三人も連続で来るとなっちゃ、私だって大変ですよ! 三人分恋愛イベントを阻止するとなると、どれだけの労力を使うことか!」

「阻止しなきゃいいだろ! いい加減俺にも普通の恋愛をさせてくれ!」

「阻止はさせてくださいよ! 怜太さんの本妻として、貴方に近づく悪い虫は私がすべて追っ払うんです! 私は歩く殺虫剤なんですー!」

 ふんがー! と、どこから出しているのか分からない蒸気機関車みたいな音の鼻息を出して騒ぐ幽子。普段何も食べてないようだが、見えないところで石炭でも食べてるんじゃないだろうか。本妻でもないし歩いてもない幽子だが、その支離滅裂な言動を見ていると、緊張する場面だというのに笑いがこみあげてきてしまう。

 もしかすると、これはこれで彼女なりの応援だったりするのだろうか。

 とにかく、幽子の暴れっぷりのおかげもあって、俺は少しリラックスすることができていた。

 そうこうしているうちに、女子たちも準備ができたんだろう。

 パタパタと大きさの合わないスリッパの音が遠くから近づいてきて――まず初めにやってきたのは、木ノ葉だった。

 

「……お待たせ、お兄ちゃん。ちょっと外まで、歩かない?」

 

 木ノ葉によると、結局順番は木ノ葉、先輩、成瀬の順に決まったらしい。

 勝利した成瀬がまずトリを選び、木ノ葉が次に印象に残りそうな初っ端を選択。

 最後に余った二番目を先輩が泣く泣く務めることになったという流れのようだ。

 確かに、最初や最後と違って真ん中の印象は薄くなりがちだからな。

 別に俺のことをなんとも思っていない先輩がそのポジションに落ち着くのは、ある意味では理に適っているのかもしれない。

 そんな何気ない話をしながら二人、木ノ葉の小さな歩幅に合わせて歩く。

 夜の風が涼しく頬を撫で、遠くの方へ流れていった。

 一度風を意識し出すと、周りに生えている山ならではの背の高い木々や草花の揺れる音が徐々に耳に入ってきて、鼓膜を優しく包み込む。

 遠くからは虫の音が微かに聞こえてきたりして、自然を感じることができた。

 

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