「――――――――――っ⁉」
誰もいない室内。男女が二人。男が女を押し倒している状況。
そんな時、普通なら女性は暴れて抵抗し、助けを求めることだろう。
しかし、何を思ったのか目の前の先輩は、目を閉じたのだ。
つまり、それは俺にすべてを委ねるという合図。俺にすべてを捧げるという覚悟を表しているわけで――。
と、ここで俺は今日の旅行について少し引っかかっていたことを思い出す。
それは今日、ツーショットの時間を作るという話題が出てから、ずっと疑問に思っていたことなのだが…………先輩はなぜ、俺とのツーショットの権利を懸けて勝負なんてしようとしたのだろうか?
本来、これは俺に好意を持ってくれていることが判明した成瀬と木ノ葉にとって有益な取引であって、先輩が乗っかる必要はない。
その矛盾に気付きながらも、俺はおそらく他の二人が楽しそうに競っているから自分も加わってみたとかきっとそんなことだろうと思い込み、いままで気にしないようにしていた。
しかし、いま改めて考えてみると、やはりおかしいことがあるのだ。
……それは、成瀬がお風呂での戦いに勝利したのに、その結果を受け入れなかったこと。
もちろん木ノ葉が結果に不満を持っていたからそれに便乗したという線も考えられるが、木ノ葉だってそこまで聞き分けの悪い子じゃない。
先輩が説得すれば、大人しくなっただろう。
だがおそらく先輩は木ノ葉を説得せず、自らも俺と二人きりの時間を望んだのだ。
それは、一体何のための行動だったのか――?
その答えが、今分かった。
もう一度、目の前の黒髪美少女を見つめる。
すると、目を閉じた彼女は身を捩って艶っぽい声を漏らし、はだけた浴衣を強調するかのように腕を頭の方に上げているではないか。
彼女のさらさらで手触りのよさそうな腋を目の前にして、緊張してしまう。
……まあ、つまるところ、こういうことなのだ。
音垣琴音は、月城怜太に好意を抱いている……と。
いや、だってそうじゃないと押し倒されて目を瞑るような真似を普通するわけがないし、ツーショットの時間を欲しがるわけもないし!
思い出してみれば、今日の旅行そのものが先輩の謀略だったんじゃないか⁉
生徒会の視察といえど俺たちを行かせる理由はないわけだし、ビンゴにしたって景品を俺とのデートにするなんてことを言い出したのは先輩なわけだし!
……やっぱり、先輩俺のこと好きなんじゃん!
気づいて、もう一度彼女に向き直る。
すると、先輩は未だ寝ているかの如く目を瞑って、俺が襲ってくるのを待っていた。
今までは先輩の気持ちに気付いていなかったから恋愛対象として見ていなかったが、気持ちを知った今となっては話が別だ。これだけおっぱいが大きくて柔らかそうで、母性があって安産型で美しくて綺麗で――こんな女性、他にはいない!