「気っ持ちいいね~、お兄ちゃん!」
「おう! 空気が綺麗で清々しいな!」
あれから無事成瀬も起こして、昼過ぎになってから俺たちは活動を再開した。
外に出てみると、長時間の移動のあとじゃないからか、昨日よりも気持ちがいい。
木の葉が風に揺れる音や、鳥のさえずり、川の水音がダイレクトに伝わってくる。
森林浴では自然界にある音を聞くのが身体にいいらしく、頭もスッキリだ。
みんなで森に耳を傾けていると、綺麗な声でノイズが走った。
「ねぇねぇ月城。わたし……昨日の記憶が途中から無いんだけど……」
「よし、じゃあ早速カレーを作るか!」
「無視⁉」
そうなのだ。
意識を取り戻してからというもの、成瀬がやたらと昨日のことを聞いてくる。
しかし、うまい言い訳も思いつかない俺はだんまりを決め込んでいるのだ。
「なんでなんにも覚えてないのぉぉぉぉ!」
よく耳にする成瀬の可哀想な叫び声を尻目に、俺たちは食材を準備する。
今日は何もしなくていい予定だったが、全員寝起きでお腹もすいていないし、せっかくだから飯盒炊飯を体験させていただこうということのなったのだ。
分担は、俺が薪をくべて火を用意し、女子たちが米や食材の準備。
火が大方安定してきたところで彼女たちを見ると、ピーラーで皮をむいたり、包丁で素早く丁寧にカットしていたりと、手際の良さが目立っている。
中でも、成瀬や先輩よりも木ノ葉の手先が思ったよりも器用で見とれてしまった。
視線に気づいた木ノ葉が、照れ照れと言ってくる。
「あのね、木ノ葉は引きこもってたから、家のこととか全般できるの」
なんと、見かけや言動によらず家事スキル万能な木ノ葉であった。
残りの二人も負けじとテキパキ作業をこなす。
幽子による火や風のサポートもあって、随分と早くカレーを完成させることができた。
それを先に炊いておいた飯盒のご飯にかけて、いただく。
「んん! これ美味いぞ!」
「ほっぺたが落ちそうだよ!」
少し焦げたほくほくのご飯と、高火力で作ったとろとろのカレー。
その抜群なハーモニーは口の中を覆いつくし、一気に蹂躙する。
大きめのジャガイモやニンジンは柔らかく、そして玉ねぎの甘みがアクセントとなり。
今まで食べたどんなカレーよりも絶品なカレーが、そこに出来上がっていた。
「私も食べたいですー!」
目の前で美味いものを食べられて、泣きそうになっている幽子。
幽霊は飯を食えないのだから仕方ない。
不憫なので、少しだけ魂を変わってやる。
すると、おかわりの一杯まで平らげ、彼女は満足そうに微笑んだ。
……もう一度入れ替わったとき、俺は腹がはちきれて死ぬかと思ったが。