純粋な恐怖なら、悲鳴なりなんなりと、反応ができただろう。
顔っぽいものが写っていたり、手や足が写っていたり。
それが、普通の心霊写真というものだ。
しかし、この写真には変なポーズの幽霊が、人と違わない高画質で写っている。
つまり――リアクションが、非常にとりにくいのだ!
――固まったまま、数十分が過ぎる。
誰も言葉を発せず、誰も黒目を元に戻せない。
この光景を他の宿泊客が見たら、集団で呪われたとでも勘違いするはずだ。
誰もがこの状況をどうにかしたい。
どうにかしないと、一生動き出すことができないのではないか。
そう思っていたところで――
「……怜太さん、お話があります」
心霊ド変態が、なにやら改まった様子で話しかけてきた。
雰囲気も雰囲気だから、ゆっくりと彼女の方を見ると――
その表情はなぜか、出会ったときから一度も見たことがないほどの決意に満ちていた。
ショッピングモールで半裸リンボーダンスを披露していたのを見つけて以来、常にへらへらしていた幽子。大浴場では真面目な話もしたが、それは終わった話だ。
ここに来て、あれ以上の真剣な表情をする理由が分からない。
俺は、戸惑いつつも続きを促した。
「私……みなさんに、存在を明かします」
「え、それって……」
「ここにガッツリ写っている幽霊が私だって、怜太さんに説明してもらいます!」
漫画だったらコマをぶち抜いて集中線だらけになりそうなほど大迫力で宣言する彼女。
それはつまり、文芸部のメンバーにこれまでのいたずらもばらすということを意味していて。
……つまり、自分が怖がられ、嫌がられてしまうことも覚悟したカミングアウトで。
それをここで明かしてしまうということは、それほどまでにリスキーなのだ。
俺も含めて、今後文芸部のみんなと仲良くできるか保証は出来ていないことになる。
「……おい幽子、それやっちゃったら憑かれてる俺まで気持ち悪がられないか?」
「……そこはみなさんを信じていただいて……ほら、信じる者は救われるっていいますし」
「……すくわれるのは俺自身じゃなくて足元な気がするんだけど」
小声で、いつものように軽口を叩き合う。
……やっぱり、俺はこいつといるのが好きみたいだ。
すっかり生活の一部になっているし――かけがえのない、友達。
……と、なると。
「……仕方ないなあ」
呟いて、俺はみんなの前に歩み出る。
そして、出せる限りの大声を振り絞って言い放った。
「ここに写っている幽霊は……俺の、友達なんだ!」
これがきっかけで友達を失っても、構わない。
だって、もともと俺は友達の少ないぼっちじゃないか。
それに――今は、いつでもそばに幽子がいる。
朝から晩まで、毎日、毎日。
俺の恋愛成就を邪魔してくる、迷惑な奴。
だけど、こいつといるのはとても楽しくて、いない生活はもう考えられなくて。
――――そんな、親友がいてくれるから、俺は寂しくない!