幽霊少女が俺の恋愛成就を全力で阻止してくる。   作:雨宮照

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第四話「幽霊」

 幽子がいなくなってからの生活は、色がなくなったかのようで。

 やつれた俺を気遣って木ノ葉や成瀬が外に連れ出してくれるが、それも鬱陶しい。

 あれだけ恋愛がしたいと毎日思っていた俺だったが、そんな気には一切ならず。

 文芸部のメンバーさえ、邪険に扱ってしまう始末だ。

 俺は、そんな自分が嫌いで、嫌いで。

「俺、幽子に呪われてるのかもな……」

 最後には、幽子のせいにしてみたりなんかして。

 幽子……お前の邪魔は、今でも有効みたいだ。

 こんなんじゃ、俺……恋愛なんか、できないよ……。

 

 車の激しく行き交う大通りを見ていると、そこに飛び込みたくなる。

 あの世に行けば、彼女に会えるかもしれないから。

 いつものように、憎たらしい笑顔で馬鹿にしてくれるかもしれないから。

 ……でも、今俺が死んだとて悪霊になるのがオチだ。

 幽子は天国。俺は地獄。

 あの世でも、永遠に会うことはなさそうだ。

 

 車の下敷きになることもなく、横断歩道を渡って歩いていく。

 すると、遠くの方に大型のショッピングモールが見えてきた。

 幽子と、初めて出会ったショッピングモールだ。

 あの日感じていた「余裕」は一ミリもなくなったが、足がふらっとそこに引き寄せられる。

 本屋に、映画館に……気分転換に向く場所は、いくらでもある。

 しかし、俺はそのどちらにも行く気力がない。

 かつて考えたように、イベントスペースで読書するくらいが関の山だろう。

 新しいことを取り入れる気分ではないのだ。

 自動ドアが開いて、中へ足を踏み入れる。

 ショッピングモールは、やはりカップルで賑わっていた。

 停められた自転車の数でも分かっていたことだが、多くの人が収容されている。

 以前はここが自由の象徴に見えたが、今は刑務所と大差ない。

 幸せそうなカップルがいようがいまいが、どちらにせよ俺は締め付けられる。

 生きている限り、永遠に続きそうな痛みだ。

 飲食店が並ぶ通りを進み、通り抜ける。

 すると、例のイベントスペースが見えてきた。

 相変わらず午前中は催し物がないらしく、カップルが食事に使っているようだ。

 以前ならば俺はここを避けていただろう。

 なぜなら、俺は恋をしたかったから。

 しかし、現在の俺に妬みや嫉みの感情はない。

 傷つく心すら持ち合わせていないのだ。

 カップルの根城と化したスペースに、異物が入り込む。

 彼らは気にも留めず、談笑を続ける。

 ……幽霊は、こんな感じなんだろうか。

 誰にも見つからず、気にも留められず、ただただ未練を持って彷徨って。

 そうだというなら、今の俺だって同じじゃないか。

 幽子との生活という未練があって。

 誰にも気に留められなくて、心で泣いて。

 文芸部のみんなには申し訳ないが、そんな心地がしているのだ。

 どうせ幽霊であるならば――と、俺は文庫を鞄から取り出しつつ妄想する。

 どうせ幽霊であるならば――思いっきり目立つようなことをしてやろうじゃないか。

 負の感情が俺から去ることはもうないだろう。

 この沈んだ気持ちが、再び盛り上がることなどありえない。

 だったら、望みすらも断ち切ってしまおうじゃないか。

 光があるからこそ、闇は一段と深くなるのだ。

 ――と、俺は考えを行動に移そうとする。

 これは、破滅への序章だ。

 自身の上衣を取り去って、家族への未練を。

 下衣に手をかけて、友人への未練を断ち切る。

 そして、一気に俺が全裸になろうとしたところで――

 

「うっひょー! きっもちいいよぉ~! うへえぇぇぇぇぇ~!」

 

 ――女の、叫び声がフロアに轟いた。

 

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