チート持った痛(I)い奴らを俺がチートで成(S)敗する 作:憲彦
「ほらほら。逃げろ逃げろ。気合い入れて逃げねぇと死ぬぞ。俺は殺す気でお前を攻撃してるからな~」
「ウワァァァアァア!!もう少し手加減してぇぇぇええ!!」
「だが断る」
クラス代表決定戦を明日に控えたこの日。玲衣と一夏はアリーナに籠っていた。因みに、千冬に許可は貰っているが、授業は全部サボっている。玲衣が現状の一夏では試合開始3秒も持たないと判断して、始業のチャイムと共に引き摺ってアリーナまで来たのだ。
「まずテメェは逃げることを完璧に覚えやがれ。今日は緑色の頭をした魔王がいねぇんだ。楽だろ」
「むしろ辛いんだけど!?」
玲衣はマーク6の武装全部を使って一夏を攻撃している。アイアンマンに積まれているミサイルはどれもこれも小型。大きい物でも10センチあるかどうかと言うレベルだ。他は全部5センチにも満たない。それが休む暇もなく一夏を襲っている。
「ヘブッ!」
「あ、転んだ」
ボコボコになったアリーナの地面に脚が引っ掛り、盛大にずっこけてしまった。言うまでもないが、ミサイル全部が一夏にヒットした。ギリギリシールドエネルギーが残っている。
「おい。今日5回目のダウンだぞ。さっさと回復させてこい。それまで休憩だ。その後は少し内容を変えるぞ。次の課題は20分は生き残れ、だ。10分以内にダウンしたら生身で逃げ回らせるぞ」
一夏はエネルギーを回復させ、玲衣はミサイルの補給をする。この第3アリーナは千冬の計らいで2人専用の状態になっている。しかもほとんど使われない予備扱いのアリーナ。つまりは弄りたい放題と言うことだ。大部分が玲衣のラボになっている。ミサイルの補給もエネルギーの補充もやりたい放題できるのだ。
「なぁ玲衣。俺、大丈夫かな?」
「なにが?」
「クラス代表決定戦。俺、自信無いよ……」
「知るか。全部テメェ次第だ。無様に負けねぇ様に俺が訓練付けてやってんだろ。まぁ、クラス代表になりてぇなら応援はしてやる。決定戦じゃお前の事を叩き潰すけどな」
不安げな一夏を励ます訳でもなく喝を入れる訳でもなく、自分が腹の中に思っていることを全部言った。と言うよりも、玲衣と一夏の付き合いはそれなりに長い。無責任に励ましの言葉を送るよりは、この方が効果的で良い薬になると思ったのだろう。
「クラス代表決定戦で無様な戦いをしたら、その時俺はお前の事を全力でブッ飛ばして壁にめり込ませる。が、そんな心配をするよりも、俺が教えたことをできるようになれ。訓練再開だ」
充電が完了した白式と、ミサイル関係の補給を終えたアイアンマンがアリーナに降りた。準備が完了したのを確認すると、玲衣はこれから行う訓練内容の説明に入る。
「今からお前には、零落白夜を発動したまま逃げ回ってもらう」
「発動したまま?」
「あぁ。良いか?雪片弐型にはまだプロトタイプのアークリアクターしか埋め込んでない。つまり、長時間の発動は不可能。アークリアクターのエネルギー供給が間に合わなければ、シールドエネルギーを消費する様に勝手に変わる。取り敢えず調整して零落白夜の効果がでる最低限の出力をデフォルトにした。つっても、アークリアクターのエネルギーで10分。シールドエネルギーのみで4分が限界だ」
「それじゃ課題をクリアできないと思うんだけど……」
「だから、そこはお前が上手く調整するんだよ。今言ったのは、俺が設定した出力での話だ。それ以下にしたり動きを最小限にしたりすれば不可能じゃない」
それは結構な無理難題だ。千冬の様な上級者ともなればそれくらい簡単にやってのけるだろう。だが、一夏は初心者。IS展開時間はようやく24時間を越えた所だ。普通に考えてできる筈がない。それは玲衣も分かっていることだ。
今までの訓練は基礎能力の向上。武器を使った戦い方や動き回らせてISに慣れさせたりと、それらに限定していた。ミサイルやらを撃ちまくって逃げ回らせていたのだって無意味ではない。破壊されて滅茶苦茶になった地形、自分を延々と追いかけ回す追尾型のミサイル、アホみたいに重たい金属の塊の拳、巨大な地雷、突然襲ってくる変な精神攻撃。それらに慣れさせる事で技術とレベルを急激に上昇させていたのだ。だが、今出した零落白夜を展開した状態で20分逃げ回るに関しては、レベルが急に3つくらい上がった。
「よ~し。始めるぞ。まずは零落白夜を発動させろ。それを確認したら、また攻撃をする。捌けるものは捌け飛んで逃げるが走って逃げるかは指示しない」
「わ、分かった」
玲衣の説明が終わると、一夏は零落白夜を発動。それを合図にまた大規模な爆撃が開始される。慣れてきたと言うのもあるのか、冷静に避けられるようになってきている。無様な叫び声をあげることも減ってきた。
「もう少し増やすか」
様子や動きを見て、ミサイルの量を増やしていく。早くも量は倍になっている。今のところは順調だ。
「変り種。行くか」
スラスターを一気に吹かして一夏の進行方向に回り込み、普通のミサイルと一緒に妙な形をした物を撃ち込んだ。形がおかしいせいか、空気の抵抗をモロに受けて不規則にフラフラとブレながら飛んでいっている。
「?グッ!?ウワァァア!!」
妙な形をした物は、一夏に当たる直前に花火の様な音を立てて破裂したかと思うと、目の前が真っ白になるほどの強力な閃光を放った。当然なにも見えなくなり、飛んでいたミサイルが次々に一夏に直撃する。
「生きてるか?」
「だ、大丈夫だ……続けてくれ!」
「良い根性してらぁ」
立ち上がった一夏を見て、またドッカンドッカン爆撃を始めた。結果から言うと、20分逃げ回ると言うノルマは達成できなかった。惜しい所まで言ったのだが、ギリギリの所で吹っ飛ばされてシールドエネルギーが0になった。何度か繰り返したのだが、結果は変わらず。最終的に一夏の体力も0になって眠ってしまった。朝からぶっ通しでやっているため無理もない。何故ならもう夕方だから。
「さてと……一夏ならもう眠ったぞ。しばらくは起きないぞ。こそこそされるのは好きじゃないんでよ。するのは好きだけど」
アリーナの入り口に向かって言ったが、誰も出てこない。代わりにだが、何本かの剣がとんでもないスピードで飛んできた。
「ッ!?神威!グッ……!」
ギリギリで神威を発動。異空間に飛ばすことができた。が、どう言う訳か玲衣はダメージを受けたようで、眼には激痛が走った。
「チッ…正体は分からずか……」
異空間に飛ばした剣を取り出して、調べようと思ったのだが、何故か消えていた為それ以上の捜索は断念。一夏を担いでアリーナを出ていくことにした。
「おい千冬」
「ん?玲衣か。今日はもう終わったのか?」
「コイツが眠ったからできる訳ねぇだろ」
「まぁ、今日は朝の8時からずっとだったから仕方ないだろう。もう17時だ」
9時間はずっとアリーナに籠っていた事になる。そう考えると、一夏が眠ってしまうのも理解できる。
「で?どうだった?」
「コイツは器用な方で、バカじゃねぇって事が分かった。お陰で追加装備も順調に作れそうだ」
「ほう。どうな物を作るんだ?」
「防御にも使えて、収納もできて便利なもの。取り敢えず特別な物を付ける予定はないが、それは代表決定戦の後に付けるかを考える」
それを伝えて、一夏を千冬に渡すと一端部屋に戻りシャワーを浴びてから整備室に向かって色々と作り込んでいった。
「スーツケース型のシールド。我ながら面白いセンスしてるな。キャスターも付けようかな?」
『しかし、追加武器も収納可能で持ち運びができるので、悪くないかと。これなら拡張領域が無くても問題ないですね』
「まぁ、運ぶのにはIS展開してなくちゃならないけどな。持ち運びに関しては今後考えよう。今日はもう考えるのを止める」
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