チート持った痛(I)い奴らを俺がチートで成(S)敗する 作:憲彦
『強い!圧倒的!圧倒的です!!日本代表、織斑千冬選手、他国の選手を一切寄せ付けず勝ち進んで行きます!』
『前回の大会やその他のISの大会でも圧倒的な実力をもつ絶対女王。ブリュンヒルデとして名高い千冬選手。今大会でもその実力を遺憾無く発揮してますね』
『国家代表と言う立場をてにしてから、公式非公式の試合含めて200戦200勝と言う前人未到のステージに立とうとして―』
薄暗くて埃臭い。なおかつ少しジメジメするゴキブリが好みそうな環境の廃倉庫の中。そんな場所には似つかわしくないスペックの高そうなパソコンと、小型のテレビ。そして拘束されて目隠しされた少年が1人と武装した集団。一瞬でこの場所にピッタリな風景が完成してしまった。
「日本政府には伝えたのか?ブリュンヒルデの決勝戦棄権と、その弟の身代金」
「ちゃんとしたよ。連中、かなり焦ってたぜ」
「へっ。そりゃ良い。見てみたかったよ」
「それより、ちゃんとブリュンヒルデに伝えるか?日本からしちゃ、弟の命より2連覇って言う名誉が欲しい筈だからな」
「大丈夫だっての。ブリュンヒルデは弟思いで有名だ。日本政府の意思なんて無視して助けに来るよ」
酒を飲みながら人質に聞こえるような大声でそんなことを話していた。仮りにも人質が居て銃があると言う状況なのに、酒を飲みながらと言うのはどうなのだろうか。
「ん……ッ!?」
「お?目が覚めた小僧」
「ッ!?ンッ!ンンッ!」
口にガムテープを貼られていて喋ることができず唸るしかない一夏。そんな一夏にニタニタと笑いながら男が近付いてくる。
「気分はどうだ?俺たちは最高にハッピーだ。なんせ、ガキ1人捕まえて、大量の金が入ってくるんだからな。今までにない簡単な仕事だよ。ブリュンヒルデの弟だって言うのに、あんな簡単な警備しか付けないなんてどうかしてるぜ?拳銃も持っちゃいねぇんだから」
この男が言うように、一夏の護衛は杜撰その物。国家代表の弟の護衛だと言うのに、政府の人間と言うわけではなく民間の警備会社で、持ってたのは警棒1つ。一応要人なのだ。にも関わらずこれ。まるでこうなる事を望んでいたかのようにも思える。
「お~い!日本政府は身代金の支払いを拒否したぞ。テロリストとは交渉しないだと」
「あっそ。まぁもうこのガキの誘拐で金は入ってる。今更いらねぇよ。ブリュンヒルデが棄権すれば更にたっぷりと貰えるんだ。損はねぇ」
『なら次は、金を使って遊ぶ体がねぇと、多額の金が入ったって無意味だってことを学ぶんだな』
「「「「ッ!?」」」」
自分達が口座の確認や情報を入手するために使っていたパソコンのスピーカーから、突然知らない男の声が流れてきた。
ガシャンッ!!
「だ、誰だ!?」
「うるさい」
「うわぁぁぁあ!!!」
赤と金の2色のなにかが屋根を突き破って降りてきて、一夏に近付いていた1人を殴り飛ばした。
「あ、IS!?」
「う、撃て!撃て!!!」
全員一斉に入ってきた何かに銃を向けて引き金を引く。後ろにいる一夏に弾丸が当たらないように体を屈め、盾のようになる。
「体に穴を開けたくないなら動くなよ」
その言葉に首を全力で縦に振り続けた。ある程度時間が経つと、マガジンが空になったのか銃声が止んだ。
「オウッ!?」
「アァァァァ!!」
キィーンと言う独特の機械音が短く鳴ると、光線の様な物が飛んで誘拐犯を吹っ飛ばしていった。
「ジャーヴィス。死んでないよな?」
『威力はセーブしているので問題はないかと思われます。しばらく動けないと思いますが』
「なら良いか」
「イッ!……その声もしかして、玲衣?」
「よう。お前は本当にトラブルに巻き込まれるな。次は一体なにに巻き込まれたら気が済むんだ?」
「もう巻き込まれたくないよ……それより何?それ」
「後で教えてやる。ほら立て。会場に帰って早く安心させて―」
「一夏ァァァァア!!!」
「千冬姉!」
「貴様が誘拐犯か!」
「は?…うわっ!?」
ドイツ軍と一緒に決勝戦を投げ棄てた千冬が一夏が監禁されていた廃倉庫にやって来た。扉を破壊すると、アイアンマンのスーツを着た玲衣に掴みかかった。瞬間加速で掴みかかられ、受け身を取ることができず床を抉りながら後ろへと飛んでいった。
「貴様!ただで済むと思うなよ!」
「話を聞けバカ!一夏なら無事だ!」
「黙れェェエ!!」
「うわっ!」
零落白夜を発動して斬りかかってくる。装甲はかなり頑丈に作っているのだが、普通に傷を付けられた。
「嘘だろ!?」
「鉄を斬るなんぞ容易いわ」
「マーク3じゃキツそうだな……なぁ、一夏は無事だなんだし、時間もまだある。決勝戦に戻ったらどうだ?一夏を誘拐した連中ならそこに転がってるから」
「問答無用!!」
「なんでだ!!?」
リパルサー・レイで千冬の動きを制限しつつ、両肩の装甲に仕込んでいるマイクロミサイルを撃ち込んでダメージを与えていく。
「ゼェリャア!!」
「マジかよ……!!」
ミサイルの爆煙の中から、大上段にブレードを構えた千冬が出てきて、反応するのもやっとのスピードで振り下ろしてきた。それを何とか白刃取りで受け止めて、話をする時間を設けた。
「勘違いしてるようだから言っとくが、俺は誘拐犯じゃないぞ!」
「信用できるか!言え!貴様の所属はどこだ!どこの国の者だ!」
「一夏そこにいる!お前の後ろにいる!!話聞きゃ良いだろ!頭に上った血を1回おそせ!!」
「ッ!?ウワッ!!」
胸部から放たれたユニ・ビームが千冬を捕らえ吹っ飛ばし、壁を突き抜けて外まで飛んでいく。そのまま動かなくなってしまった。
それを見ると、今度はドイツ軍の連中が銃を構えてきたのだが、保護された一夏が間に割って入って止めた。
「待ってくれ!あれは俺の友達だ!!」
「い、一夏……」
「千冬姉、その、本当にその人は誘拐犯じゃなくて、俺を助けてくれたんだ。だから攻撃するのを止めてくれ」
「い、いや。友達ってどう言うことだ?」
「あ……ごめん!」
「はぁ……こう言う事だよ」
一夏が勢い余ってやってしまった友達発言。もう誤魔化せないなと思い、仮面を開けて中の顔を千冬に見せた。
「玲衣!?」
「あぁ。本当はもっと速く到着して、アンタ達が気付く前に事態を終息させたかったんだが、空自のF15撒くのに時間かかってな」
「空自を撒いてきただと……!?」
「マジかよアイツ……」
「引くわぁ~」
空自を撒いてきたと言う発言にドイツ軍の人達はドン引きしている。まぁ理解できなくはない。日本の自衛隊の練度を知っている者達からすると、どうしてもその反応になってしまう。
「はぁ……俺に構ってたせいで、本当に決勝戦に出られなくなっちまったじゃねぇかよ……」
「それはどうでも良い。一夏誘拐の知らせが入った段階で、棄てる気でいたからな。それより玲衣、さっきは済まなかった。頭に血が上ってしまって……」
「まぁそこは別に良い。だが、俺の事は黙っておいてくれよ」
「そこのドイツ軍もな」
そう言うと、空を飛んで日本方面へと向かっていった。途中で千冬に連絡を入れて、自衛隊に戦闘機を飛ばさないように頼んでくれと伝えた。流石に2回も空自とは飛びたくないようだ。
「日本に帰ったら色々と教えてやるから待ってろよ!」
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