妖怪(?)がIS世界に転生   作:真庭猟犬

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前回から一週間後の話。

ヨザカルの舞台とほぼ同じの町での日常がメインです。


町巡りin桜新町 後に買い出し

桔梗が町の住人になってから一週間が過ぎた。

桜新町(半妖半神になって記憶が戻ってからはマジで吹いた)は相も変わらず妖怪や半妖、女尊男卑に嫌気が差して普通の人間としての日常を捨てた人間がワイワイとやっている。

俺は俺で相棒兼専用機になった桔梗と桜新町をブラブラと歩いていた。この町は七郷や比泉家の因縁が無い代わりに特定の人間(男女平等主義や女尊男卑を嫌ってる・怨んでる者等)と人外(妖怪・神・動物等)しか行き来できない特殊な結界が張られており、女尊男卑主義者なんかは確実にたどり着けない。所謂幻想郷みたいなものだ。ここの住人の女子は皆女尊男卑を嫌っており、中には町の外で女尊男卑主義者を殺したのもいる。今日はその人物に桔梗を会わせようとしているのだ。

 

 

「雪那。今から会うは半妖なの?」

 

「あー、半妖よりの妖怪だな。堕ちた時期は短かったけど、堕ちてきた魂とその人物の怨みや復讐心が合い過ぎて半妖に出来なかったって感じだ」

 

 

あの時はかなりきつかった。何せ、祖父ちゃんの喝を受けても鱗が数枚バラけるだけだし、近づこうにも分体の蛇で邪魔したり炎を吐いたりするもんだから碌に近づけない。おまけに喰われそうだった女性権利団体の女は格好の的にされて足を引っ張ったりして本当に邪魔だった。その女は今は改心したがな。

 

 

「外じゃよくある女尊男卑の被害者?」

 

「簡潔に言うならな。妖怪としての種族は清姫だ」

 

「清姫って確か伝承の人物じゃないの?」

 

「一般ではな。女性の『堕ちた』蛇身が清姫と同等の力を得たものをここじゃ種族として清姫と呼んでるんだよ」

 

「へー」

 

 

今から会う妖怪について軽く説明しながら歩いていくと、町の住人なら必ず知っている場所の一つである大図書館に着いた。ここは外見が西洋の屋敷だが、中身は巨大な城とそう変わらないほどのスペースで、階層も地下3階から7階まであり、漫画から貴重な本まで古今東西のあらゆる一般向け本が保管されている。1階から7階までは一般向け、地下は魔導書等が保管されており、地下に行くには司書と町長の許可が必要だ。と言っても、俺達が会いに行くのはその司書の一人だが。

 

ガチャ

 

「ウィッス。志乃さんはいるか?」

 

「あら、せっちゃん。志乃ちゃんはニ階の奥にいるわ。おや、その子は元ISの子かい?」

 

「禍津桔梗です(ペコリ)」

 

「おや、ご丁寧に。私は小野桜トメ。ここの館長と司書をやっている人間よ」

 

 

トメさんは幼い時から世話になっている。俺達の世代の殆どがそれに含まれるけどな。人当たりが良いので子供に好かれやすいのが理由だ。

 

 

「そんじゃ、行ってくる」

 

「いってらっしゃい」

 

 

 

 

 

図書館2階奥―隠れ部屋

 

 

「(コンコン)志乃さん、連れてきたよ」

 

『どうぞ、入って』

 

「失礼します」

 

「しつれいしまっ…!?」

 

 

後ろの桔梗が言葉を詰まらせる。志乃さんの見た目は顔の半分が蛇の鱗で覆われ、瞳も人間のものではなく蛇のものだ。ウェーブが掛かった茶色の髪の先の一部は蛇となっており、俺達を見ていた。

 

 

「驚いたでしょ? この姿が復讐に走った者の成れの果てなのよ」

 

「成れの果て……」

 

「貴女は自由を求めて『堕ちた』。私は夫を殺した女性権利団体を怨んで、殺したくて、『堕ちた』の。貴女はまだ幸運だったわね」

 

 

志乃さんは自傷気味に笑い、ポットから紅茶を注ぐ。そして、俺達がソファーに座ると自己紹介をした。

 

 

「自己紹介が遅れたわね。私は小能江(このえ)志乃。元人間の清姫よ。この図書館の司書の一人でもあるわ」

 

「禍津桔梗です。……元普通の、ISでした」

 

 

桔梗の声は途中から弱弱しくなった。志乃さんの旦那さんを殺した女性権利団体が盲信してるISだったから罪悪感と、恐怖を持っているだろう。

 

 

「私が怨んでたのは女性権利団体であってISそのものじゃないの。貴女も貴女で外の風潮の被害者だから気にしてないわよ」

 

「え、あ、その……はい」

 

 

桔梗の気の抜けた返事に俺と志乃さんは笑いが堪えきれなかった。始めっから桔梗をからかう算段で以前に話していたからだ。

 

 

「くくっ。上手くいったな、志乃さん」

 

「ええ。ふふっ」

 

「………もしかして、始めから……?」

 

「「もちろん♪」」

 

「…そう。ヤルオオオオオムッコロシテヤルァァアアアアアアアア!!!!!(狂気ボイス)」

 

「「わーーーーッ!!?」」

 

 

ぶっ壊れた桔梗を沈めるのに30分掛かった。何せ元が付くとは言え最強の兵器なのだ、それが狂気に染まった影響なのか異様に強かった。今後桔梗をからかうのは程々にしておこうと決めた。

 

 

 

 

 

ラーメン屋『月影』

 

 

「それであちこち傷がついているのか」

 

「まあ、な」

 

「………(ムッスー)」

 

 

月影にて昼食のラーメン定食を頼み、待っていると店長のおっちゃん(種族:真人間)が俺達の体のあちこちに傷がついているのを訊いたので図書館で起きた事を話すと苦笑いされた。桔梗は図書館の騒動後からずっとこの状態だ。元兵器がたった一週間で人間臭くなったなおい。

 

 

「話しを聞いた限りですけど、雪那さんが悪いですよね」

 

 

水が入ったコップを盆に乗せて持ってきた少女―零余子(むかご)立夏(りっか)(種族:サトリ)が話しに加わる。おっちゃんは立夏が話しかけたとほぼ同時に厨房へ消えた。

 

 

「うぃっす立夏。まあ、自覚はしてるが、桔梗が人間と同等になったのが嬉しい反面からかいたくなってな……」

 

(ピクッ)

 

「いじめっ子の心情ですか」

 

「例えるならな」

 

「けど、程々にしてくだいよ。女の子はデリケートですから」

 

「外の雌狐共は例外だがな」

 

「それについては同感ですね。注文したものは出来上がりしだい持ってきますね」

 

 

立夏はクスクスと笑いながら立夏も厨房へ向かう。残された俺達はただ待つだけだが、桔梗が不意に口を開いた。

 

 

「雪那。立夏の言った事って本当?」

 

「ん? まあな。代理とは言え一応この町の重役を担う事があるからな。ちょっとばかしお節介焼きをする事もあるんだよ」

 

「…そっか」

 

 

俺が言ったのが嬉しかったのか桔梗の顔が少し赤い。その表情に悪戯心が疼いたが図書館での教訓を思い出して止めた。またあの惨状を起こしたらどうなるかは容易く想像できる。

 

 

「おっちゃん。新作はあとどんくらい?」

 

「大体4、5分だな。スープは出来てるが叉焼の代わりのを今調理してる」

 

「あいよ」

 

「新作?」

 

「立夏が立案したやつさ。何でもヘルシー志向のラーメンだと」

 

 

ここまでいくともうパラレルワールドのヨザカルとしか思えない。サトリもそうだが、床屋は【鎌鼬】が経営しているし、病院の医者も有名な人物の子孫だったりするし、土地神もいる。原作を知っている分最初は何気なしに精神的にくるものだった。

 

 

「この姿になって色々経験したけど、やっぱ美味しいものは堪らないよ。ここのラーメンは特に(ジュルリ)」

 

「涎垂れてるぞ。ここのラーメンがうまいのは同意だ」

 

「嬉しい事言ってくれるねぇ。雪那は常連だから除くけど」

 

 

店の出入り口から声がしたので振り返る(俺は出入り口の方向に背を向けている状態だった)と、黄色のエプロンをかけ、三角巾を頭に巻いているおばちゃん(種族:九尾)が買い物袋を手提げた状態で店に入っていた。

 

 

「あ、おばちゃん。買い物に行ってた?」

 

「アイラちゃんの畑にね。ほらもぎたてのトマトだよ(ヒョイ)」

 

「(パシッ)ありがと。ほれ桔梗も食え。甘酸っぱくてうまいぞ」

 

「あ、うん。(カプ)あ、甘い!? なんで甘いのこれ!?」

 

「アイラちゃんはドリアードだからね。あの子が栽培する野菜や果物は一級品さ」

 

「へえ~」

 

「アイラの家は町外れの山、その中でも特に良質な土地と気候に恵まれた場所にある。それにドリアードは植物に関しては一級の腕を持つからかなりうまい野菜や果物が毎年多く採れるんだ。この町の住人はアイラの野菜と果物、ハーブ等を楽しみにしてるからな」

 

「この味を知ったら外の野菜が不味く感じそうだなぁ」

 

 

それは実際にあったからな。俺がそうだったし。農薬混じりの野菜が吐きそうになる程だったなあれは。

 

 

「おかえりなさい、おかみさん。あ、雪那さん桔梗さん新作ができましたよ」

 

「「待ってました!!」」

 

 

 

 

 

桜新町・展望台

 

 

「んっ、んー。満足したぁ」

 

「かなりうまかったな、肉・魚を一切使ってない新作のラーメン」

 

 

桜新町の街並みを見渡せる展望台へ腹ごなしとして移動した俺達。ここは俺のお気に入りの場所である。

 

 

「よう、雪那。今日は相棒も一緒か」

 

 

俺としては聞き慣れた、桔梗は初めて聞いた男っぽい口調の女性の声。この町の土地神―桜花だ。

 

 

「お前は随分と遅い目覚めだな、桜花」

 

「ハッ。冗談のつもりか? 神様は眠んなくても平気だよ。ん? ああ、元ISの嬢ちゃんは初めましてだな。私は桜花。ここ桜新町の土地神だよ。あ、敬語は不要さ。むず痒くて嫌だから」

 

「禍津桔梗よ。土地神って土地に根づいて町を形作る神であってるよね?」

 

「正解。尤も、現界できるのは私以外じゃ数えるくらいさ。近頃の人間は信仰心がないのが増えてしまってんだからな」

 

 

そう言って桜花はため息を吐く。この町も最初は人間だけで神の存在と言うか認識はお伽話レベルだった。だが、俺が『堕ちて』半妖半神になってから少しずつ神の存在を現実のものとして認識していき、結果として桜花は現界できるようになった。

この町に女尊男卑主義者が入れなくなったのも桜花の計らいであり、桜花が深く根づいている巨大な桜の木から特殊な結界を張っているのだ。

 

 

「で、桜花は何の用だ?」

 

「別に何も。ただ、お前ら二人にちょっと報せをと思ってな」

 

「?」

 

「(何かめんどくさいのがきそうだな)報せって何だ?」

 

「外で人が『堕ちる』以外に死者が化物になって現れるってのを聞いたことはあるだろ?」

 

「八重からな。確かあいつが言ってたのは鉄屑や枯れ葉が獣等の形をとっていたと。【似津真天(いつまでん)】の亜種が関わってる筈……」

 

「可能性として置いとくよ。あと、ちょっと頼みごとが」

 

「なんだよ」

 

「東京で限定品のロールケーキが「わーったわーった。早く金出せ、買ってくる」あいよ」

 

「桔梗。ついて来るか?」

 

「ええ」

 

 

桜花から金を受け取り、桔梗を隣に立たせる。怪異としての能力である神隠しを使って移動する為だ。

 

 

「んじゃ、行ってくる」

 

「ちゃんと買ってこいよ」

 

「「言われなくとも」」(パチン!)(シュン!)

 

 

俺達は相槌をうちながら桜新町から一瞬で消えた。




この話しでの妖怪の設定はヨザカルを参考に色々と独自設定を加えています。
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