試合は第3Q。
青峰の動きを模倣した黄瀬の動きを灰崎が奪ってからといもの、福田総合がわずかにリードをしていた。
その理由は黄瀬が青峰の動きを再現できなくなったからである。
灰崎の完全な強奪《オールバンデッド》は相手の技を奪う。奪われた相手はその技をしばらくは使えなくなるのである。
黄「くっ。なんなんすか、その技!?反則もいいとこっすよ!!」
黄瀬は今も灰崎を止められずにいた。
灰「わりいな。また俺の勝ちだ。」
灰崎は無情に型のないシュート《フォームレスシュート》決める。
これで66対77で福田総合が俄然有利となった。
ピ--!
第3Qがここで終了となる。
第3Qはまさに灰崎の独壇場であった。黄瀬は技を奪われ、なすすべはなかった。逆に灰崎は奪った技をいかんなく発揮していた。それでも海常は主将の笠松を中心にチームプレイでなんとか食いついていた。
福田総合のベンチはこの点差からなのか、みな険しい顔をしなくなっていた。それはエースへの絶対的な信頼からである。
石「このペースを崩さずに行くぞ。灰崎!第4Qも頼むぞ?お前が黄瀬を抑えなきゃ勝てんからな。」
灰「うす。楽勝ですよ。」
望「言うねえ!」
そういい望月は灰崎の背中を叩く。
ここまで上機嫌な灰崎は初めてかもしれない。今の灰崎には近づきにくい雰囲気などなかった。そのこともあってチームメイトとの距離も縮まっていた。
石「瑠璃?どうした?」
瑠璃は1人険しい顔をしていた。それに気づいた石田は瑠璃に聞いた。
瑠「いえ、なんでもないです。」
石「ならいいんだが。」
瑠「(うまくいきすぎだな。黄瀬は何を狙っている?この程度の奴だったのか?)」
…
笠「黄瀬。随分大人しいじゃねえか?どうした?まさかもう負けたのか?」
黄「まさか。もう灰崎は終わりっすよ。この試合。瑠璃っちさんが出てこない限り、うちの勝ちっす。」
笠「どういうことだ?」
黄「青峰っちの動きは俺でも1Qしかもたないんすよ。だから俺は要所要所でしか使わなかったんすよ。でもあいつは第3Qまるまる使っていた。次のQ、あいつは落ちるっすよ。」
笠「そんなこと考えてやがったのか。おそろしいな、キセキの世代は。」
黄「へへっ。」
黄瀬は余裕な笑みを浮かべる。
そして第4Qが始まる。
ボールは海常からである。
笠「さあ、倒すぞ。」
石「ん?」
石田は笠松の表情が軽くなっていることを感じた。
石「(なんだ?さっきまではあんなにきつそうな顔だったのに。)」
笠松のパスはエースである黄瀬へとつながる。
黄「いくっすよ?もうあんたは終わりっす!!」
灰「だれがおわりだよ!!」
黄瀬の全力のドライブに一度は反応して止めた灰崎だが、そこからの切り返しについていけず尻餅をついた。
黄瀬はあっけなくそのシュートをきめた。
望「どうした灰崎?」
灰「いや、なんでもないです。ちょっとすべっちゃって。」
望「そうか。まあどんまい!次だ次!」
灰「うす!!」
この時はだれも気づいていなかった。
灰崎の体が限界であるということに。
決定打は次の福田総合の攻撃の時である。
灰「次はこっちの番だぜ!!」
灰崎は青峰の動きで黄瀬を抜く。いや正確には黄瀬はわざと抜かせた。
灰崎がそのままダンクをしようと跳んだが、正面には追いついた黄瀬がブロックに跳ぶ。
黄「青峰っちはこんなに遅くないっすよ!!」
灰崎のダンクはあっけなく防がれた。
黄「もう体が限界なんすよ。だいたいキセキの世代《かれら》の動きや技は体に相当な不可がかかってんすよ。本人でもしんどいものを他人がしたらどうなると思ってるんすか?」
灰「はぁ、はぁ、はぁ。俺はまだ動けるぜ。」
灰崎は無理に体を起こす。
そこからは一方的であった。
灰崎が黄瀬を抑えることは不可能となり、途中交代となった。
ベストメンバーでない福田総合に海常を倒せるわけなどなかった。
ピ--
試合終了。
試合が終わり、黄瀬は灰崎に近づいていった。
黄「ウィンターカップでまってるっすよ。灰崎っち。」
黄瀬が灰崎を認めた瞬間であった。
黄「瑠璃っちさんも、次はやりましょうね!」
瑠「ああ。次はうちが勝つさ。」
瑠「灰崎、顔を上げろ。次も負けたじゃすまさねえぞ?帰って特訓だ。」
灰「は、い。」
灰崎はこの日、はじめてバスケで涙をながした。
…
桃「灰崎君まけちゃったね。」
青「ああ。まあ、自分の能力の性能をよくしってる黄瀬の有利だったな。灰崎のブランクで負けたって感じだな。」
桃「瑠璃さんがいたら、まだ分からなかったかもね?」
青「そうだな。まあいづれにせよ、ウィンターカップが楽しみだわ。あーー。バスケしてえなあ。」
桃井は青峰のバスケへの渇望を久しぶりに聞いて、驚いていた。
青「どうした、さつき?」
桃「いや、青峰君がバスケしたいって言ってるとこ久しぶりに見たから。」
青「あー。そういやそうか。次は負けられねえからな!!」
青峰は少年のような笑顔を見せた。
結局インターハイは赤司のいる洛山高校が優勝。
第2位に紫原淳のいる陽泉高校。
第3は黄瀬のいる海常高校となった。