ピー-
木「うお--!!」
ジャンプボールは木吉が制した。
すぐさまPGの伊月にボールが渡る。
石「っし」
石田はすぐさま、ディフェンスにつく。伊月は石田の事を前から知っていた。全国でも屈指のPGであり、冷静沈着、礼儀を重んじる好感の持てる選手だったからだ。
その伊月が石田に違和感を感じていた。以前の石田よりディフェンスのフォームが荒い、いや隙があるのだ。
伊月は警戒しつつも自身の最高のスピードで石田を抜き去ろうとする。
石「甘えよ。」
石田は伊月の後ろから腕を伸ばし、ボールを弾く。
伊「くっ」
日「伊月、どうした?めずらしいじゃん、お前がドリブル突破なんて。」
主将の日向はすぐに違和感に気づき、伊月に声をかける。
いつもの伊月ならば、ここはパスを出して確実に決めにくるところである。しかし、さきほどは果敢にドリブル突破を試みた。
伊「わるい、なんかいけそうな気がしてさ。」
日「そっか。次は一本決めような!」
木吉がボールを入れ、またもや伊月と石田が対峙する。伊月は頭を切り替え、黒子にパス。そのパスをタップパスで日向に回す。
日「しゃあっ!!ナイスパス黒子!!」
ますは日向の3Pで誠凛の先制である。
灰「どんまいっす!!次とりましょ!!」
瑠璃がいないためなのか、灰崎はチームを盛り上げようとする。
石「ふう-。灰崎。」
石田は息を吐きだし、決意のある目で灰崎を見る。
灰「なんすか?」
石「次のオフェンス、俺にくれ。まずは俺が誠凛のリズムを乱してくるわ。」
望「石田さん?どういう意味ですか?」
望月は石田の発言に意図が分からず、詰め寄る。
石「言った通りだ。わるい。ちょっと好きにやらせてくれ。」
灰「どうしたんすかね、石田さん。いつもと様子が違うような感じが。」
望「なんか昔の石田さんみたいだ。」
灰「昔?どういうことっすか?」
望「まあ、見てればわかるよ。さ、オフェンスだ、オフェンス」
灰崎は腑に落ちない顔をして、しぶしぶ走る。
…
虹「おい、瑠璃。前言ってたことだけどよ。お前って石田に憧れて、福田総合に入ったんだっけ?」
瑠「ああ、そうだけど?言ってなかったか?」
虹「聞いてねえよ。たしかに石田は並の選手じゃねえが、お前が憧れるほどの選手か?実力ならお前の方が上だろ?」
瑠「なんも分かってないのな。」
虹「ん?」
虹村には分からなかった。キセキの世代に匹敵しうる実力の持ち主が石田に憧れる理由が。
瑠「もともとあの人はさ、PGじゃなかったんだよ。俺がはじめてあの人を見たときはFだった。かなり乱暴な点の取り方してたな。」
虹「そうだったか?今とは大違いだな。今は正当派のPGだろ?」
石「ああ。昔のあの人のプレーが好きでさ。なんだろ。野生と科学がミックスしたような感じ?ドリブルとかの基本の動きはしっかりしてるのに強引にシュートにいってそれを決める。あれは、俺にはできない。」
黒金瑠璃がここまで人を褒めることはめずらしい。なぜなら、瑠璃が評価するだけの実力者が高校バスケ界には少ないからである。
その瑠璃が石田を評価している。虹村にとっては興味深い話である。
虹「じゃあ、なんで今はプレースタイルが違うんだ?」
瑠「責任感。石田さんは1年のときから福田総合を背負う選手だった。そのせいさ。チームのために自分のプレースタイルを変えたんだよ。」
虹「そうか。」
チームのためにプレースタイルを変える。簡単なようで、難しい。虹村にもそれが分かる。プレースタイルなどそう簡単に変えられるものではないのだ。
瑠「でも、これからは俺がPFとしてボールを回す。昔のあの人に戻ってもらう。」
虹村は瑠璃を見て微笑んだ。
…
灰「石田さん!!」
灰崎はボールを鶴野から受け取り、すぐさま石田に回す。
伊「こい!!」
伊月は身構えるが。一瞬であった。石田は伊月をまるで赤子のように抜き去る。
誠凛の選手はあまりの華麗さに体が凍りつく。かろうじて火神が反応する。
火「いかせるか!!」
石田は火神に構わずに跳ぶ。そして、ダンクの態勢になる。
石「うお---!!!」
火「なめんな!!」
火神はそれを止めようとする。しかし、まさかダンクでくるとは考えていなかったため、反応が遅れる。石田のダンクは火神を跳ね飛ばす形で決まった。
日「なっ!?」
伊「うそだろ!?」
黒「火神君の上からダンクなんて、紫原君以外には無理だと思ってましたが。」
木「すごいな、あいつ。」
誠凛の選手は驚嘆の声を上げる。それは福田総合の選手も同様である。
灰「石田さんてダンクできたんすか!?」
望「あれが本来のあの人のプレーだよ。敵のディフェンスなんかお構いなしに点を決める。昔は”静岡最強のF”って呼ばれてたからな。」
鶴「でも久しぶりにみたわ、あの人のあんなプレー。」
石「よっしゃ!!この試合、絶対勝つぞ!!」
福田総合は瑠璃と灰崎が看板ではない。この石田英輝こそが、福田総合の看板なのだ。