第2、第3Qはそのまま誠凛が優位に試合を進めていた。
福田総合は灰崎、石田を起点として誠凛に食らいついている形である。やはり瑠璃がいない穴は大きい。瑠璃がいないことにより、灰崎のオフェンス力は半減していた。さらに石田が本来のスタイルに戻ったことにより福田総合のパスワークが乱れている。しかし、石田のオフェンスがなければ誠凛のオフェンスには対抗できない。
石「まずいな。このままじゃ、誠凛に押されたままだ。」
鶴「やっぱ瑠璃がいないとオフェンス力が下がりますね。」
石「みんな。いままで俺達は瑠璃に頼りすぎていた。そのことがよく分かったな?」
部員は一様に頷く。
石「この合宿で、瑠璃に頼らくても勝てるようになろう。今ここで誓え。俺たちは福田総合だ。瑠璃だけにチームを背負わせるな。」
この言葉を誰よりも深く受け止めていたのは他でもない。瑠璃のパートナーである灰崎だ。
灰「(瑠璃さんがいなくても勝つのは俺だ。瑠璃さんに勝つのは俺だ。負けねえ。たて相手が誰であっても。全部喰らい尽くすだけだ。)」
石「灰崎どうした?」
灰「いえ、別に。次のQの始め、俺にボールをください。絶対勝ちます。」
石「ああ。オーケー。期待してるぞ?」
灰崎は頷く。
…
火「黒子。あいつ。」
黒「はい。雰囲気が変わりましたね。おそらく次のQは灰崎君中心できます。」
リ「じゃあ、こっちも火神君中心でいくわよ!!いい?}
リコはこの合宿で火神の限界点を伸ばすつもりでいた。そのためにはやはりエース同士の一騎打ちが最も効率的である。
火「まかせろ!!ですよ!。」
日「じゃ、まあ。たのむぜ?後輩!!」
ピー--
石「灰崎!!」
石田から灰崎にボールが回る。
灰「ふう。まずはこれだ。」
火「なっ!?これは。このスタイルは!?
灰崎は一度、現在の青峰と試合をしている。それゆえ、青峰のスタイルを強奪できる。しかしそれはあくまで理論上の話。灰崎の強奪は目の前で相手の動きを見ることによりその精密さが増す。しかし、今は青峰を直接みてはいない。それでも灰崎は青峰のスタイルを強奪した。ように人には見えていた。
灰「しゃあっ!!」
灰崎はそのまま型のないシュート《フォームレスシュート》を打ったかのように見えた。
灰崎が投げたボールはボードの上部に当たり、回転がかかりボール下左にいた鶴野へのパスとなった。
鶴野はそのままシュートを決める。
おおーーー!!
福田総合の部員たちは一気に盛り上がる。
石「灰崎、今のは。」
灰「すんません。説明は後で。今は集中させてください。」
灰崎は自分の中で決意を固めていた。
灰崎が行ったことはなんのことはない。強奪した技を自分の中で融合させただけである。しかし、その技は10年に1人の天才達の技でありそれを融合させることなど普通の選手にはできない。そう、普通の選手ならば。灰崎はこの時、初めて彼ら、キセキの世代に並んだのである。
灰「(もう逃げねえ。もう負けるのは懲り懲りだ。俺はもう自分を隠さない!)」
灰崎は自分の才能がただの技の強奪でないことに気づいていた。奪った技の融合こそが自分の真骨頂であると。灰崎はこの技を使うことが怖かった。この技は正真正銘、灰崎の奥の手。これを破られれば、灰崎に残りの手札はない。自分が奥の手を使って負けることが怖かった。
灰「来い!!火神!!」
火「黒子!!こっちだ!」
火神は黒子からパスをもらう。灰崎との1on1である。
火「(こいつっ。俺が進む方向が分かってるのか!?)」
灰崎は火神のボールの微妙な回転から進む方向を読んでいる。
石「あれは。瑠璃のディフェンスか?」
灰崎はすでに瑠璃のディフェンスすら使える。今の灰崎を火神は止められない。
石「スティール!!速攻!!」
灰崎が火神のボールをスティールし、速攻を仕掛ける。
誠凛の選手たちは、それを阻止しようと3人で灰崎を囲もうとする。
しかし。
灰「お前ら、こいつは知ってるんだよな?」
黒「それは!緑間君の!?」
灰崎はハーフラインから3Pを決めた。
この男こそ、キセキの世代になりそこねた者。
灰崎祥吾。
灰「悪いが、この試合は俺たちの勝ちだ。」
宣言通り、このあと灰崎の活躍により福田総合は誠凛に勝利する。