前回、幹部の力を有しているキメイラという化け物に対しまったく有効打がない状況。そんな中、陽奈が1人残り、稲森はモグロウの乗ってきたバイクに連れられ何処かへと向かうのであった…
それではどうぞご覧ください。
このバイクは一体何処へと連れて行こうというのだろう。
稲森は何処へ行くのか察しがついているとは言っていたが、モグロウにはそれがわからなかった。とにかく乗ってきてみればアベンジとエースはごちゃ混ぜになった化け物に負けているし、突然の事で今でも少し混乱している。
「なぁ、イナゴよ。お前はわかるって言ってたけど適当に言ってるんじゃないよな? もしかしたら敵の罠って可能性もあるぜ?」
「… かもしれないね。だけど罠は罠でもなんだか違う気がするんだ」
「違う? 何が違うってんだよ」
「それはきっとこのバイクが知ってるよ」
稲森はニカッと笑って見せたが、この笑顔の安心感と来たら。
それにしてもこのバイクはアベンジと似ている気がする。所々のパーツや色等比例してる部分が多い。
モグロウ自身も察しがついてきた。酷似している点と不自然なバイクの挙動。誰が作ったのか、誰が導いているのか。
「おっとと… 着いたっぽい」
「なんだぁ? 着いたって何にもない森の中じゃねーかよ!!」
2人が行き着いた場所はなんの変哲もない森の中。山を登ればありそうな草木が覆い茂っているだけの森である。
バイクから降りた2人は辺りを見渡す。森の奥は暗闇に包まれ、まるで何も見えない。
暫くその場を動ずにいると突然、風が吹き抜ける。
「── やっと来ましたか。待ちくたびれましたよ」
「マダラメさん…!?」
「そう警戒しないでくださいよ。あれは上の命令で仕方がなくやってしまった事なんです。これでも一応敵同士という関係ですので大目に見てください」
マダラメの言う通り稲森たちは敵同士。ただあれは仕方がなかったでは済まされる事ではないが、助けて貰っていると言うのも事実である為、複雑な気持ちである。
しかし彼が何故、敵であるマダラメが助けてくれているのかわからない。
「今回僕をここに呼び出したのは…」
「そうお分かりの通り、前に稲森さんが言っていた物が完成したので渡そうと思いまして」
「前に言っていた物?」
「それにしてもどうですか? アベンジ専用バイクの『マシンアベンジャー』。気に入って頂きました?」
「あ、確かにかっこいいですね。専用バイクなんて嬉しいです!」
「イナゴッ!! 話しがズラされてるぞ!!」
モグロウの一言でハッとなり、軽く咳払いをした稲森はマダラメに向き直る。
するとマダラメは懐から何かを取り出すと、それを稲森に手渡した。それはアビリティズフィードのようだが、少し形が違うようであり、表面の絵柄はジャンプ・フライ・ダイブが合わさったなんとも不自然な絵になっている。
「これはなんですか?」
「前に言いませんでした? 陸海空全ての力が合わさったアビリティズフィードを作ってくれと… 『トリニティフィード』です。これならばキメイラに勝てるかも知れませんね」
「そんな感じの事を確か言ってましたね… ありがとうございます。でもなんで僕なんかに」
「…… 言ったでしょう? キメイラを倒したら教えてあげますと。答えというのはすぐに求めてはいけません。そこまでに行く過程が大切なんです。それではいい報告待ってますよ──」
そういうとマダラメは闇の中へと消えて行った。
トリニティフィードを受け取った稲森は、それをポケットに仕舞い込むとマシンアベンジャーへと戻る。
「さ、行こうモグロウ!!」
「あいつバイク作って、アビリティズフィード作って、こっちが有利になる事しかしてねーし… 怪し過ぎるだろ」
「とにかくキメイラに勝てば全部わかるはず! 今はこのトリニティフィードでなんとかしてみよう!」
「まぁ確かにそうだ。やってやろうぜイナゴ!!」
「うん! 逆襲だ!」
そして2人はバイクに跨り、キメイラのいる場所へと向かう──。
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キメイラの力は異常である。エース自身もそれを理解していた。
パワードウェポンの能力を解放することにより約2倍の力を得ることができる。2倍もだ。ウェイトでさえこれには勝てなかった。
しかしどうだろうか。目の前にいる合成獣はその力と同等である。
「この化け物ォォォォ…!!!」
エースは必死に押さえ込もうと、力一杯に地面へと叩きつけ、馬乗りになって殴りかかる。
それも無駄な攻撃だとわかる。やっても意味がない。何故なら、先ほども同じような戦い方をしていたからだ。
「…っ!! こいつ…!!」
そしてキメイラはエースの両腕を掴み、そのまま上空へと飛んで見せた。
高く飛び上がったキメイラは彼女を掴んだまま地面へと降下する。このまま地面に叩きつけてしまおうというのだろう。
「パワードならこの高さは…いやダメ! ダメージは入る!」
エースはキメイラを引き剥がそうと何度も顔面殴りつけるが、表情すらわからないそれは降下のスピードを落とすことはない。
このまま無駄な事ばかりでダメージすらまともに通らないのだろうか。
ただエースも何もせずに倒れるなどしたくはない。彼女は彼女なりの覚悟を決める。
「この近距離… 私も相当堪えるだろうけど、あんたに1発だけでも有効打与えられるならやってやるわよッ!!!」
それからエースはキメイラを離さないように掴みながら、エースドライバーの側面を押し込む。
全身のアーマーが展開され、そこからミサイルが現れる。この近距離で放てばただでは済まないだろう。
「── 消えなさい!!」
ミサイルが放たれ、光が見えると共に2人の身体は光に包まれ爆発する。
空中から落下する2つの影。
エースは地面に落下すると同時に変身が解除される。一方のキメイラはピクリとも動こうとしない。
「ザマァ見なさい… この化け物…」
動かないキメイラにエースは勝ちを確信していた。
自らの捨て身の攻撃は効いている。流石のキメイラでもこれには堪えたはずだ。例え生きていたとしても立ち上がる事なんてできやしない。
「… だから」
キメイラはゆっくりと立ち上がる。何の前振りもなく平然と。
「立ち上がるなって…!!」
その化け物は立ち上がってしまった。陽奈の攻撃は最悪な結果を引き出してしまったようだ。
攻撃を加えた本人が1番ダメージをくらい、加えられた方はこうも平然と立たれては絶望しかない。
「なんでよ!! もうっ!!」
陽奈は悔しさのあまり地面殴る。
そして逆に立ち上がることのできない自分に苛立ち始めた。
「こんな所で…!!」
キメイラは陽奈に向かって行く。
もうダメかと思われたその時、後ろからエンジン音が聞こえて来た。音はだんだんと近づいていき、次の瞬間、陽奈の上を通過したバイクの前輪がキメイラを捉える。
「ハァッ!!」
そのままバイクでキメイラを吹き飛ばし、稲森はバイクから降りる。どうやらギリギリな所で間に合ったようだ。
陽奈も突然の事に目を丸くしているようだが、何を言われるか分からないのでモグロウの方にそちらは任せるとしよう。
「キメイラッ!! これ以上誰も傷つけさせないぞ!!… この新しい力でお前を倒す!!」
稲森はアベンジドライバーを腰に巻くと、マダラメからもらったトリニティフィードを早速取り出して装着する。
《Welcome!! トリニティ!!》
「うっ… 凄い力だ。これが陸海空… 全ての力っ!! 変身ッ!!!」
掛け声と共にアベンジドライバーの口を閉じると、イナゴ・ペリカン・エイが現れ、それぞれ稲森の全身に噛みつき、突き刺す。
全身に激しい痛みが駆け巡る。ただでさえ単体でもかなりの痛みが走ったが、それが3匹、イナゴに至っては数匹もの群れが噛み付いてくるのだ。その苦痛は計り知れない。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!! うぅッ…!!!」
「イナゴッ!!」
「だ、大丈夫…ッ!! こんな痛み!! 皆んなが喰らうなら僕が喰らってやる…!! 僕は仮面ライダーだ!!」
稲森の身体にアーマーが形成されていく。
ジャンプ・フライ・ダイブ。陸海空。全ての力がアーマーとなり、更なる力を呼び覚ます。
《Tasty!!》 《Complete, my counterattack starts here!!》
《START!! トリニティアベンジ!!》
「── 三位一体で逆襲だッ!!!」
仮面ライダーアベンジはトリニティウェポンと姿を変えると、キメイラに向かって駆け出す。
そしてアベンジとキメイラはガッチリと掴み合い、このまま押し切ってしまおうと思っていた。だが、不思議な事にトリニティは少しばかりかキメイラに押されている。
「あ、あれ!?」
やはりそうだ。押されてしまっている。
キメイラの力の方がトリニティより上という事だ。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!? 普通ここは勝てる展開じゃないのぉ!!?」
徐々に押されていくアベンジ。トリニティの力ですら敵わないというのだろうか。
しかしアベンジ… 稲森という男はそこで諦める男ではない。脚にグッと力を入れキメイラを押し返す。
「負ぁけるかぁぁぁぁぁぁ…!!!!」
すると次の瞬間アベンジは空にいた。先ほどいた地面はもうそこにはない。
ジャンプウェポンの力である事は確かだが、明らかにそれ以上だ。
「トリニティ… 全ての力が合わさっただけじゃない。1つ1つが強化されているんだ!」
トリニティは陸海空、全ての力が混ざり合ったフォーム。
ただしそれだけではない。確かにスペック自体は三体の力を掛け合わせた物。これだけなら単純なものだが、その本質は個々の能力の向上。
それがトリニティウェポンである。
「さすがマダラメさんって感じ… よし!!」
キメイラは咄嗟にスイムの液状化を使って逃げようとしたが、アベンジはそれを見逃さない。
ダイブウェポンの毒針を瞬時に突き刺して無力化させ、腕の鞭で捉えてぐるぐると回転しながら地面へと叩きつける。
当然能力は強化されている為、毒針の毒もその強さを増している。キメイラは立てる事は立てるがフラフラとしていた。
「これで決めてやる!!」
アベンジはドライバーを上から叩くと、翼を出してキメイラを鞭で捕まえて上空へ高く舞い上がる。抵抗しないよう毒針を発射しながら、縦にキメイラを回す。
そして鞭を引っ張りながら翼を開き、アベンジは必殺のキックをキメイラの懐へと叩き込む。
《GOODBYE!! トリニティアベンジタイム!!》
「ハァァァ… ハァァァァァァァァッッッ!!!!!」
アベンジのキックはキメイラの身体を貫通し、地上へと優雅に降り立つ。
上空でキメイラは断末魔をあげながら、その身体を爆散させる。塵一つ残さずこの世から消え去った。
「… この世に生まれちゃいけない命なんてない… だけどキメイラ。君は生き物ですらなかった… こうするしかなかった…」
キメイラは確かに化け物ではあったが、命があった事に変わりはない。
それにキメイラを倒す事でマダラメの真実を聞くことができる。その為に倒したと考えてしまうと複雑な気持ちなる。そうは思わずとも結局は倒してしまった事に変わりはない。
「そうだ。羽畑さんは…?」
「安心しろイナゴ。彼女は夢の中よ」
「そっか… また何か言われると思った」
「だよな。これで助けた気にならないでくれる!とか言いそうだもんな」
モグロウの裏声の毛ほども似てない物真似にアベンジは思わず吹き出した。絶対バレたら殺される。
「とにかく羽畑さんを病院へ運ぼうか。マダラメさんから聞くのはその後でいいよ」
「それもそうだな。よしさっさと運ぼうぜ」
辺りを確認してから、2人は陽奈を連れて病院へと向かうことする───。
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「マダラメ。これはどういう事だ?」
「……」
「何故、奴にアビリティズフィードを渡した」
「確かにあれは元々
「俺の質問が返ってきていないのだが?」
「彼には才能がある。それを無駄にしてはなりません… それに」
「それに?」
「強く育った方がアベンジドライバーの精度も良くなりますよ?」
「…… 貴様の裏切り行為は無視できない。が、だからと言って今貴様を失うのはこちら側としても厄介だ」
「あなたのお役に立てるよう、このマダラメ。心身共にあなたに捧げましょう」
「ならば、もう少し命令を忠実に行う事だ」
「これはこれは… 承知致しました」
マダラメは頭を下げながらファングの元を去る。
そして彼は外へと出ると空を見上げて、フードを外す。空はすっかり暗くなり三日月が見えていた。
「そろそろ陽奈さんにも作って差し上げますかね。アベンジ贔屓ではいつ私の研究所に乗り込んでくるかわからない…」
月明かりに照らされたマダラメ… いや、
もう皆様ご察しでしたね!そうです。こういう事です。
では次回、第11話「菱形でジャック」
次回もよろしくお願いします!!