前回、キメイラをマダラメから渡された新アイテム。トリニティフィードを使用して手に入れた新たなフォーム。トリニティウェポンの力を使い、見事に倒した稲森。しかし彼らは知らない。マダラメは班目であったのだと…
それではどうぞご覧ください。
ここは班目の研究所。相変わらずよくわからない機械がズラリと並び、そしてよくわからない発明をしている。
静かな空間で班目が何かをいじっていると、突然ドアが開かれ静寂が終わりを告げた。
「…… どうされました?」
無作法にも程があるほど、突然、乱暴にドアが開き、班目もため息を吐く。
ドアを開けたのは陽奈であった。ズカズカと入り込んできた彼女は班目近くまで行くと、作業台を叩いて真剣な眼差しで班目を見る。
班目には陽奈が何を言いたいかがよくわかる。彼女の戦績を見てみればはっきりするだろう。今のままでは勝てるものも勝てやしない。
だから次に言う言葉これだ。
「新しいアビリティズフィード…ですよね? それも強力なやつでしょう?」
何か言おうとしていた陽奈であったが、発言にする前に全く同じ事を言い当てられてしまったので驚いた様子だ。
当たり前だ。顔に出過ぎている。先の戦いでキメイラに打点を与えられなかった時点で、彼女のプライドに傷がついている事は確か。
「なら、話しは早いわね」
「なんでも作りますよ。さぁ何が欲しいんですか? ご要望通りの物を作って見せましょう」
「単純な話よ。エースの強化」
単純な話し過ぎる。ただ間違ってはいない。
はっきりと言ってしまえば、アベンジの性能よりもエースの性能の方が上回っている。必然的にね。
しかし稲森の場合は元々最強の種族の生き残りであり、今までの成長ぶりからして性能以上の力を引き出している。
一方の陽奈は実力こそあるが、彼女自身の精神に何らかの引っ掛かりが生じて、成長できる場面でもできないというのが事実。
「…… 強化で無理やりにでもあげようという事ですか」
「無理やり? 何か問題でもあるの?」
「いやいや別に問題なんてありませんよ。ただ一口に強化と言われても、流石にパパッとやって完成とはいきませんからね。少し時間をください。陽奈さんの期待に添える様な素晴らしいアビリティズフィードを完成させましょう」
「頼んだわよ。それじゃあ私はこの後、用事あるから」
「ほほう? それは?」
陽奈は一旦研究所のドアを開け外へ出ると、そこから顔をひょこっと出して班目の問いに答える。
「デート」
それから研究所のドアは閉まり、辺りは再び静寂が戻ってきた。
班目は再び作業に戻る。先程陽奈が入ってきた為、途中でやめてしまったが、あと少しで完成なのである。
完成しようとする物。それはもちろんエースの強化アイテムである。
「言われなくてもわかってますよ。何せ私は班目であり──── マダラメなのだから」
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「楓。今日は何処に行くの?」
「えっとね〜… とりあえず歩いて回ろ〜」
「はいはい」
陽奈のデートの相手はもちろん楓。
彼女に対して好意を寄せる男は確かにいるが、アプローチを仕掛けようとする輩は多分この世界にはいない。否、あるわけがない。
そう陽奈は世間にとっては高嶺の花であり、更に世界を救った娘と来たら、やはり誰も手を出すわけにもいかないだろう。
「…… ねぇ、陽奈」
「なに?」
「怪人嫌いだよね」
「え?… あ、うん」
「…… あの時、何で逃したのかなって思った…」
「楓… あの時は手が回らなかったのよ。次は必ず倒すわ」
急にあの事を振り返した楓であるが、彼女の怪人に対する怒りは計り知れない。彼女人生全てを奪ったと言っていいからだ。
ただ1人だけを除いて、彼女がこれから怪人に対しての怒りや憎悪を消し去る事はないだろう。
陽奈自身怪人が嫌いかどうかと聞かれたら、はっきり言えばどちらでもないとなる。父が死んでしまった事への怒りとかはないと言えば嘘になるが、父は首領を倒して逝った。自分の為すべきをして見せた。
仮面ライダーとしての道を真っ直ぐに。
「… なんか最近変な気分」
「ん?」
「心臓が握られてる様な感じ」
「… 私のせい?」
「違うわ。私の問題よ」
稲森という人物に会ってから、陽奈の怪人に対する気持ちが揺らいできていた。陽奈自身もそれはよくわかっていた。
だが、素直にその気持ちを解放していいという訳がない。今更、怪人にもいい奴はいるからやり方変えますだなんて、世間が許してくれるはずもない。
そもそもこれが仮面ライダーとしての務めだ。
私はなにも間違った事はしていない。
仮面ライダーとして…。
「───…… 陽奈っ!!!」
「え、なにっ?」
「ジェスターが!!」
「えっ!!?」
楓の言葉に我に返った陽奈は、彼女が指を示す先を見ると、そこには何処から現れたのかウィンプジェスターの群れが人々を襲っていた。
陽奈はアベンジドライバーを腰に巻いて走り出す。
「なんなのよ急に… みんな逃げてッ!!─── 変身ッ!!!」
ダッシュフィードをセットして側面を押し込み、エースへと変身すると、能力を発動させて一気に群れの中へと飛び込む。
人を助けながら、群れをエースガモスボウで打ち抜いていく。
「やっぱり雑魚ね。全く何処から湧いたのかしら」
やはりウィンプジェスターは弱い。
急に出現して理由はわからないが、とにかく人々の救助を優先しよう。でなければ弱いと言えど、この数をまともに捌くことはできない。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
「しまった…!!」
市民にウィンプジェスターが襲い掛かろうとした瞬間、バイクのエンジン音と共にジェスターは吹き飛ばされる。
それはエースが今とても会いたくはなかった人物。仮面ライダーアベンジである。
「… 別に来なくてよかったんだけど」
「まぁまぁ… 人手は多い方がいいでしょう?」
「生意気」
「僕が救助を優先するので、羽畑さんはウィンプジェスターの方をお願いします!!」
「言われなくてもわかってるわよ!!」
アベンジはジャンプウェポンからダイブウェポンへと姿を変えると、両腕の鞭を使ってウィンプジェスターを倒しながら、市民を遠くの方へと運ぶ。
一方のエースはその間に大量のウィンプジェスターを次々に爆散させていく。
「救助完了しました!!」
「あっそ!! なら、一気に蹴りつける!!」
2人はそれぞれドライバーの上部と側面を叩くと、アベンジは両腕をエイの尾へと変化させ、エースは高く舞い上がって飛び蹴りの態勢に入る。
《GOODBYE!! ダイブアベンジタイム!!》
《Thank you!! エースライド!!》
ダイブウェポンの両腕で怪人たちを蹴散らし、最後にエースが上空より必殺の一撃を喰らわせると群れは一息に全滅する。
これで終わりかと一旦胸を撫でおろそうとしたのも束の間、再びウィンプジェスターがどこからともなく出現し始めた。
「はぁ!? 冗談でしょ!?」
「一体どこからこんな量が…!!」
「ジェスターはめんどくさいわねホント!!…… ん?」
エースは溢れ出たジェスターに怒りをあらわにしたが、女性の悲鳴を聞きすぐに我に返る。
この声は楓のものだ。
「楓ッ!!?」
「ご、ごめん陽奈… 捕まっちゃった…!!」
「ジェスター… 楓を話しなさい!!」
そのジェスターは楓の首に鋭い翼を突きつけてせせら笑う。
アベンジとエースはそのジェスターを知っている。カモメの怪人バートンである。
「人質ってことかしら…!!」
「まぁな。ただしあんたがこちらの条件を飲んでくれりゃ話は別だぜ?」
「… 言いなさい」
「エースドライバーを渡せ。んで、ついでにアベンジドライバーも渡しな」
「…… できるわけないでしょ!!」
「なら、この女の命はどうなってもいいと?」
更にナイフの様な翼を楓の首に押し当てると、楓の首からツーと血が流れ落ちる。
その光景を見たエースは近づけないどころか、一歩も動くことができなくなり、言葉も発することがままならない。かなり動揺してしまってある様だった。
「大丈夫よ陽奈っ!! 私の事は構わずにこいつを殺して!!」
「できるわけないでしょ…… なに言ってるのよ!!」
「いいからやってよ!! 私との約束忘れたの!!?」
「……っ!! でも…」
エースが手を出せず、ただ拳を握りしめるだけ。
それを読んでいたのかバートンは更にせせら笑う。完全にこちら側が1番手を出せない方法を知っているかの様だ。
アベンジもどうにかしようと考えてはいるのだが、この範囲からの攻撃で果たして倒せるのだろうか。現状2人の持っているアビリティズフィードで対処できるのか。いや、まずフォームチェンジできる隙がない。
「早く渡せよ。マジにやるよ? 俺は?」
再び翼を首元に押し当てようとしたその時、上空からハンマーが飛来する。
ハンマーは真っ直ぐにバートンの顔面捉えて弾き飛ばすと、その隙にエースは楓を抱えて後退する。
一体なにがあったのか。周りを見渡したアベンジたちの前に上空から仮面の戦士が現れた。
「…… てめぇは… なんだ!!」
「喋らなくてもいいですよ。最も退いてくれるならなにもしません」
「このやろう…!!」
バートンはすぐに体勢を立て直し、翼をギラつかせて爆発する羽をその戦士に向けて放つ。
しかし驚いた事に戦士は違うとはしない。凄まじい爆発音の中、戦士の姿が見えなくなり、誰もが終わったと思うであろう。
「──…… この程度ですかね? まぁいいでしょう。さっさと終わらせてあげますよ」
「なっ…!!?」
なんとバートンの羽を大量に食らって傷一つ付かないどころか、微動だにしていないのだ。
その場の全員が唖然となっていると、その戦士はドライバーの側面を押し込むとバートンに向かって走っていく。
「このアーマーの硬さは… あなたの羽如きでは崩せませんよ」
「こいつ…!!」
戦士のエネルギーを纏った蹴りが、凄まじい威力と共にバートンの腹部を貫く。エネルギーはバートンの全身を駆け巡り爆発する。
「そ、そんな…!! この俺がァァァァァッッッ!!!」
バートンはそのまま跡形もなく消えてなくなった。
あまりに突然。そしてあまりに早く、バートンは見るも無残に爆発した。
「あなたは…… 一体…?」
「…… では、行きましょうか。アベンジさん」
「へぇ? ちょ、待ってくださぁぁぁぁ……────」
謎の戦士に一瞬にして担ぎ上げられたアベンジはそのまま何処かへと連れ去られてしまった。本人も抵抗しようとはしたが、その力の強さに耐えきれずブラブラと抱えられたままだ。
陽奈は変身を解くと、楓に近づいて呼びかける。彼女は首に少し傷がついたくらいで他に支障はない。
「よかった……」
「陽奈。どうしてやらなかったの?」
「やれる訳ないでしょ… 1番の親友なんだもの…」
「その言葉凄く嬉しいよ。だけど躊躇してたらいつまでもこの世に蔓延る怪人は消えない。消さなきゃいけないんだよ」
「… 楓? 一体どうしたって言うの?」
「なんでもないよ… ただ凄くやらなきゃいけないと思う。やらないと安心できない…」
「………」
楓の様子がおかしいと感じながらも、陽奈はとりあえず警察に電話をかけてその場を任せる事にした───。
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稲森は変身を解き、謎の戦士を警戒してはいるが、隙を見せない様に佇む。
そんな謎の戦士はドライバーを外し、こちらを振り向くとその姿に稲森は驚愕した。
その人物は稲森も陽奈もよく知る人物だったからである。
「やぁ、稲森さん。驚きましたか?」
「班目さん!? どうしてあなたが仮面ライダーに!?」
「まぁまぁ落ち着いてください。それに… あなたには約束事があったので伝えにきたんですよ」
「や、約束事? 僕何か約束しました?」
「言いましたよ? キメイラを倒したら教えて差し上げますと」
「なにを… 行っているんですか?」
「私がマダラメであり、班目だと言いたいんですよ」
「え…!!?」
班目がマダラメであると言われ、流石に驚きを隠せなかった稲森。
ただしこの人は冗談を言う人だからなとは言いたいが、この場合信じなければならない気がする。
「… 敵でも味方でもないとはそういうことだったんですね」
「そうですね。ただ逆に私はリゲインの味方でもなければ敵でもありません。あ、そうそう。どうですかあの『仮面ライダージャック』。素晴らしいでしょう?」
「なにが目的なんですか?」
「…… 答えを求めますね。まぁ約束ですから仕方ない… 私はファングを倒そうと思ってます」
「…っ!!?」
「その為にはまず敵地に潜入し、そして仲間である信用を勝ち取らなければならなかった」
「それが事実だとしても、だからって人を巻き込むのはおかしいです…!!」
「そうでもしなければならない状況なんですよ」
「え?」
「ファングは力をつけている。それは同時に
「
班目はいつもとは違うとても真っ直ぐな瞳で稲森を見ると、その計画とやらを伝える。
ただこの計画を聞いた稲森は最初頭の整理が追いつかなかったが、整理がつくと同時に膝を落としてしまった。
その計画とは……
「ジェスター首領の復活です」
遅くなりました(涙)すみません。
次回、第12話「牙がライオン」
次回もよろしくお願いします!!