前回、怪人の子供を助けた陽奈。その子から仮面ライダーは正義のヒーローと言われ、自分の正義について疑問を抱く。一方で稲森は、スイムを殺してしまった過ちに苦しみながら街を歩いていると、班目と出会した。命を軽んじる班目に怒り、彼と対峙するために、仮面ライダーアベンジ トランスウェポンとなって仮面ライダージャックと戦うのであった…
それではどうぞご覧ください。
攻撃は最大の防御とは言うが、防御無くして攻めることは、あまりにも無謀と言えるのもまた事実。
そして今、アベンジが戦う相手は班目が変身する「仮面ライダージャック」。ジャックのスペックは現段階で最強と言わざるを得ない性能と、1番飛び抜けているのはその硬さにある。
100t以下の攻撃力であるなら、彼の装甲を突破することなどできない。それら全てを無効化してしまう頑固さを持つ。
故に────。
「くっ…!!」
「稲森さん、どうされましたか? 生半可な攻撃では、私の防御は突破できませんよ?」
それにしてもなんて硬さだろう。攻撃を加える度にそう実感する。
何度も何度も殴り、蹴り、ジャックよりも多くの打撃を与えてはいるが、やはりその装甲の前では無力だ。
「これでッ!!」
アベンジは装甲の薄い部分、首元を狙って蹴りを浴びせる。そこでよろけた所をすかさず殴った。
一瞬の隙もない繋ぎだ。これで少しでもダメージが与えられるなら…。
最初はそう思っていたが、殴った直後に拳が止められた。本当に多少。ほんの少しのダメージ。
「これは意味がありませんねぇ?」
「まだまだ……ッ!!」
それからジャックはアベンジを投げ飛ばし、落ちてきた所を狙って蹴り飛ばす。腹部をしっかり捉えた、重い一撃が入る。
「かはっ…!!」
無様にゴロゴロと地面を転がり、ブレーキを掛けて止まってから、ゆっくりと身を起こす。
結局レベルが違う。スペック差は埋まらない。こんな戦力さでそもそも勝てるはずがなかった。
「強い……」
「それは当然です。私のライダーシステムの方があなたよりも上なんですから」
「じゃあ、このトランスウェポンは無駄って事ですか」
「無駄も何も無駄にしているのは、稲森さんです」
「… え? 僕が無駄に?」
「トランスの力はその程度ではありません。それに気付けるか… ですがね?」
トランスの力と言われても、初めて使って初めて動いているのだからわかるはずがない。
ただ敵と見做した相手に教えをこう、というのも気が引ける。そもそも勝てる可能性が限りなく低い。
「はぁっ!!!」
「またただの攻撃ですか? それでは意味がないんですよ」
再びジャックを殴打するアベンジ。無駄な行為である。
ジャックも呆れてため息を吐き、拳を受け止めると、逆にアベンジを殴り飛ばした。
「残念ですよ。もはやここまでとは…」
「ま、まだです!!」
「うーん… トランスの戦闘データを取ろうと思いましたが、今日はやめておきますか」
「僕は… まだ…… うおぉぉぉぉぉっ!!!!」
「全く…… では、この一撃でこの場は終わりにしまし……っ…!!!」
また殴りかかってきたアベンジに対し、片腕でそれを受け止めようとした。
だが、ジャックはそうしてしまった自分の判断を間違えた事に気づく。彼を、アベンジを軽く見た。元より警戒しておくべきだったのだ。
─── 最強の戦闘部族の生き残りの強さを。
「はぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
アベンジの身体から凄まじいエネルギーが漏れ出したかと思うと、ジャックの腕のガードを超えて頬に直撃させた。
ミシミシと音を立てながら、先ほどまで全く不動であったジャックが、後方へとすっ飛んでいく。
たった1度の、たった1撃のパンチで。
「ぬぐぅ…!!!?」
「こ、これは……? 僕は一体何をしたんだ?」
あまりに突然の事に、アベンジ本人でさえ何があったのかよく分からなかった。
全身から漲るような力を、拳に込めた瞬間、何度やっても倒れようとしなかったジャックが吹き飛ばされていたのだから。
「──── これはこれは… 警戒はしていたつもりでしたが、やはり
「トランスの……」
「そうです。トランスウェポンは『溜め込む』という能力があります。それは受けたダメージ、あなた自身の力を一点に溜める事で発動する、少々時間の掛かる力ですが、まさか説明もなしにやってみせるとは…… 流石の成長速度。素晴らしい」
「…… あなたには真実を話してもらいます。今日ここで。この場で!!」
「ふふふっ… いいですねぇ。ならば、その新たな力で私を倒して見てください。まぁ最も、溜めるという隙のあるデメリットで、格上である私を倒せるのならですけど」
「やってやりますよ!!!」
ジャックの挑発とともに、アベンジが駆け出すと、突然目の前にモグロウが現れた───。
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何処かの人知れずの場所。そこにリゲインの本拠地が存在する。
リゲイン内部は幹部たちが出入りする事だけを許され、他のジェスターたちは傘下であったとしても入ることを許されない。そもそもリゲインの場所は知るものより、知らないものの方が多過ぎる。
そんな中で、リゲインの内部ではとある計画が完了した。
「おい、スピーダ。班目はどこだ」
「それがねファングちゃん。スイムちゃんも来てないの」
「……… 奴め。次はないと言ったはずだがな」
「班目ちゃんの始末については後よ。それよりお顔を早く見たいわぁん!!」
「いいだろう…… ウェイト、スピーダ。あの方をお連れする。跪け」
ウェイト、スピーダの2人は、ファングに言われた通りその場で跪く。
すると、奥からファングが車椅子を引きながら現れる。車椅子に乗っている人物は顔全体を包帯で巻き、手足もダランとしており、本当に生きているのか怪しいものだった。
ただ2人は頭を下げる。その人物がどれだけ高い地位なのかわかっているからだ。この世で1番偉いお方。この世の支配者。
「─── 首領。復活おめでとうございます。我らジェスター一同、心よりお待ちしておりました」
そしてファングもまた、2人に続いて首領の前に跪く。
そう彼こそがジェスターの首領。ジェスターの頂点に立つ怪人の王。
「…… 顔を上げろ」
首領がそう言うと、3人はゆっくり顔を上げる。
ついにこの日が来た。ファングは内心、この上ない喜びを抑えているのだが、敢えて出さない。いや、首領の右腕として、No.2として出してはならない。
「現状を話せ」
「はっ… 現状─────」
それからファングは今まで起きたことを全て、どこも漏らす事なく全てを真実のままに報告した。
やはり首領は話を聞いて怒りを露わにしている。アベンジドライバーの件や班目という男の身勝手による仲間の死。更には怪人に対する理不尽と、それを良しとして共に平和に暮らす怪人たち。許せるはずがなかった。
表情こそわからない。ましてや動くこともない。ただ首領の気迫だけは彼ら3人にヒシヒシと伝わってきた。
「復活直後から、私の機嫌は最悪なものとなった。これが世界の現状か。あまりにも腹の立つ事ではないか? ファングよ」
「はい、私もそう思います」
「やはり人間は全滅させなければならない生き物のようだ。今回ばかりは誰1人生かしておくわけにはいかない」
「はい、我々…… 否、あなた様の為となれば、我々はいつでも動きましょう」
「…… まず楓という人間にエースを捕らえさせろ。仮面ライダーエースだけはこの私が殺す。すぐには殺さん。苦痛を与えてから殺そう。地獄を見せてやろう。奴の娘に… なぁ?
「では、我らは動きます。失礼致します」
首領をウェイトとスピーダに任せ、ファングたちは楓の元へと移動する。
リゲイン内のとある一室に楓はいる。いつも何かをぶつぶつと言い続けているが、そんなもの興味はない。どうでもいい事。
全ては首領の意思のまま動くだけ。全ては首領と共にある。
「楓」
「………… あぁ、ファングさんですか。何かご用でしょうか? 私は怪人とはあまり話したくありませんし、寧ろ殺意が湧いてきます。最近止められないんです。ここに居させてもらっていますが、あなたたちを今すぐにでも殺したくて仕方ないんです」
「…………」
部屋の中は傷だらけであり、1人の女性の部屋ではなく、まるで怪物でも住んでいるかのような酷い有様となっていた。
徐々に楓の心が変わっていく。楓が楓で無くなってしまう。班目が何をやったかは知らないが、なんと哀れな事だろうか。
しかしそれも全て計画のうちの1つであるなら、問題などない。彼女はただ一点に集中して貰えればそれでいい。
「率直に言わせてもらおう─── アベンジを殺せ。そしてエースを連れてこい」
「何故? 稲森さんは殺しても構いません…… ですが、陽奈だけは許しません。あなた達は陽奈に何をする気なんですか?」
そう返されると、わかっていた質問である。ファングはすぐに答えた。
全く適当な言葉。偽りを。
「もう陽奈はダメだ。完全に変わってしまった。あぁなってしまった以上、俺たちの力を使わなければどうしようもならない」
「どういうことですか?」
「陽奈を呪縛から救える。そして治った後は、お前達が恨んでやまない俺たちを殺せる。俺たちはそれで構わない。リスクはあるが、俺たちはアベンジを殺せるだけでいい。後はお前の好きにするといい」
「……… 本来なら私はここでノーと答えます。ただ陽奈がそれで救われるのであれば行きましょう」
「あぁ、助かる」
こんなに適当であるのにも関わらず、楓は信じてしまった。彼女にはもうどうすることもできない。だから信じるしかない。
ファングは堪らず表情に出してしまう。普段出す事のない笑みを浮かべ────。
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「モグロウっ…!!? あぶなっ!!!」
急に目の前に飛び出してきたモグロウに、アベンジは地面を蹴って後退する。勢いがついていたので、ブレーキが効かないと考えての行動だ。
しかし、これによりジャックとの距離が開いてしまった。
「モグロウ!! 危ないから下がってて!!」
「………」
「ちょっと聞いてる!!?」
「…………」
「モグロウ…?」
彼の様子が明らかにおかしかった。
不自然な所でアベンジの前に出てきたり、目の前の光景が幻ではないのなら、モグロウはジャックを庇っているように見える。
「ねぇ、モグロウ。これはどういうことなの? 最近連絡もくれないから心配してたんだ。何かあったの?」
「…………」
「答えてよ!! 親友ッ!!!」
「──────……… すまん。イナゴ」
「え?」
「俺はお前を裏切る」
すると、モグロウは御法度である怪人態へと姿を変える。
モグラのような鋭い爪と長い鼻があり、爪は長く鋭い刃が3つに分かれ、鼻はドリル状の物へと変化している。全身は機械のようなアーマーで、コード線が所々に繋がっている。
稲森はモグロウのその姿に言葉が出なかった。彼の怪人態はあれほど凶暴性のある姿をしていないからだ。
「いやいや、モグロウさん。その姿はお久しぶりなんじゃないですか?」
「… 何を言ってるんですか? 班目さん」
「何を言っているもこうもこれがモグロウさんのお姿です」
「違います!!! モグロウに何をしたんですか!!!!!」
「逆にあなたが何を言っているかわかりませんね。これが本来のモグロウさんですよ。稲森さんは知らないでしょうけど」
「は…?」
「モグロウさんは自分を偽ってきた。幼少時代からずっとです。あなたにだけは黙っていたんですよ。数十年前のあの戦争の時、何故彼がいなかったかわかります?」
「え… え、え…?」
数十年前と言えば、ジェスターが人間を家畜同然の扱いをし、まさにジェスターが世界を総ていたそんな時代。
その時、モグロウは稲森の元からいなくなっていた。完全ではなく、偶にふらっと現れて稲森の事を気にかけてくれていた。前より会う機会が減ったのは、この時仮面ライダーエースが現れて世界を救っていたはず。
仕方のない事だと思った。何故なら戦いの真っ只中なのだから。
「モグロウ…… まさか君はッ!!」
「……… あぁ、そうだ稲森。お前の想像通りだ」
モグロウの口から嘘だと思いたい、偽りの言葉ではなく真実が稲森に伝えられる。
「─── 俺は首領の傘下だった」
話しの内容が今回てんこ盛りでした!!
それぞれの件についてはまた次回!!
次回、第19話「悲劇のフレンド」
次回もよろしくお願いします!!