前回、ジャックと対峙したアベンジは、トランスの性能を引き出し、見事にジャックの防御力を突破して見せた。その頃、復活を遂げた首領はエース、現エース陽奈に地獄を見せるため、その親友である楓を使おうと判断する。裏で暗躍が進む最中、アベンジの前にモグロウが現れ…
それではどうぞご覧ください。
「傘下って…… どういう事だよモグロウ!!」
「お前には言ってなかったな… いや、俺が言おうとしてても言えなかった」
「モグロウ… 話してよ。今から君の事情も知らずに……… 戦うことになるなんて嫌だよ」
「俺も本音を言えば、お前と戦い合いたくない… だけど仕方がないんだ。許してくれ…」
「なんでそんな急に……」
「…… 俺の家系は元々首領の傘下で… あの戦争にも俺は出てた。いや、出るしかなかった。そうしなきゃ俺の命も、一族の命も危なかった───」
*****
モグロウの一族は古来より、ジェスター首領に仕える身であった。
一般的なジェスターも勿論のことだが、モグロウたちはその命すらも首領に捧げる掟があり、彼の下す命令に背く事は許されない。
ただし、これはモグロウたち一族の掟である。首領は裏切り者は絶対に許さないが、ジェスターという怪人たち、民の自由は与えていた。だからこそ数十年前の戦争時、戦いを好まないジェスターたちには手を出さず、そのまま安全な場所へと暮らさせていた。あくまで本人たちのやる気次第だ。
しかし、モグロウたちは先人が作った掟を破る事なく、王の意思が強い方へと歩む。例えそれが
幼少時のモグロウも掟のままに従い、いつか下されるであろう命令を待ち続けていた。いざ汚い命令をされても、一族はそれを喜びと感じていたが、ただ1人モグロウにとっては不本意なものだった。
何故争わなければならないのか? 何故殺さなければならないのか?
幼くてもその疑問は出てきた。いや、今でもその疑問は晴れる事はない。結局答えは出せない。
「モグロウ? 何考えてるの?」
そんな時、出会ったのがイナゴ(稲森)だった。
彼は喧嘩もしたことがないという。人を傷付けるのが嫌だからだそうだ。こんな弱っちぃのがそもそも戦えるのか… と、モグロウは思った。
しかし、何年も何年も共に過ごすうちに、イナゴという男がどれほど強い男なのかよくわかっていった。肉体的な強さじゃない。心が強かった。
彼だけなんだ。はっきりと首領を否定していたのは。
心でも、言葉でも────。
──── 月日は流れ、戦争が終わり、ジェスターたちは負けた。後の条約が完成し、ジェスターたちは今までやってきた重い罪を背負いながら生活している。
イナゴも相変わらずにやけた面をして、モグロウに話しかけてくる。戦争にも出ていない彼が、なんの罪もない彼がどれだけ苦しいかわかる。
だから表情に出してくれよ。なんで出してくれないんだ。
モグロウは彼に会う度にそう思う。だからいつまでもこの生活が変わらなければいいのになと思っていた。
だが、首領復活が近いという事を聞かされ、モグロウは迷った。
「どうします? あなたは首領を裏切るんですか?」
街中を歩いている時、班目に話しかけられた。
話を聞く気など毛頭なかったが、首領という名を聞かされ立ち止まってしまった。
「裏切るつもりはない……」
「おや? なら、知っていますよね。首領は裏切り者を嫌います。ましてやあなた達一族は首領に仕える身。命令には絶対に背く事はない。首領が全て…… の掟。ですよね?」
「わかってる。いちいち言うんじゃねーよ」
「一族の裏切り者は、一族全ての責任。あなただけでなく、あなたの家族やご友人。親しみある人物の命でさえ────」
「わかってる!!! 黙ってろ!!!」
「おやおや… では、あなたはどうするんですか? 私も一応リゲインの1人ではありますが、首領の復活は止められない。しかし、私はそれを望んでいる… ただ復活してからだと、ファングさんがご報告をしてしまうので、私の地位も危ういことになってしまいます。せっかくの復活支援者も裏切り者として殺す事でしょう」
「…… 何が目的だ?」
班目は不敵な笑みを浮かべ、モグロウに言う。
*****
「僕を首領に献上する…?」
アベンジにモグロウの口から伝えられたのは、アベンジ… 稲森を首領に献上する事で一族の命は助かるとの話しだった。
そう、班目には策があった。こうなる事は予想済みだったので、モグロウの掟とやらを使い、一族の命を助ける為の秘策があると伝える。
そして稲森たちの一族はかつて首領に歯向かった反逆者。首領にとっては仮面ライダーエースの次に、いや同じと言っていい程の憎しみがある。それの生き残りだとしたら、目の色を変える事だろう。
つまり、モグロウは稲森の協力者、裏切り者という汚名を晴らせ、首領に認めてもらう事で一族の命を助けられる。
一方の班目はそれを口実に裏切り者としての罪を軽くし、とある準備を進める時間ができるというもの。
「イナゴ…… 俺は戦いたくない。でも… 俺の家族も巻き込むわけにはいかない」
「…… し、仕方ないよ!」
「は…?」
「だってさ。家族は大事だし、僕は親友が悲しむ姿見たくないから」
「俺は今からお前を…… わかるだろ? 首領に命を渡そうとしてるんだぞ?」
「そうだね。だから行くよ… リゲインにさ。それでモグロウの家族が救われるなら…」
「やめろ… なんで…… お前どうせ仮面の下で笑ってんだろ? そんな顔しないでくれ…… 頼むからッ!!」
見えないはずの仮面の下がどんな表情をしているか。モグロウには痛いほどよくわかった。
ずっと一緒に過ごしてきた親友だからわかる。こいつはそういうやつなんだ。本当は苦しいのに全くそんな事ない、という風に笑って見せる。
「モグロウさん。早くしてくださいよ? 首領はもうこの地に復活を遂げているんですよ?」
「黙れぇッ!!!」
モグロウは地面に穴を開け、そのまま何処かへと消えてしまった。
首を横に振り、ジャックから変身を解いた班目は、アベンジに背を向けてその場から去ろうとする。
「待ってください班目さん!!」
「やれやれ… どうやらもう少し時間がかかりそうです。ですが、まだ時間はあります。あちらも私の始末より先にエースを標的にするでしょうから」
「あなたは命をなんだと思ってるんですか…?」
「私にとってはどれも並行です。上でも下でもなくね…… では、また────」
班目はそういうと、その場から姿を消した。
それから変身を解いた稲森は、穴の開いた地面に近づいて触れる。稲森にはしっかり見えていた。モグロウが泣いているところを。
「僕が必ず助けるよ」
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陽奈は街中にあるベンチで楓を待つ。
先日、楓から連絡が来て、この場所を指定した。何かの罠であるという事を察してはいたが、そのまま放っておくわけにはいかなかった。
「楓……」
そう呟くと、急に周りの人々の悲鳴が聞こえ、目の前にクインが現れ、陽奈の元へと近づいてきていた。
「来てくれたんだね」
「えぇ、来たわよ。ねぇ、楓?」
「なに?」
「私は正義がなんのかよく分からなくなってきたの」
「やっぱり…… 陽奈、大丈夫。私が救ってあげるから」
「だけどね。少しわかったことがあるわ」
「………?」
「泣いている子にそっと手を差し伸べてあげる。そんな当たり前のことができるのが、正義の味方だってね!!」
《ダッシュ!! Open!!》
エースドライバーにダッシュフィードを差し込み、それからエースは構える。
このままずっと戦わなければならないのなら、今ここで楓を倒し、ポーカドライバーを破壊する。
「変身ッ!!!」
《Come on!!》
《Let's try エース!!》
「陽奈ッ!!!」
「楓ッ!!!」
エースはエースガモスボウを取り出し、先制して矢を発射する。
飛んでくる矢を、クインは杖で弾きながら近づき、杖から炎のエネルギーを放出して纏わせ、エースに炎の一撃を喰らわせる。
「きゃぁっ!!」
「怪人は悪いやつ!! そうでしょ陽奈!!!」
真正面からやり合うのは愚策。機動力で翻弄するしかない。
それからエースは羽を広げ、空に舞い上がり、凄まじいスピードで飛行しながら、エースガモスボウの矢を放つ。
上から降り注ぐ雨のような矢とダッシュウェポンのスピードに対応できず、まともに被弾してしまったクインは堪らず膝をつく。
「陽奈ァ……」
「っ…!!」
クインの悲しげな声を聞き、エースは一瞬躊躇ってしまった。
その隙をついたクインが上空へ、黄色いエネルギーの球を飛ばす。バチバチと音を鳴らすそれは雷のエネルギー。
それはエースの元へと辿り着くと、エースの頭上に雷雲を作り出し、強力な雷が彼女へと降り注いだ。
「あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっっ!!!」
直撃してしまったエースの羽はボロボロになり、飛行能力を失って地面に落下した。
エースの元へと近づくクインの身体は、もう既に完治していた。あれだけの矢を浴びせようとこの程度。やはり性能が違う。
クインは杖を構え、今にもエネルギー弾を撃ち出そうとしている。
「まず眠っててね陽奈。必ず治してあげるから…」
「…… あなたはこれでいいの?」
「なにが?」
「私たちは親友でしょ?」
「うん、もちろん」
「親友を訳わかんない奴らに渡してもいいの?」
「… なんで知ってるの?」
「わかるわよ… あなたと何年親友やってると思ってるのよ。どうせ唆されたんでしょ? 私を連れて行けってリゲインの… ファング? 辺りかしらね。なんの目的かは知らないけど、首領を殺した私の父に復讐でもしたいんでしょ」
「………」
「あなたはホント騙されやすいからね。お馬鹿よ…… でも、私はそう易々と誘拐なんかされないわ。私には… あなたを救うって使命があるもの」
「違う…… 陽奈を救うのは私……… 私なのッ!!!」
するとクインは街に雷を降らせ破壊していく。理性の糸が切れてしまったのか。彼女の心も苦しんでいる。助けて欲しいと願っている。
もう彼女を止めるには、救う為には、この力を使うしか方法はない。
《大・暴・走》
《スーパーハード!! Open!!》
「お願い…… もうこれ以上、親友を苦しめないで…… その薄汚いドライバーをぶっ壊して…!!!」
エースはドライバーにスーパーハードフィードを差し込んで側面を押し込む。
この力しか彼女に勝つ方法がないから。班目の力に頼るしかないから。
《Come on!!》
《Let's try スーパーハード・ハード・ハード!! エース!!》
再び変身した暴走形態。スーパーハードウェポン。
彼女に最早理性などない。あるとするなら、目の前に映る全てを破壊し尽くす破壊衝動のみである。
エースはクインを飛び蹴りし、吹き飛んだ所へすかさず追撃の蹴りを浴びせる。
「ひ、陽奈…?」
名前を呼ぼうが意味はない。声すら届いていない。
膝をついたクインの首を持ち上げ、何度も地面に叩きつける。何度も何度も何度も何度も。
クインの仮面にヒビが入り始めると、エースは腹に膝蹴りを喰らわせ、反撃の隙を与えない程の凄まじい拳でのラッシュが叩き込まれる。
「かはっ…!! やめて……… 陽奈ァ……」
「……………」
さっきまでのクインとは違い、本当に恐怖した声で彼女の名を呼んだ。
その掛け声は意味もなく、陽奈は側面を押し込み、必殺技を発動する為のエネルギーを脚部へと溜め始める。
「助けられなかった…… 陽奈、ごめんね…」
クインは覚悟を決めて目を瞑り、必殺のキックをその身で受けようとした。
しかし、その時であった。エースの後ろから少女の声が聞こえ、エースはそちらを振り向く。
その声の正体は陽奈が助けた怪人の少女だった。
「お姉ちゃんダメ!!」
「………」
するとエースはクインから離れ、少女に向かっていく。
「お姉ちゃんにね!! ちゃんとお礼してなかったからこれ渡そうと思ってたの!!」
少女の手には飴が握られており、それを手を開いて見せた。
「… お姉ちゃんを探してきたらね。こんな事になってて…… ダメな事はわかってるよ。でも、お姉ちゃん…… お姉ちゃんじゃなくなってたから……」
「…………」
「仮面ライダーは正義の味方だよ! だから悪いやつをやっつけて! 友達をやっつけちゃダメだよ!」
小さな身体から大きな声を必死にあげ、エースを静止しようと何度も声を掛ける。
だが、それは響くことのない。ただの音に過ぎない。
そしてついに、エースは右脚に溜め込んだエネルギーを放出した。少女に向かって。
「え……」
「小さい… 怪人…… 陽奈…………ダメだよ… やめて陽奈ッ!!!」
《Thank you!! スーパーハードエースライド!!》
凄まじい爆音が街に響き渡った。
ファッ!!?
これはまずいですよ…!!タイトル通り友達ということでね……はい。
次回、第20話「過ちのミステイク」
次回もよろしくお願いします!!